第103話 新たなる姫騎士!ユリアンナ・リリィホワイト登場

「そうそう。アタシもフェンリルの予算が満額降りたし。リュカちゃんを紹介してくれたヤマトを拾ってくれたミューレさんには、大感謝だもん」


「ふふっ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか」


「しかもフェンリルを今後のブレイビア王立魔法院の中核プロジェクトに推薦、なんて話まで出ているんだよ? あの時ヤマトの話に乗ってほんと良かった~。あ、今のはここだけの話にしてね。まだ本決まりじゃないから」


「ブレイビア王立魔法院の信頼と協力を失うわけにはいかないからね。決して漏らさないと約束しよう」


「むふふ。やっぱり目に見える結果が出ると、違うよねぇ」

 アスナはなんとも締まりのないにやけ顔で、むふむふと笑う。


 その気持ちは俺もよく分かる。

 アスナ自身が決断し、努力し、つかみ取った最高の結果なのだ。

 嬉しさもひとしおってなものだろう。 


「でもさ、一番頑張っているのはミューレだろ? 朝から晩まであちこち走り回って、帰ってからは夜遅くまで書類仕事をこなしている。頭が上がらないよ」


 俺の言葉に、またもやリュカ、マリーベル、アスナがうんうんと頷いた。

 ミューレがいつも朝起きてくるのが一人だけ遅いのは、人一倍、夜遅くまで仕事をしているからに他ならない。


「ま、私はチームオーナーだからね。率先して努力をするのは当然さ」


「まとめると、みんなが努力した結果が今のライトニング・ブリッツってことだな」


 この結論に異論のあるメンバーはいないだろう。

 誰もが努力を惜しまない。

 ライトニング・ブリッツは本当に最高のチームだよ。


「で、だ。それらを踏まえた上で、みんなに報告がある。今日集まってもらったのもそのためでね。既にかなり前置きが長くなってしまったから、結論から伝えよう。前から言っていた3人目の姫騎士を正式採用した」


「おおっ、マジか!」

「ついに姫騎士が3人揃ったってことだね」

「なるほど、これはとても朗報ですね」

「ねぇねぇミューレさん、どんな子なの?」


 ミューレの言葉に、俺たちはおおいに盛り上がる。


「私があれこれ語って聞かせるよりも、本人に自己紹介して貰った方が早いだろう。さぁユリアンナ・リリィホワイト、どうぞ入ってくれたまえ」


 ミューレが廊下に声をかけると、ガラリと引き戸の扉が開いて、一人の女の子が入ってきた。


 俺も詳しくはないのだが、ゴスロリ――と言うのだろうか。

 ブラウスにもスカートにもフリルがいっぱいついた、フリフリの衣装を着ている。


 女子にしては背が高く、透きとおるような白い肌で、モデルのような端正な顔立ち。

 絹糸のように美しいサラサラの金髪ストレートが、背中の腰あたりまで長く伸びている。


 しかし最も特筆すべきは姿や格好よりも、その目だった。

 彼女の目は右目が青色で、左目が金色をしていたのだ。

 左右で目の色が違う、いわゆるオッドアイだ。


「わわっ、目の色が違うよヤマト。右目が青で、左目が金色!」

「オッドアイか。珍しいな。たしか100万人に一人の確率って話だぞ」


「服もリボンやフリルフリフリしていてとても可愛らしいですね」

「ゴスロリって言うんだよな?」


「それよりリリィホワイトって言ったよね? ローゼンベルクと並ぶ姫騎士の名門のあのリリィホワイト?」

「自分んちを自分で名門とか言うのはどうなんだ? まぁそのリリィホワイトなんだろうな、おそらく」


 ローゼンベルクと並ぶ有名な姫騎士の家系、それがリリィホワイト家だ。


 冷静沈着でクレバーな姫騎士を多数輩出しており、なによりも真っ向勝負を好むローゼンベルクとは正反対で、相手の得意分野を徹底して封殺してなにもさせない──そんな冷たいデュエルスタイルを好む。


 その得意魔法は氷。


 炎魔法のローゼンベルクとはこれまた対極なこともあってか、ローゼンベルクとリリィホワイトは長年に渡りどちらが最強の姫騎士家系であるかを、ことあるごとに競い合ってきたそうな。


 そういう過去のいきさつもあって――最近は割と仲もいいそうだが――ローゼンベルクとリリィホワイトは今でも何かにつけてライバルと言われることが多かった。


 両家の因縁の歴史はさておき。

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