◇閑話◇ 『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』の植物の歴史

【前置き】

 前話で、『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』についてご紹介いたしました。

 皆さん、お読みになられたでしょうか?


 ここでは『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』の流れに沿って、研究で分かっている植物の歴史を紐解いてみようと思います。


 作者さんがタグに「歴史科学より雰囲気重視」と書いてあったので、あまり本格的に歴史科学に触れないほうがいいのかなとは思いますが(笑)、背景を知っているとこの作品から面白いことが得られると思うので、ちょっと書いてみようと思いました。


 本題に入る前に一つだけ。


 私は作者さんではないので、叙事詩より汲み取ったものから背景を調べているだけですので、必ずしも作者さんの意図と合っているとは限りません。


『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』にある植物の言葉を追っていくと、ちゃんとその言葉の後ろにどんな歴史があったのか、大体わかるようになっているのでそこまで的外れではないと思いますが、念のためお断りしておきます。


 ということで、『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』に秘められた植物の歴史について、勝手にご案内しようと思います。よかったら付いてきてください(笑)



【雑学】

 読んでいくと分かりますが、この作品は植物目線のお話になっています。


 人類が生まれる以前から存在していた彼らが、長い年月をかけて今の形になっていったのがきっと分かることでしょう。


 地球が生まれたのは、約46憶年前というのは皆さんご存じかと思います。


 そして生物が誕生したのは約40億年前。(書籍によっては「約38億年前」とも)

 ……といわれているのですが、実ははっきりとしたことは分かっていません。


 もしかするとそれ以前からいたのではないかという話もあるのですが、証拠がないために、今分かっているのは約40億年前には生物がいた、ということのようです。


 生物が誕生したばかりの時代というのは、地表が海で覆われており、今よりも高温でした。お陰で、生き物が生きるために必要なものができていったため、生命が誕生したと考えられています。


 地球は海に覆われた世界と言いましたが、このとき太陽の光が差し込む浅瀬にいたものたちは、その光のエネルギーを利用して自分の生きる力へと変えていました。光合成のことです。


 調べた話によると、最初の生命体が始めた光合成は、酸素を作らなかったのだとか。それが数億年から数十年と言う長い年月を経て進化し、現在のように酸素を出す植物になったと言われています。


 皆さんきっと、理科で光合成のことを勉強しましたよね。授業では、二酸化炭素と水に光エネルギーが作用することで、デンプンと酸素ができると習ったはずですから、意外な話かと思います。


 そしてここまでのお話が、『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』の丁度冒頭の部分で語られます。


 次は、植物が陸に上がる話。

 植物が陸に向かったのは、今から約4億7500万年前のことです。

 オルドビス紀前期(古生代の第二期。第一期はカンブリア紀)といわれる時代のことなのですが、最初に上陸したのはコケの仲間だったと考えられています。


 地層で確認されているのは、約4億2500万年前のもののようですが、研究者の間ではそれ以前に上陸したのでかと考えられていて、約4億7500万年前の話があるようです。


 それにしても、何故彼らが陸地へ上がったのか不思議ですよね。

 どうやら光合成をより効率的に行うために、より浅いところへと移動していったことが、一つの理由のようです。


『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』の中でも、海から陸地に移動していく植物の様が描かれていて、環境の変化への適応を考えなければいけないことが記されています。


 さて。

 海の中にいたものたちは環境が変わったため、あることを考えねばなりません。それは、「どうやって陸の乾燥に耐えるのか」ということ。

 また、これまで頼っていた海水の浮力は陸にはないので、重力にも耐える力も必要です。


 そのときのことを『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』では語られていて、植物の心を聞けるなら、きっとそんな風に思っているだろうなと思うような物語詩になっています。


 植物たちが陸上での生活を確立していくと、どんどん内陸へと進んでいき、そこへ森を作るようになります。大きな森が生まれたことにより、今度は動物たちが、陸上で生活できるようになっていきます。

 そしてこの時代(古生代)とこれから訪れる恐竜の時代(中生代)の間では、史上最大の大量絶滅の歴史を迎えるのです。

 おそらく「ほどなく私たちは死滅した。一部のものだけがなんとか生き残った」(『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』より引用)がこの部分であると推察します。


 そして、皆さんご存じ、恐竜が君臨くんりんする時代へと入っていくのです。


 しかしそのあと、恐竜たちは巨大隕石いんせき衝突しょうとつによって、元々種類が減っていった状態に拍車がかかり、どんどんと数を減らしていきました。理由は隕石の衝突によって、地球全体に煙やらすすなどが覆って、太陽の光が差し込まなくなったからです。


 結果、恐竜の生き残りと言われる鳥だけが残り、人類の時代へと入っていきます。

 人類の歴史はどんどん進み、大地を掘り、沢山の石炭(をはじめとする化石燃料)を使う時代がやってくるのです。産業革命ですね。

 人類が石炭を手にしたのは数千年前のようですが、大規模に使われるようになったのは約200年前です。


 化石燃料の一つである石炭は、約3億年くらい前の樹々から作られたものです。


 植物は最初、海の中にいたと言いましたね。

 その後陸には上がりましたが、まだしばらくは周囲に沼があったのです。よって沼の水に溜まった落ち葉や倒れた木が重なっていったのですが、微生物の分解が進まなかったことで、くさらなかったのです。


 それが、長い年月をかけて泥炭層でいたんそうとなります。さらに小石が溜まって、徐々に圧力がかかり、石炭ができたというわけです。


 人間は、石炭などを使って便利な生活を手に入れましたが、それによる代償だいしょうを身をもって知ることになります。

 そして、現代—―と、壮大な叙事詩によって語られていく、というのがこのお話なんです。


 ここまで書いてきたものは人類が解明してきた植物の歴史の一部なわけですけど、『【KAC20245】物言わぬ命の叙事詩』ではそれが情緒じょうちょある詩のようなお話になって語られています。


 壮大なお話ですよね。それが最終的に身近な花粉に結び付くのですから、読んだ方はきっと驚くことでしょう。


 まだお読みになっていない方は、植物の歴史に思いを馳せながら読んでみてはいかがでしょうか。


 以上です!

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