第7話 『Dear未来人』 鐘古こよみさん
〇作品 『Dear未来人』
https://kakuyomu.jp/works/16817330652387061777
〇作者 鐘古こよみさん
【ジャンル】
歴史・時代・伝奇
【作品の状態】
1,900字の短編・完結済。
【セルフレイティング】
なし。
【作品を見つけた経緯】
考古学のお話のようだったので、読んでみることにしました。
【ざっくりと内容説明】
出土した土偶がどういう意図で作られたのか、研究者たちが想像するのですが、それがくすっと笑ってしまうような面白いものになっています。
【土偶と埴輪】
(*今回私が調べた内容は、一つの情報源と辞書から記載したものなので、もしかすると違う見解もあるかもしれません。その点にお気をつけてお読みください)
今回この作品の感想文を書くにあたり、土偶の写真を検索していたところ、思いがけず「土偶と埴輪の違い」を知ることができました。
私は土偶と埴輪という名前はもちろん知っていますが、お恥ずかしながら違いが分からなくて、その記事を読んで「へぇ」と思わず感心してしまいました。
皆さん、きっと学校の授業で習ったと思うのですが、私は忘れてしまったので今回ここにまとめようと思います。良ければお付き合いください。
土偶と埴輪は作られた年代が違います。土偶は縄文時代、埴輪は古墳時代に作られています。
時代順に並べると、
縄文時代(約一万二千年前~紀元前五、四世紀ころまで)
↓
弥生時代(紀元前五、四~紀元後三世紀ころまで)
↓
古墳時代(三世紀後半~七世紀ころ)
と続きます。こうやって見ると、土偶がどれほど古くからあるのかが分かりますね。
また土偶は集落跡で見つかるのに対し、埴輪は有力者の墓から発掘されます。
何故そのような違いがあるのかというと、次の【感想】の項目でも述べますが、土偶は多産や豊穣などを願うため呪術的・宗教的な意味として使われる一方、埴輪は権力者の功績をたたえたものだったからです。
土偶が壊れて発掘されることが多いのに対して、埴輪が形が残っているものが多いということからも、土偶は呪術的な儀式のなかで意図的に壊されたのだと言われています。
また、縄文時代は平等社会ということもあり、土偶職人はいなかったと考えられ、その一方で埴輪は『工人』という専門家によって作られたのだとか。この辺りも作られた時代が違うだけで、同じ土人形でも違った意味があるのが面白いですよね。
ちなみに『Dear未来人』では、上記の説とは違い「壊さないように作る」ということが書いていらっしゃいましたし、土偶職人も登場します。
仮に上記に記載した内容が一般的な考えであると考えると、『Dear未来人』の内容はそこから少し違っていると思われるかもしれません。
しかし作者さんなりの「縄文時代を想像したらきっとこうかもしれない!」というのを、ユーモアを交えて作っていらしてそれが面白かったです。遠い時代の話だからこそ自由に想像するのが面白いですし、作者さんのように自分なりの考えを持つのも素敵なことだと思います(想像が膨らむ楽しさを味わえる感じがします)。その辺りも含めてこの作品を楽しんでみて欲しいです。
【感想】
これは考古学にちょっとだけでも興味がある人なら、意外と多くの方に共感してもらえる内容じゃないかなと思います。(内容を知ってしまうと笑いが半減するかもしれないので、できるだけネタバレしないようにしますね)
考古学は遺跡などから古い時代の生活や文化などを研究する学問ですが、それに欠かせないのは発掘です。遺跡や遺物を掘り出し、それを元に古い時代について考察するわけですが、私たちは実際にその時代を見たわけではありません。
そのため、偉い学者さんたちが「このように考えられる」というのですから、きっとそうなのでしょうけれど、でも「自分にはこんな風に見えるなぁ」と思うこともあるはずです。
特に「土偶」というのはそういう傾向があるように思います。
「土偶」とは、縄文時代に作られたとされる土人形のこと。呪術的・宗教的意味があるとされ、女性の像が特に多いと言われています。
もちろん、研究者や教科書に書かれていたら「そうなんだろう」と納得するとは思いますが、その一方で、あの形のなかに見知ったものが見えて「この土偶、あれに似ている……!」という感覚を持つ方もいるのではないかなと思います。
『Dear未来人』にはその要素があって、考古学の真面目な面と、「じゃあ、実際どうだったんだろう?」という部分がちぐはぐになっていて、それが面白いなと思いました。
学校の勉強は確実に答えがあってそれを覚えなくてはいけないですけど、でも、学問はもっと想像力豊かに取り組んだ方が楽しいと私は思います。(学生は難しいかもしれませんが……苦笑)
「土偶」も長い間研究されて、ある一定の考え方があるとしても、「こんな風に見える」「こう考える」と自分が素直に感じたものも大切にしていったらいいのではないかなと、それをこの作品で代弁してもらえたような気がしてなんだか嬉しい気持ちになりました。
考古学と土偶の笑えるお話です。気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。
今日は『Dear未来人』をご紹介しました。
それでは次回、またお会いしましょう。
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