The Second Day

先の事件があった次の日。

相川さんに呼ばれて再び東京に来ていた。


「昨日はご苦労」

「いえ。何のことでも無いです」

「そして、今日のことなんだが・・・・・・」

「はい。何でしょう」

「昨日、警視庁に着いた田口容疑者が脱走し、学校近くで死亡が確認された」

「・・・・・・え?」

「そして容疑者は前回と同じだ。そして残念なことにアリバイが全員曖昧な上、近くに居た。死亡推定時刻は午後11時〜翌日午前2時頃だ」


面倒ですね。

そうなってくると、全員1回事情聴取を真面目に受けたほうが良いのでは?


「・・・・・・分かりました。行ってきます」


私は昨日と同じ道程を辿って例の学校に行くことにしました。



「え!?次は田口ですか?」

「はい。ということで、昨日同様、事情聴取をさせて頂きます」

「分かりました」


今日居たのは、秋山、田河、田島、稲の4人。


「早速事情聴取に入っていいですか?」

「勿論です」

「では、昨日と逆の順番で、稲さんからどうぞ」

「はい」


稲は私の後に付いてきて、教室に入ると、席に座る。


「・・・・・・では、昨日あなたは何処に居ましたか?」

「自宅です。自宅で10時から2時位まで友人に電話をしてました」

「3時間も、ですか?」

「はい。少し大事なことだったので、最初の40分くらいは一方的に僕が話してました」

「なるほど。その友人は何処に?」

「連絡先ですか?これです」


私は紙を受け取ると、その電話番号にかけました。

2、3コールすると相手が出て、アリバイを確認した所、たしかに喋っていたそうです。

ただ、気になったのは少しだけ声が遠いことですね。


「次に田島さんですね。昨日あなたは何処に居ましたか?」

「はい。昨日、ですか?学校が終わって家に帰って・・・・・・その後、確か駅前のカラオケに皆で行って、10時くらいまで歌った後に勉強会のために私の家に皆で勉強をして寝ましたね」

「なるほどなるほど。途中で立ったりしてますか?」

「まぁ、トイレとかに2分くらいは何回か」

「ありがとうございます」


一応、その友達に確認を取った所、確かにそのとおりだと言っていた。


「次に、田河さん。昨日あなたは何処に居ましたか?」

「俺は・・・・・・。家で寝てました」

「それを証明できる人は居ますか?」

「残念ながら全く」

「そうですか」


一番アリバイが無いのは田河ですか。

最後に秋山ですね。


「最後に秋山さん。昨日あなたは何処に居ましたか?」

「親戚の家に居ました」

「それは何処ですか?」

「ここです」


地図を見せられて、その後の動きとかも白そうですね。



そもそも、犯人の目星が付いていたので最後の方は適当に事情聴取を流しました。

まぁ、自ら犯人と口を滑らせてくれたのですから感謝ですね。


「では、昨日同様集まってもらいましょうか」

「分かりました。お〜い、お前ら」


秋山が全員を呼ぶ。

相川さんも丁度到着しましたからナイスタイミングですね・・・・・・。


「さて、始める前に今回は犯行時間から。おそらく午後10時〜10時半頃でしょう」

「何故だ?」

が口を滑らせてその時間しか無いと踏んだからです」

「待ってくれ。石川。稲は電話、田島はカラオケと勉強会、秋山は親戚の家。消去法で田河しか残らないくないか?」

「い、いや。俺は殺ってないぞ!?」

「待って下さい。1人だけ、アリバイが不確かな人が居ますよね?」

「誰だ?」

「では相川さん。事情聴取でわざわざアリバイがないと堂々と言いますか?」

「それは少し引っ掛かったんだが・・・・・・。まさか他にいると?」

「えぇ。そう言っているつもりです」

「まず・・・・・・秋山さんは親戚の家での目撃や、周辺の防犯カメラの映像的に無理でしょう。田島さんはカラオケの帰りに『少しコンビニによる』とか言って列から外れて殺ることは可能ですが、相当上手く噛み合わなければ無理でしょう。最後に稲さんですが・・・・・・。犯人はあなたですね?」

「な!?」

「稲、おまえ、殺ったのか!?」

「い、いや。僕は電話していたんですよ!?」

「確か、一方的に喋っていたんですよね?」

「あぁ。そうです」

「私が最初に引っ掛かったのは、『昨日、10時〜翌日2時まで何処に居ましたか』なんて訊いてないのに10時から2時までのことしか話してないことですね。ですがそれだけで犯人にするにはあまりにも浅はかですからね。次に引っ掛かったのは一方的に話していたこと。もしかしたら予め録音しておいてそれを携帯のそばで流していただけじゃないかな、って思いついたんです」

「待ってくださいよ」

「何ですか?」

「もし電話の相手が途中で話しかけてきたらどうするんですか?」

「最初に、『口を挟まないでくれ』とか『黙ってご清聴願いたい』とか言っておけばいいだけのことですよ。それくらい誰でも思いつきます。確かあなた、最初の40分くらいは1人で話していたんですよね?40分あれば犯行は可能。そしておそらくあなたの性格からして予備は持っていくでしょうね。予備・・・・・・おそらく毒殺用の青酸カリでしょうか?今も肌見放さず持っているはずですよ?」

「・・・・・・持ってないですよ?」

「そうですか。それは残念です。ですが、決定的な証拠があります」

「何ですか?僕は何も持ってないですよ?」

「いえ、あなたの部屋にあるでしょうね。あなたが電話の時に使用した録音器具が。そしておそらく削除したでしょうね。賢いですね。ですが、鑑識に任せれば削除データの復元なんて容易いことでしょうね。そうですよね?相川さん」

「あぁ。鑑識に任せればな。だが、その録音器具をゴミに出してしまったとか無いのか?」

「ありえますね・・・・・・。それでしたら証拠が無いですね・・・・・・」

「僕はとりあえず電話していた。それだけだ」

「・・・・・・知っていましたか?」

「え?」

「青酸カリ・・・・・・シアン化カリウムは、致死量200ミリグラム・・・・・・。もし懐に入れておいて少しでもその容器に隙間があれば・・・・・・気化したシアン化カリウムを摂取して速くて数分・・・・・・遅くとも1日以内に死に至るんですよ・・・・・・?」


すると、稲は顔を歪ませる。


「お、おい、頼む!!僕を病院に連れてってくれ!!」

「じゃ、じゃぁ、稲・・・・・・」

「そ、そうだよ!!田口を殺るときの予備で持って行ったんだよ!!!そしておそらくジップロックだったから吸っちまってるんだ!!」

「じゃぁ、犯行を認めるんだな?」

「あぁ!!だから速く病院に・・・・・・!!!」


私はフッと笑うと蹲っている稲を見下ろすように近づく。


「安心して下さい。個体のシアン化カリウムは液体に触れない限り気化・・・・・・シアン化水素にならないので死に至りません。青酸カリで死ぬのは飲み込んだシアン化カリウムが胃酸で気化し、そのまま気道に入って死ぬパターンですから・・・・・・。そしてもし吸ってしまったら20分〜1時間で死んでしまいますからね」

「まぁ、観念するんだな」


相川さんがそう言うと、稲はその場に座り込みました。


「ハハハ、僕の負けだな。哲学も、知識も」

「まさか。私はブラフを仕掛けただけですよ。それに引っ掛かってくれただけですよ。私よりも知識があればこれくらい分かったはずです。私の得意分野だっただけですよ」


稲はそう言うとポケットから白い粉――――おそらく青酸カリですね。

それを出すと、相川さんに渡しました。


「そういえば、録音器具は僕の部屋の机の中です」


そう言うと稲は大人しく、抵抗することなくパトカーに乗って運ばれて行きました。

空は一面黒く、水滴を出していた。

まるで、残された3人の心情のように。




≪The Second Day was Finishing, And To The Next Story...≫

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