第19話:次の授業に入ります!
心太が斎藤ちゃんから強烈なビンタを浴びた翌日。
1年M-2クラスの面々は、桜花中学校の隅にひっそりと作られた小さなグランドにいた。
ちなみにこのグランド、あくまでも使用者は魔法使いクラスのみであり、通常のクラスの生徒達は大きなグランドを使用している。
さらにちなみにだけど、昨日の斎藤ちゃんの勘違いは、既に吉良君からの改めての謝罪によって一応の解決はしている。
斎藤ちゃんから心太への謝罪はなかったけれど。
そんな話は置いておくとして。
(いや置いちゃったよ!僕としては斎藤先生からの謝罪がないことに憤りを感じてるんですけど!?)
昨日の吉良君のせいで、心太のツッコみ癖が戻ってきたみたいね。
(いや他人事っ!!)
もう。うるさいわねぇ。
(いやそれ、いつも頭の中で下手な物語聞かされてる僕のセリフだからね!?)
今日心太が担任を務めるM-2クラスは、このグランドで魔法の練習をするみたい。
(あれ!?僕のことは無視なの!?)
心太、いくらやることがないからって私に絡まないで。
ちゃんと担任やってなさい。
(くっ。言い返せないっ!)
さっき私が言ったように、今は心太の出番はなし。
だって彼、忍者だから。
そういうわけで今の時間は、斎藤ちゃんが取り仕切っているの。
ほら、今も。
「皆さんも3年生になったので、本日は『飛行』の魔法で街まで行ってもらいます」
心太が私に絡んでいる間に、話が進んでいたみたい。
どうやらこれから、魔法を使って街まで行くそうよ?
「飛行の魔法?」
斎藤ちゃんの言葉に心太が小さく呟いている。
昨日の教室での態度が嘘のように犬飼君と仲良く並んでいた吉良君が、その呟きを拾ってずずずいっと寄って来た。
またまたちなみにだけど、犬飼君と仲良さそうにしている吉良君に、赤髪の少年剛力君は不機嫌そうな顔をしているみたいね。
と、そんなことより。
「そうです。これから我々は、飛行の魔法を使うのです。
魔法使いは、親となる魔法使いとの『融和』を結ぶことで魔法使いになるのですが、その際に3つ、魔法を覚えるのです。
その1つが、斎藤教諭殿のおっしゃる『飛行』なのですよ」
(『親』とか『融和』とか、よくわからない単語がバンバン出てくるなぁ)
心太は色々と疑問を抱きつつも、その中からなんとか1つを選択する。
「あ。もしかしてその3つのうちの1つが、『姿隠し』ってやつだったりしますか?」
「えぇ」
吉良君は心太の言葉に頷いて続ける。
「『姿隠し』と『飛行』。この2つは、魔法使いになることで誰もが覚える事のできる魔法なのです」
「ってことは、吉良君が言った『融和』というやつが、魔法使いになる儀式?」
「そ、そうですが・・・小嵐教諭殿、それすらも聞いていないのでしょうか?」
「ははは。まぁ、そういうことです」
「左様ですか。まぁ、ひとまず『融和』についてはまたいずれ。
とにかくこれから『飛行』の魔法を使うので私も準備がありますので」
(魔法使いが飛行するってことは、やっぱり箒、使うのかな?)
せっかくの魔法の説明を早々に切り上げられた心太だったけれど、すぐに頭を切り替えちゃった。
でも確かに、魔法使いがどう飛ぶのかは私も気になるわね。
そんな事を考えていると、生徒達はそれぞれがカバンから何かを取り出し始めた。
(え?カバンに箒入れてるの!?)
そうツッコみながら心太が不思議そうに見つめている生徒達が取り出したのは、箒、ではないみたいね。
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