第44話・譲れない戦い

-遡って・文架駅西口-


 B班リーダーの妖幻ファイター(甘利)が、離れた場所から、妖怪同士の人智を越えた戦いを見守る。

 上層部は「妖怪と融合する技術」を開発した?妖幻ファイター(甘利)には、眼前の現実が全く理解できない。


「大武COOの運転手が変身した妖怪は、周りの被害など考えずに戦っている。

 私達が市民を避難させなければ、確実の被害者が出ていたわ。」


 怪物に遭遇した市民は、退治屋先発隊B班の誘導で避難して、ひとけが無くなったロータリー広場で、魍紅葉軍の熊童子&星熊童子と、鬼神軍の八岐大蛇が交戦をしていた。

 星熊童子が、鬼の顔を模した鏃が付いた矢を3本召喚して、纏めて弓に番えて射る!更に、同じ行程を2回続け、計9本の矢が八岐大蛇の周りを自在に飛び回る!


「我が矢に死角無し。」


 9本の矢(親矢)が八岐大蛇を囲み、鬼鏃が口を開いて小さい矢(子矢)が発射され、一斉に八岐大蛇に飛んでいく!


「オロロ~~ン!これがどうした!?確かに死角は無えが、恐れぇ必要も無え!」


 八岐大蛇は、八つの口を開いて、四方八方に毒液を撒き散らす!毒液は、子矢を消滅させ、縦横無尽に飛び回る親矢も狙い撃ちにして次々と解かした!


「これで終わりのワケがあるまい。」


 星熊童子は再び矢を召喚して次々と射る!次々と放たれた鬼鏃の親矢が八岐大蛇の周りを飛び回るが、片っ端から毒液で溶かされていく!


「飽きたぞ!他の技を見しぇろ!」

「オマエを楽しませる為に矢を射ているわけではない!」

「こげな児戯では、いつになっても、おらは倒しぇんぞ!」

「さぁ・・・それはどうかな?」


 矢を射続ける星熊童子。飛び回る矢を撃ち落とし続ける八岐大蛇。このままでは、奥義で妖力を消耗させている星熊童子が先に疲弊するのは確実だ・・・が。


「グロロロッ!上にばかり集中しすぎて、足元がお留守だぜ!」


 八岐大蛇の足元の舗装が砕け、地面から太い2本の腕が伸びてきて、八岐大蛇の胴体を掴んだ!


「オロロッ!?」


 地中から巨漢・熊童子が出現!八岐大蛇の胴を締め付けたまま、バックドロップを叩き付けた!星熊童子の矢は、八岐大蛇の八つ頭を全て上空に向けさせる為の揺動。本命の攻撃は、地中の潜って土を掻き分けながら、八岐大蛇の真下まで接近をした熊童子だ!


「言ったはずだ。我が矢に死角は無いとな!」


 星熊童子が残った鬼鏃の親矢に念を送ると、一斉に八岐大蛇に向かって飛んで着弾!更に、熊童子が背中のホルダーから大金棒を抜いて振り上げた!


「極限打撃っっ!!」


 鬼力が込められた大金棒が、パワーチャージの完了と同時に赤色に変化!熊童子が、渾身の力で振り下ろして、八岐大蛇に叩き付けた!八岐大蛇は悲鳴を上げる余裕も無く、無数の肉塊と化して周辺に飛び散る!だが、まだ全てが終わったわけではない!


〈おのれ・・・口惜しや・・・

 だが・・・死しても・・・目的は果たす。〉


 肉塊が闇霧化をしてロータリー中央の1ヶ所に集まった。そこは、封印の結界が施された位置。八岐大蛇は命と引き替えに呪いを発して、封印の結界を破壊。役割を終え、蒸発をして消えた。これで、4結界中の2つが喪失をする。


「グロロロッ!どうだ星熊!?儂の作戦、完璧だったろう!」

「どこが完璧な作戦だ?

 対象が動き回れば、いくら地中を掘り進んでも、全く意味が無い。

 私が奴の動きを止める為にどれほどの苦労をしたのか、解っているのか?」

「グロロロッ!見事な連携と言うやつだな!」

「私の負担が大きすぎる!」

「気にするなっ!」


 鬼の四天王は、人間界を守る為に戦っているわけではない。熊童子と星熊童子は、結界の崩壊など気にせず、手柄自慢をしながら去って行く。




-同時刻・山頭野川東側河川敷-


 身長10mの大太郎法師が、仰向けに倒れた金熊童子を踏み付ける!金熊童子は、脱出を試みるが、押さえ付けられる力が強すぎて抗えず、地面にメリ込んでいく。


「ぐぇぇっ!ヤバいって!潰れるっ!!」

「金!しばらく、そのまま踏まれてろ!」


 大太郎法師は、金熊童子を踏み潰す為に動きを止めている。チャンスと判断した虎熊童子は、大太郎法師の手が届かない距離で日本刀を構え、深く呼吸をする。


「迅雷!」


 虎熊童子の全身が放電!電光石火のスピードを得た虎熊童子が、大太郎法師に突進をする!


「秘剣・・・・・」

「だららぁ~~~~!!!」


 向かってくる虎熊童子に対して、口から高エネルギー波=ダイダラ砲を吐き出す大太郎法師!


「なにっ!うわぁぁっっ!!」


 虎熊童子は、想定外の攻撃を避けきれずに弾き飛ばされた!


「俺、強い!オマエ等、弱い!」


 大太郎法師が、踏み付けていた足に力を込めると、悲鳴と潰れる音がして、金熊童子が闇を喀血する。


「クソォ・・・イバさん、姫様のことは頼んだぞ。

 やっぱ、退治屋の大武って奴は・・・怪しい。

 ただの人間が、大太郎法師みたいな上級妖怪を支配できるわけが無い。」


 力尽きて意識を失った金熊童子から、闇が湯気のように上がり始める。ダイダラ砲の直撃を受けた虎熊童子からも、闇が湯気のように上がっている。


「俺、強い!俺、勝ち!」


 呆然と戦況を眺めていた妖幻ファイター(七篠)とヘイシ達に向けてガッツポーズを決める大太郎法師。だが、「まだやることが有った」と思い出して、金熊童子と虎熊童子を拾い上げて封印結界へと歩む。


「忘れると、アマノザコに怒られる。」


 大太郎法師は、金熊童子と虎熊童子を封印結界に捧げるようにして握り潰した。贄にされた金熊童子と虎熊童子が闇霧となって封印結界を包み破壊をする。




-優麗高-


 駐車場は退治屋の専用車で占領され、グラウンドには幾つものテントが張られ、優麗高は退治屋の前線基地となっている。


「大武COOは何処に行ったんだ!?」

「破壊された結界がある河川敷に、様子を見に行きました。」

「上からの指示は!?」

「新しい指示はありません!

 反逆者の捕縛と、酒呑童子の一派の討伐・・・のみです。」

「反逆者の情報は?」

「ありません!」

「酒呑一派の情報は?」

「ありません!」

「茂部班が全滅したという情報は事実なのか?」

「未確認です!」


 文架駅と河川敷の結界まで破壊され、責任者も次席もいない前線基地で、各地から派遣をされた退治屋達は、軽いパニックになっていた。その様子を粉木&砂影&有紀が眺める。


「やれやれ、酷い有様やの。」

「隊員だけが集められてぇ、指揮官が不在なんて、前代未聞ちゃ。」

「私が引退して離れている間に、随分と腐敗してしまったみたいね。」

「腐っとるんは、以前から変わらん。」

「従事者がそー言うてまお終いちゃ。」


 現状を情けなく感じる反面、統制が取れていないのなら、勝手に動き回っても、誰も止める者が居ない。

 大武COOほどの人物なら、リーダ不在の拙さを把握できないわけがない。だが、それよりも別の何かを優先させて、単独で動いている魂胆も気になる。


「ワシ等はワシ等で、勝手にさせてもらおう。」

「そうね。」


 相槌を打つ粉木と有紀。砂影が不安そうに2人を見詰める。


「勘平、有紀、今の気持ちに偽りは無いのね?」

「なんべんも言わさんといて。私情を挟む気はあれへん。」

「母親としての責任は取るつもりよ。」


 散々、仕事に私情を挟んできた粉木が、頑なに私情を拒んでいる。娘の対応をずっと先送りにしていた有紀が、責任を口にした。砂影には、2人の抱えている辛さが解る。


「なら、私が見届けてやるわ。」


 スカイラインに乗る粉木と砂影、バイクに跨がる有紀。独断で、優麗高(退治屋の前線基地)から出陣をする。




-文架大橋西詰-


「魍紅葉ちゃんを討伐して退治屋の責務を果たすのか?

 もっと別の答えに辿り着くのか?あとは、君が自分で考えること。」


 頷く燕真。天邪鬼から上がる闇の湯気は、天邪鬼の表情を隠すほどに強まっており、消滅寸前と示している。


「最後に一つ・・・魍紅葉ちゃんは、まだ、他者の命で手を汚していない。

 そうならぬように、わしが阻止をした。だから・・・まだ、戻れる。」


 言い終えた天邪鬼は、自身の希望を託して、燕真&雅仁&佑芽&麻由に見取られながら消滅をする。


「ありがとな、天野の爺さん。

 消えてしまったアンタには、もう聞こえないだろうけど言っておく。

 俺は、紅葉の討伐なんて、絶対に選ばない。」


 天邪鬼からは「気持ちで茨城童子に負けている」と指摘された。燕真には、気持ちで茨城童子に勝つ手段が、まだ解らない。だけど、救ってくれた天邪鬼の意思に答える為に、今は落ち込んでいる余裕など無い。


「この先(亜弥賀神社)にいるのは、COO秘書の迫さんだ。

 よく解んねーけど、牛木みたく、妖怪化をしやがった。」

「・・・そうか。秘書までが。」


 燕真の報告を受け、雅仁の確信は更に強くなる。退治屋のトップに関係する者が妖怪ばかり。上層部に紛れ込んでいる妖怪が1人ならともかく、それ以上となると、気付かないのではなく、知って支配をしていると解釈するべきだろう。


「佐波木!使え!」


 雅仁はウエストポーチから何かを取り出して、燕真に投げて渡す。受け取って確認すると、それは銀塊だった。


「霊封をしてある。連戦になりそうだからな。

 消耗した妖幻システムのエネルギーを補充しておけ。」

「ああ、サンキュー!」


 燕真は、左腕のYウォッチと右手で握った銀塊を交互に眺め、雅仁&佑芽&麻由は、燕真を眺めながら待つ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×4


 1分ほどYウォッチと銀塊を眺め、燕真は申し訳無さそうに雅仁を見詰めた。


「ありがたいんだけどさ、どうやって補充するんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×3


 霊的スキル0点の燕真は、銀塊に込められた霊力の解放方法など習っていない。


「・・・よこせ、俺がやる。」

「す、すまん。」


 燕真は、恥ずかしそうに、Yウォッチと銀塊を雅仁に渡した。妖幻システムの充電時間を有効活用して、以後の方針を打ち合わせる。


「大武COOは黒で決定だな。」

「・・・だよな。どう考えても、今の退治屋はおかしい。」

「魂胆を暴けば、粉木さん達の協力を取り戻して、四面楚歌を脱却できますよね?」

「さすがは優等生の葛城さん。確かにその通りだ。」

「でも、どうするの?紅葉ちゃんのことは後回しにするの?」

「紅葉ちゃんのことは心配だが、

 退治屋を味方に付けて動きやすい状況を作るのが最優先だろうな。」

「大武COOは何処にいるんだろう?亜弥賀神社?優麗高?もっと別の場所?」

「所在が解らない大武COOを探し回るのは、リスクが高すぎる。

 確実に所在が解っている秘書を叩いて、大武の情報を得よう。

 ・・・それで良いな、佐波木?」

「うん。俺のワガママを押し通してられる状況じゃなさそうだもんな。」


 雅仁が、妖幻システムのエネルギー回復を終えて燕真に手渡す。方針を決めて頷き合い、バイクに乗って鎮守の森公園(亜弥賀神社)に向かおうとする。


「ん?」 「え?」 「なに?」 

「どうした?」


 嫌なプレッシャーを感じて、動きを止める雅仁&佑芽&麻由。その直後に、文架駅の封印結界が砕けて、文架市街を支配する妖気が強くなる。更に十数秒の間を置いて、東河川敷の封印結界も消えて、妖気の重圧が3人に重く伸し掛かる(霊感ゼロの燕真は気付かない)。


「4結界のうちの3本が喪失・・・。

 どのみち、残り一つの封印結界がある亜弥賀神社に向かわねばならないようだ。」


 大武COOが「妖怪に利用されているだけのマヌケ」ならば、生真面目に最後の結界の防衛に動く。「妖怪を操る黒幕」ならば、最後の結界を破壊する為に動く。そちらの線でも、鎮守の森公園(亜弥賀神社)に行けば、大武COOと接触できる可能性は高くなった。




-広院町・紅葉のマンションの屋上-


 魍紅葉と茨城童子が退却をした数分後、任務を全うした熊童子と星熊童子が合流をする。


「虎熊ドージと金熊ドージゎやっつけられちゃったの?」


 出陣前と比べてメンバーが減ってしまったので、魍紅葉が寂しそうな表情をする。


「天野のじいちゃんの気配も消えちゃったね。」

「鬼族の末席程度では、天逆毎の雷を2~3発も受ければ、

 生命妖力がダメージ妖力を越えて、存在を維持できませぬ。」

「連れていかなきゃヨカッタね。」

「奴程度の鬼ならば、姫君が呼び掛ければ全国各地から集まります。

 変わりは幾らでも補充できるので、ご安心下さい。」

「・・・天野のじいちゃんの代わりなんて居ないよぉ。」


 文架駅の戦いでは勝利をしたが、河川敷の戦いと、亜弥賀神社の戦いでは敗北。


「この一連の奥に見え隠れする黒幕の存在が、実に不愉快だ!」


 4ヶ月前、何者かの手引きで、金熊童子が、退治屋に保管されていた‘酒呑童子の一部を封印したメダル’を獲得をした。当時の茨城童子は、「愚かな人間共の下らない足の引っ張り合いを利用してやった」程度にしか考えていなかったが、実際は違ったようだ。腹立たしい仇敵が、「酒呑童子は完全復活を出来ない」と知った上で、『酒』メダルの情報を提供して、且つ、情報漏洩の罪を政敵に押し付けて排除したのだ。


 18年前、何者かが、酒呑一派のアジトの情報を漏らし、先代ガルダと退治屋に襲撃をされた。戦闘準備が整っていなかった為、酒呑童子は倒されて、酒呑一派は壊滅をする。その時の討伐隊に参加していた者が、現在はトップに収まり、退治屋を嗾けてくる。


「卑怯者め!その罪は、未来永劫、許される物ではない!」


 18年前の討伐参加者=情報漏洩者と仮定しても、特に矛盾は無い。

 現在の退治屋トップ=大嶽丸は、ほぼ間違いなし。

 つまり、大嶽丸が18年前の情報漏洩者。大嶽丸は、誇りを捨て、同族(鬼族)の情報を退治屋に流し、且つ、討伐隊に紛れ込んで酒呑童子打倒に手を貸したのだ。


「姫様っ!意見具申!!」

「んっ?急にど~したの、茨城ドージ?」


 思考で怒りが頂点に達した茨城童子が、魍紅葉に片膝を付いて頭を垂れ、威勢良く声を発する。


「我らに、退治屋総帥の討伐を御命じ下さいっ!」

「グロロ?‘我ら’とは、儂も含まれているのか?」


 熊童子が驚いた表情で、平伏中の茨城童子の前に廻り込んで顔を覗き込む。


「無論だ!」

「貧相な人間など、兄者だけで捻り潰せるだろう?」

「‘貧相な人間’ではないから、貴様等の助力が必要と言っている!

 我らで、憎き仇敵を討つのだ!

「らしくないな、副首領。熱くなりすぎだ。」


 星熊童子が、逸る茨城童子を諫め、魍紅葉に向かって片膝を付いて頭を垂れた。


「魍紅葉様に意見具申。」


 人間の姿をした魍紅葉(紅葉)と最初に接触をしたのは星熊童子だ(第11話)。当時は「この娘が主」とは思いもしなかったが、当時から彼女の特殊性には気付いていた。覚醒前とは言え、退治屋側に主が居たのだから、「ペースが乱されて、何も出来ずに敗北したのは必然だったのかもしれない」と考えている。


「副首領は消耗が著しいと見受ける。一時の休息を取ってはいかがか?」

「貴様、余計なことをっ!」

「万全に程遠い状態で返り討ちに合うのは、愚か者の所行です。

 4結界のうちの3つが破壊されて、妖気が濃い現状ならば、

 龍脈に身を置けば、数十分程度で回復を致します。」

「ん~~~・・・ワカッタ。

 なら、茨城ドージゎ、元気になるまで、オヤスミしてね。」

「・・・御意。」


 茨城童子は悔しそうに俯くが、指摘された通り、大幅に消耗しているのは事実だ。少し冷静に考えれば、退治屋のトップが態を潜めている状況なのに、ピンポイントで襲撃するなんて不可能。次の機会に備えて、星熊童子の提案を受け入れることにした。




-文架大橋-


 バイクで橋を通過する雅仁、佑芽&麻由、燕真。専用を走る雅仁が、小さく舌打ちをしてバイクを止めた。進行方向を見た佑芽&燕真も、バイクを止めた。大魔会の夜野里夢&アトラスが立っている。


「お呼びじゃないんだがな・・・黙って通してもらえそうにはない。

 奴等は俺が片付ける。君達は、別の橋を迂回して公園に向かってくれ。

 時間は浪費するが、ここで全員が足止めされるよりはマシだ。」


 雅仁の言葉に甘えて来た道を戻ろうとした燕真が、小さく舌打ちをする。


「いや・・・全員、ここで足止め決定らしいぜ。」


 後方から、見覚えのあるスカイラインとバイクが迫ってくる。粉木&砂影&有紀だ。


「前門の大魔会、後門のジジイ。

 示し合わせたわけじゃ無いだろうに、妙なところでチームワーク抜群だな。」

「どうするんですか?」

「どうもこうも無いね。

 最低でも、どっちかをやっつけなきゃ、前にも後ろにも行けないよ。」

「俺はジジイにリベンジをする!

 狗と根古さんは、大魔会を頼む!葛城さんは安全圏に避難していてくれ!」

「了解した!」 「うんっ!」 「はいっ!」


 燕真は、雅仁&佑芽vs大魔会の戦場と近接をさせない為に、道路を逆走して、接近してくるスカイラインに向かっていく。

 雅仁は、里夢とアトラスを睨み付け、視線と指で「河川敷に降りろ」と合図を送った。一般車両が通る橋の上で戦うワケにはいかない。


「幻装っ!」×2  「マスクドチェンジ!」×2


 妖幻ファイターガルダ&リンクス、マスクドウォーリアリリス&ギガント登場。ガルダを先頭に、次々と、橋の歩道手摺りを飛び越えて、数m下の河川敷(高水敷)に着地をする。


 一方、橋の上では、ホンダ・NC750Xを停めた燕真と、スカイラインから降りた粉木が睨み合っていた。


「お互いに、妙な妨害は抜きが良いだろ?

 狗塚達が川東の河川敷で戦うなら、俺達は西の河川敷でどうだ?」

「良い度胸や。ただし、妙な妨害をアテにできずに不利になるんは、オマンやで。」


 中央分離帯がある橋で、さすがに車のUターンや逆走はできない。粉木は、愛車を砂影に任せ、有紀のバイクのタンデムシートに乗って、燕真と共に川西の河川敷へと到着する。


「幻装っ!」 「変身っ!」


 妖幻ファイターザムシード、異獣サマナーアデス登場。



-広院町・紅葉のマンションの屋上-


「んぉぉっっ!燕真達の気配だっ!」


 屋上で休んでいた魍紅葉が、ザムシード達の妖気を感知!次の機会に備えて待機をするつもりだったが、もう、次の機会が来たようだ!


「茨城ドージゎ、ちゃんと元気になるまで、休んでいてねっ!

 熊ドージ、星熊ドージ、行くよっ!」

「姫様っ!私が回復するまでお待ちをっ!」

「待ってたら、ァタシがやっつける前に、燕真がやっつけられちゃう!

 もらってきた(強奪してきた)鬼のメダルは、いっぱいあるからダイジョブ!」


 魍紅葉は、まだ動けない茨城童子に数枚の封印メダルを見せびらかした後、闇霧化をした熊童子に乗って、ザムシードの出現地点へと向かう。



-西側河川敷-


 ザムシードのセンサーが、強大な妖気の急接近を感知!南西の空を見上げた直後に、ザムシードを発見した魍紅葉が、闇雲から飛び降りて河川敷に着地!


「燕真、み~っけっ!

 さっきは失敗しちゃったけど、今度こそ、やっつけてあげるね!」

「紅葉っ!」


 後を追って降りてきた2つの闇雲が、熊童子と星熊童子の形を作る!


「んへへっ!熊ドージと星熊ドージだけぢゃなくて、まだいっぱいいるよっ!」


 魍紅葉が封印メダルをバラ蒔いて念を込めると、温羅鬼、栄螺鬼、牛頭、馬頭等々、複数の鬼が出現をする!


「やれやれ、いきなり妙な妨害が入ったやないか!」


 つい先程まで腹を括った雰囲気だったザムシードが、早速動揺をしている。アデスは、考えの甘いバカ弟子に溜息を付きつつ、有紀に視線を向けて合図を送った。頷いて応じる有紀。


「師弟の‘水入らず’を邪魔しないで欲しいわね。」


 ザムシードとアデスを庇うようにして有紀が立つ。同時に、吹雪が発生して、ザムシード&アデスと有紀の間を遮った。


「粉木さん!娘は、任せてもらうわよ!」


 背を向けたまま、アデスに対して軽く手を振る有紀。


「有紀ちゃん・・・頼む!」


 吹雪は白い竜巻に変化をして、有紀と魍紅葉達を中心に、半径30mほどを覆った。そして、有紀の隣に白い霧が集結をして、氷柱女のお氷が実体化をする。露骨に苛立つ魍紅葉。


「ママ・・・ァタシのジャマするの?」

「他にどう見えるのかしら、紅葉?」

「ァタシ、鬼なんだよ!ジャマしたら、ママ死んぢゃうよ!」

「あら、もう忘れたの?私が妖幻ファイターだったってことを!」


 熊童子と星熊童子が、邪魔者(有紀&氷柱女)を睨み付けた!先ずは、熊童子が飛び掛かる!


「失せろっっ!人間と下級妖怪ごときが何用だぁっっ!!」

「言われなくても、そのつもりだ。

 この場にいる蛮族どもを凍てつかせたあとでな。」


 突進してくる熊童子に掌を向ける氷柱女!巨大な氷柱が射出され、熊童子を弾き飛ばす!


「お氷(氷柱女)、お願い!」

「良いのだな、有紀?」

「もちろんよ!その為に、此処に居るのだから!」


 有紀は、隣に立つ氷柱女に手を差し出した。氷柱女は、着物の懐から、メダルの填め込まれたYケータイ(Yウォッチの二世代前のシステム)を取り出して、有紀に渡す。


「久しぶりに、大暴れしてやろうぞ。」


 氷柱女は冷たい霧に姿を変えて、有紀が握り締めたYケータイに自らの意思で吸収され、填め込まれていたメダルに『氷』の文字が浮かび上がった。有紀がYケータイを翳す。


「幻装っ!」


 有紀の全身が光りに包まれ、ゴーグルタイプのマスクの下で複眼を輝かせ、白基調の日本の甲冑のようなプロテクターに身を包み、腰に日本刀を帯びた戦士・妖幻ファイターハーゲンに姿を変えた!



-氷結界の外-


 白い巨大竜巻に近付こうとするザムシードを妨害するようにしてアデスが立つ。


「無粋な奴やのう。母子の語らいを邪魔するなよ。」

「・・・ジイさん。」

「ワシの目が黒いうちは、オマンは先には進めないってことだ!」


 魍紅葉(紅葉)のことが心配で仕方が無い。だが、目の前の師を退けなければ一歩も先には進めないのも事実。ザムシードは、気持ちを切り替える。




-東河川敷(vs大魔会)-


 到着をした麻由が、安全圏(堤防上)から戦場を見詰める。

 ガルダ&リンクスと、リリス&ギガントが身構える。2対2だが、リンクスを1人前の戦力としてはカウントできないので、実質的にはガルダvsリリス&ギガントの厳しい構図だ。


「狙撃手(ハーピー)が戦線を離脱してくれただけでも、ありがたい。」


 ハーピーが倒されたことは、燕真から聞いている。ガルダ1人で、リンクスと麻由を守りながら、遠距離からハーピーが飛ばす矢に警戒をして、リリス&ギガントの相手をするなんて不可能。厳しいなりに工夫すれば戦えるのだから、かなりマシな状況だ。


「早期決着の選択肢以外は無い!」


 部外者(大魔会)との戦闘で消耗してしまうと、その後が厳しくなる。だが、温存してやり過ごせる相手ではない。ガルダは、Yウォッチから金色メダルを抜き取ってベルトの五芒星バックルに装填。全身が金色を発して、Hガルダへとパワーアップをする。


「撹乱を頼む!」


 リンクスには、リリスやギガントを一撃で倒せる奥義は無い。必然的に、Hガルダがフィニッシャーを担うことになる。


「ただし、解っているだろうが深入りは厳禁だ!」


 ギガントの攻撃は、どれもリンクスを一撃で戦闘不能に追い込む破壊力がある。リリスに至っては、一撃死のソウルイーターがある。敵の武器の射程圏に飛び込まずに如何に撹乱をするかが、リンクスの役割になる。


「はいっ!」


 Hガルダが鳥銃・迦楼羅焔を構えて、リリスとギガントに光弾を連射!両手に妖扇・猫爪を装備したリンクスが、ギガントに向かって突進をする!

 一から十まで説明しなくても、リンクスは理解している。ギガントを出来る限り足止めして、先ずは、手の内を読みやすいリリスをHガルダが倒す作戦だ。


「里夢!解っているな!」

「格下扱いをして欲しくないわね。」

「その慢心が拙いのだ!」

「・・・チィ」


 ギガントは、リリスが弱点扱いされることを予想していた。リリスは、Hガルダに向かっていこうとしたが、ギガントの指示に不満そうに応じ、ギガントの後に引き下がった。



-回想-


 ハーピーは、茨城童子の碧玉結晶に閉じ込められて敗北。リリスとギガントは、天逆毎の発した広域攻撃(雷槍)から逃れる為に、ハーピーを放置して戦線を離脱した。戦場の公園から100m程度離れたビルの屋上で変身を解除して、里夢のアトラスの姿に戻り一息を付く。


「カリナの安否は確認できず、同盟相手は、我らの存在を無視して無差別攻撃。

 お粗末という言葉以外に思い付かんな。

 これが、無駄な争いに首を突っ込んだ結果だ。」


 アトラスの苦言に対して、露骨に不満な表情をする里夢。


「同盟などという聞き心地の良い物ではない。

 奴等(大武や迫)は我々を、使い捨ての駒としか見ていないということだ。」

「・・・その程度の現実など、言われなくても解っているわ。

 私が、奴等を利用してやるのよ!」


 退治屋との同盟が成立しているなどという甘い認識を持っていたのは、倒されたカリナ(ハーピー)のみ。アトラスは最初から信じておらず、里夢は「互いに利用するだけ」としか考えていない。


「奴等の方が一枚上だ。気付けぬオマエではなかろう?」


 余力で「要求を越える実績」を獲得するのは良い。だが、「無駄な争いに参加」をして、仲間を失うのでは本末転倒だ。


「カリナを救出して、この争いからは手を引くべきだ。」

「それでは甘いわよ、アトラス君!

 スペクター計画の全てを把握して全てを掌握すれば、地位は安泰になる!

 それが解らないアトラス君ではないでしょうに!」


 確かに、スペクター計画=伝説の英雄の兵器化を掌握すれば、組織での地位は安泰になる。現総帥の後釜に座ることも可能だろう。アトラスは、総帥への忠誠心のみで動いているので、里夢が欲する地位には興味を感じない。だが、様々な者が集まる大魔会において、個人の野心に疑問を感じて問い質すつもりも無い。


「オマエが、この争いへの介入に拘るならば、止めはしない。

 手を貸してやっても構わぬ。だが、条件がある。」


 アトラスは、里夢の戦士としての資質に限界を感じていた。


「俺の指揮下で戦え。聞けぬならば、俺は降りる。」


 里夢自身、自分の作戦が場当たり的で、物事が思うように進まないことに気付いていた。


「・・・解ったわよ。アトラス君に従うわ。」


 里夢は受け入れることにした。アトラスの作戦が上手く進捗したら、暗殺して手柄を横取りすれば済む話だ。



-回想終わり-


 ギガントは、功績を欲するリリスが、ガルダの命を狙うのは解りきっていた。ガルダがリリスを「御しやすい」と見ていることも予想していた。だから、リリスはリンクスに向けて、ギガントがHガルダを叩く!


「おおぉぉっっっっ!!!」


 ギガントは、ウンディーの効力を有する『Un』メダルをサイクロプスハンマーに装填して、横薙ぎに力一杯素振りをした!ウンディーネウェイヴ発動!鎚頭の軌跡から発生した津波を追うようにして、ギガントとリリスが駆ける!


「うわっ!」


 突進中のリンクスは、飛び上がって津波を回避!その頭上に、漆黒の翼を広げて、デスサイズを構えたリリスが迫る!


「ヤバっ!」


 リンクスは、振り下ろされたデスサイズを、慌てて妖扇で受け止めた!しかし、相殺しきれずに、弾き飛ばされて地面に叩き落とされる!


「ふふっ・・・今のが、魂狩りの刃だったら、いきなり死んでいたわね。

 私が、佑芽さんの命ではなく、才能を欲していることに感謝しなさいよ。」

「・・・う、嬉しくない。」



 一方、津波は、離れて鳥銃を構えているHガルダに届くまでには、かなり広範囲に広がり、威力は弱まっていた。Hガルダは、足を踏ん張らせてやり過ごしつつ、津波の後から迫り来るギガントに向けて光弾を放つ!ギガントは、大鎚を小刻みに振るって、小さい津波を幾つも発生させて光弾を相殺!接近の直前で、サラマンダーの効力を有する『Sa』メダルを装填してから、サイクロプスハンマーを振るった!Hガルダは、後退をして発光した鎚頭を回避!空振りをした鎚頭が地面に打ち付けられて、小さなクレーターを作る!


「・・・かなりマズい。」


ガルダは、機動性の高い(と言うか、素早さ以外に特徴が無い)リンクスに、機動力が低くてパワーファイター系のギガントの足止めをしてもらい、リリスのと1対1を作って、早期にリリスを叩くつもりだった。


「夜野里夢の作戦ではなさそうだな。」


 心配そうに、リリスをチラ見するHガルダ。佑芽(リンクス)本人を欲しているのだから命を奪う可能性は低いだろう。しかし、実力不足の佑芽(リンクス)では、空中機動力と長柄武器を持つリリスに対する時間稼ぎは困難。戦闘不能に追い込まれるのは時間の問題だ。


「俺が、如何に早く鎚使い(ギガント)を倒すか・・・

 彼女(リンクス)が、どの程度の気転を利かせて凌げるか・・・次第だな。」


 思惑通りに展開しなかったことを悔やんでも意味が無い。

 Hガルダは、後退で間合いを開けながら、光弾を連射!しかし、ギガントは、灼熱に発光する鎚頭で光弾を受け止めながら、果敢に接近を続ける!


「なんてヤツだ。手持ち武器で弾を受け止めるとはっ!」

「フン!防御の為に、ハンマーヘッドに魔力を溜めているわけではない!」


 Hガルダの懐に飛び込んだギガントが、発光した鎚頭を叩き込んだ!ギガントの最大奥義・サラマンダーバースト発動!


「ぐわぁぁっっ!!」


 灼熱光球を喰らったHガルダが、悲鳴を上げて弾き飛ばされ、地面に墜落して転がる。対するギガントは、堪えきれずに脱力して片膝を地面に付き、左手で右肩に穿たれた傷口を押さえて、倒れているHガルダを睨み付けた。


「た、大した戦闘センスだ。里夢やカリナでは勝てぬ理由が理解できる。」


 Hガルダが、全身から煙を上げ、妖槍を杖代わりにして立ち上がる。


「・・・直撃を受けていたら、致命傷は免れなかった。」

「直撃のタイミングだったのだがな。」


 ギガントの奥義は、確実にHガルダを捕らえたはずだった。しかし、インパクトの直前に、Hガルダは妖槍を延長させて、穂先でギガントの右肩を突いた為に、ギガントは押し戻され、踏み込みが僅かに浅くなったのだ。


「まさか、槍でカウンターを仕掛けてくるとはな。」

「夜野里夢(リリス)のデスサイズ、狙撃手(ハーピー)の矢、

 どちらも、初見殺しの奥義を有している。

 オマエの鎚も同様の危険性があると想定して警戒をするのは当然だ。」

「素直に認めるしかないな。

 退治屋の戦闘力は、我が大魔会と比べて、決して劣らぬ・・・と。」


 立ち上がって構えるギガント。その闘志に呼応して、サイクロプスハンマーの鎚頭が、再び灼熱の光を放つ。


「エネルギー内蔵タイプか?厄介だな。」


 ガルダやザムシード必殺技は、エネルギーを爆発的に解放させながらぶつけるタイプ。だが、ギガント場合は、鎚頭に魔力を蓄え、インパクト時のみに解放されるタイプ。

 Hガルダは、最初の一撃を気転で不発させただけ。常に「一撃を喰らえば戦闘不能になる」と警戒しながら戦わなくてはならない。



「・・・雅仁先生。」


リンクスは、堤防の法尻まで追い詰められていた。リリスと対峙をしながら、ガルダをチラ見する。助けに来てもらう余裕は無さそうだ。言うまでもなく、リンクスにも、ガルダのサポートに向かう余裕は無い。


「里夢さん・・・なんで、酷いことばかり?」


 リンクス(佑芽)にとって、リリス(里夢)は、前CEOの喜田すら使い捨て、雅仁や燕真を必要の無い戦いに巻き込む嫌な奴。しかも、自分を散々利用して、トカゲの尻尾切りをしたクセに、また欲している。何もかもが自分勝手。到底、理解できる相手ではない。


「酷い?・・・私の何処が?」

「だって、里夢さんはっ!」

「佑芽さんは、中学や高校、陰陽の就学で、

 他者より優れたいと思ったことは無いのかしら?」

「それとこれとは別の・・・」

「何処が違うのかしら?

 佑芽さんは、優秀な知人を、味方にしたいと思ったことは無いの?

 足を引っ張るだけの知人を、邪魔だと思ったことは無いの?

 目の敵にしてくる嫌な子を、排除したいと思ったことは無いの?

 ずっと、誰も利用せず、誰にも興味を持たず、

 誰からも干渉されずに生きているのかしら?」

「私が言っているのは、そんなことじゃなくてっ!」

「同じことよ。佑芽さんが、他者より優れたいと思うのは何故?

 自分の将来の為?目立ちたいから?味方がたくさん欲しいから?

 周りからアテにされたいから?」


 リリスは、軽くデスサイズを薙いだ。リンクスは、慌てて妖扇で受け止めるが、力負けをして尻餅をつく。


「佑芽さんは、何もかもが周りより劣っていても、劣等や葛藤は感じないの?

 何でも良いから勝ちたいとは思わないの?」

「そ、それはっ!」

「劣等を感じないのではなく、劣等を認めたくなくて逃げているだけでは?」


 立ち上がったリンクスに対して、リリスは再びデスサイズを振るう。リンクスは身を捻って刃を回避するが、腹に蹴りを叩き込まれて、再び尻餅をついた。


「他者よりも上に行きたい。・・・それは、皆、同じなの。

 学生は‘上に行きたい’の範囲が狭いから、考え方が甘いだけ。

 佑芽さんは、まだ‘温室で育てる学生’だから解らないだけ。」

「わ、私は、汚い大人にはなりたくない!」

「ふふふ・・・一生、下っ端のままで満足なんて考え方は、ただの腰抜け。」


 リンクスはリリスの言い分が全く納得できないが、言い返すことも出来ない。リリスだけではない。前CEOの喜田や、大武COOも、自分達だけの理屈で、他者を巻き込んでいる。退治屋上層部の取り巻き達は、満足に事情を理解しないまま、長い物に巻かれて、「御曹司を守れなかった佑芽の姉」を蔑んだ。

 どんなに卑劣な手段を使ってでも、力を持たなければ、何も意見を通せない敗者になってしまう。


「そんな、心の清らかな佑芽さんを、私が守ってあげるわよ。」


 リリスは、頭上でデスサイズを回転させて威嚇をし、リンクスの首に目掛けて振り下ろして寸止めをした。リンクスは何一つ対処が出来ない。リリスが‘その気’だったら、今の一振りでリンクスの首は落ちていただろう。


「貴女が大人としてやるべき汚いことは、全部、私が引き受けてあげる。

 だから、葛城麻由さんと共に、私に靡きなさい。」


 堤防上で見守っている麻由を見上げるリリス。リンクスもつられて振り返り、麻由を見詰める。

 注目をされていることに気付いた麻由は、一呼吸して、堤防斜面の中腹まで駆け降りた。


「私はアナタの申し出を拒否します!」

「フン!社会を知らない子供の綺麗事ね。」

「確かに、綺麗事だけでは大人には成れないのかもしれません!

 ですが、私の身近には、綺麗事だけでは済まないって解りながら、

 抗っている大人がいます!

 私は、そんな大人に成りたいんです!」

「・・・麻由ちゃん。」

「今は、私達と袂を別っていますが・・・

 それは本心ではなく、きっと、深いお考えがあるはずです!」

「何を言っても、力無き者の遠吠えにしか聞こえないわね。」


 麻由が表現した「理想の大人」は粉木のこと。リンクスには理解ができた。


「そっか・・・それが、一晩泣いて、麻由ちゃんが辿り着いた答えなんだね。」


 今の一連によりリンクスは、この戦いに佑芽自身だけではなく、麻由の命運も握られていることに気付く。


「一番のシッカリ者は麻由ちゃんかもね。

 まさか、3つも年下の麻由ちゃんから、

 勇気をもらうなんて予想してなかったよ。」


 昨日の夜、麻由は自室に籠もって泣いていた。泣き声を聞いてしまった佑芽は、「歳上の私がシッカリしなきゃ」と感じた。今、この局面で、「私は雅仁先生や佐波木さんの妹分」では済まされない。


「私も同じ。

 里夢さんの言うのは正しいのかもしれないけど・・・受け入れられない。」


 麻由は一般人。何も知らなければ、今も、戦いとは関係の無い場所で、平和に過ごせていたはず。だけど、佑芽は姉の汚名を払拭する為に、彼女を巻き込んでしまった。

 自分の立場を守る為に他者を利用したのは、佑芽も変わらない。だが、里夢の意思には同意できない。ならば、里夢の否定をする為にも、利用した者を使い捨てるのではなく、麻由を巻き込んだ責任を取って麻由を守るしかない。


「私、就学中だけど・・・見習いだけど・・・まだまだ半人前以下だけど・・・」


 リンクスは、閉じた妖扇をデスサイズの刃に当てて、押し戻し始める。


「里夢さんには負けたくないっ!」


 後退をしてデスサイズの射程圏から脱出するリンクス!閉じていた妖扇を開いて身構える!属性メダルを手に取って、左右の妖扇に装填!『斬』の効果を得た右妖扇は仕込まれた5本の刃が40センチほど(脇差しサイズ)に伸び、『閃』の効果を得た左妖扇は、ヘリから10センチほどの光の刃を発する!


「にゃぁぁっっ!!」


 気勢を上げて突進するリンクス!5刃の伸びた右妖扇を振るうが、リリスのデスサイズにアッサリと受け止められてしまう!デスサイズのリーチの外側では、射程圏が身近すぎて全く届かない!


「気合いだけではどうにもならない現実を教えてあげるわよ、可憐なお嬢さん。」


 弾き返され、バク転をして、軽やかに着地をするリンクス!直ぐさま、再突進をする!

 先程は、大鎌に、『斬』で伸ばした刃を当ててしまった為に、距離を詰められず、『閃』の光の刃では届かなかった。ならば、逆に、リーチが短い光の刃を大鎌にぶつければ、必然的に距離が詰まり『斬』で伸ばした刃が届くはず。


「にゃぁぁっっ!!」


 リンクスは、脳内で‘勝つイメージ’を固めて、ヘリから光の刃を放つ左妖扇を振るった!リリスの振るったデスサイズが、左妖扇の光刃とぶつかる!


「わぁぁぁっっっっっ!!」


 しかし、今度は、アッサリと弾き返されて尻餅をつく。リリスは追い撃ちを掛けること無く、全身で「余裕」を見せ付けるかのようにデスサイズを肩に担いで、リンクスを見下ろす。


「退治屋の就学では、二刀流なんて教えてもらえるのかしら?

 学んでいてソレでは、無様すぎるわね。」


一度目の伸びた刃の方が、鍔迫り合いをできたのでマシだった。今のは、武器の形状的に遠心力を乗せられず、且つ、利き手ではない所為もあり、攻撃が軽すぎた。


「・・・ま、学んでない。」


 二刀流を学んでいないどころか、同期との模擬戦で満足に勝利をした経験も無い。実戦での実績は、「ガルダやザムシードが妖怪を弱らせたあとのトドメ」を任せてもらった程度。

 改めて考えれば、スペクターとして召喚された姉(リンクス)は、片方の妖扇に属性メダルを装填して攻撃力を高めた時、もう片方の妖扇は攻撃の補助程度にしか使用していなかった。


「お姉ちゃんより上手になんて・・・今の私に出来るわけが無い。」


リンクス(佑芽)は、二刀流の難しさを知る。テレビで見て「格好良い」「チャンスがあったらやってみたい」と思ったのだが、実際にはド素人の二刀流なんて、話にならない。

 ‘雅仁先生の実戦研修’では、「邪気祓い」「片方の妖扇から5刃を飛ばして敵を牽制」「片方の妖扇を属性メダルで強化」「妖槌・ネコノテを振り回す」くらいしか経験していない。


「里夢さんを相手にして、私が出来る戦い方・・・。」


 強敵相手に、無駄に背伸びをするのではなく、初心に戻って、確実に出来ることを考えるべき。

 対戦の組合せは予定と変わってしまったが、雅仁(ガルダ)は佑芽(リンクス)に「危ないから下がっていろ」とは言わなかった。「見習い扱い」だが、少なからず戦力としてアテにされている。リンクスは、雅仁(ガルダ)が、今までに与えてくれた戦い方を、「どう選んで、どう組み合わせるか」と思案する。


「・・・やってみる!」


 リリスは、リンクスを「戦力外」と見下しており、「ガルダを始末すれば手に入る景品」くらいの扱いなので、殺す気では掛かって来ない。それどころか隙だらけのリンクスに攻撃をせずに、「次は何をするの?」と眺めている。格下扱いされっぱなしは腹が立つが、それが今の現実なんだから仕方が無い。


(里夢さんが本気を出す前に、全力で倒す。)


 左の妖扇から『閃』メダルを外して開いたまま維持。右の妖扇からは『斬』メダルを外して閉じ腰のホルダーに収納。代わりに妖怪・野槌が封印された『槌』メダルを使って召喚した妖槌・ネコノテを装備する。


「にゃぁぁっっっ!!」


 間合いを空けた状態で、リリスに向けて左手に持った妖扇を扇ぐ!風が発生してリリスを煽り、更に扇に仕込まれていた5本のクナイ型の刃が射出されて、リリス目掛けて飛んでいく!


「発動者の力量不足で、お姉さんが発した強風には遠く及ばず・・・

 飛び出す刃は直線的すぎて、対応が容易・・・」


 リリスは、デスサイズを回転させて、5本のクナイをアッサリと弾き返す!


「準備をする時間は随分とあげたつもりだけど、この程度かしら?」

「まだまだぁっっ!!」


 突進したリンクスが、妖槌・ネコノテを突き出した!だが、これもリリスのデスサイズで薙ぎ払われてしまう!手元から妖槌が離れ、体勢を崩すリンクス!


「今だっ!」


 横に倒れながら、妖扇に属性メダルを装填。リリスのは、リンクスが何のメダルをセットしたのか見えなかった。だが、手の内は知っている。『斬』メダルで刃を伸ばしても、『閃』メダルで光る刃を発しても、倒れた状態ではリリスに届かず、カウンターは不可能。「どうあがいても無駄」と言わんばかりにデスサイズを構えるリリスに対して、リンクスは倒れたまま妖扇を振り上げた。



-回想-


「今の君の力量では、窮地に追いやられる可能性は高い。」


 大魔会との対峙が決まって河川敷に降りた直後、ガルダが、厳しい現実をリンクスに突き付ける。


「わ、解っています。」


 言われなくても、リンクスは自分では役不足と理解している。だが、尊敬する師から言われるのは辛い。


「本心では、君を戦わせたくはない。

 だが、君をアテにしなければ、戦い抜けないのも事実だ。」

「・・・雅仁先生。」

「可能な限り、君には負担を掛けないように戦いたい。

 しかし、相手は強敵だ。

 局面が、俺の思い通りに進まない場合も考えておかねばならない。

 大魔会の連中は、君の手札を把握済み。

 そして、今の君では、奇策で奴等の想定を覆す経験も無い。

 だから、君には、これを預けておく。

 窮地に陥り、俺がサポートに廻れない時の切り札にしてくれ。」


 ガルダは、リンクスに向けて拳を差し出す。開かれた拳から受け取ったのは、2枚のメダルだった。


「大魔会の連中が君の手札を把握済みだからこそ、逆手に取る。

 奴等は、君が、この2枚を使う事など、想定していないだろうからな。

 高い確率で、窮地を脱する隙を作れるだろう。」

「ありがとうございます。御守りにしますね。

 でも、どうせなら、トゲだらけで私が落ち込みそうになる言い方じゃなくて、

 もう少し優しい言い方をしてもらえると、嬉しいんですけどね。」

「すまんな。以後、気を付ける。」


 リンクスは、ガルダから預かった『雷』と『風』の属性メダルを握り締める。口では、ガルダの「刺々しいアドバイス」へのダメ出しをしたが、それが、ガルダからの「甘い考えでは生き残れない」という警告であり、ガルダなりに気遣った優しさってことを、リンクスは理解している。



-回想終わり-


 妖扇にセットされたのは、雅仁から預かった『雷』メダル!


「にゃぁぁっっっっっ!!!」


 リンクスが妖扇を振り降ろして、5本のクナイを発射!リリスは、弾道を見切って、アッサリとデスサイズで弾いた!だが、着弾と同時にクナイに内蔵されていた雷が放電をして、デスサイズからリリスへと通電をする!


「なにっ!?」


 リンクスは、妖槌を拾い上げて、感電で動けなくなったリリスに、渾身の突きを放った!


「うわぁぁっっっ!!」


 リリスは、全身から火花を上げて宙に弾き飛ばされ、受け身を取れないまま墜落! ようやく、雲泥の実力差のあるリリスに一矢報いることが出来た!リンクスは考えるよりも先に駆け出し、倒れているリリスに妖槌を振り下ろした!


「舐めるな、小娘っっ!!!」


 しかし、リリスは、全身の痺れを堪えてデスサイズを突き出す!リンクスの妖槌がリリスに届く前に、デスサイズの峰がリンクスの腹に叩き込まれた!カウンターを喰らったリンクスは、一時的な呼吸困難に陥り押し戻されて尻餅をつく!


「この程度で、私を倒せるとでも思ったのかっ!?」


 『雷』を想定していなかったリリスは、まんまと欺かれ、大恥をかかされた気分だ。リンクスの起死回生の一撃は、リリスへの致命傷には全く届かず、ただ、怒らせただけ。

 痺れを振り解いて立ち上がり、怒り任せにデスサイズを薙いで、まだ動けずにいるリンクスを弾き飛ばす!


「楯突くなら、処分をするだけ!

 私の顔に泥を塗った代償は、オマエの全身に払わせるから覚悟しなさい!」


 リリスは、クラーケンの能力が付加された『Kr』メダルをデスサイズに装填!無抵抗のリンクス目掛けて、一切の容赦無く振り下ろした!


「きゃぁぁっっっ!!」


 刃線から放出された10本の刃全てが、リンクスに着弾!全身から火花を上げて弾き飛ばされるリンクス!まだ怒りの治まらないリリスは、再度、デスサイズを振るって、這い蹲っているリンクスに、10の刃を着弾させる!


「言うことを聞かない人形なんて、もう要らないわ。」


 デスサイズのメダルを、『Kr』から『Lc』に入れ替えるリリス。刃が歪み、アンデッドの王・リッチの能力が宿る。


「これで終わり。・・・貴女の魂、私のコレクションに加えてあげる。」


 ダメージが重く伸し掛かり、倒れたまま動けないリンクス。リリスは、悠然とリンクスに近付いて冷たい視線で見下ろした。


「うわぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!根古さんっっっ!!!」


 声を聞き、顔を上げるリンクス。魂狩りのデスサイズを振り上げたリリスの背後、麻由が、気勢を上げながら堤防斜面を駆け降りてくる!


「・・・麻由ちゃん?・・・なにを?」


 生身の麻由が何をするつもりなのか?リンクスが倒されれば、麻由はリリスに捕らわれてしまう。リンクスの命運が尽きかけている現状では、逃げる以外に麻由自身を救う手段は無い。リンクスには、「リンクスの窮地を救う為に捨て身になった」ようにしか見えない。


「む、無謀すぎるよ、麻由ちゃん・・・逃げて。」


 リリスはチラ見をしただけで、戦力外の一般人を気にする素振りも見せない。


「うわぁぁぁぁっっっっっ!本条のお爺様っ!私に力を貸してくださいっ!!」


 リリスが麻由への無警戒を決めた直後、麻由は駆けながら黒焦げの缶ケースを握り締めて正面に翳した!それは、血の繋がった祖父であり、50年前の英雄・本条尊が残したサマナーホルダ!

 麻由は、スペクター計画に巻き込まれ、本条尊の念に乗っ取られた状態で戦った経験を体で覚えている。争いは避けたいが、大切な者を見捨ててまで戦いを拒否するつもりは無い。


「変身っっ!!」


 麻由の全身が乳白色の光に包まれ、バッタを模したマスクと真紅の西洋甲冑に身を包んだ騎士=異獣サマナーアポロへと姿を変えた!


「なにっ!?バカなっ!」 「麻由ちゃんっ!!」


 麻由が眠らせていた才能を覚醒させたのは、スペクター計画に巻き込んだ里夢(リリス)と佑芽(リンクス)。だが、覚醒に誘った張本人達は、全く想定していなかった展開に驚きを隠せない。


「私は、私の意思を‘力無き者の遠吠え’にはしたくありませんっ!」


 駆けるアポロの背後の空間が歪んで、朱色のバッタ型モンスター=ポッパーサイクロンが出現!アポロが飛び上がると、連動してホッパーサイクロンも跳び跳ね、足でアポロを掴んで更に上昇!空で加速して、リリスに向けてアポロを投げ出した!加速力を得たアポロが飛び蹴りの体勢になって、リリスに突っ込んでいく!


「ふざけるな、クソガキがぁぁっっっっっ!!!

 姿を変えた程度で、私の上前を刎ねられると思うなっっ!!!」

「麻由ちゃん、ダメェェェッッッッッッッ!!!」


 声を振り絞るリンクス!リリスは向き直り、魂狩りのデスサイズを振り上げる!振り下ろされた‘物理には干渉しない歪む刃’が、突っ込んできたアポロを通過!直後に、アポロの飛び蹴りが、リリスに着弾!

 ソウルイーターを喰らって地に伏すアポロと、サイクロンキックを喰らって宙に弾き飛ばされるリリス!


「うわぁぁぁっっっっっ!!!麻由ちゃんっっっっ!!!」


 その後の、リンクスは、全身の血が頭に上り、脳内は真っ白だった。

 アポロ(麻由)が作ってくれたチャンスを活かすことだけしか見えていなかった。

 妖扇に『風』メダルを装填して、作り出した強風を推進力にして自分自身が飛び上がり、宙に投げ出されたリリスに追い付いて、真上から『風』の妖扇で煽って、地面に叩き付ける!


「わぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 間髪入れずに、妖槌・ネコノテに白メダルを装填!破壊エネルギーを纏った妖槌・ネコノテのヘッドが直径2mほどに巨大化をする!奥義・ネコパンチ発動!リンクスは自由落下をしながら、仰向けに倒れたリリス目掛けて、渾身の力で妖槌を振り下ろした!


「そんなバカなっ!この私が、たかが2人の小娘如きにっっ!!」

「オマエなんて、潰れてしまえぇぇっっ!!!」

「ぐはぁっ!」


 小さく悲鳴を上げるリリス。リンクスが我に返った時、リリスは、巨大ネコノテのヘッドの下敷きになって、地面にメリ込んでいた。意識を失ったリリスの変身が強制解除をされて、里夢の姿に戻る。


「お・・・終わった。」


 リンクスは、里夢は生きているのか死んでいるのか、よく解らなかった。だが、そんな事はどうでも良かった。

 振り返ると、アポロの変身は強制解除をされていた。リンクスは変身を解除して佑芽の姿に戻り、体中の痛みなどお構い無しに、地に伏している麻由に駆け寄る。


「麻由ちゃん・・・ごめん。」


 佑芽は、倒れている麻由の脇に両膝を降ろし、脱力気味に地に腰を付け、眼に涙を浮かべ、麻由の手を取って麻由の顔を見詰める。


「巻き込んじゃったのも・・・サマナーの力を使わせちゃったのも・・・

 守ってあげられなかったのも・・・全部、私。

 ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。」

「す、少しは・・・お役に立てたのでしょうか?」


ゆっくりと眼を開け、涙ぐんだ佑芽を見詰める麻由。


「・・・へ?」


 アポロ(麻由)は、ソウルイーターの直撃を喰らったはず。佑芽は、麻由が絶命したとばかり思っていた。


「・・・麻由・・・ちゃん?」


 だが、麻由は生きていた。上半身を起こして、佑芽の目の前で「私は元気です」とアピールをする。


「差し出がましいマネをして申し訳ありませんでした。

 でも、根古さんの窮地だったのに、

 私だけ、部外者でいることができなくて・・・」

「わぁぁっっっ!麻由ちゃんっっ!!」


 感極まった佑芽は、飛び付くようにして麻由を抱きしめる。麻由は、自分が喰らったのが‘一撃死’の必殺奥義と知らないので、佑芽が号泣している理由を把握できない。泣いている佑芽の背中に手を廻して、擦ってやった。


「うわぁぁ~~~んっっ!!これじゃ、どっちが歳上かわかんないよぉ~~!!」


 何故、麻由は魂狩りを受けずに済んだのか?リリスは、麻由の命を奪う気が無かった?過去に、根古礼奈の魂が佑芽を庇ったように、今度はアポロの魂が麻由を守った?佑芽には、その答えは解らない。よく解らないから、「奇跡が起きた」ことにしておく。

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