『やさしい男』 野森ちえこさん

〇作品 『やさしい男』

https://kakuyomu.jp/works/16817330653753875321

 

〇作者 野森ちえこさん


【ジャンル】

 恋愛


【作品の状態】

 2,500字程度の短編・完結済。


【セルフレイティング】

 なし


【作品を見つけた経緯】

 カクヨムサーフィンしていて見つけました。


【ざっくりと内容説明】

 モテる男と腐れ縁である「わたし」の立ち位置の話。

 作品の終わり方は、「これから話が続くかも……!」みたいになっています。


【言葉の意味】

 ※もしかすると役に立つかもしれませんが、私の深読みかもしれないので、興味半分に読み流してくださいませ(笑)

 作中に「れん」という漢字が出てくるのですが、これは「もつれる」とか「糸がからまってほどけない」という意味があります。日本語としては「もつれる」という意味があるようなのですが、作中では漢字の元々の意味である「糸がからまってほどけない」として捉えて使っていらっしゃるのかなと思いました。

 ということはつまり、きっとこの先も解けないままなんだろうな、と私は解釈しました。「なんのこっちゃい」と思った方は、『やさしい男』を読んでいただくと分かると思います(笑)


【感想】

 テーマは「恋愛」。

 日常のひとコマから、主人公の「わたし」の状況を上手く説明している面白いお話です。現実だったら、「その男はやめとけ」という話ですが小説ですからね(笑) 個人的には、これまたいい塩梅あんばいのところでお話が終わってくれたので、「わたし」の葛藤を楽しく読みました。


 主人公はセルフサービスカフェでアルバイトをしています。立地がいいわけではないにもかかわらず、このカフェには行列ができるのです。理由は、「天池あまいけ和登かずと」という店員がいるから。彼は天然の女たらしで、女性たちは彼を目当てにカフェに来るのです。

 今日も天池あまいけくんに会いに来た女の子を見て、何を見せられているんだとうんざりしながらも、彼の隣で同じレジの仕事をする主人公。

 時には男の子も落とすという魔性の天池あまいけくんと「わたし」は中学生から大学まで同じ、しかもバイト先も一緒という腐れ縁。


 休憩時間となり、主人公はもう一人のバイトである男子高校生と話をしながら、人気のある天池あまいけくんのどこが欠点なのかを考えます。

 傍で彼を見ていて思うのは、誰に対しても優しいということ。しかし言い返せば、誰も彼の一番になれないということです。たとえ、恋人になったとしても――。


 このあと「わたし」が天池あまいけくんに対してどう思っているのかが語られるのですが、さてどう思っているのでしょう、というのがこのお話です。


 天池あまいけくんの素顔というのは、主人公を通してだけ語られるものなので、読者は彼が何を考えているのかはよく分かりません。しかし、「わたし」との接し方を見ると、とても優しいんですよねぇ。帰り道が危ないからと心配してくれますし、何となく「わたし」に心を許しているようにも思えます。


 傍から見ていると脈ありな感じはしますが、読者はその前の「わたし」が分析した天池あまいけくんのことを思い出して立ち止まるのです。「待て待て、彼は確かに優しいけれど、誰に対しても優しかったのではなかったか⁉」と思うと、読者は彼の行動を素直に受け取れません。そしてそれは「わたし」も同じなのですが……。

 何ていうんでしょうね。こう……天池あまいけくんの行動に、いちいち心がぐらつく話です(笑)


 とりあえず悪いようにはなりませんので、「好きになってはいけない男の話」とはどういう内容なのか、気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。


 今日は『やさしい男』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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