第7章 続く勝利の余韻
第81話 1面ジャック
バーニング・ライガーとの激闘の翌日の朝。
俺は朝一で出かけてスポーツ新聞を全紙購入してくると、拠点の小学校の食堂へと持ち帰った。
全部2部ずつ買って、1部は読む用、もう1部はライトニング・ブリッツの栄光の1ページとして保管予定だ。
こういう時、図書室って収蔵施設が内部にある元・小学校は便利だよな。
「今までは運営資金不足だったせいでスポーツ新聞は購読していなかったけど、今は資金に余裕もあるし、今後は定期購読しておくべきだよな。ミューレに言っておかないと」
スポーツ新聞はぶっちゃけ嘘すれすれなことも多いんだけど、取れたてほやほやの未公開情報や姫騎士のコメントがさらっと載っていたりすることもあって、結構役に立つのだ。
それはさておき。
お湯を沸かしてお茶を入れる準備をしたり、フルーツヨーグルトを作ったり、俺が朝食の準備をしていると、
「ふわぁ……ぁ。おはよーヤマト」
「ヤマトさんおはようございます」
リュカとアスナが早々に起き出してきた。
「2人とももう起きたのか? もっと寝ていてもいいんだぞ?」
「昨日の結果をスポーツ新聞で確認しないと、おちおち寝てもいられないもん」
「寝てようが何してようが、昨日の結果は変わらないだろ?」
俺たちライトニング・ブリッツの勝利は、不可逆的で確定的な事実だ。
「まったくもう、ヤマトはほんと情緒がないなぁ。それじゃモテないよ」
「なにがどうなったら、そんな話になるんだよ……」
とても天才科学者の言葉とは思えんぞ。
「ま、空気が読めないヤマトは放っておいて。まずはやっぱりデイリーからだよね。どれどれ……わわっ、見てみて! マリーベルちゃんが一面トップだよ! しかも大きな写真付き!」
「ほんとです! しかも『無敗の炎帝アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクを完全撃破! ニューヒロイン爆誕!』って書いていますよ! これはすごいですね!」
「そんなこと言ってー。その下にはちゃんとリュカちゃんもいるじゃないのー。『絶対要塞は空も舞う! 天翔ける砲撃姫の鮮烈カウンター!』だって」
「えへへ、はい。載っちゃってます。なんだか不思議な感じで、ちょっと恥ずかしいです」
「恥ずかしがらなくていいってばー」
「それもこれもフェンリルを調整してくれたアスナさんのおかげです」
「ううっ、リュカちゃんはほんとできた子だねぇ……」
「あはは……」
ウソ泣きをしながら目じりをぬぐうアスナを見て、リュカが苦笑した。
「しかもデイリーだけじゃないぞ。サンスポもホーチもニッカンもどこもかしこも、みんな2人が1面だ」
俺は食卓に次々とスポーツ新聞の1面を広げていく。
どれもこれもマリーベルとリュカの写真が、大きく掲載されていた。
「わおっ! まさにスポーツ新聞の1面ジャックだね! ウケるー!」
最近一緒に仕事をするようになって気が付いたんだけど、アスナの「ウケる」って表現、「面白い」というよりかは「すごい」みたいな意味合いの時が多いよな。
「本当にバーニング・ライガーに勝ったんですね。今さらになって実感が湧いてきました。やったんだなって」
「実を言うと俺もそれは感じている。昨日の夜はどこか冷静な自分がいたんだけど、今日は朝からどうにも浮かれている気がするんだよな」
「右に同じー。なんかもう、ついつい思い出してニヤニヤしちゃうもんねー」
俺たち3人は顔を見合わせると誰からともなく笑い合った。
そんな風に、まだまだ色褪せることない勝利の余韻を朝から堪能していると、
「みんな、おはよう~」
マリーベルがいつもと変わらぬ様子で食堂へとやってきた。
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