第3話 侵略

 ~管制塔~


 ≪ビービー≫


「高出力レーダーから反応あり!方位は北西、3つの反応があります!」

 女性のオペレーターが言う。


「なんだと!?それはここに向かってきているのか?」

 教官(父)が声を荒げて言う。


「敵は…第五番戦闘場に向かっています!」


「まずいな…今あそこには模擬戦闘を行っているというのに…」

 管制塔には不穏な空気が流れた。


「模擬戦闘を中止するよう求めますか?」

 女性のオペレーターは不安そうな瞳で教官の指示を扇いだ。


「よし、すぐに中止連絡を送れ!」


 ≪ビービー≫


「高出力レーダーに再び反応あり!」

 女性のオペレーターが椅子の向きを教官のほうに向けながら言った。


「場所は!?」

 教官がすぐに聞く。


「場所は…おかしいそんなはずない…」

 女性オペレーターの不安そうな声に管制塔のオペレーターたちが耳を傾ける。


「どうしたんだ!?」


「場所は…ここです…」


 その時だった

「バコンッ」と大きな爆発音が聞こえた。


「うわぁー!」

 オペレーターたちの悲鳴が管制塔内に響く。


「何が起きた?!」

 教官が焦りを少し見せながら、オペレーターたちに聞く。


「訓練所から爆発が起きました!」


「火災も発生しています!」


「電子系統破損!」

 オペレーターがそろって口を開く。


 これはまずい…どこから攻撃されているかもわからない。


「全員、訓練所から離脱せよ!」

 教官が声を上げる。


「なぜですか、教官!」

 教官の意に反対するオペレーターが共感を見て言う。


「いいか!これは命令だ!」

 普段は静かな教官が声を裏返しそうになりながらオペレーターたちに言う。


「……了解しました」

 オペレーターたちは駆け足で管制塔から脱した。


「あれを使うしかないか…」

 そう言って教官はB1へと向かった。


 炎が上がっている訓練所を走りぬけて非常階段で地下に降りる。

 地下室の壁や天井は鉄筋コンクリートで出来ているため簡単には崩れないだろう。


 地下室につき、カチッとライトをつけた。

 ライトはチカチカ点滅しながら光っている。


 教官はライトのスイッチのそばにあるレバーを引いた。

 すると、「ウィーン」と音を立てながら、エレベーターが出てきた。

 そこには、鋼の巨人が立っていた。


 教官はコックピットに乗り込み、「パイロットスタンバイOK」


「MAKINA CP 起動、データのアップロードを行います…アップロード完了

 記憶メモリ復元…完了、お久しぶりですクーパーパイロット

 いや今は教官のようですね」


 起動したMAKINAは訓練機よりも流暢に言葉を発している。


「起動したてで悪いんだが今ここが侵略されているんだ」


「あなたがしたいことは理解しています…行きましょう」


 クーパーはコックピットに乗り込みハッチを閉じた。


「戦闘データのバックアップをロードします…ロード完了

 機体設定を更新…完了、ジャイロセンサーON、自動ロック追尾システムON

 ガバナンスシステムチェック完了 BM-18、システム再起動完了しました」


「よし、行くぞ!」

クーパーが掛け声をかけた。




~第五番戦闘場~


≪ビービー≫


「エネルギー残量5%」


「まずい…」


単眼タイプのSMBグループのMAKINAはこちらに銃口を向け、今にも撃ちそうだ。


「くそ!」

なんでだよ!なんでこのタイミングで…あいつらが来るんだ!

自分の腕からも血が流れていて思うように動かない。


「ギュイン」と紫色の閃光が瞬く。


その瞬間、「パーカー!」

親父が訓練機ではないMAKINAに乗って、俺を助けた。


紫色の閃光は左右に分裂した。


親父のMAKINAのレフトアームからは青色のエネルギーシールドが光っている。


MAKINAから親父が下りてきて

「パーカー大丈夫か⁉やられたな…」

と言いながら親父は俺のMAKINAのハッチを開けてきた。


「親父…敵はまだいるぞ…」


「大丈夫だ、俺の相棒が俺らを守ってくれている」

相棒とは後ろで戦っている淡い緑にところどころに橙色が入っている

戦闘用のMAKINAだろう。


親父は俺を訓練機のコックピットからおろし廃墟ビルの陰に隠した。


「今治療する、これを注射したらしばらく眠くなるが起きたら治っているだろう」

 親父は俺の左腕に医療用注射液を注射した。


「俺はあのMAKINAを止めてくる、お前はここにいろ」


「だめだ、親父…行っちゃ…だめだ…」

 かすれ声で呼びかける。


「あいつだけじゃ長くはもたない…俺はいかなくちゃいけない…」

模擬戦闘の前は俺が送り出される側だったのに

今じゃ俺がただ見ているだけになってしまっている。


「俺は必ず戻る…必ずな…」

親父は俺にまなざしを向けながら、走って行ってしまった。


「おや…じ、いく…な…」

 俺は目を閉じてしまった…



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