第11話:教室に猫!?
「せ、先生っ!」
心太が教室から出ると、それを追いかけるように出てきた生徒から声をかけられた。
この子、剛力君に嫌がらせされていた犬飼君、だったわね。
「先程は、助けてくれてありがとうございました!」
犬飼君はそう言って頭を下げていた。
「いえ、担任としては当然のことですから」
心太は笑顔を浮かべて犬飼君にそう返した。
「あのようなことは、普段から?」
「・・・・・」
続けて訪ねた心太に、犬飼君は無言を返す。
この反応だけで、ある程度は察することができるわね。
「そうですか。この件についてはなるべく早く対処するようにします。
犬飼君も、何かあったらすぐに私に相談してくださいね」
「は、はい!ありがとうございます!これから、よろしくお願いします」
犬飼君は、そう言いながら手を差し出した。
「・・・えぇ、よろしくお願いしますね」
心太が力を込めて犬飼君の手を握り返すと、彼は不思議そうにしながらも頷き、そのまま教室へと戻っていった。
「おい犬飼!お前あのセンコーに何言いに行ったんだよ!?」
「もう新しい担任にすり寄ってんの?うけるぅ〜」
「まぁ、弱者としては仕方のない選択肢ではあろうかと思いますが」
犬飼君が教室に入ってすぐに、剛力君、彩さん、そして吉良君の声が聞こえてきた。
(剛力君だけでなく、彩さんと吉良君も?まさか吉良くんまで犬飼君をいじめているのか?)
心太は先程まで犬飼君の手を握っていた手をじっと見つめ、
「なんとなく、僕が呼ばれた理由は分かりました、かね?」
そう呟いて再び教室へと戻った。
「皆さん、早く授業の準備をしてくださいね?斎藤先生が困ってますよ?」
「いえ、別に私は困っていませんが」
犬飼君への非難がましい言葉を遮るように発した心太の発言に、斎藤は冷たく言い返す。
(あぁもう!なんなんだよこの人は!!)
斎藤ちゃんに苛立ちながらも心太が教室を見回すと、犬飼君を囲むようにしていた剛力君、彩さん、吉良君はそれぞれ席へと戻っていった。
剛力君は舌打ちを、彩さんは「新任教師、熱血ぅ〜」という言葉を残して。
吉良君は、どことなく後悔の色が見える表情を浮かべており、ユリアちゃんは我関せずを貫くように一切犬飼君に視線を向けてはいない。
さらに朧中さんは完全に自分の世界に入っているのか、熊のぬいぐるみのクーちゃんとヒソヒソと話している。
(ん?)
そんな生徒達の様子にため息をつこうとしていた心太の目に、突如としてこの教室に異質な存在が飛び込んできた。
「ね、猫?」
そう、猫。あらやだかわいい。
「小嵐教諭殿、猫がどうかしたのでしょうか?」
吉良君が首を傾げて尋ねてくる。
「え、えっと、そちらの猫は、どなたかの飼い猫ですか?」
そう言いながら心太が指した先に数名の生徒が目を向ける。
「はぁ?猫なんていないしぃ〜」
彩さんが間延びした声でケラケラと笑っている。
「えぇ、猫なんていませんが」
吉良君も不思議そうにそう、心太へと返している。
「あれ?斎藤先生、あそこに猫見えません?」
生徒達の反応に慌てた心太が斎藤ちゃんに助けを求めるも、
「初日からもう疲れたのでしょうか?それとも、不思議ちゃんキャラでいくつもりなのですか?流石に今更そのキャラ作りは無理があるかと」
相変わらず辛辣な言葉が返ってくるだけであった。
おかしいわね。みんなには見えないのかしら?
確かにそこに可愛い白猫が・・・あら、あの猫・・・
(スーも気が付いた?あの猫から、僅かだけど忍力感じるよね)
心太の言う通り、教室の隅にある掃除用具入れの上に鎮座している猫からは、僅かにだけれど忍力を感じるわ。
でも、何故ここに?
(まさか、お祖母様!?)
(それこそまさかだわ。彼女、具現獣なんて契約していないでしょう?)
(それはそうだけど・・・だったらなんでこんなところに具現獣が?)
(さぁ、なんでかしら?でもあの猫・・・)
(なに、どうかした?)
(普通の具現獣とも思えないのだけれど)
(え?それってどういう―――)
「小嵐先生。先程私は困っていないと言いましたが、撤回します。
今まさに困っています。授業を始めたいのに、邪魔な人がいるものですから」
私達の声を出さない会話は、斎藤ちゃんの冷ややかな言葉に遮られた。
(回りくどい言い方だなぁ!)
「これは失礼しました。では皆さん、お邪魔しました!」
心の中で悪態をつきつつ心太はそう言って、慌てて教室をあとにした。
最後にちらりと
(ったく、なんなんだよこのクラスのはっ!!!)
心の中で叫びつつ、廊下を歩く、心太なのであった。
(っていうかその語り、これからずっと続くの!?)
えぇ、それはもちろん。
これからよろしくね、みんな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます