第102話 感謝の気持ち

 その翌日。

 俺たちライトニング・ブリッツの面々は、ミューレから拠点内のミーティングルームに来るように言われ、集まっていた。


「大事な話ってなんだろうね? またコービー牛の焼肉屋さんに行こうって話なら、いいなぁ」


 のっけから己の欲望を隠そうともしないアスナとは対照的に、


「追加の大口スポンサーが決まったとかかもしれません。スポンサードの問い合わせが連日のようにあると、この前も言っておられましたし」


 リュカは真面目に推察している。


「ゴッド・オブ・ブレイビアの前半戦の最優秀チームに選ばれたから、その話かもしれないな」


 俺もなんとなく予想を立ててみた。

 もちろん、なんとなくなので特に根拠はない。


「ミューレさんがわざわざ集まるようにって言ったんだし、大事なことなのは間違いないよね。ま、今の状況ならまず悪い話じゃないでしょ」


 最後にマリーベルが綺麗に話をまとめてくれる。

 実にもっともな意見だった。


 ちなみに『ゴッド・オブ・ブレイビア前半戦・最優秀チーム賞』は正式タイトルではなく、いわゆる準タイトルと呼ばれているものだ。


 しかし姫騎士デュエル連盟のオフィシャルな賞であることに代わりはなく、何よりこれまた5年連続でバーニング・ライガーが独占していたものを奪い取ったということで、ライトニング・ブリッツの名前はスポーツ紙の紙面をおおいに賑わした。


 ちなみについでに前半戦の個人MVP――これも準タイトルだ――はマリーベルが獲得している。


 どちらも8戦全勝のリュカにするかマリーベルにするかでかなり揉めたらしいが、やはりアリッサという最強王者を破ったことが決め手になり、マリーベルが受賞となった。


 閑話休題。


 俺たちが全員集まって少ししてから、ミューレがやってくる。


「おや、まだ集合時間のかなり前なのに、みんなもう集まってくれていたんだね。呼び出した本人が最後になってしまって、すまなかった」


「いいっていいって。みんなでダベってらすぐだったしな」

「それでミューレさん、今日は何の話があるの?」


「本題に入る前に、少しだけ話しても良いかな?」


「もちろん構わないぞ」

 俺の言葉にリュカ、マリーベル、アスナがこくんと頷く。


 それを見たミューレはコホンと軽く咳ばらいをすると、真面目な顔になって話し始めた。


「ライトニング・ブリッツは長らくリュカとマリーベルの2人だけで戦ってきた。2人とも負けられないデュエル続きで、本当に大変だったと思う。前半戦を首位、しかも全勝で折り返せたのは何より2人のおかげだよ。まずは2人の頑張りに改めて感謝の言葉を伝えたい。ありがとう」


「えへへ、お褒めいただきありがとうございます」

「ま、私の実力ならこれくらい当然だから。ぜんぜん余裕だから。気にしないで」


 リュカが素直に喜び、マリーベルは軽く胸を張りながらもサラリと言葉を返す。

 しかしその顔は、ニマニマとなんとも嬉しそうなことこの上なかった。


「次にヤマトとアスナも裏方として、2人のサポートに尽力してくれてありがとう。姫騎士デュエルは姫騎士だけでは戦えないということを、私はこの数か月で改めて実感することができたよ」


「なに言ってんだ。ありがとうを言うのは俺の方さ。フレースヴェルグを首になった俺をミューレは雇ってくれたんだから」


 俺はいい機会なので、改めてミューレに感謝の気持ちを伝えた。

 お互い(に限らず少数精鋭のライトニング・ブリッツのメンバーは皆)忙しいから、こうやって改まっての場はなかなかないからな。

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