第27話:忍者 対 魔法使い その1

「では手合わせを始めましょう」

整校長がそう言うと、オリバー先生が心太へと手を差し出した。


「お互い、負けても恨みっこはなしね。ちなみに新人君は、この前僕を『水も滴るいい男』にした技なんかは使うのかい?」

そう言うオリバー先生の手を握り返しながら心太は、


「あれは『水砲すいほうの術』と言うのですが、今回はあれも含めて術は使わないつもりですよ」

そう返した。


「おや?僕、甘く見られてるのかな?」

「気分を害されたなら謝ります。が、そういうわけではありませんよ。我々忍者の強さはなにも、術だけが全てではありませんから」


「そ。まぁ、だったらいっか。僕も今回は魔法は1つしか使うつもり無いからね。忍者の強さってやつ、見せてもらうよ」

そう言って笑うオリバー先生は、そのまま歩いて心太と距離を取り、心太へと向き直った。


ちなみに私は、心太から具現化してもらって今は空から2人を観戦中よ。


「では、始めてください」


さぁ〜て始まりました忍者対魔法使い、史上始めての手合わせです!

おぉっと心太選手、整校長の開始の合図と共に忍力を開放した!


(え、ちょっと待って。これから僕はこの実況もどきを聞きながらやらないといけないの!?)


心太選手、実況にツッコミを入れる余裕を見せています!


(はぁ。もういいや)


「わぁぉ。これが理事長の言う忍力ってやつか。肌で感じてみると、新人君の言うこともあながちビッグマウスってわけでもなさそうじゃん」


対するオリバー選手、心太の忍力を見ても笑顔を浮かべたままだぁ〜っ!

やだどうしよう。ちょっとノッてきちゃったわ。

こうなるとサングラスが欲しくなるわね。


「じゃぁ、こっちからいくよ、新人君?」

「えぇ、どうぞ―――っ!?」


オリバー選手の言葉とともに、心太選手の後ろから突然ナイフが飛んできたぁー!

心太選手、ギリギリでナイフをかわしましたが、あのナイフはどこから現れたんでしょうね、解説のスーさん。


そうですね。心太選手が避けてすぐにナイフが消えたようですので、あれがオリバー選手の魔法によるものであるのは間違いないでしょうね、実況のスーさん。


(え、まさかの一人二役!?ってツッコんでる場合じゃない!)


実況と解説にツッコむという失態をおかしている間に、心太選手を次々とどこからか現れたナイフが襲っています!


「っていうかこれ、十分『過度な攻撃』じゃないですか!?校長先生!!」

ここで心太選手、ナイフを華麗に避けながらも物言いが入ったぁ〜!


「あれはスミス先生の魔法ですので、仕方がありません」

しかし物言いはあえなく却下されたぁ〜!


「大丈夫だよ新人君!それ、急所は外してるし、そんなに深くは刺さらないようにしてるから!」

「いや少し刺さるだけでも、十分生徒に見せられない状況になるんですけど!?」


ふむ。確かに、現在心太選手を襲うナイフの数はかなりのものになります。あれが少しずつでも体に刺さると、ハリネズミ。

生徒の教育にはよろしくないでしょうな。


確かにそうですね、解説のスーさん。


(あぁもう!どいつもこいつもっ!!)


おぉっと!ナイフを掻い潜って、心太選手、オリバー選手の方へと走り出した!


ふむ。たいの力で脚力を強化してのダッシュですね。

オリバー選手、対応できるでしょうか。


ありがとうございます、解説のスーさん!


「失礼します!オリバー選手!!」

心太選手、叫びながらもオリ選手の顔面を殴りつけたぁ〜!


ガキィン!


しかし、心太選手の拳は、またしても現れたナイフによって防がれた!!


ふむ。ナイフを殴りつけた心太選手もまた、特にダメージはうけていないようですね。


(どうしよう。実況と解説のせいでマジで集中できない)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る