第19話 『白き旗手とスイカの暗号』 鐘古こよみさん
〇作品 『白き旗手とスイカの暗号』
https://kakuyomu.jp/works/16817330659911617413
〇作者 鐘古こよみさん
【ジャンル】
現代ドラマ
【作品の状態】
7,300字程度の短編・完結済。
【セルフレイティング】
なし。
【作品を見つけた経緯】
鐘古こよみさんの作風が私に合っていることもあり、また何か書いていらっしゃらないかなーと見に行ったらこの作品を見つけました。
【ざっくりと内容説明】
ニューヨークのオフィスで働いている主人公は、服役中だった兄が亡くなったため、唯一の肉親として遺骨を取りに日本へ行きます。
遺骨の入った骨壺を受け取り、遺品の入った紙袋を手にタクシーに乗り込んだ彼は、一緒に入っていた一枚の便箋を開くのです。
そこには、子どものころに兄との手紙でやり取りをした「シード暗号」が書かれており、主人公はそれを解読することができたのですが、8文字あるうちの5字まで読んで止めてしまうのです。
兄の残した唯一の言葉を読みたい気持ちがある一方で、彼は兄に恨まれているかもしれないと心のどこかで思っていました。それは兄が服役したのは、自分の犯した過ちのせいだったからです。
――そうではない。そんなはずはない……。
否定しようとする自分がいるのは、在りし日を思い起こすと仲の良い兄弟でだったからでした。
そこから主人公は兄と過ごした過去を回顧するのですが、何故兄は服役することになったのか、そして便箋に書かれた「シード暗号」は、どんな意味を持っていたのかが明らかになっていきます。
兄と弟の深いつながりのお話です。
【キーワード「シード暗号」とは?】
「シード暗号」とは、主人公の兄が作った暗号です。
弟と5歳離れている兄は、中高一貫校に通うことになると同時に寮に入ります。寂しさで泣いた弟を励まそうとしたのか、秘密の暗号を考えてくれるのです。
>シード暗号だよ。シードって、英語で種のこと。シーザー暗号という昔ながらの古い暗号があってね。そこからヒントをもらったんだ。
>そう言いながら、鉛筆で紙にすらすらと描いたのが、スイカの断面だった。
(『白き旗手とスイカの暗号』より)
以来兄は弟に対してこの暗号を使った手紙を送るようになり、物語で重要なキーになるので、ここにも注目してもらえたらなと思います。
【感想】(ネタバレ注意。ハッピーエンドかバットエンドかは分かるかと思います。お気を付けください)
7,300字ほどある作品ですが、あっという間に読めてしまいます。
読みやすいように配慮された文章であることも一つの理由ですが、それ以上に主人公と兄の関係性がどういうものだったのかがどうしても気になってしまい、途中で止められなかったのです。
そのため、気づいたときには読み終わっていて、お腹の底から熱いものがこみ上げ、何とも言えない複雑な気持ちになりました。
さて。
物語に登場する兄と弟の主人公は仲が良かったのですが、弟が起こしたある出来事のために、兄は服役することになります。
この服役は兄が弟を
昔はとても仲のいい兄弟で、弟は兄に憧れ、そしてずっと慕ってきました。ゆえに、兄に責められたり嫌われたりする覚悟ができないまま、今日まで来てしまったようなのです。
そして遺品にあった便箋に書かれていた「シード暗号」の最後のメッセージには、弟をどう思っていたのかが書いてある唯一のものだったのですが、もしかしたら兄に責められるかもしれないと思ったために、弟はすぐには最後まで読まず、代わりに過去の回想が入ります。
すると、兄弟の関係性や、弟がどういう事件を起こし、どういう経緯で兄が服役したのかが分かってきます。
私は正直、弟(=主人公)がだらしなくて、お兄さんが庇う必要はなかったんじゃないかなと思うんですけど、でも、こういう兄弟愛もあるんだろうなと思いました。
もし気になった方は、『白き旗手とスイカの暗号』を読んでみてください。複雑な気持ちになる人もいるかとは思いますが、きっとお兄さんの残した暗号には誰もが胸を打たれるのではないかな……と思います。
今日は『白き旗手とスイカの暗号』をご紹介しました。
それでは次回、またお会いしましょう。
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