第38話:魔法使いの説明をやっと始めます!

「さぁて。とりあえず諸々落ち着いたし、いい加減魔法使いの説明、始めてもいいかな?それとも―――」

いつのまにか、理事長の持ち込んだ紅茶とお菓子によるほんわかとしたお茶会ムードのなか、オリバー先生が一同にそう声をかけて理事長へと目を向ける。


「理事長が説明するかい?」

「あらあら、今日は私、口出ししませんよ。生徒役に徹するわ。

やだ、生徒側だなんて何年ぶりかしら!」

そう言ってはしゃぐ理事長。


絡まれているユリアちゃん、慌てながらも理事長の可愛らしい雰囲気に和んでいるわ。


「あぁ、そうですか。大先輩の前で恐縮するけど、今日のところは僕が教師役ってことだね」

「あら、大先輩なんて失礼しちゃうわね」

(役っていうか、実際にオリバー先生は教師なんだけどね)


理事長と心太がそれぞれ言いたいことを言っている。

まぁ、心太は心の中で、だけど。


「えぇ〜っと。それで心太、なに聞きたい?」

「いや出鼻から心配だな!」

心太、声に出てるわ。


「し、失礼」

咳払いしながら心太はオリバー先生へと頭を下げる。


「で、ではまず、魔法使いはどうやって魔法使いになるんでしょうか?」

「そこからね。えっとね。魔法使いと手を繋げば、魔法使いになれるんだ」


「はい?」

「ちょっとスミス先生。それじゃぁ小嵐先生が分からないわよ」

心太が首を傾げると、すかさず理事長から声が上がる。


「理事長、口は出さないんじゃなかったの?」

オリバー先生は、ニヤニヤしながら理事長に返す。


「んもう、スミス先生ったら。今の、わざとね」

「はっはっは!ごめんよ理事長。えっとね、心太。

心太の質問より先に、説明しておくことがあるんだよ」


(だったら最初からそれ説明してくれないかな!?)

心の中で文句を言いながらも、心太はオリバー先生の次の言葉を待つ。


「さっき心太が話した忍者の忍力のように、魔法使いには魔力と呼ばれる力がある。

この魔力にはね、『融和』って呼ばれる力があるんだ」

「『融和』、ですか」


「そ。さっき言った、手を繋ぐっていうのも、ただ繋ぐんじゃなく、両手で繋ぐ。つまり、2人で1つの輪を作るってことなんだ。

そうすることで魔法使いは、もう一方に魔力を流し込み、2人がその魔力を循環させる。

それによって魔法使いでない者は魔法使いと融和し、魔法使いになれるんだ。

これを我々は、『融和を結ぶ』と呼ぶんだ」

「なるほど。今日の空を飛ぶ授業の前に吉良君から、その際に3つの魔法を使えるようになるとききましたが、それは?」


「そうそう。『融和を結ぶ』ことで魔法使いになったら、『飛行』と『姿隠し』は絶対に使えるようになる。

もう1つは、人によって違うんだ」

「吉良君の『転移』のようなものですか?」


「そういうこと。ちなみに、『融和を結ぶ』際に、元々魔法使いだった方を『親』、そうでない者を『子』と呼ぶんだ。

この関係は、最初に『融和を結ぶ』とき限定で、それ以降はそうは呼ばれないんだよ」

「っていうことは、『融和を結ぶ』という行為は、何度も行うものなんですか?」


「まぁ、やらなきゃいけないってわけではないけどね。

いろんな魔法使いと『融和を結ぶ』ことで、魔法使いは様々な魔法を使えるようになるんだよ」

「つまり、『融和を結ぶ』ことで魔法を覚える、と?」


「そういうこと。そしてその、魔法使いとの繋がりこそ、我々魔法使いが最も大事にしていることなんだ。だよね、理事長」

オリバー先生はそう言って理事長へと話を振った。


「えぇ、そうですね。多くの人々との繋がりこそ、魔法使いの力だと伝えられていますね」

理事長はそう言って、微笑んだ。


(ん?)

心太、どうしたの?


(あ、いや、別に・・・)

もう、なんなのかしら、心太ったら。


「ちなみに、昼に笑真ちゃんが言っていた僕の『親』は、ウィルソンさんのお祖母様でもあるクレア・ウィルソン。

偉大な魔女様の末裔と言われている凄い人なんだ!」

オリバー先生は自慢気に、胸を張っている。


「魔女・・・えっと。皆さんはご自身を魔法使い、と呼んでいますよね?

なぜそのウィルソンさんのご先祖様だけ、『魔女』なんですか?」


「心太、『魔女様』だよ。『魔女様』は、この世界で最初の魔法使いなんだ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法使いクラスの忍者先生 メバ @tera4416

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ