第17話:小嵐心太の教育日誌1
今日から桜花中学校3年M-2組の担任になった。
初日からいろいろと問題がありそうなクラスであることは分かった。
ただ、なぜ僕に声がかけられたのかは少し分かったような気がする。
僕の考えが正しい場合、いったい誰が僕のことを理事長に伝えたのか。
おそらくお祖母様だろう。
それについては現在のところあまり確証がないので触れるのはここまでにしておく。
それよりも問題はあのクラス。
一応現時点での生徒たちの様子を記しておく。
剛力 大火
赤髪の少年。どうやら炎を操る魔法が使える模様。
その力で同じクラスの犬飼君にちょっかいを出していた。
いや、あれはイジメだった。
後ほど犬飼君に話を聞いたところ、1年生の頃からイジメは続いているらしい。
斎藤先生はなにをしていたんだろうか。
一応釘は指しておいたが、今後も彼の動向には注視する必要がありそうだ。
犬飼 操
剛力君にイジメられている少年だ。
彼の魔法についてはまだ分からない。
自己紹介後に、真っ先に僕に挨拶に来てくれた。
おそらく、彼を救い、導くことこそが僕がこの中学校に呼ばれた一番の理由だろう。
吉良 兵助
ウィルソンさんから下着泥棒扱いをされていた少年。
彼は転移の魔法が使えるようだ。
さらには、彼もまた犬飼君に対しては冷たい態度を取っていた。
見た目が真面目そうな割にと思っていたが、どうやらそうではないみたいだった。
下着泥棒の件については、彼の魔法が失敗しているからと彼は語った。
また犬飼君の件についても、本人も理由が分からないようだった。
じっくりと彼を観察すると、彼の中に彼自身とは違う力、おそらくは魔力が流れていた。
しかも、僕ら忍者の
忍者の元となる力、忍力。
それに内包される力に、
体力や力を強化することが出来る体の力。
武具の扱いを強化することが出来る技の力。
そして幻術など相手を惑わすことが出来る心の力。
その心の力に似た魔力が、吉良君の中に感じられた。
おそらくこれが、彼の魔法を不安定にし、更には犬飼君への態度にも影響していたのだろう。
僕はすぐに、彼のなかの力を除去することにした。
幸い、既に僕の心の力であれば、この心の力に似た魔力を中和させることは実証済み。
結果として僕の試みは成功した。
吉良君自身が不思議に思っていた犬飼君への苛立ちの感情は完全に無くなった模様。
転移の魔法は一度は成功した。
その後の失敗は、続けていけば改善されると期待したい。
ひとまず、吉良君の今後はなんとかなるだろう。
ユリア ウィルソン
吉良君を下着泥棒扱いしていた少女だ。
彼女は、犬飼君に対して何かをしている様子は今のところ無い。
あくまでも我関せず、といった様子だ。
どうやら彼女は召喚という魔法が使えるようだ。
その召喚によって、ミクと呼ばれる妖精の様な存在を召喚している。
また彼女は、ウィルソン家という魔法使いの名門の出らしい。
それが事実なのかは、確認の必要はあるかもしれない。
あと気になるのは、彼女の理事長に対する反応だろうか。
僕が理事長の名を出すと、それまで懐疑的であったとこも一転して受け入れる態度を見せていた。
彼女と理事長の関係は、調べてみたほうが良いかもしれない。
ギャル風の見た目の少女。
髪の色が変わっていたのは、彼女の魔法によるものか?
彼女は、犬飼君をイジメているフシがある。
今後の行動に注視したい。
熊のぬいぐるみと話していた少女。
あれが彼女の魔法なのだろうか。
彼女からも心の力に似た魔力を感じたが、吉良君のような感じはしなかった。
この生徒達6人と僕、あとは斎藤先生もいるか。
この8人での学校生活。
やっとなることが出来た教師だ。
僕の目指す『導く教師』。
この素晴らしさをこの中学校で証明し、いつかはあの男の作り上げた教育カリキュラムを作り替えて見せる。
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