第37話:なかなか始まらない魔法使いの話
結局あのあと、心太は犬飼君、吉良君とともに食堂に行って午後は普通の授業。
言ってなかったかもしれないけれどこの中学校、魔法使いじゃない生徒もいるのよ。
その生徒たちは綺麗な校舎を使っているの。
世間的には、そちらだけが桜花中学校として見られているわ。
心太が担任になっているM-2組を含む魔法使いのクラスは、旧校舎を使っているの。
しかもその旧校舎、魔法使いではない生徒や教員からは認識されていないようなの。
これも魔法なのかしらね。
あと魔法使いクラスの生徒は、普段普通の授業も受けていて、魔法ばかり勉強しているわけではないそうよ。
それでも、学校のカリキュラム内で魔法を勉強することが出来る点は、忍者よりも恵まれていると言わざるを得ないわね。
忍者も中学生から学ぶ機会を持つことができるのだけれど、それは課外活動としてなの。
いわゆる『部活動』ね。
それに比べて魔法使いは正課として魔法使いの勉強を組みこんでいる。
整校長の話だと、それも理事長の働きによるものらしいわ。
ほんと、理事長って何者なのかしらね。
ちなみにだけど、魔法使いクラスの子たちは通常の授業、オンラインで受けているの。もちろん、魔法使いクラスの教員が受け持っていない授業だけね。
しかも、魔法によるオンラインらしいのだけれど、凄いの。
新校舎で授業をやっている先生が、そこにいるように見えるのよ。
これ、全国に広められたらすごくいいんだろうけれど、魔法だからダメなんですって。
このオンラインの魔法もどうやら理事長の力らしいのだけれど、通常クラスで行われている授業をリアルタイムで教室に映し出して、生徒たちはそれを見ながら勉強しているの。
基本的にはその場に担任である心太がいて、質問には心太が応えることになっているの。
まぁ、全然質問なんてでないのだけれど。
そんな感じで今日の午後は、普通の授業で終わったのよ。
その後、心太達教員は仕事を終わらせてから寮の方へと向かったわ。
ちなみにこの寮も魔法使いの人たちだけが使っているから、そうでない人たちはその存在に気が付いてもいないそうよ。
なにがしかの設定で、心太だけはその対象から除外されているみたいだけど。
(それも理事長の魔法なんだろうね)
あら心太、聞いてたの?
(いや、仕事中もずぅーっと聞こえてましたけど!?)
はいはい、うるさくてごめんなさいね。
(思ってないよね!?絶対思ってないよね!?)
あら心太、理事長がいるわよ?
(いや話を逸らさないで―――って、いるね、理事長)
心太と言い争いながら寮の談話室についてみると、そこには昼休みのメンバーである犬飼君、吉良君、ユリアちゃん、斎藤ちゃん、オリバー先生の5人のほかに、理事長が座っていた。
(おぉ、すっごく優雅に紅茶を飲んでいらっしゃるね)
えぇ。あれは絵になるわね。
「じゃなくて!!」
心太、声に出てる。
「・・・・失礼しました。理事長、どうかされましたか?」
取り乱しながらも、理事長に笑顔で問う心太。
よく今の大声を、『失礼』の一言で片づけられるわね。
(うるさいっての!)
「こちらで魔法使いの説明をオリバー先生がなさると伺いましたので、せっかくならば私も参加しようかと」
そういいながら理事長の目は、斎藤ちゃんへと向いていた。
(本当は斎藤先生が僕に説明すべきだったのにそれをしなかったんだ。理事長に怒られてしまえ!)
心太、性格悪いわよ。
(あれだけ冷たくされるんだから、そのくらい許されるでしょ!)
そんな言い合いをしながらも心太は、理事長の次のっ言葉を心待ちにしている。
斎藤ちゃんが怒られるのを待っているのね。
なんて心の狭い男なのかしら。
でもそんな心太の期待は、あっさりと裏切られることになる。
「んもう笑真ちゃんたら、小嵐先生に魔法使いのこと話してって言ったのに!スミス先生ごめんなさいね、ご迷惑かけちゃって。笑真ちゃんっておっちょこちょいなところがあるから、たまにこういうことがあるの!」
「ちょ、ミエさまっ!」
「あら笑真ちゃん、学校では『理事長』でしょう?」
「だったらミエさ――理事長も、その呼び方はおやめください!」
「だってぇ。私にとって、笑真ちゃんは笑真なんですもの~。
って、みんなそんなところに立ってないで、座ってちょうだい。お菓子もあるわよ?
ほら、ユリアちゃんもここに座って!」
(なんか、すんごいなごんでるね)
そうね。さっきまではイギリス風淑女だったのに、急に近所のおばあちゃんになった感じね。
(あぁ、確かに)
なんて私たちが話していると、理事長に声をかけられたユリアちゃんが、
「ミ、ミエ様の隣だなんてっ!!恐れ多い、恐れ多いですわぁーーーー!」
なんて言いながらオリバー先生の後ろに隠れている。
「まさか、1日に2度もこうなるとは・・・」
オリバー先生がまた頭を抱えているわね。
「理事長、みんな、ごめんね。彼女は元々、理事長のファンなんだ。そこから、理事長の出身である日本に興味をもって日本好きにもなったんだけど。
さすがに理事長から隣の席を勧められるのはハードル高かったみたいだね。
少ししたら落ち着くと思うからさ。とりあえずみんな、理事長のお菓子でも食べてようよ」
オリバー先生がそう言いながら椅子に座ると、みんなも各々座り始めていた。
(魔法使いの説明、いつになったら始まるんだろう)
心太の心のつぶやきが、私だけに聞こえている。
きっと、次回こそはあるはずよ。
(いや次回ってなに!?)
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