第20話:置いて行かれた!
生徒たちがそれぞれカバンから出したものは、心太が『魔法使いが空を飛ぶための定番の道具』と言い切る『箒』ではなかった。
吉良君は、教科書。あれは小学一年生の教科書かしら?かなりボロボロになっているみたい。
犬飼君は、三角定規みたいね。しかも教師が使う大きいやつ。
(え、なに?学用品で飛ぶの?)
心太のツッコミは放っておきましょうね。
剛力君は中華鍋、かしら?すっごくボロボロで穴が開いている。あれじゃ料理には使えそうにないわね。
(あ、学用品以外の物もあった)
ちょっと、心太うるさいわ。
(スーにだけは言われたくないんですけど!?)
さ、心太は無視無視!
ユリアちゃんは、ワイヤレス掃除機?
(あ、ここにきて一番箒に近い!)
そして華ちゃん(彩さんのことね)はジョウロ、朧ちゃん(幻中さんね)はいつも持っているぬいぐるみのクーちゃん、と。
みんな本当に持っているものがバラバラだけど、これでどう飛ぶのかしら?
「では皆さん、行きますよ。今回は町を一周することにします。では姿隠しと飛行、準備!!」
斎藤ちゃんがそういうと、生徒たちから魔力が放出された。
それによってか、それぞれの持っているものが宙へと浮き、みんなが思い思いに飛ぶ体制に入っているみたい。
犬飼君は大きな三角定規にスケボーの上に乗っているようね。
それ以外のみんなは、それぞれのものに座っているみたい。
剛力君も中華鍋に座るのね。ちょっと意外だわ。しかも丸い中華鍋の内側の方が収まりが良さそうなのに、わざわざ外側に座るなんて。
なぜだか、朧ちゃんだけはクマのぬいぐるみ、クーちゃんに抱き着いたまま飛ぶみたいね。
落っこちないのかしら?
「では、出発!」
斎藤ちゃんの合図と同時に、姿隠しをするのと同時に、飛び立ったみたい。
みたい、というのは、私にはその姿が見えなくなったから。
一方の心太はというと。
「は?え!?」
突然の出発にひとり焦っていたわ。
わたし?わたしは具現獣だから具現化されない限り、心太の中にいるの
今もずっと心太の中から話しているから、焦る必要はないのよ。
(だぁもぅ!何の説明も無しに飛ばないでほしいよ!!)
そう心の中で毒づきながら、心太は忍力を周りに薄く、広く展開させた。
こうすることで、この忍力の範囲にある人や物の位置を認識できるの。
こうすれば姿隠しをした魔法使いの居場所もわかるってわけなのよ。
(これ、最初から僕を置いていくつもりだったんだろうな、斎藤先生)
「でも残念!『飛翔の術』、と『
その直後、心太の体がふわりと浮いた。
飛翔の術
その名のとおり空を飛ぶことができる忍術よ。魔法使いのように、特に道具は必要ないの。
忍隠の術
『姿隠し』の忍者版だと思ってもらって良いわ。この術を使うと、忍者以外の人には術者の存在が認識されないの。
まぁ調整次第で、声くらいは他者に聞こえるようにはできるのだけどね。
心太はこの2つの術を使って、斎藤ちゃんと生徒達を追い始めた。
術を使いながらも忍力を周りに展開させている心太はすぐに、斎藤ちゃん達に追いついたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます