第2章 リュカ・フリージア

第4話 小学校のリュカ・フリージア

 その後、金銭面とか契約に関するお話をちょこちょこっとして。


 こうして俺は今シーズンからゴッド・オブ・ブレイビアに昇格するライトニング・ブリッツのデュエル・アナリストになったのだが――。


 チームの本拠地として案内されたのは、なぜか小学校だった。


「なぁミューレ」

「なんだい?」

「気のせいかな。俺にはここが小学校に見えるんだが?」


 校門を通り抜け、教室を横目に廊下を歩きながら、俺はついに耐えきれなくなって質問をした。


「正確には元・小学校だね。去年、統廃合で廃校になった校舎を、タダ同然で利用させてもらっているんだ。こう見えて、うちはゴッド・オブ・ブレイビアの参戦チームだからね。行政もそれくらいの支援はしてくれるのさ」


「……」


「そんな顔をしないでくれ。敷地はフェンスで覆われているし、簡易結界を張れば運動場で模擬戦ができるし、たくさん教室があるから個人の私室にも、ミーティングルームにも、物置にもいくらでも使える。地域防災の一環でお風呂もついていたし、体育館だってある。交番も近くて治安もいい。セ●ムも付けた、5分で来てくれる」


「そう考えれば、意外と悪くない施設……なのか?」


 ごめん、よく分からない。

 でも文句を言っても始まらないことだけは分かる。

 つまりこれ以上、何かを言っても何も変わらないし時間の無駄ということだ。


 今はもっと優先すべきことがある。


「まぁ施設についてはいいじゃないか。お金がないからしょうがないんだ。お、ちょうど2人ともいるみたいだね。これからヤマトに面倒を見てもらう姫騎士を紹介するよ」


 そう言うとミューレは談話室でおしゃべりに興じていた――というか一方的に1人の子が話し続けていて、もう一人は見るからに面倒くさそうに聞いていた――2人の女の子に声をかけた。


「リュカ。マリーベル。急な話なんだが、今日から君たちをサポートしてくれる新しいスタッフを紹介する。デュエル・アナリストのヤマト・リンドウだ」


「初めましてヤマト・リンドウです。先日までフレースヴェルグでデュエル・アナリストをやっていました。今日からこのチームで一緒にやっていくことになります。よろしくお願いします」


 俺は丁寧にあいさつをすると、深々とお辞儀をした。


 パッと見では2人はまだ十代半ば。

 25歳の俺の方が一回り近く年上だが、姫騎士はチームの顔。

 悪い印象を持たれてしまっては元も子もない。


 俺も人間なので、また嫌われていきなりクビにされると悲しいからな。


「初めましてリンドウさん。私、リュカ・フリージアです。これからよろしくお願いしますね」


 リュカ・フリージアと名乗った女の子がぺこりと頭を下げた。


 ふわふわと柔らかそうな薄水色の髪。

 全てを包み込んでくれそうな穏やかな笑顔は、地母神のごとき得も言われぬ包容感を与えてくる。


 しかし何より目を引くのが、驚異的な胸囲だった。

 なにせでかい。

 メロンでも入っているのか?

 などと、失礼なことを一瞬思ってしまったほどだ。


 あまり女性を胸のサイズであれこれ言うのは良くないと思うんだが、それでもつい意識せざるを得ない驚異のビッグサイズだった。


 もちろんそんなことを考えているとはおくびにも出さない。


 俺もいい大人だからな。

 盛りの付いた10代のガキでもあるまいし、それくらいの対応はできる。


「よろしく、フリージアさん」

「もぅ、リュカでいいですよ。リンドウさんの方が年上なんですから」


「じゃあ俺のこともヤマトでいいよ。そっちのが呼ばれ慣れているから」

「ではヤマトさんとお呼びしますね」


 リュカはにっこりと笑うと、右手を差し出してくる。

 俺はそれを軽く握って握手をした。


 ファーストインプレッションは悪くなさそうだ。

 リュカはすごくいい子みたいだし、上手くやっていけるだろう。


 続いて俺はもう1人の女の子へと視線を向けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る