~ゴッド・オブ・ブレイビア~ 姫騎士デュエル・アナリストの俺、男だからとランク2位のチームを追放され、訳あり美少女ばかりの新チームに拾われる。「開幕戦は3日後だ。よろしく頼むよ」「……OK」
第26話 新生ライトニング・ブリッツ初参戦・初勝利
第26話 新生ライトニング・ブリッツ初参戦・初勝利
「よせやい」
「わっ、ヤマトが恥ずかしがってるし。なにそれ、ウケるー! ね、ね、リュカちゃんも見たよね? ヤマトがプイって視線逸らしたの」
「えっと、あの、あ、あははは……」
俺を指差しながら容赦なく馬鹿笑いするアスナに釣られるように、リュカが可愛らしく苦笑した。
「じゃあ次は私の番ね」
リュカの勝利に沸く俺たちが少し落ち着いたのを見計らってから、マリーベルが席を立つとデュエル・ステージに向かう。
これで1勝1不戦敗。
次のマリーベルの大将戦で、チーム戦の勝敗が来まる。
「頼んだぞマリーベル」
「OK」
俺とマリーベルはまだ信頼関係が全くできていないので、当たり障りのない軽い言葉だけで送り出した。
これは俺なりの過去の反省だ。
俺はキャサリンとの付き合いが長かったこともあって、キャサリンとの信頼関係がそれなりに構築できていると思っていた。
だけど実際はそうじゃなかった。
キャサリンは俺にアレコレ言われることを、ずっと疎ましく思っていたのだ。
だからデータ的には正しいことであっても、キャサリンは俺が言ったせいで聞き入れようとはしなかった。
そのことに俺がしっかりと気付いていれば、違うアプローチでキャサリンと接することもできたかもしれないから。
そうすることができていれば、俺は今ここにいなかったかもしれない。
ま、キャサリンは俺が男なことが気に喰わなかったってのも大きいみたいだから、結局は遅かれ早かれクビになっていたかな。
どちらにせよ、今となっては過去の話だ。
今の俺はライトニング・ブリッツのデュエル・アナリストなのだから。
そして特大のジャイアントキリングに観客のボルテージも最高潮に高まる中、大将戦に臨んだマリーベルだったのが。
俺はその戦いぶりに驚くしかできなかった。
「ライオネル・ストライク!」
デュエル開始から終始、押しに押していたマリーベルが、巨大な炎の獅子をまとって突撃する強力な炎属性Aランク魔法を発動すると、相手の姫騎士を豪快に跳ね飛ばした!
防御加護をゴリっと削って、相手はもうガードアウト寸前だ。
(これはすごいな。怖いぐらいに精度の高い炎魔法。身体能力の高さ。状況判断の性格さ。勝負所を逃さない勘所の良さ。どれをとってもトップクラスの姫騎士だ。下手したらアリッサ・カガヤ・ローゼンベルクともいい勝負をするんじゃないか?)
(ね? あの子は大丈夫って言っただろう?)
思わず口から出た俺のつぶやきを聞いたミューレが、満足げにつぶやく。
(マリーベルはいったい何者なんだ? あれだけ戦えるのに、どうして今年が初参戦なんだ? ちょっと理解に苦しむんだが)
今、マリーベルが戦っているのは前年個人ランキング7位。
キャサリンに次ぐ、フレースヴェルグのセカンドエースだぞ?
それを事前情報も対策もほとんどなしに、真っ向勝負で圧倒してしまうなんて。
(悪いけど、私の口からは言えないね。機会があればあの子に直接聞いてみるといい)
(その辺が訳ありなわけか)
俺の言葉に、しかしミューレはイエスともノーとも言いはしない。
そんな話をしている間にも、
「これで終わりよ! ライオネル・ストライク!」
再び炎の獅子をまとったマリーベルが突撃、ついに相手の姫騎士をガードアウトさせる。
リュカに続いてマリーベルも文句なしの圧勝だった。
『なんとなんと! 大将戦もマリーベル選手が勝利してしまったぁ! これで2勝1不戦敗で、開幕戦はライトニング・ブリッツの勝利となったぁ! 誰がこの結果を予想できたか!? そして優勝候補の一角、前年2位のフレースヴェルグは、まさかの初戦黒星スタートだぁぁぁぁ!』
マイクパフォーマンスをBGMに、炎のように赤い髪をサラリとなびかせながら、マリーベルがセコンドエリアに戻ってくる。
マリーベルはまっすぐにミューレのところに行くと、力強く握手をした。
「おめでとうマリーベル。いいデュエルだったよ」
「ありがと、ミューレさん」
「これで私も少しは肩の荷が下りたかな」
「残念ながらまだまだこれからよ。しっかりと恩返しさせてよね」
「別に恩返しをして欲しくて、チームに誘ったわけじゃないんだけどね」
「そう? じゃあ勝手に恩返し」
マリーベルはいつになく
2人の間には、俺には分かりえないとても強い絆があるように思えた。
それはきっと、出会って数日の俺なんかでは到底入っていけない、強い強い絆だ。
それがいったいなんなのか。
俺が知る日は来るのだろうか?
ともあれ。
こうして新生ライトニング・ブリッツは、ゴッド・オブ・ブレイビアの今シーズン開幕戦を、見事な初参戦・初勝利で飾ったのだった。
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