12月 December

第26話 『静麗の舞』 羽間慧さん

〇作品 『静麗の舞』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330655296400640

 

〇作者 羽間慧さん


【ジャンル】

 異世界ファンタジー


【作品の状態】

 2,100字程度の短編・完結済。


【セルフレイティング】

 なし。


【コンテスト参加】

「カクヨムWeb小説短編賞2023」に参加中。


【作品を見つけた経緯】

 羽間慧さんの作品は以前読んだことがあったのですが、(この作品を読む)少し前に私の作品を読んでくださったこともあって、久しぶりに羽間慧さんの作品一覧を見たところ、こちらの作品を見つけました。


 ちなみに下記は、『問わず語りに作品紹介(カクヨム作品を読んだ感想文)』で紹介した羽間さんの作品です。良かったら合わせてどうぞ。


『雪に咲む』

 https://kakuyomu.jp/works/16816700428947699774


【ざっくりと内容説明】

 名のある家に生まれながら側室の子だったがゆえに、継母から冷たくされ、使用人同様に扱われていた「私」。


 ですが「私」が十六のとき、ある事情により妹の明玉——継母の実の娘であり、その家の次期当主——の代わりに舞を踊るように継母から言いつけられます。


「私」は舞を踊るのが好きだったことと、舞の演目が、母が父の心を射止めた「春霞姫しゅんかき」というものだっため、使命感を持ってその舞に挑みます。しかし、その裏にはあるたくらみが潜んでいて……?


 果たして「春霞姫」を踊った先にある、「私」の運命やいかに――!



【感想】

『静麗の舞』という作品は、冒頭の文字数にも記したように2,000字程度しかありません。そのため物語の場面は大きく分けて3つくらいしかないのですが、描写の美しさが作品の濃度を高めていて、十分に楽しむことができます。


 この作品の主人公は、名のある家に生まれた娘(=「私」)でありながら、側室であるがゆえに、継母に使用人のごとくこき使われていました。


 それは娘の母親がすでに亡くなっているのも一つの理由ですが、読んでいると娘の継母のほうが正室であることが分かります。つまり、正室よりも先に側室が子を身ごもったのです。継母はそれに対して長年妬ましく思っていたために、娘に冷たく当たっていたのでした。


 娘はもちろん、それが不当な扱いだと感じてはいるようでしたが、それ以上に好きなことがありました。

 それが「舞」。

 彼女はひとたび舞を踊れば、演じるものによって誰にでもなることができましたし、演目の舞台によってはどこへでも行けるのでした。


『静麗の舞』というくらいですから、舞がテーマなのは分かると思うのですが、娘の舞がとにかく美しく、力強くもあって、それがいいなと思いました。また、舞に対する真剣さにもぐっと引き込まれます。


 人は、娘のような不当な扱いを受けたとき、その強い力にあらがうことのできない悔しさや、もどかしさが募ることが当然でしょう。


 しかし『静麗の舞』を読むと、「好きなこと」が自分の気持ちを解放してくれることを感じます。

 娘は七歳から十六歳まで、使用人のように働いてきました。それでも不貞腐ふてくされずにいたのは、「舞」が彼女の心を自由にさせていてくれたからであろうと思います。


 さて、娘はこの先、自分の妹である明玉——継母の実子——の代わりに、舞を踊ることになります。しかしこれは継母の仕組んだことだったのですが、果たして娘はどうなってしまうのでしょうか。


 ちなみに「静麗せいれい」というのが娘の名前のようです。

 読んで思ったのは、きっとこの名を呼ばれた瞬間に娘——静麗は初めて「とある幸せ」があることを知り、また得たのだと思いました。


 気になった方は、この幻想的なお話を読んでみてはいかがでしょうか。静麗の踊りに、酔いしれてみてください。


 今日は『静麗の舞』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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