第21話・鬼の討伐(vs酒呑童子?・虎熊・金熊)

 EXザムシード(エグザムシード)は、粉木と紅葉に見送られ、富運寺を目指してマシンOBOROを駆る!


「・・・ん?」


 EXザムシードのセンサーが、接近してくる2つの妖気を感知!空から闇霧が降りてきて進行方向を塞ぎ、闇霧から、牛頭鬼と馬頭鬼が出現する!

 応戦をしている時間が勿体ない。このまま突っ込めば振り切れるだろう。だが、連中が自分を追って来てくれれば良いが、YOUKAIミュージアムに攻撃を仕掛けられたら、残った紅葉と粉木だけでは対応できない。


「叩くしかないか!」


 左腕のYウォッチに収納された属性メダル『炎』を抜き取って、マシンOBOROのハンドル脇スロットに装填!EXザムシードは、アクセルを捻って、タイヤから炎を発したマシンOBOROを加速させ、牛頭鬼&馬頭鬼に突っ込んでいく!

 朧ファイヤー発動!しかし、牛頭鬼&馬頭鬼は回避!鬼達は表皮が軽く焼けただけで、致命傷を与えることは出来なかった!EXザムシードは、小さく舌打ちをした後、マシンOBOROを駐める!


「さすがは中級妖怪。簡単には倒せないってか?」


バイクから降りて身構え、Yウォッチのメダルホルダーから『蜘』メダルを抜き取って、Yウォッチのスロットに装填!EXザムシードの正面の空間が歪んで召喚された妖刀を握る!


「・・・ん?」


 いつもの妖刀と少し違う。刀身が鋭利な輝きを放ち、手にしただけでも、「自分は今までより強くなった」と錯覚しそうになる。刀身は、これまでよりも少し長くて、鎬筋から鎬地に細かいレリーフが施されており、豪華に装飾された束にはメダルを嵌める窪みが2つある。1つが妖怪を封印する為の白メダル装填用なのは解るが、もう1つの窪みは何に使うのだろうか?


「重ね掛けが可能ってことか?」


 試してみる価値はありそうだ。従来通り重ね掛けが不可能なら、システムが拒否をして、自動でリミッターが掛かるはず。EXザムシードは、マシンOBOROにセットしてある『炎』メダルを抜き取り、メダルホルダーから引き抜いた白メダルと並べて、妖刀オニキリの柄に装填。鎬筋のレリーフが赤く輝いて、妖刀の刀身が炎を帯びる。数秒ほど様子を見るが、特に‘拒否反応’の類いは発生しない。


「行けそうだな。」


 EXザムシードが、牛頭鬼&馬頭鬼に向けて突進を開始する!鬼達も、迎撃態勢で向かってる来る!


「はぁぁっっ!!」


 距離を詰めて、妖刀オニキリを振るうEXザムシード!牛頭鬼は左に、馬頭鬼は右に動いて回避をする!しかし、オニキリから伸びた炎の刃が牛頭鬼&馬頭鬼に着弾!左右に弾き飛ばされた牛頭鬼と馬頭鬼を見たEXザムシードは、オニキリを刺突の姿勢で構え直して、牛頭鬼目掛けて突進!一突きで腹を貫いた!


「ブモォォォッッッッ!!」


 牛頭鬼は悲鳴を上げて爆発四散!闇の霧が散り、オニキリの柄に填められた白メダルに吸収される!


「次は馬面だっ!」


 一撃で相棒を失った馬頭鬼が逃走を開始!EXザムシードは、マシンOBOROを呼び寄せて飛び乗り、馬頭鬼を追う!


「刀がパワーアップしたってことは・・・銃も?」


 バイクを操縦しながら、Yウォッチから『鵺』メダルを抜き取って空きスロットに装填!弓銃カサガケ、改め、弓銃ヤブサメ召喚!メダルスロットは2つ有るが、あえて、白メダルはセットせず、『炎』メダルのみをセットして、銃身の弓身を展開して強弩モードに切り替える!


「朧!タイミングを合わせるぞ!!」


 弓銃ヤブサメの銃口を、逃げる馬頭鬼の背中に向けて発砲!火炎弾が発射され、馬頭鬼を粉砕して闇の霧が散った!


〈オ~~~~ボォ~~~~~ロォ~~~~~~~~!!〉


 マシンOBOROの干渉により、前方に漂う馬頭鬼の残骸に時空の歪みが出現!そのままOBOROを走らせ、時空の歪みに飛び込むEXザムシード!黄泉平坂フィールドに突入して、マシンOBOROは搭乗者の周りをバリアで包み、超音速モードに移行して爆走する!




-富運寺・仏殿の屋根-


 闇の塊に闇が集まり、大きな闇に変貌していく。酒呑童子が復活する様子を満足そうに眺めていた茨城童子は、控えているはずの場所に金熊童子しか居ない事に気付いた。


「ぬぅ?虎熊童子はどうした?」

「虎さんなら、狗塚にトドメを刺しに行ったよ。

 狗塚のことがだいぶムカ付いていたから、

 放置しろってイバさんの指示が不満だったみたいだね。」

「やれやれ、御館様復活のめでたい時に立ち会わぬとは・・・困ったヤツだ。」

「どうする?呼び戻してこようか?」

「放っておけ。ヤツ(虎熊童子)にもプライドがある。

 今更、狗塚の小倅が迷い込んできたところで大勢は変わらぬが、

 ヤツ自身の手で仕留めたいのであろう。」


 茨城童子は、軽く溜息をつきつつ、虎熊童子の勝手な行動を黙認する。


「外部の退治屋は間に合わぬ。もはや、御館様の復活を邪魔する者は、何も無い。」


 屋根の上から戦況を眺め、勝ち誇り、上空に集まる巨大な闇を見上げる茨城童子。数ヶ月前は、鬼の計画を読み、用意周到に計画をしていた狗塚雅仁の妨害で、酒呑童子の復活は成し遂げられなかった。

 だが、この度は違う。失敗から学び、狗塚の裏をかき、ついに、主君の復活を成し遂げようとしていた。


「オォォォォォォォッッッッッ!!」


 殿間から、酒呑童子の唸り声が上がる。闇の塊は、徐々に主君の姿を形作っている。茨城童子は「勝った」「鬼の帝国が復活する」と確信をしていた。




-富運寺・総門-


 「ここから先は通さない」と言わんばかりに、帯刀をした銀髪の鬼が立ち、石階段下のガルダを睨み付けている。


「虎熊童子!」


 虎熊童子の背後には、数体の中級~下級鬼族が並んで、総門を塞いでいる。


「アニキはオマエの処理より御館様の復活を優先させたけどさ・・・

 拙者は、オマエがムカ付いて仕方無いんだよな。

 今までは、アニキの指示に従ってきたけど、

 もう、御館様の復活は決まったんだから、

 あとはアニキに任せて、拙者は拙者の自由で動く事にした。」

「フン!単独では俺に勝てないと判断して、数の暴力か?」

「拙者を舐めるなよ。コイツ等(中級~下級鬼族)はオマエを逃がさない為の壁。

 オマエを潰すのは、拙者1人だ。」

「・・・厄介だな。」


 ガルダの目的は、鬼の殲滅や虎熊童子の討伐ではなく、鬼のトップを叩くこと。虎熊童子が数で攻めてくれば、個と個の間隙を突破して、鬼の本陣に突入する術があるだろう。だが、虎熊とのサシの勝負で、部下達は壁に専念するならば、隙を生じさせるのは難しい。虎熊童子を倒さなければ、この先には進めないだろう。


「いや・・・あえて‘無い間隙’を突くか。」


 鳥銃・迦楼羅焔を構えるガルダと、刀を抜く虎熊童子!ガルダの1発目を合図にして戦闘開始!虎熊童子は、雷を帯びた刀身で、楽々と光弾を弾いた!


「迅雷!」


 全身が放電して光速に変化をした虎熊童子が、ガルダに突進をする!ガルダは、跳躍をして回避!しかし、虎熊童子は、光速移動と高い跳躍力で、楽々と空中のガルダに追い付く!


「掛かったな、鬼!」


 ガルダは翼を展開させて更に飛翔!鳥銃を構え、跳躍の最高点に達した虎熊童子を狙い撃った!


「しまったっ!」


 鬼の幹部は、足に闇の雲を纏わせて、空中浮遊をすることができる。だが、雷化(迅雷)との併用は出来ない。

 放電させた刀身で光弾2発を弾く虎熊童子!しかし、空中では踏ん張りが利かずに体勢を崩して、3発被弾して石階段に墜落する!

 ガルダは、追い撃ちの連射で、石段に這いつくばる虎熊童子の動きを止め、空を滑空して総門の屋根に着地!壁役として門を塞いでいる中級~下級鬼族を無視して、境内側に飛び降りて駆け出す!ガルダの考えた「無い間隙を突く」とは、「壁があるから突破できない」と思い込む心の隙を突くことだった!


「おい、役立たずどもっ!なんでアイツ(ガルダ)を止めないんだよ!」


 立ち上がった虎熊童子が、怒鳴りながら総門までの石階段を駆け上がる!


「虎熊様が‘手を出すな’と言ったので・・・。」

「追えっ!ボケッと眺めているだけじゃ、壁役にもならないだろうがっ!」


 仏殿に向かうガルダを、虎熊童子と部下達が追う。一方のガルダは、穴だらけの包囲網を突破したものの、このまま突き進めば待機中の鬼達と、背後から迫る虎熊童子達の挟み撃ちにされると把握している。


「マシン流星、来い!」


 背後との距離を確認しながら、Yウォッチに向けて愛車に呼び掛けるガルダ!富運寺の手前に止められていたヤマハ・MT-10が起動をして、光を放ち、富運寺に向けて自走開始!ボディから機械的な羽が出現して飛び上がり、空中でガルダの位置を補足して急降下を開始!


「来たか!」


 マシン流星が、光輝きながら降りてきて、走るガルダと並走をする!Yウォッチから、妖怪野鉄砲を封印した『砲』メダルを抜き取って、空きスロットに装填すると同時に立ち止まるガルダ!マシン流星が変形をして、カウルが開いて砲身が出現!妖砲イシビヤに姿を変える!

 ハンドルを握ったガルダが、ハンドル脇のスロットに白メダルをセットして、タイヤを軸にして妖砲を回頭させ、迫ってくる虎熊童子達に砲口を向けた!


「纏めて消し飛べ!」

「げっ!マズいっっ!!」


 想定外の攻撃に迫られた虎熊童子達は、横っ飛びで回避をするが、妖砲イシビヤ放たれた巨大光弾が、容赦無く飲み込んで吹き飛ばした!

 部下の中級~下級鬼族が地面を転がり、全身を闇霧化させて消滅!辛うじて立ち上がった虎熊童子が、憎々しそうにガルダを睨み付ける!


「おいおい、ぶざけんなっ!これは卑怯だろうっ!

 拙者はサシの勝負をっ!?」

「それは、俺を倒すという貴様の欲望を満たしたいだけ!

 貴様等に正々堂々等という概念はあるまい!」

「ぐぅぅぅ・・・くそっ!マジでムカつくっ!」


 力尽き、その場に崩れ落ちる虎熊童子!爆発四散をして闇霧と成って散る!




-仏殿の屋根-


 茨城童子が、険しい表情で総門側を眺める。閃光が見え、虎熊童子の気配が消滅をした。


「愚か者め。無意味なことに余計な執念を燃やすから、こうなる。

 だが・・・貴様の犠牲は無駄にはならぬ!」


 先代ガルダの武装に大砲(妖砲イシビヤ)は無かった。現在のガルダの新装備なのだろう。閃光の照射時間と範囲を考慮すると、この場に集まった百鬼夜行を一撃で全滅させる威力は無い。しかし、復活中の酒呑童子が直撃を喰らえば、消滅させるくらいの攻撃力はある。

 意図的ではないが、虎熊童子は自分を犠牲にして、茨城童子の認識していない‘ガルダの切り札の破壊力と限界’を示してくれたのだ。


「金熊童子、今の砲口を退けろ!

 数分程度で良い!御館様が安定するまでの時間を稼いでくれ!」

「あいよっ!」


 金熊童子は、たまたま目に止まった鬼数体を連れて、迎撃に出動。采配を済ませた茨城童子は、再び、酒呑童子の復活に注視をする。




-境内-


 進行方向から、幾つもの闇の塊が押し寄せてきた!ガルダは、マシン流星を駐めて降り、鳥銃を構える!口上や挨拶は一切無し!闇塊の1つから、いきなり風を纏った無数の衝撃波が飛んで来た!


「残る幹部・・・金熊か!」


 ガルダは衝撃波を回避しつつ、初手を仕掛けてきた闇塊に鳥銃を向けて発砲!標的は楽々と光弾を回避するが、その真後ろを飛んでいた別の闇塊に着弾!不運な闇塊は、悲鳴を残し、実体化をすることなく消滅をした!


「あっ!ちゃんと避けろよ、ウスノロっ!」

「オマエが邪魔で、後のヤツには俺の攻撃が見えなかったんだ!

 尤も・・・オマエが避けても後ろに当たるように撃ったのだがな!」

「ズルいぞ狗塚の小僧っ!!」

「先に仕掛けておいて、よく言う!」


 飛び掛かって来る数体の闇塊を、ガルダは発砲で牽制して回避をしながら距離を空け、妖槍ハヤカセを装備!大きく振り回して、群がる闇塊を退けた後、中段で構えて、正面から突っ込んでくる闇塊目掛けて穂先を伸ばした!闇塊は穂先を回避して、ガルダの懐に飛び込んでくる!ガルダは、伸びた槍を短縮させつつ、石突き側を振るって牽制!闇塊の中から出現した金熊童子の拳と、ガルダが突き出した石突きがぶつかった!ガルダはすかさず、通常サイズに戻った妖槍を振るって穂先側を向けるが、金熊童子は数歩後退をして回避する!


「チィ・・・先ほどの壁役とは違うか!」


 部下の鬼達が実体化をしてガルダを囲もうとしたので、妖槍を伸ばしながら振り回して退け、囲いから脱出する!


「雁首を揃えて、虎熊の仇討ちか!」

「イバさんからは、虎さんの仇討ちの命令は出てないよ!

 言われたのはオマエの足止めだけだ!」


 ガルダは、短い言葉のヤリトリから、金熊童子の戦法を察知する。「仇討ち」や「雌雄を決する」ならば、その他の鬼達に手出しをさせないような挑発を出来る。討伐が目的ならば、「数の有利」という慢心を突いて脱出する作戦を考えれば良い。

 しかし、ハナっから「足止め」を目的にされてしまうと、脱出の隙は作りにくい。虎熊童子の時とは違って、壊滅させなければ先には進めない。且つ、中級以下の鬼に足止めされても、力業で押し通る自信はあるが、幹部クラスが相手では話が変わってくる。


「茨城童子・・・相変わらず小賢しい!」


 妖槍を振り回して、寄せてくるモブ鬼達を叩き伏せるガルダ!だが、トドメの追い撃ちを掛ける前に、金熊童子に接近をされ、拳の連打を叩き込まれる!


「おいおい、失礼なヤツだな!

 褒めるなら、イバさんじゃなくて、目の前に居るオイラを褒めろよ!」

「・・・くっ!」


 ガルダは数歩後退しつつ、翼を展開させて上空にジャンプ!しかし、ガルダの動きを読んでいた金熊童子が、風を纏った拳の衝撃波を撃ち出してガルダの翼に直撃させる!ガルダは、飛翔を妨害されて地面に墜落!

 すかさず、妖槍を振るって、金熊童子を牽制!その間に、先ほど叩き伏せたモブ鬼達に体勢を立て直されてしまう!


「・・・キリが無い!」


 総大将(酒呑童子)や上級幹部(茨城や四天王)さえ潰せれば、烏合の衆と化した鬼族は、統率も、協調する意思も失い、各地に散っていく。だが、多勢に無勢すぎて、攻撃が幹部クラスまで届かない!

 再び妖砲イシビヤを使えば、金熊を含めた目の前の敵は纏めて葬れるが、波状攻撃を仕掛けられている現状では、妖砲にエネルギーをチャージする時間を稼げない。


「金熊だけでも倒せれば、突破口を作れるのだが・・・!」


 狙いを搾るべく金熊童子を睨み付けるガルダ!しかし、数秒前まで居たはずの場所に、金熊童子の姿が無い!


「なに?見失った?ヤツは何処に!?」


 ガルダの周りにも空にも、金熊童子の姿は無い!警戒しながら妖槍を振るって、襲いかかってきたモブ鬼2匹を退け、真正面に突っ込んできた大柄の鬼を貫く!


「これくらい避けろよな、ウスノロ!

 危なく、オイラまで刺されるところだったぞ!」


 大柄鬼の背中から金熊童子が飛び出す!モブ鬼に融合をして姿を隠していたのだ!金熊は、ガルダの懐に飛び込んで拳の連打を叩き込む!全身から幾つもの小爆発を起こして地面を転がるガルダ!


「ぐはぁっっ!!」


 やはり、多勢に無勢では、どうにもならない。パワーダウンが著しく、このまま戦いを行使すれば、短時間のうちに変身が解除されてしまうだろう。厳しい消耗戦を見越して、霊力を込めた銀塊で、妖幻システムへのパワーの補充をしながら、戦いを維持してきたが、残された銀塊は数えるほどしかない。残りの補充量を考えると、大技を打てても、せいぜい1~2回程度だろう。

 逃走は可能だろうが、鬼の討伐を宿命と考えるガルダには、「鬼から逃げる」と言う選択肢は無い。しかし、金熊童子すら破れないようでは、鬼の本陣を制圧する事など不可能である。


「せめて・・・相打ち覚悟で、金熊だけでも・・・。」


 ガルダは、妖槍を杖代わりにして立ち上がり、数歩退きながら身構えた。銀塊を握り閉めて念を送り、いくばくかのパワーを補充しながら、鬼の軍勢を睨み付ける。退治屋本部の第一次討伐隊は壊滅したが、数日中には第二次部隊が編成されて文架市に来るだろう。一体でも多くの幹部を倒しておけば、退治屋は有利に戦えるようになる。



-回想-


 幼い雅仁が、物陰に隠れて、父と退治屋達が、鬼達との死闘を繰り広げる様子を眺めている。「父さんは誰よりも強い」と信じて疑わなかった雅仁の目には、悲痛な光景が映っていた。

 妖幻ファイターガルダ=狗塚宗仁は、数本の刀で体中を貫かれ、既に死に体だった。霊力も、妖幻システムのエネルギーも尽きていた。次の一撃を繰り出すパワーも無い。

 しかし、鬼の襲撃によって、嫡子の雅仁を除いて、一族全てを殺害された恨みが、ガルダの肉体を突き動かしていた。満身創痍だが、力強く大地を踏みしめたガルダが、酒呑童子に対して、妖槍を構える。


「何故だ!?何故、倒れぬ!?」


 狗塚宗仁には、1つだけ残された手段があった。メダルの重ね掛けによる、妖幻システムの暴走。変身者の魂が食われる事を前提にした禁断の一撃。


「倒れるわけにはいかん!!オマエを倒すまでは!!」


 ガルダは、胸プロテクターの窪みに白メダルを、鳥銃・迦楼羅焔に雷メダルをセットして、妖槍に風メダルをセットして身構える。妖幻システムは、メダルの重ね掛けを出来ない。多大な負荷から使用者の生命を守る為に、メダルの複数使用をすれば、自動でリミッターが掛かってしまう。それは、ガルダも承知している。

 だから、リミッターを強制解除する。ベルトのバックルに、禁断のメダルを装填。安全装置が解除される。

 同時に、ガルダの全身は、天狗の強大な妖気に覆われ、狗塚宗仁の肉体を浸食し始める。


「うぉぉぉぉぉっっっっっっっ!!!」


 ガルダは、全身を一筋の流星に変えて、酒呑童子目掛けて突っ込んでいく。


 ガルダの命を賭けた一撃は、酒呑童子に大ダメージを与えた。だが、当時の妖幻システムでは、酒呑童子を討伐することは出来なかった。雅仁の父・狗塚宗仁は、志半ばで倒れる。



-回想終わり-


「志半ば・・・父と同じか。」


 父・狗塚宗仁は、退くことよりも、命を糧にして一矢報いる選択をした。

 改めて考えれば、現在に至るまで鬼が存在している事実を考えれば、一族の全てが、宿命を果たせず、志半ばで倒れたということなのだろう。


「それが宿命・・・なのかもしれんな。」


 最大の奥義・アカシックアタック(突撃技)を使えば、この場にいる半数は仕留める自信がある。しかし、同時にエネルギー切れを起こして変身が解除されてしまい、敵陣のド真ん中で為す術を失う。


「だがそれでも・・・鬼に背を向けるよりはマシだ!!」


 ガルダは、Yウォッチから白メダルを抜いて、決意を込めて握り閉める。このメダルを胸部の窪みにセットした時点で、最大の奥義が発動される。

 その後の事は・・・枯れた家系の末路は、もう、考える必要が無い。間違いなく、残った鬼に、生命をもぎ取られるだろう。


「粉木さんと紅葉ちゃんは無事だろうか?

 佐波木はどうなった?」


 きっと、何も手を施せない状況で燕真の命は失われ、紅葉は泣いているのだろう。続けてガルダまで命潰えたら、彼女は悲しんでくれるのだろうか?


「・・・フン!俺らしくない感傷だな。」


 ガルダが、最期の決意を固め、鬼達を睨み付けた直後!


〈聞こえるか、狗塚!!

 死にたいなら勝手にすりゃいいが、それは、身を屈めてから考えろ!!〉

「・・・・なっ!!?」

〈ワカンネ~奴だな!そこに突っ立ってたら邪魔なんだよ!!

 背中に気を付けろ!!〉


 Yウォッチに入った通信が「どけ」と告げた!反射的に背後を振り返るガルダ!


「佐波木かっ!?」


ブォォォォォォンッッ!!

 総門屋根で、EXザムシードが駆るマシンOBOROが宙高く飛び上がる!バイクは、放物線を描くように落下をして、咄嗟に回避したガルダの真横を通過!ハンドル脇のスロットに『炎』メダルを装填して、朧ファイヤーを発動させ、スピードを緩めることなく鬼の軍団に突進!金熊童子は、想定外の乱入に驚く!


「何でオマエが!?オマエは、イバさんの闇に食われて死する運命だったはず!!」

「色々あって死なずに済んだんだ!」

「そんなバカな!?有り得ない!

 イバさんの闇を祓うなんて、イバさんよりも上位妖怪でなければ不可能だ!!」

「信じられなくても事実なんだよ!」


 EXザムシードは、タイヤスモークを上げながら180度ターンをして、正面で構えていた金熊童子を含む鬼達を、炎を帯びた後輪で弾き飛ばし、ガルダの脇に戻ってきた!直撃を喰らって弾き飛ばされた鬼達が、闇霧と成って蒸発をする!


「・・・・生きていたのか?」

「なんとかな!心配掛けてすまない!」

「その姿は?」

「俺にも説明できね~けど、こうなった!

 ・・・乗れ、この先に行きたいんだろ!?

 まさか、俺と2ケツするくらいなら死んだ方がマシ・・・なんて言うなよ?」


 2人の妖幻ファイターは、互いの眼を見て頷き合い、ガルダがマシンOBOROのタンデムに飛び乗る!真っ直ぐにマシンを走らせるEXザムシード!目指すは仏殿の上にある巨大な闇の真下!目的は酒呑童子復活の阻止!


「い、行かせるかよっ!」


 その真正面、行く手を阻むように、半身の焼け爛れた金熊童子が立ちはだかる!


「金熊童子!さすがに、朧ファイヤーだけじゃ倒せないか!」

「当然だろ!オイラは強いんだ!」

「だったら、もっと強烈なのをくれてやる!・・・狗、運転を代わってくれ!」

「・・・なに!?」


 走行中のマシンOBOROのシートの上に、器用に立つEXザムシード!Yウォッチから白メダルを抜き取り、身を屈め、ブーツの窪みにセットする!


「・・・閻魔様の!!」

「おいおいおいおいっ!!」


 慌ててタンデムから、EXザムシードが放棄したハンドルを握るガルダ!マシンOBOROと金熊童子の間に、炎の絨毯が出現して、マシンの加速度を後押しする!


「裁きの時間だ!!」

「無茶苦茶な!!」


 顔を上げ、標的を睨み付けるEXザムシード!ガルダは、懸命にステップに足を伸ばし、ハンドルを操作して、マシンOBOROを操作するが、シートの上に居るEXザムシードが邪魔で前が見えない!

 EXザムシードは、両足を揃えて空高くジャンプ!踏み台にされたマシンOBOROは、フラフラと蛇行を開始!EXザムシードは、空中で一回転をして金熊童子に向けて右足を真っ直ぐに突き出す!


「うおぉぉぉぉっっっっっっ!!!

 エクソシズムキィィーーーッック!!!」


 それは、これまでのエクソシズムキックに非ず!新たなる力‘エクストラ・エクソシズムキック’!

 破壊力が跳ね上がった必殺の蹴りは、防御を弾き飛ばし、金熊童子の胸に炸裂!金熊童子は、宙高く吹っ飛ばされて地面に叩き付けられ、苦しそうに唸り声を上げながら立ち上がる!


「おいおい・・・嘘だろ?

 御館様が復活をする祝いの日なのに・・・?」


 金熊童子は、脱力して両膝を着き、その場に崩れ落ち、断末魔の悲鳴を上げて爆発四散!爆発を背に受けながら、ポーズを決めるEXザムシード!撒き散らされた闇霧が、EXザムシードのブーツに嵌められていたメダルに吸い込まれるようにして完全に消える!


「わぁぁぁっっっ~~~~~~~~~~・・・無茶しすぎだ!!」


 EXザムシードの背後で、ガルダを乗せたまま操作不能になったマシンOBOROが、山門脇の回廊に突っ込んでいく!ただでさえ、ガルダが満足に操縦できていない状況で、EXザムシードがジャンプ台にして走行バランスが崩れたのだから、当然の成り行きだろう。


ドォカァッ!!ガラガラガッシャ~~~~~ン!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ!」


 言うまでもなく、粉木自慢の彼岸カバーは粉々である。


「狗塚・・・・・オマエの所為だからな、弁償しろよ!」

「バカを言うな!間違いなく君の所為だ!

 わざわざ、バイク上からキックをする意味が無い!地面に降りてからやれ!」


 朧車が憑けない状態に成ったホンダVFR1200Fが虚しく横たわる。仕方が無いので、ガルダのマシン流星で、EXザムシードがタンデムに乗り、この先の仏殿へと向かった。




-仏殿正面-


 山門を抜け、上空にある闇塊の下に到着するEXザムシードとガルダ。百鬼夜行が襲いかかろうとするが、仏殿の屋根に建つ茨城童子が振り返って制止をする。


「まさか、金熊童子まで倒されるとはな。

 私が、貴様等を過小評価しすぎていたということか。」


 茨城童子は、ガルダを睨み付けた後、EXザムシードに視線を移す。


「小僧・・・ザムシードとか言ったな。

 貴様が、生きて、再び私の前に立つとは思いもしなかった。

 素直に認めねば成るまい。

 たかが人間が、私の想定できぬことを起こしたと・・・。」


 未だ酒呑童子は復活をしていない。残る幹部は、あと1体のみ。だが、追い詰められたはずの茨城童子は、脇目で上空の闇の塊を見て嘲笑う。


「想定外の戦闘能力を得た貴様等に対して、

 虎熊童子と金熊童子は、よく戦ってくれた!

 おかげで、時間は稼げた!」

「なにっ!?」

「刻は来た!!もはや、余力は必要有るまい!!」


 茨城童子は、足元の足元目掛けて拳を打ち込み、屋根を貫いて、仏殿の闇に渾身の妖力を注ぎ込んだ!茨城童子の放った妖力が、闇の塊に吸い込まれていく!主を復活させる為ならば、自身すら贄にする!それが茨城童子なのだ!


「ハハハハハッ!私の勝ちだっ!!」


ドォォォンッ!!

 途端に、地面が闇で染まり、黒い炎が上がり、EXザムシードとガルダを弾き飛ばす!

 茨城童子は、肩で息をしながら地に伏したEXザムシードとガルダを見下ろし、勝ち誇った表情で頭上高く拳を掲げる!


「拝顔するが良い!・・・御館様が・・・降臨をする!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 不気味な地鳴りがして、仏殿を中心に富運寺全体が大きく揺れる!


「間に合わなかった!?」


 立ち上がり、地鳴りの中心を睨み付けて身構えるEXザムシードとガルダ!仏殿の屋根に空いた大穴から、禍々しい闇の霧が立ち昇ってくる!


そして・・・

 仏殿の屋根に空いている大きな穴から、掌だけでもEXザムシードとガルダより二回りほど巨大で、真っ黒な手が出現!続けて、屋根を突き破りながら、真っ黒な顔ともう片方の手が出現し、やがて、入道雲のように巨大な上半身が、屋根の上に姿を現し、闇夜を覆った!全長40mほどの巨人である!


「オォォォォォォォォォォォォッッッッッッッン!!!」


 低く不気味な咆吼が、文架市内に響き渡る!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2

「な・・・なぁ、狗塚?酒呑童子って、あんなにデカイのか?聞いてないぞ。」

「俺も聞いてない。過去に俺が見た酒呑童子は、父より2周り大きい程度だった。」

「念の為に聞くけど・・・狗塚家の技術に巨大化とか無いのか?」

「有るわけ無いだろ!そんな物が有れば、とっくに活用している。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だよな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうやって倒すんだよ!?あきらかに、範疇じゃないだろう!!」


 想定外すぎる巨大妖怪を目の前にして、動揺をするEXザムシードとガルダ!しかし、この状況に動揺を隠せないのは、彼等だけではなかった!


「御館様が、ただのモノノケに!?・・・そんなバカな!?

 こんなハズではない!何をしくじった!!?」


 巨人の出現は、人間サイズの酒呑童子の復活を画策した茨城童子にも想定外のようだ!懸命に主君の名を呼ぶが、巨人は‘聞く’という機能が無いのか、茨城童子の呼び掛けには一切耳を傾けない!それどころか、一番身近にある獲物と判断したらしく、手を振り上げ、茨城童子目掛けて叩き付けた!!


ドォォォォンッッ!!


 辛うじて、巨大掌の直撃を回避する茨城童子!しかし、叩き付けられて崩壊をした仏殿屋根の瓦礫に巻き込まれて吹っ飛ばされ、境内に落ちて無様に転がる!


「オォォォォォォォォォォォォッッッッッッッン!!!・・・足リヌ」


 闇の巨人は、山門近くで呆然と成り行きを見上げていた中級~下級鬼族を発見!巨大な手を伸ばして、まとめて鷲掴みにした!


「ギャァァァッッッ!!」 「ヒィギィィィィ!!」 「グゲェェ!!」


 鬼軍団は、巨大な手に包まれた瞬間に、塵芥に変わり、巨人に吸収されてしまう!逃れた鬼達は、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う!しかし、次々と巨人が伸ばした手に掴まれ、闇に取り込まれていく!


「オォォォォォォォォォォォォッッッッッッッン!!!・・・違ウ、コレデハナイ」


 EXザムシードとガルダは、その光景を見て、生唾を飲み、数歩後退する。巨人が自分達の味方で、鬼を退治しているとは思えない。目に映る生命を全て破壊しようとしているのか?


「お・・・おかしい。鬼が鬼を食うなど・・・聞いた事がない。」

「アイツ(巨人)、何か探しているのか?」




-YOUKAIミュージアム-


 異常を察知して、空を見上げる粉木。夜の帳が降りた空だが、暗く輝く巨大化怪物の姿が、粉木の眼にはハッキリと見え、地の底から響くような地鳴りが体に伝わる。


「なんや・・・あれは?燕真達は、何と戦っておるんや!?」


 いくぶんかは体力を回復させた紅葉ではあったが、巨人の出現を境にして、苦しそうに蹲る。


「く・・・苦しい・・・体が・・・あの怪獣に引っ張られる・・・。

 気が・・・遠くなる!!」

「しっかりせい、お嬢!

 チィィ・・・体力が消耗しとるお嬢では、

 あんな邪気に当てられたら、一溜まりもないがな!

 しゃーない!これしか思いつかんわ!!」


 粉木は、蝙蝠が象られた変身アイテムを構えて、一定のポーズを取る。漆黒の西洋騎士のような装備が粉木の体を覆い、異獣サマナーアデス登場。防御召還をしてマントで装備し、苦しそうにしている紅葉に覆い被せて、指で空に印を切って結界を張る。


「ワシが出来る中で、最大の防御や!?これでちっとは楽になるはずやで!」

「・・・ぁ、ぁりがとぅ・・・じぃちゃん」




-富運寺-


 EXザムシード、ガルダ、茨城童子を除いて、敷地内にいる全ての異形の者が巨人の中に取り込まれた。次の餌を求めて周囲を見回す闇の巨人。


「こんなハズではない!!

 御館様!!私です、貴方の忠臣・茨城童子です!!お解りにならぬのですか!?」


 奧社の屋根に飛び乗り、大振りのアピールで、懸命に主の正気を取り戻そうと呼び掛ける茨城童子!同時に、巨人の次の餌が決まった!忠臣の忠節は、闇の巨人にとっては‘餌のある場所を教えてくれる声’でしかなかった!茨城童子の足元に、闇の巨人の大きな手の影が射す!


「オォォォォォォォォォォォォッッッッッッッン!!!・・・オマエナノカァァッ」

「御館様ぁぁぁっっっ!!!・・・・うわぁぁぁっっっっっっっ!!!」


ドォォォォォォォォッッッン!!!

 巨大な手を振り上げ、茨城童子目掛けて振り下ろす闇の巨人!再び、闇の巨人が手を上げた時、其処にはもう、茨城童子の姿は無かった!


「く・・・食いやがった。」

「小賢しく翻弄してくるヤツだったが・・・随分と呆気ない最期だ。」


 敷地内に残るのは、2人の妖幻ファイターだけになる!


「・・・どうやって倒す?アンタなら、何か思い付いているんだろ?」

「あの巨人は、酒呑童子のメダルを依り代にして集まった闇の塊。

 依り代を潰せば、巨人は消滅する!・・・多分な。」

「・・・で、メダルは何処に?」

「・・・巨人の中だろう。」

「巨人を倒さなきゃ・・・依り代を潰せないって事か?」

「・・・そうなるな。」

「それは・・・大変・・・・だな。」


 絶望に近い状況であり、否定的な意見しか出ないが、2人の妖幻ファイターの意思は固まっていた!互いの目を見て頷き合い、素早く散開する!


「死力を尽くして、ここで巨大な化け物を倒す!」


 ガルダは、闇の巨人の正面に立ち、鳥銃・迦楼羅焔を構え、間合いを空けながら光弾を連射する!通常攻撃程度では、ダメージが全く通らないのは想定済み!あくまでも、注意を引く為の行動である!

 案の定、知性を感じられない闇の巨人は、ガルダ目掛けて巨大な手を伸ばしてきた!ガルダは、数歩後退しつつ、翼を展開して飛翔!掴みかかってくる巨大な手を回避する!

 その間に、EXザムシードは闇の巨人の真横に移動して、妖刀オニキリを装備!柄の窪みに『炎』メダルを装填する!


「うぉぉぉぉっっっっっ!!!」


 炎に包まれた妖刀を構えて、闇の巨人に突進するEXザムシード!宙高く飛び上がって、巨人の太股に鋭い一撃を叩き込んだ!!


「ウオォォォォォォォォォォォォッッッッッッッン!!!」


 苦しそうな咆吼を上げる闇の巨人!手応え有り!着地をしたEXザムシードは、すかさず間合いを空けて、次の攻撃のタイミングをはかる!

 闇の巨人は、EXザムシードを睨み付け、細い眼を大きく見開いて、両手で掴みかかる!


「オォォォォォォォォォォッッッン!!!・・・オマエノ纏ウ妖気ハ!」


 2人の妖幻ファイターにとって、ガルダのハンドガン連射に続き、EXザムシードの斬撃も揺動である!

 本命の攻撃はこの次!マシン流星(バイク)を呼び寄せたガルダが、マシン流星を妖砲イシビヤ(大砲)に変形させ、白メダルを装填して、巨人の頭部に狙いを定める!


「吹っ飛べぇぇっっ!!!」


ドォォォォォォォォォンンン!!!

 ガルダが放った後頭部への一撃は、ガルダの身長の倍ほどもある闇巨人の頭部の上半分を吹っ飛ばした!いくら巨大な怪物とは言え、頭を失って生態機能を維持出来るわけがない!

 EXザムシードとガルダは、それぞれ、離れた盟友に対して、サムズアップをして健闘を称え合う!


・・・が!!


 闇の巨人は動きを止めない!酒呑童子のメダルに集まった闇の塊に、姿態という概念は無い!頭が無くなった事などお構い無しに、巨大な両手で、「勝利した」と確信して足を止めたEXザムシードを掴んだ!


「うわぁぁぁぁっっっっっっ!!!」

「佐波木ッッッ!!!・・・・し、しまったっ!!」


 更に、背中から何本もの触手が伸びてきて、動揺するガルダに絡みつき、体内に取り込もうと、ガルダごと触手を引き戻していく!

 闇の巨人に襲われた鬼達の末路を目の当たりにしてきたガルダにとって、捕まれば吸収されてしまう事は解りきっている!闇の巨人の背中に沈められていくガルダは、念の隠った銀塊を手に取って、周囲に防御の結界を張り、闇に染まる事を防ぐ!


 数秒後・・・結界で身を守ったガルダが、翼を展開させて、闇の巨人の背中から空に脱出!肩で息をしながら、EXザムシードが捕らえられた場所を見おろす。結界術の使えない燕真が、闇に飲まれて生きていられるハズが無い。既に闇に吸収されてしまったのだろうと、諦めに似た感情が込み上げてくる。




-YOUKAIミュージアム-


「燕真・・・狗塚・・・」

「大丈夫・・・だょ・・・」

「・・・ん?」


 戦場の方角を見つめ、若者達を案じるアデスに、紅葉が応える。その眼は「信頼しきった自信」に満ちあふれている。


「アイツは燕真なんだもん・・・絶対に大丈夫!」


 7年前のあの日、「最後まで走る事を止めなかった」ように、紅葉の声に応えて「絶望的な闇から帰還した」ように・・・燕真は必ず笑顔で帰ってくる。紅葉は、それを信じる。


「燕真君・・・貴方に、こんな戦いで倒れてもらっては困るの。」


 少し離れた紅葉の死角では、紅葉の母・有紀も固唾を飲んでいた。


 対照的に、周りの町並みは、普段と何も変わらない。文架市の人々は、いつも通りの夜を過ごしている。

 戦場となっている富運寺には鬼の結界が張ってある。その為、妖幻ファイターや、一定の修業をした退治屋や、特殊な能力を持つ紅葉以外の、一般人は、今の文架市で起こっている異常事態には気付いていない。

 人によっては、妙な胸騒ぎを感じたり、「何処かで雷が鳴った?」と思う程度。


 妖怪は、いつの間にか、平穏な生活に忍び寄るもの。そして、妖幻ファイターは、人知れず、命を掛ける。




-富運寺-


バアァァンッ!!

 EXザムシードを掴んでいたはずの、巨人の両手が弾け飛び、中から妖刀オニキリを掲げたEXザムシードが出現をする!

 無我夢中で応戦したが、食われて当然で、何故、助かったのか解らない。ただ、闇に掴まれた瞬間に、ベルトから‘紅葉との精神邂逅’の時と同じ光が広がり、EXザムシードを護ってくれた。無事を安堵したガルダが、EXザムシードに駆け寄る。


「どういう事だ、佐波木?・・・今のは新しいザムシードの性能?」

「いや、解んね!・・・でも、多分、紅葉の・・・」


 EXザムシードから次の言葉は無かったが、ガルダは「紅葉が何らかの結界を施していたなら説明が付く」と、直ぐに納得をした。闇に蝕まれる燕真を救った紅葉の強大な霊力は、ザムシードの潜在能力のリミッターカットをしていた。そして同時に、闇に対する防御力を上げていた。

 闇の巨人が、優先的にEXザムシードを取り込もうとした理由は、怪物が、EXザムシードの中にある紅葉の霊力を欲したからである。


 背中に大穴を空けられ(ガルダ脱出時)、両腕を吹っ飛ばされた(ザムシード脱出時)闇の巨人が大きく仰け反る!背中の穴が塞がり、失った頭部と両手が再生をしていく!


「キリが無いな!せっかくぶっ壊した場所が直ってく!」

「そうでもないさ!何処を叩けば良いのかは解ったからな!!」

「どういう事だ!?」

「奴の中に取り込まれた時に見付けたんだ!!依り代の場所をな!!」


 闇の巨人の胸を指さし、その位置に「狙うべき酒呑童子のメダルが密集している」と示すガルダ。メダルを直接攻撃できれば、闇の塊は集合を維持出来なくなって分散消滅する。しかし、妖砲イシビヤの一撃で喪失させたダメージを考えると、厚い胸板を貫くには、それ以上の攻撃=最強の一撃が必要になる。


「銀塊の念貯蔵量を考えると一発が限界・・・失敗も不発も許されない!

 俺が空で、準備をしている間、奴の注意を引き続ける事が出来るか、佐波木?」

「‘出来るか?’も何も、それしか無いんだろ!?

 ・・・だったら、やるっきゃない!」

「頼むぞ!」

「・・・了解!!」


 再び散開するEXザムシードとガルダ!ガルダは、闇の巨人の死角に廻ってから空へ飛び、EXザムシードは妖刀オニキリを携えて、闇の巨人に突進をする!EXザムシードに興味を示し、「EXザムシードと融合している霊力」を欲する闇の巨人は、ガルダには目もくれず、EXザムシードのみを付け狙う!


 逃げすぎて町に出さないように、近付きすぎて捕まらないように、闇の巨人との間合いをはかりながら動き回るEXザムシード!巨大な怪物に対する妖刀オニキリによる攻撃は、一定のダメージは与える物の、どれも決定打にはならない!・・・しかし、それで充分だった!!


 上空では、念の隠った銀塊を使い切って、エネルギーを回復させたガルダが、Yウォッチから白メダルを抜いて、胸部の窪みに装填をする!開いていた翼が、光り輝きながら今まで以上に大きく広がり、風を帯び始める!ガルダは、同時に数枚の護符を取り出して、空中に敷き、指で空に印を切る!

 最大最強の貫通力と攻撃力に、護符による邪気祓いの上乗せをして、おぞましい怪物を、完全に消滅させるつもりだ!


「おぉぉぉぉっっっっ!!!行くぞぉぉぉっっっ!!!!

 アカシックッッッ!!アタッッッッーーーーークッッッッッ!!!」


 輝く鳥と化したガルダが、流星のように光の尾を伸ばしながら、闇の巨人目掛けて突進をしていく!



-YOUKAIミュージアム-


「・・・綺麗」

「あれは・・・ガルダの‘迦楼羅変化’やな!」


 紅葉は、異獣サマナーアデスの結界に護られながら、眩い流星をウットリと眺めていた。



-富運寺-


「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!」


 流星化して一直線に突進をしてくるガルダ!それまでEXザムシードばかりを追っていた闇の巨人だが、流石にこの一撃を喰らってはマズイと判断したらしく、両掌を重ねて、前に突き出し、流星に対して防御の姿勢を取る!


ドォォォォォン!!

 アカシックアタックと、闇の巨人の防御が激突!ガルダの突進力が、闇の巨人の腕をジリジリと押し戻す!そして、出力を全開にさせた超奥義が、闇巨人の‘右肘から先’を粉々に吹っ飛ばした!しかし、僅かに突進力が鈍ってしまい、右手の後ろに添えられていた左手を押し切る事が出来ない!


「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!」

「オォォォォォォォォォォォォッッッッッッッン!!!」


 今度は、ガルダの突進が徐々に押し戻されていく!

 闇が厚すぎる。このままでは拙い。何とか左手の防御を破壊したとしても、肝心の闇巨人の胸板を貫くパワーが無くなる。もはや、エネルギーのストックを持たないガルダは、この一撃で全てを決めなければ成らないのに、渾身攻撃が目標に届かない。 「ここまでか?」「枯れた才能の限界か?」との思いが、ガルダの脳裏を過ぎる。


「うおぉぉぉっっっっ!!狗塚ぁぁぁっっ!!!

 ケツを蹴飛ばされたくなかったら、

 シッカリと足を閉じて踏ん張ってろぉぉっ!!」

「・・・・なにっ!!?」

「もう、これしか思い付かねー!怪我しても恨むなよっ!!」


 流星の尾が伸びる真下の地面!一直線に突っ走って来るEXザムシードがいる!全く根拠は無いが必殺技のオーラを纏ったガルダならば、直撃で蹴り殺すのではなく、自分のオーラをぶつけて後押しできるはず!自分ではなく、呪術を使えるガルダを押し込まなければならない条件下では、EXザムシードは、他の手段など思い付かなかった!空高く跳び上がり、蹴りの体勢を構える!


「エクソシズムキィィーーーッック!!!」


 両足を揃え、全身を硬直させるガルダ!やる事がメチャクチャすぎる!定石もなにも有った物では無い!こんな乱暴な合体技など、経験した事が無い!だがそれでも、このまま押し戻されて失敗するよりは、試す価値があるように思える!

 EXザムシードのEXエクソシズムキックが、ガルダの足の裏目掛けて叩き込まれる!


ドォォォォォッッッッッッ!!!

 凄まじい推進力を得たガルダのアカシックアタックは、闇巨人の左手を破壊!推進力を果たしたEXザムシード諸共に、光の矢と化して、巨大怪物の胸を貫いた!


「依り代・・・あそこか!!」


 EXザムシードとガルダの眼に、『酒』メダル5つを覆った闇の球体が見える!


「あれがコアだ!」


 闇の心臓部に到達したガルダは、EXエクソシズムキックの衝撃で痺れる全身と、飛びそうな意識を奮い立たせる!普段ならば、‘ある程度回復するまで体を休める’ほどのダメージだが、今この時だけは、体が動く限りは、次の一手を打たなければ成らない!


「うおぉぉぉぉぉぉっっっっっっっ!!・・・オーーーーンッッ・浄化っ!!」


 闇巨人の中にある依り代目掛けて、用意しておいた護符を放ち、更に残された霊力を、思いの丈と共に叩き込むガルダ!もはや、何の防衛手段も持っていない闇のコアは、ガルダの除霊術を受けて粉々に砕け散った!


 その直後、闇巨人の背中から、闇巨人を貫通したガルダとEXザムシードが飛び出してくる!

 最期の一撃に全てを使い切ったガルダにも、奥義の連続使用をしたザムシードにも、もはや変身体を維持するエネルギーは残されていなかった。怪物から飛び出すと同時に、変身が解除され、生身の燕真と雅仁は、地面に向かって真っ逆さまに墜落していく。


「ヤバイ・・・アレを壊す事だけに集中しすぎて、

 倒した後の事まで考えていなかった」

「佐波木・・・それは余計な心配で済みそうだ。」

「・・・ん?」


 次の瞬間には、燕真と雅仁の体は、飛行する異獣サマナーアデスの両腕の中にあった。


「バカもんども!墜落死する気かいな!?

 ・・・少しくらいは、先の事も考えときいや!!

 特に狗塚・・・オマンは、もうちっと計画的なハズやろ!

 燕真の無計画ぶりが伝染しとるで!!」

「ありがとうございます、粉木さん。」

「粉木ジジィ!!無計画ってなんだよ!!?臨機応変と言え!」

「誰が子泣き爺やねん!」


 マントを広げて、地面にゆっくりと着地するアデス。同時に、燕真と雅仁も、地に足を付けた。3人は、依り代を失い、もはや集合体を維持出来なくなった闇の塊を見上げる。


「燕真も狗塚も、ごくろうやったな。」

「・・・終わったな」

「あぁ、これで終わりだ。依り代を失ったコイツには、何も出来ません。」


 雅仁は、「宿敵の討伐成功」の喜びを噛み締めながら、それは自分1人では為し得なかったと感じていた。出会った当初「未熟者」と見下した男の機転や加勢がなければ、勝利は掴めなかっただろう。以前、粉木は「未熟者だが土壇場では腹が据わる」と評していた事を思い出す。


「確かに・・・凡人な事に変わりは無いが・・・

 未熟ゆえの意地というものもあるんだな」

「何だ、オマエ?今、スゲー馬鹿にしただろ?」


 雅仁を睨み付ける燕真。しかし雅仁は、燕真に向けて、握手をする為に手を差し出している。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「褒めているつもりだ」

「・・・フン!偉そうに!」


 恥ずかしそうに手を伸ばす燕真。満足そうな笑みを浮かべる粉木の目の前で、燕真と雅仁の手が結ばれる。


「そういや、燕真・・・

 空からチラッと見えたんじゃが・・・また、彼岸カバー割りおったんかい?」

「今回は俺じゃない!狗塚がOBOROの操作をミスったんだ!」

「違う!全部、佐波木の責任だ!!佐波木がバイクを蹴飛ばしたんだ!!

 どう考えても、あの状況で、あの攻撃は、必要無かったはずだ!!」

「うわっ!それ言う!?

 せっかく助けてやったのに、少しも恩を感じていないのか!?」

「良く言う!俺ごと轢こうとしたり、蹴り殺そうとしたのは何処の何奴だ!!」

「うわっ!うわっ!もしかしてオマエ、俺の格好良い活躍に嫉妬してんのか!?」

「凡人が無駄に格好を付けようとするから、こんな無様な事になるんだ!!」


「なんやオマン等・・・ようやっと解り合えたと思ったのに気のせいか?

 相変わらず仲が悪いのう?」


 巨人は、全身の闇を蒸発させながら、力無く両膝を落とし、最後の力を振り絞るかのようにして、南南西の方角に肘から下の無くなった腕を伸ばす。

 粉木と雅仁は、妖気を失いつつある闇の塊が、漠然と新たなる妖気を求めていると解釈した。しかし、依り代を失った闇の塊に、新たなる妖気を得る手段は無い。


「オォォォォォォォォッッッッッッッン!!!

 ・・・見付ケタゾ・・・其処ニ有ッタカ・・・我ガ・・・タ・・・・・」


 離れた所から状況を見守る紅葉は、その聞き取りにくい不気味が言葉が、まるで、自分に語りかけているように思えた。

 そしてそれは、闇の巨人にとって、最期の咆吼であった。粉木や雅仁の想定した通り、崩壊する闇は、巨人の形を留められなくなり、空気中に融け、遂には、完全に消滅をする。




-文架大橋西詰め-


 ビルの屋上で、身長2.5mほどの漆黒の鬼と、和服を着た女妖怪が、巨大闇塊の終焉を冷ややかな視線で見詰めていた。


「無様だな!!」

「オヌシらしくない顛末ね。」


 女妖怪が足元に視線を移すと、そこには長髪の青年が倒れていた。優麗高の講師・伊原木鬼一である。声を掛けられた伊原木が目覚める。


「ヌゥゥ!大嶽丸と天逆毎!御館様の政敵が、何故、此処に!?」


 鬼神・大嶽丸と、鬼神軍参謀の天逆毎。彼等は、地獄界において、酒呑童子と覇権を争った敵対関係にある。


「敵視をする前に、オヌシを救出した礼くらいは言って欲しいわね。」

「なに!?」


 鬼の姿を保っていられないほどに消耗した茨城童子ではあるが、闇の巨人に吸収される寸前に、大嶽丸達に救出されたのだ。


「オマエの主・酒呑童子は、俺にとっては、憎むべき宿敵ではなく好敵手。

 切磋琢磨できる強敵の復活を祝いに来たら、ただの汚物が暴れ回っている有り様。

 さすがの私も、些か驚いている。」

「・・・くっ!」

「呼応した鬼族は、汚物に食われ、オマエを残して全滅。

 ・・・何とも御粗末ではないか?」

「全てが順調だったはず・・・

 何故、この様な事に成ったのか・・・皆目見当も・・・」

「足りぬのだよ、最も肝心な物が!!」

「い、一体何が?」

「魂だ!いくら欠片が集まっても、それを動かす肝心の中核が無いから、

 あのような知性の欠片も無い汚物に成り下がったのだ!

 オマエや、他の鬼共を喰らったのも、

 足りない魂と近しい存在だったからであろうな!」

「そんな・・・バカな?」


 力無く俯く伊原木。大嶽丸は、ようやく伊原木の方に視線を向ける。


「我が好敵手・酒呑童子の魂は既に別の何か転生をしてしまった・・・

 ゆえに、此度の呼び掛けに応じなかった・・・そんなところであろうな。

 酒呑が解体をされてから、17年もの歳月が流れておるのだ。

 何があってもおかしくなかろう。

 この度は、その可能性を想定できなかったオマエのミスだ。」

「・・・チィィ」

「まぁ良い。オマエのような有能な鬼を失うのは惜しいゆえに助けた。

 報復を望むならば、我が参加に加われ。兵ならば、いくらでも貸してやるぞ。」

「こ、断る!貴様の手は借りぬ!

 例え、この身1つになっても、私は、我が主の為に働く!

 御館様が別の者に転生をしているなら、それを潰して、御館様の魂を取り戻す!」

「そうか。それも悪くはあるまい。オマエの孤軍奮闘・・・楽しませてもらおう。」

「・・・フン!」


 伊原木は、姿を闇に変えて飛び上がり、空の彼方の去って行く。

 直後に一陣の風が吹き、砂埃が舞い上がり、大嶽丸と天逆毎は、音も無くその場から姿を消すのであった。




-YOUKAIミュージアム-


 闇の巨人が蠢く間、紅葉には、その場に引かれそうになる恐怖感があったが、今はもう、妙な干渉力はない。些か疲れてはいるが、気持ちも落ち着いている。

 戦場の方向を見て、英雄達の帰還を待ち焦がれる紅葉。やがて、疲れ果てているが誇らしげな表情の、燕真が、ホンダVFR1200Fに乗って帰ってくる。


「おかえりっ!燕真っ!」


 満面の笑顔で大きく手を振り、駆け寄っていく紅葉。粉木は、ホンダ・VFR1200Fのタンデムで大手を振る。雅仁はヤマハ・MT-10に跨がったまま、紅葉に向けてサムズアップで返す。

 そして燕真は、少し面倒臭そうにして、額の前で2本指をピッと立てる。優しいクセに、優しさを表現するのが下手な、いつもの燕真である。紅葉はそれで良かった。


 黒くて厚い雲に覆われていた文架市の空には、いつの間にか、澄み渡った夜空が広がっている。それは、鬼の野望が阻止され、この都市が日常を取り戻した事を意味していた。

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