~ゴッド・オブ・ブレイビア~ 姫騎士デュエル・アナリストの俺、男だからとランク2位のチームを追放され、訳あり美少女ばかりの新チームに拾われる。「開幕戦は3日後だ。よろしく頼むよ」「……OK」
第12話 1000万もカンストする魔力タンク、リュカ
第12話 1000万もカンストする魔力タンク、リュカ
「ここにある最新の魔力スカウターを使わせてもらえないかなって思ってさ。できればタダで」
「はぁ? あれ順番待ちがすごいんだけど。今日も予約はびっしり埋まってるのよ? ちゃんと予約を取りなさいよね。半月先くらいなら空いてるから」
「急ぎなんだ。一瞬でいいからさ。なんとか使えないかな? できればタダで」
「タダタダうるさいわね。でもそうね、そういうことなら、毎日2回点検するんだけど、朝の点検時のテストって形で使えるようにしてみるわ」
「マジか! サンキューな、アスナ!」
「その代わり、お礼にアリッサ・カガヤ・ローゼンベルクのサイン貰ってきてくれない? アタシあの子のファンなのよね」
「またそれかよ。前から無理だって言ってるだろ」
「なんで無理なのよ。ゴッド・オブ・ブレイビアの参戦チーム同士でしょ? 対戦する時とかにチョローっと行ってサインして貰いなさいよ」
「向こうはゴッド・オブ・ブレイビアを代表するスター姫騎士。俺はただの裏方。そんな機会なんてないっての」
「ふーん、そんなもんなんだ」
「そんなもんなんだよ」
そうでなくとも男の俺は、姫騎士デュエルの世界では肩身が狭い。
のこのことサインなんて貰いに行ったら、白い目で見られてしまう。
「まあいいわ。じゃあ貸し1つね。言っておくけど、言い値だから」
「俺にできることなら、まぁ……」
言い値というのがなんとも怖いが、無理を言って使わせてもらうんだからある程度は仕方ない。
善処しよう。
「じゃあ着いてきて。あんまり時間がないから急いでね」
「よし、行こうかリュカ」
「あの、ヤマトさん。大事な機器をこっそり使っちゃっていいんでしょうか?」
「話は聞いてただろ? 俺たちはこっそり使うんじゃない、点検に協力するだけだ。少なくとも建前はそうなっている。つまり何の問題もない」
「はぁ……」
根が真面目なのか、リュカはイマイチ納得していなさそうだったが、それでも俺の後についてくる。
俺たちはブレイビア王立魔法院の最新の魔力スカウターのある部屋に入ると、すぐに測定にとりかかった。
「しかしヤマトも物好きねぇ。何を測るのかと思ったら、その子の魔力だなんて」
機器をセッティングしながらアスナが笑う。
「リュカはかなり特殊でさ。普通の魔力スカウターじゃすぐカンストして正確に計測できないんだ」
「それにしても、これはやりすぎだと思うわよ? 言っとくけどこの魔力スカウターの上限は1000万。魔力炉の計測なんかにも使われるものなのよ? 個人の魔力を測るようなものじゃないわ」
「それも分かってるって。とりあえず測ってくれたら、それでいいからさ」
俺の言葉に、アスナは小さく肩をすくめると計測を開始した。
するとすぐに不思議そうな顔で計器を覗き込む。
「あれ、カンストしてる? まさかね。ごめんヤマト、ちょっと不具合が出てるみたい。少し待ってね、もう1回計測するから……あれ、またカンストしてる。おかしいなぁ、昨日は問題なく動いていたのに」
その言葉を聞いて、俺は心が狂喜乱舞するのを抑えられなかった。
「まさか、ここまでとはな」
ゴクリとのどが鳴る。
「何がよ?」
魔力スカウターの設定やらなんやらを弄っていたアスナが、手を止めて俺を見た。
「今のは魔力スカウターの不具合じゃない。単にリュカの魔力を測定しきれなかっただけだ」
「あはは、ヤマトっていつからそんな冗談を言うようになったの? さっきも言ったけど、この魔力スカウターの上限リミットは1000万よ? トップランカーの姫騎士ですら1万も行かないのに、1000万の魔力スカウターがカンストするわけないじゃない。ありえないわ。専門家のアタシが言うんだから間違いないわよ」
「アスナの意見はきっと正しい──常識の範囲内ではな。だけど常識を越える存在がいたとしたら、どうする?」
言って、俺はリュカを見た。
「……本気で言ってるの? 上限1000万の魔力スカウターを、リュカの魔力がカンストさせたって、ヤマトは本気で言っているのわけ?」
アスナも同じようにリュカを見る。
「もちろんさ。リュカは常識の枠をはるかに超えた、無限とも思える膨大な魔力量を持っているんだ。今それが証明できた」
「信じられないけど、でもそういうことなのよね……これはまさに魔力タンクだわ。それも計り知れない容量を持った特大の魔力タンクよ」
「魔力タンクとは言い得て妙だな」
「あの、えっと……計測していただきありがとうございました」
俺とアスナに見つめられたリュカは、なにか言わないといけないと思っただろう、律義にお礼を言った。
本当に良くできた子である。
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