~ゴッド・オブ・ブレイビア~ 姫騎士デュエル・アナリストの俺、男だからとランク2位のチームを追放され、訳あり美少女ばかりの新チームに拾われる。「開幕戦は3日後だ。よろしく頼むよ」「……OK」
第5話「去年は4部で25戦して、1勝24敗でした」
第5話「去年は4部で25戦して、1勝24敗でした」
「……」
しかしもう一人の少女は――マリーベルと呼ばれていた――俺が視線を向けても、何もしゃべろうとはしない。
「ええと、初めましてマリーベルさん。これからよろしくね」
右手を差し出しながら改めてよろしくと伝える俺に、しかしマリーベルはツンケンとした口調で言った。
「こっちの方が年下なんだしマリーベルでいいわよ。それと最初に言っておくけど」
「え?」
「私はあなたの力なんて借りない。このチームにだって、ミューレさんが誘ってくれたから来ただけ。だから私には構わないで。私は一人でやるから」
それだけ言うと、マリーベルは足早に談話室を後にする。
目的を達することなく宙に浮いたままの右手を、俺はゆっくりと下ろした。
「俺って、もしかしなくても嫌われてます? やっぱり男だからかな?」
重苦しい空気がただよう談話室で、俺はミューレに視線を向けた。
「そういうわけじゃないんだけれど、あの子はいろいろと込み入ったものがあってね。人と関わるのが苦手なんだ。大目に見てやって欲しい」
「それは構わないけど、それだと俺には何もできないぞ?」
向こうが聞く気がなければ、データ分析もフィードバックも何もありゃしない。
「あの子は大丈夫。姫騎士としての強さについては私が保証する。だからヤマトには当面はリュカの面倒を見て欲しい。マリーベルとは少しずつ仲良くなってくれればいいから」
「シーズンの開幕は目前だし、悠長にやってる時間もないんだけどなぁ。ま、無理に信頼関係を作ろうとしても逆効果か」
急いては事を仕損じる。
信頼関係を作るどころか、マイナスに触れてしまっては意味がない。
考えても仕方がないことは考えない。
時間の無駄だし、何よりメンタルに良くない。
ミューレが『あの子は大丈夫。それについては私が保証する』とまで言うんだから、マリーベルはそれなり以上に戦えるのだろう。
だから俺はミューレの指示通り、マリーベルのことはとりあえず後回しにすることにした。
「さてと。一応の顔見せも済んだことだし、早速だけどまずはリュカのことが知りたい。詳細なデータは後で見るとして、ミューレから見てリュカはどういう姫騎士なんだ? ざっくりでいいから、所感を教えてくれないか?」
「そうだね。まずリュカは去年まで4部リーグの姫騎士だったんだが――」
「は? 4部? え? 俺の聞き間違いか?」
話し始めたミューレの話の腰を、俺はいきなり折ってしまう。
しかしそれも無理はないことだった。
「聞き間違いじゃないさ。リュカは去年は4部リーグだったんだ」
「いやいや、ちょっと待ってくれよ。このチームは1部リーグのゴッド・オブ・ブレイビアに参戦するんだぞ? 4部リーグでどれだけ強くても、さすがにここじゃ通用しないぞ。リュカの去年の4部での成績はどんなもんだったんだ? 当然、圧倒的な強さで全勝したんだよな?」
カテゴリーが1部上がれば別世界とまで言われる姫騎士デュエルで、4部の姫騎士がいきなりゴッド・オブ・ブレイビアに挑戦するのは、ちょっとありえない。
となれば、圧倒的な強さで無双したと考えるのが当然だ。
(それでもまず勝てないと思うが)
だけどそんなすごい姫騎士がいたら、4部とはいえ話題になるだろうし、業界ニュースは片っ端からチェックしていた俺が知らないはずはないと思うんだよな。
いろいろと不思議に思っていると、リュカから返ってきたのは思いもよらない答えだった。
「去年は4部で25戦して、1勝24敗でした」
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