第52話 『高齢夫婦、キツネとタヌキと一緒にパンを焼く in 限界集落』 ゴオルドさん

〇作品 『高齢夫婦、キツネとタヌキと一緒にパンを焼く in 限界集落』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927861036792461

 

〇作者 ゴオルドさん


【ジャンル】

 現代ファンタジー


【作品の状態】

 5,500字程度の短編・完結済。


【セルフレイティング】

 なし


【作品を見つけた経緯】

 ゴオルドさんの作品集を時折訪問しておりまして、この作品はそのときに見つけました。


【ざっくりと内容説明】

 もふもふと老夫婦が、一緒にパンを焼くお話です。会話が面白いので、ぜひご注目ください。


【感想】

 都会のマンションで暮らしていたおじいさんとおばあさんが、令和の限界集落に移住しどんなふうに生活をしているのか――というのを、童話風にしたお話です。


 よってこの物語は、おじいさんとおばあさん、そしてキツネとタヌキが協力してパンを作るお話なので、これだけ聞くと、んわりとしたいい話に聞こえるかと思います。


 もちろんそうなんですけど、老夫婦は、限界集落(もしくは田舎)で暮らすことの大変さを時折口にするのです。


 これは私の勝手な読みですが、作者さんはもしかすると限界集落で暮らす大変さを作品で伝えたかったのかなと思いました。


 自然があることの利点はありますが、限界集落や田舎には、都会にはない苦労があります。


 畑をやるにしても色んな知識が必要ですし、一所懸命に育てても生き物に食べられることもあります。

 また、田舎ならではの風習や根付いた人間関係みたいなものがあり、人付き合いが面倒だと感じることもあるでしょう。


 ここに登場するおじいさんとおばあさんは、現実を見て生きているので、「ただ優しければいい」というわけにはいかないのだろうな、とそんなことを思いました。


 なんだか暗い感じになってしまいましたが、内容はそんな暗くはありません。寧ろそういう諸々のことを笑い飛ばしてくれといわんばかりの、面白い会話になっていますので、ぜひ楽しんでください。


 それから、描写が面白いです。

 キツネとタヌキがパン作りを手伝うのですが、大体の物語だったらそのまんま捏ね始めると思います。

 でもこの作品では、「2匹を風呂に入れて、毛に紛れ込んだ草の実を丁寧に取り除いてやり、仕上げにノミ取りの薬を1滴、首にちょんと垂らしてやりました。手のひらにアルコールジェルをつけてやる」のです。(『高齢夫婦、キツネとタヌキと一緒にパンを焼く in 限界集落』より引用)


 人によっては、「キツネとタヌキがパン作りする時点でファンタジーなんだから、厳密なことをしなくていい」とか思うかもしれませんが、「人間も食べるもの」を作るのですから、こういう描写があってもいいですよね。個人的には面白いなと思いました。

(でも、キツネとタヌキ、ほとんど生地をねないんですけどね 笑)


 私は会話と色んな知識ばかりに目がいってしまいましたが、キツネとタヌキのいたずらっぽいところも可愛らしさを感じますし、老夫婦のちょっと甘酸っぱい話も読めて盛りだくさんです。

 気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。 


 今日は『高齢夫婦、キツネとタヌキと一緒にパンを焼く in 限界集落』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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