第18話・茨城童子の決起(vs茨城童子・虎熊・金熊)

-優麗高屋上-


 伊原木は、金熊童子から受け取った3枚の『酒』メダルを屋上の床に置き、一気合い発して姿を茨城童子に変化させ、空中に八卦先天図を描いた。


「若き生命よ・・・お館様の元へ!」


 茨城童子の念に呼応して、優麗高を包んだ結果が発動。生徒達の体から、緩やかに生命力が浮かび上がり、屋上に沸き出し、八卦先天図を通過して、3枚のメダルへと吸収されていく。


「一気に奪わないのか?」

「数ヶ月をかけて、この学校にある生命力の質は把握した。

 これくらいが効率的なのだ。」


 数秒で結界内の全生命力を奪うことも可能だが、それではお館様の復活に必要な生命力には足りない。供物を生かさず殺さず。仮に1時間で体力の2割を回復させるなら、3割を奪う。若い生命を回復させながら、時間をかけて奪い続け、『酒』メダルを満たす。急激に生命力を奪えば、霊感の強い者は、異常を感じて、学校から退避をしてしまう可能性もある。だから、緩やかに奪い続ける。

 3枚の『酒』メダルが満ちる頃には、生命力の弱い者は死に至るだろうが、それは、茨城童子の気にすることではない。それが茨城童子のやり方なのだ。


「狗塚の小倅と文架の退治屋は、虎熊童子に足止めをされ、妨害はできまい。

 あとは、待つのみ。」


 茨城童子の姿が、講師・伊原木鬼一の姿の変化。金熊童子が首を傾げて、屋上から立ち去ろうとする伊原木を、呼び止める。


「アレ?何処に行くの、イバさん??」

「授業だ。一応は、この学校の講師のフリをしているのでな。」

「こんな時まで?」

「供物達に異常を感じさせず、且つ、私が疑われずに人間界に紛れ込むには、

 無駄と思える行動も必要なのだよ。」


 伊原木は、金熊童子に3枚の『酒』メダルの防衛を任せ、いつも通りを装う為に塔屋に入って階段を降りていった。




-文架高屋上-


 鳥銃・迦楼羅焔を構えて連射を続けるガルダ!距離を空けて回避を続ける虎熊童子!ガルダの銃では、素早い虎熊を捉えることができず、接近戦が得意な虎熊は、ガルダに近付くことができない!ガルダのパワー切れが先か、虎熊の足が止まるのが先か、互いに決め手を欠いた我慢比べの長期戦に成りかけていた!


「ダメだ・・・狗塚の奴、鬼と対峙して冷静さを欠いてる。」


 ザムシードは、この戦いに違和感を感じていた。鬼達は、何の為に、文架高を戦場に選んだ?妖幻ファイターを誘い込んで一網打尽にするのが目的なら、鬼側は総力戦を挑んでくるのではないのか?

 文架市中に鬼印を施したのは、雅仁(ガルダ)が常々話題に出す茨城童子という鬼の幹部。文架高を妖怪の巣窟にしたのも、茨城童子なのだろうか?

 交戦中の鬼が、茨城童子なら、これがボス戦と解釈できるが、この場には虎熊童子しかいない。


「茨城童子ってヤツは、何処で何をしている?」


 漠然とした不安に駆られたザムシードは、Yウォッチを通信状態にして話しかけた。




-文架駅南側の踏切-


 遮断機が降りており、車内で苛立ちながら電車の通過待ちをしていた粉木が、ザムシードからの通信音に気付いて応じる。


〈今どこだ、ジジイ?〉

「文架高に向かってるとこや。

 戦況はどうや?ワシが行くまで、あと10分。持ち堪えられるか?」

〈ザコは片付いて、今は、狗塚が虎熊童子ってヤツと交戦中だ。〉

「虎熊やと?」


 やはり、鬼の幹部共が集まってきている。一定の予想はしていた粉木だが、改めて現実を知って驚いた。だが、ザムシードが通信を入れた目的は、虎熊童子出現の報告をする為ではない。


〈なぁ、ジイさん。文架高校以外で、異常が発生しているところは無いか?〉

「どういうこっちゃ?」

〈現れた鬼の幹部は虎熊童子だけ。

 茨城童子ってヤツが全く姿を見せないのはなんでだと思う?

 今まで、ずっと、慎重に動いていたヤツが、

 大掛かりな罠を貼った上で俺達を部下に任せて放置なん考えられるか?

 俺には、文架高校に足止めされているような気がして成らないんだ。〉

「狗塚はなんて言うてる?」

〈アイツは、鬼との戦いに熱くなりすぎていて、

 俺の話を聞いてくれる余裕が無い。〉

「・・・・・・・・・・・・・・・・」


 粉木の予想はザムシードと同じ。それどころか、ガルダが冷静さを欠くところまで含めて、鬼の策略のように思える。

 遮断機が開いたので車を前進させて踏切を渡りきったところで路肩に駐め、助手席に置いたノートパソコンをを開いて妖気反応を確認してみる。


「・・・こ、これは!」

〈どうしたジイさん?〉

「燕真・・・オマエの予想通りや。」

〈なにっ?〉


 まるで、文架高の派手な騒ぎで隠すようにして、優麗高からも異常な妖気が発せられている。文架高の事件は揺動だ。おそらく、ザムシードの指摘が無ければ、皆が文架高に意識を集中させてしまい、誰1人気付けなかっただろう。

 いつもならば、真っ先に異常に気付いて騒ぎ出しそうな紅葉から、何の連絡も無いことも気になる。


「至急向かえるか、燕真?」

〈何とかする!〉


 粉木には、「紅葉が異常に気付いていない」に対する一定の予想ができる。紅葉の母が紅葉に持たせている亜弥賀神社の御守りには、紅葉を霊的な外敵から守ると同時に、紅葉の突出した霊的能力を抑え込む効果がある。おそらく、鬼という強大すぎる敵に対して、紅葉の本能が危機を感じ取り、御守りの効力とリンクして紅葉の能力値を下げ、鬼に気付かれないように守っているのだろう。


「なんちゅうこっちゃ。

 最近、お嬢が‘調子が悪い’と言っていたのは、鬼が近くに居ったからや。」

〈なんか言ったか、ジイさん!?〉

「あとで説明をする!急かして済まんが、優麗高に向かってくれ!」


 通信を切った粉木は、進路を文架高から優麗高に変えて、車を走らせる。




-文架高・屋上-


 相変わらず、ガルダと虎熊童子は、決め手に欠く攻防を続けている。


「おい、狗塚!」

「鬼は俺が倒す!君は手を出すな!」


 ガルダは聞く耳を持たない。冷静に立ち戻らせてから説明すれば、自分達が揺動されていることを理解できるだろうが、今の頭に血が上ったガルダでは不可能だ。意を決したザムシードは、駆けていってガルダの隣に立つ。


「解ったよ。虎熊はアンタに任せる。・・・俺は」

「んっ?」


 ザムシードは、ガルダの肩に手を乗せて、軽く後ろに引いた!想定外を受けて、ガルダの虎熊への攻撃が一瞬止む!直後に、妖刀を構え、虎熊に突進をして行くザムシード!


「オマエ(ザムシード)、何のつもりだ!?」


 ガルダは攻撃を再開しようとしたが、銃の射線上にザムシードが入った為に射撃ができない!


「うぉぉぉっっっっっっっっっっっ!!!」


 ザムシードが、虎熊童子目掛けて妖刀を振るう!だが、接近戦は虎熊の得意レンジだ!目を布で覆っているにもかかわらず、風の動きと音でザムシードの動きを読み、楽々と回避をされてしまう!虎熊の心眼には、ガルダの動揺も手に取るように解る!


「ふははっ!オマエ達、仲間じゃないのか!?連携が滅茶苦茶だな!」


 妖刀を振り下ろした直後のザムシードに、虎熊が剣閃の連撃を叩き込んだ!素早く数歩後退をして、致命的な直撃を避けるザムシード!だがそれでも剣圧に押されて弾き飛ばされ、屋上の手摺りの外側に放り出された!


「チィッ・・・コイツ?」


 ザムシードを屋上から排除した張本人の虎熊童子は、違和感を感じて僅かに動きを止めた。心眼で魂胆を読み、落下したザムシードに追い撃ちをかけようとするが、ガルダが光弾の連射を仕掛けてきたので、直ぐに気持ちを切り替えて回避に専念をする!


「おい、佐波木っ!?」


 一方のガルダは、発砲で虎熊を牽制しながら手摺りに駆け寄って落下したザムシードを確認した!ザムシードは、空中の放り出されながら、事前に準備しておいた『朧』メダルをYウォッチに装填!呼び出されたマシンOBOROが、自走をしてジャンプ!落下中のザムシードを受け止め、校舎の外壁を走って安定させ、地面に着地をした!


「驚かせやがって!」

「焦らせてスマン!」


 マシンOBORO上で体勢を立て直して見上げるザムシード。変身を解除して燕真の姿に戻り、屋上のガルダを目が合う。


「狗っ!虎熊は任せた!先に優麗高に行って待ってるぞ!!」


 しばらく休めたおかげで、虎熊に喰らったダメージは回復をした。ガルダと共に行動できないのは些か不安だが、文架の退治屋はガルダではない。文架で起こる事件は、他者に頼らず、燕真が解決するべきこと。紅葉が危機に瀕しているなら、尚更、他人には任せる気は無い。

 燕真は、文架高の制圧をガルダに託し、マシンOBOROを駆って校庭から脱出して、優麗高に向かう。


「おい、佐波木っ!」


 敵前逃亡?優麗高で待つとは何のことだ?虎熊童子との決着を譲る気は無いガルダだが、燕真が戦線離脱をしてしまったことには驚きが隠せない。


「オマエの策略か?」

「何のことだ?」

「しらばっくれるな!

 アイツは、拙者の攻撃を喰らって、墜落したわけではない!

 ハナから、墜落を利用して、この戦場を離脱するつもりで、

 ワザと拙者の攻撃を喰らったから、致命打が一発も入らなかったんだ!」

「ヤツが・・・ワザと?」

「我らの作戦を見抜き、アイツを離脱させたんだろ?

 だが、未熟なヤツを茨城童子に宛てるなんて、愚策としか思えんな。」

「・・・茨城童子?」


 ガルダは、虎熊童子の指摘で、燕真の魂胆を理解する。文架高校に大掛かりは仕掛けを作ってガルダ達を誘き出しておきながら、待ち伏せていた幹部クラスは虎熊童子のみで、肝心の茨城童子が姿を見せない。それは則ち、文架高に仕掛けられたのは、ガルダとザムシードを足止めする為の揺動であり、鬼の副首領は、別の場所(燕真曰わく優麗高)で、真の策略を実行しようとしている。小賢しい茨城童子の考えそうな策だ。少し冷静に考えれば解ったはず。


「未熟者のクセに・・・いや、今は、佐波木に任せるしかないか!」


 冷静な判断ができなくて違和感に気付けず、燕真に出し抜かれたことを、ガルダは恥ずかしく感じた。同時に、クリアになった思考で、虎熊童子を睨み付ける。

 燕真に時間稼ぎをさせ、その間に虎熊童子を倒して、優麗高に駆け付け、まだ未熟なザムシード(燕真)では苦戦をするであろう茨城童子もガルダが倒す。


「フン!何一つ複雑な要素の無い明確な戦術だ!

 その為にも・・・先ずは、眼前の虎熊童子を成敗する!」


 銃の連射ばかりでは、膠着状態が続くだけ。虎熊童子の目的は、ガルダの足止めなので、このままではヤツの思う壺だ。


「ならば・・・ヤツの得意なレンジに誘い込んで隙を突くしかあるまい!」


 ガルダは、『蛮』メダルをYウォッチに装填して、妖槍ハヤカセを召喚して身構える!




-文架駅周辺-


 燕真が優麗高に向けてバイクを走らせていると、前方を見覚えのある車が走っていた。粉木が運転する車だ。燕真はスピードを上げて粉木の車に追い付き並走をする。燕真の接近に気付いた粉木が、助手席の窓を開けた。


「ジイさん!紅葉の高校はどうなっている!?」

「解らん。だが、強い妖気反応が出ておる。

 おそらくはオマンの予想通り、鬼の幹部が何らかの画策をしよる!

 お嬢とは、連絡取れんのか!?」

「電源が切ってあって繋がらないんだ。」

「直に行って確かめるしかあれへんな。」

「そうなるな。悪いが、先に行くぞ!」


 燕真は、バイクのスピードを上げて粉木の車を追い抜き、法定速度を無視して前を走る車の間を擦り抜けながら先を急ぐ。




-優麗高・3年生の教室-


 伊原木が何食わぬ顔で授業を続けていた。今は、自らで教科書の朗読をしている。その眼には、生徒達の生命力が、少しずつ屋上の『酒』メダルに奪われているのが見える。だが、生徒達は、その事実に気付いていない。古文が苦手な生徒は「授業が面白くないから眠い」と勘違いして朗読を子守歌代わりに居眠りをはじめ、伊原木に良いところを見せたい女生徒達は、体の怠さを感じながら伊原木の朗読に耳を傾け続ける。



-グラウンド-


 2年D組の女子が持久走をしていた。

 いつも適当に走る太刀花美希は、後方集団で、ジョギングより少し早い程度のペースで走っている。「ただ走るだけ」を体力の無駄使いと考えて、温存して走っているつもりなのだが、今日はやけに疲れる。

 藤林優花は、持久走が得意ではないが、常に真面目に走っている。今日も2番手グループに混ざって走っているのだが、体が重くてペースが上がらない。一緒に走っているクラスメイト達も、まだレース終盤でもないのに息が上がっているように見える。

 2人とも、自分の体に異常は感じていたが、それが「生命力を奪われているから」とは考えていない。



-2年B組-


 授業を受けながら窓越しにグラウンドを眺めていた紅葉は、持久走中の友人たちに違和感を感じていた。


(なまけ者のミキゎともかく、

 ガンバリ屋さんのユーカまでどうしちゃったんだろ?)


 ちょっと動いただけでも体力を消耗させる真夏ならともかく、肌寒いくらいの今の時期に、真面目な優花がダラダラと走るなんて珍しい。


(なにがど~なってるの?)


 紅葉が異常を感じたのは、それがグラウンドだけではなく、同じ状況が教室内でも発生しているから。いつもならば、厳格に声を張り上げる教師なのに、今日はいつもの元気が無い。亜美を含め、いつも授業を真面目に受けている優等生達が、うつらうつらとして集中できていない。


(絶対おかしい。)


 紅葉だけが、いつも通りのまま。鬼に才能を気付かれないように、紅葉の防衛本能が機能して、且つ、母から「肌身離さず付けろ」と渡されて、首からぶら下げた御守りが紅葉の能力を抑え込み、紅葉の感知力を低下させているので、いつものように、ハッキリと気付くことができない。


「・・・んぇ?」


 いつも以上に授業に集中をできなくなっている紅葉の耳に、バイクの駆動音が聞こえる。バイクに関しては「どれも一緒ぢゃね?」ってくらいの知識しか無いが、その駆動音が乗り慣れたバイクの音ということだけは解った。

 露骨に振り返って窓の外を見る紅葉。優麗高前の公道を、ホンダVFR1200Fが走って接近してくるのが見える。


(燕真っ!?)


 漠然とバイクを走らせているようには見えない。何らかの事件が発生して現場に向かっている?優麗高全体の気怠い空気は関係している?


「センセー!体調悪いので、保健室いきますっ!」


 先生やクラスメイト達の方が、あきらかに体調が悪そう。彼等と比べれば、紅葉は、普段に比べて少し体が重い程度なのだが、体調不良を理由にして教室から飛び出していった。先生は返答をする気力が無いまま見送り、生徒達は無反応だ。


「・・・やっぱりオカシイ。」


 廊下を駆ける紅葉。2年B組だけでなく、他のクラスも似た状況に陥っている。優麗高内で、自分には感知の出来ない何かが発生しているようだ。燕真の目的地が此処(優麗高)と確信して、階段を駆け下りていく。




-優麗高前の正門-


 ホンダVFR1200Fを駆る燕真が、優麗高の前に到着して校舎を見上げた。素の状態では、肌で異常を感じることができないが、勘を信じる。


「燕真っ!」


 紅葉が生徒玄関から駆け出してきて合流をする。


「おいおい、今は授業中じゃないのか?」

「そ~なんだけど、みんな、ボケーッとしてて変なの!

 授業をやってるだけなのに、一生懸命走ったあとみたいにヘロヘロなの!

 ァタシのクラスだけぢゃなくて、他のクラスも同じなの。」

「オマエは大丈夫なのか?」

「ちょっと調子悪いけどダイジョブ。」


 想像を確信に変える燕真。やはり、優麗高で何かが発生している。


「幻装っ!」


 バイクに跨がったまま、妖幻ファイターザムシードに変身!途端に、優麗高全体が薄暗い空気に包まれ、屋上に闇が集中しているのが感知できる!優麗高全体が、何らかの結界に包まれているようだ!


「あそこ(屋上)か。

 オマエはここで待機してろ。直ぐに、粉木のジイさんが来るはずだ!」


 種類が解らないまま、何の対策もせずに結界内に踏み込むのは危険。変身を強制解除されたり、戦闘能力を著しく低下させられる可能性がある。踏み込みたくはないが、粉木やガルダが合流して来るまで、悠長に眺めているつもりは無い。


「頼むぞ、OBORO!終点は屋上だ!」


 VFR1200FがマシンOBOROに変形して、鬼面カウルの口から妖気の塊を発射!ワームホールになり、ザムシードを乗せたマシンOBOROが突っ込んだ!



-3年生の教室-


 教科書の朗読を続ける伊原木。教室内の生徒は、自覚無く体力を奪われ、大半が眠たそうにしている。

 校内には幾つか妖怪が忍ばせてあり、強い妖気を纏う者が通過すると発動する仕掛けになっている。つまり、妖幻ファイターが入口から校舎に入って屋上に到達する為には、2~3体の妖怪と戦わなければならない。


「・・・むぅ?」


 猛スピードで接近してきたザムシードの気配が消えた。その直後に、真上(屋上)に、見失った気配が出現する。様々な仕掛けを施した校舎内を通らずに、いきなり屋上に辿り着いた?この展開を想定していなかった伊原木は、小さく舌打ちをする。




-優麗高屋上-


 3枚の『酒』メダル周辺に漂う妖気に空間転移の穴が発生して、マシンOBOROを駆るザムシードが出現!


「なんだぁっ!?」


 メダルの番人を任されていた金熊童子が、想定外の出現に驚いて慌てて飛び退く!一方のザムシードは、ワームホールを抜けた直後に、床に置かれた3枚のメダルを視認!妖気溜まりの元凶と判断して、反射的に後輪を滑らせてメダルを弾いた!『酒』メダル3枚は、術式(八卦先天図)の外側に押し出され、結界内で掻き集められた生命力が、吸収先を失って術式の周りに停滞をする!

 マシンOBOROを停めたザムシードが、手近な場所に転がったメダルを拾い上げて眺める。


「酒のメダル?・・・これって?」


 『酒』メダルについて、ザムシードは、1枚はガルダが所持して、残る3枚は退治屋本社で管理され、残る1枚は所在不明と聞いた。ならば、手元にあるメダルは何だ?『酒』のメダルは、5枚よりも沢山あるってことか?


「オマエッ!なんて事をしてくれるんだ!?」


 メダルに生命力を供給する術式を崩された金熊童子は、残る2枚を掻き集めてからザムシードを睨み付ける。


「オマエが茨城童子か!?

 もっとゴツいヤツかと思っていたけど、イメージと違ったな。」

「はぁ?」

「オマエの好き勝手にはさせないぞ、茨城童子!」

「なに言ってんだ、オマエ?オイラは金熊童子!

 オマエ、退治屋のクセに、そんな事も知らないのか!?」

「えっ?マジで??金熊って四天王の1人だっけ?」

「そうだ!そのメダル、俺の物だぞ!返せよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 マスクの下で怪訝そうな表情をして、奪った『酒』メダルを見詰めるザムシード。文架高の騒ぎは揺動で、鬼の真の目的は‘優麗高で何かをする’だと予想していた。てっきり、本命の場所(優麗高)には鬼の副首領が居ると思って警戒をしてきたのだが、居たのは10代前半くらいの風貌の鬼だけ。文架高が妖怪だらけだったことを考えると、優麗高の方が重要度が低い?見当違いだった?想定外の『酒』メダルがあることも意味不明だ。


「何が何だか解らん。茨城童子ってヤツは何処に居るんだ?別の場所か?

 部下に戦いを任せて、自分は高みの見物をするタイプってことか?」

「イバさんは此処(優麗高)に居るに決まってんだろ!」

「おぉっ!やっぱ、ここにいるのか!」


 予想を外したわけでは無さそうなので、少し安心をするザムシード。『酒』メダルを使って、何かを画策していると考えて、間違いないだろう。


「いい加減にオイラのメダルを返せってのっ!

 無くしたら、オイラがイバさんと虎さんに怒られるんだよっ!!」

「状況が全然飲み込めないけど、(メダルを)返すわけがねーだろ!

 勝手に怒られてろっ!」

「あっ、そう。・・・死にたいんだ?

 イバさんからは‘静かにしてろ’って言われたから、

 温和しく交渉で解決したかったけど、

 オマエ、生意気だから、騒がしくなっても仕方無いよな!」


 小さく笑みを浮かべた後、凄んだ表情に変化をする金熊童子!身構え、両拳を握り締めた直後に姿が消える!


「・・・くっ!文架高に居た奴(虎熊童子)より早いっ!」


 鬼の四天王との戦いは、羽里野山の星熊童子、文架高の虎熊童子に続いて、これで3戦目。星熊や虎熊の時は、無警戒のまま交戦状態に成り、手も足も出ずに叩き伏せられた。だから、今回は、ハナから一定の警戒をしていた。


「3度も同じミスをしたら、ジイさんや狗に、バカ扱いされるっての!」


 次の瞬間にはザムシードの眼前に、金熊童子が出現!だが、警戒をしていたザムシードは横飛びで回避!金熊童子が繰り出した拳の連打は空を切る!


「コイツの攻撃は徒手空拳か!」


 妖刀では、金熊の得意レンジに持ち込まれたら振り回せなくなる。敵の得意レンジに入られないのが戦いの定石だが、今のザムシードでは、格上の鬼に対して、相手の射程を潰して、ノーダメージで戦い抜くことはできない。


「・・・ならばっ!」


 接近戦に備えて、短刀タイプの裁笏ヤマを右手に装備!更に、『酒』メダルをYウォッチに保管して、同時に『鵺』メダルを抜き取り、Yウォッチの空きスロットルに装填!弓銃カサガケを左手に装備して、金熊の足を止める為に、小弓モードで連射をする!


「・・・チィッ!」


 小さく舌打ちをして、アクロバットな動きで光弾を回避する金熊童子!ザムシードから大きく距離を空けて体勢を立て直し、腰にぶら下げていたナックルダスターを両拳に装備して身構える!




-文架大橋西詰め交差点-


 駅方面から来た粉木の車が、左折をした。未熟な部下が、粉木の到着を待たずに仕掛けているくらいの予想はできる。のろくさと法定速度以下で走っていた車は直進をしたので、ようやく前方がクリアになり、優麗高に向けてスピードを上げた。しかし、タイミングが悪く、次の信号機が赤に変わり、粉木は苛立ちながらブレーキを踏んで車を停車させた。

 もし、優麗高に茨城童子が居るならば、今のザムシードでは荷が重い。ガルダが早々に文架高を攻略して、優麗高の援軍に来てくれることを期待したいのだが、四天王の1人・虎熊童子が相手では、さすがのガルダでも簡単には突破できないようだ。


「どれもこれも、援軍を送ってくれん本店のミスや。」


 鬼の出現情報と援軍要請は、かなり以前から本社に送ってある。「近々、援軍を送る」という通知はあったが、「いつ」「誰」が来るのかも伝えられず、一向に動きが無いので、東京支部勤務の信頼できる友人に催促の依頼をしたら、先ほどようやく「援軍が誰なのか?」だけは判明した。

 文架市の戦いに、政治的意図を絡めてくるのは不満だが、将来の退治屋のトップ候補が援軍に向かう予定と聞いては安心をした。御曹司が来ると言うことは、恥をかかせない為に、組織が全力でサポートをすることを意味している。


「だがそれでも遅すぎる。」


 御曹司が任務と称して、何処で遊び呆けているのかは解らない。これが通常時なら、何処で何をしていても気にも止めないが、緊急時まで現場を理解せずに同じ調子で、文架市に危機が訪れてしまったのは、上層部の職務怠慢としか言い様がない。

 気が急いている所為で、赤信号が非常に長く感じられる。ようやく、交差側の横断歩道の信号機が点滅を開始。青に変わったので、車は走り出す。


「・・・ん?」


 直後に、後方から激しい駆動音が聞こえてきて、粉木の車を猛スピードで抜き去って行った。


「あのバイク?」


 ホンダ・CBR1000RR。粉木は、その車種とナンバープレートに見覚えがある。


「ヤツが事件に首を突っ込んでくるなんて、珍しいな。

 お嬢の学校で起きてる異常・・・気付いたんか?

 さすがは、過去の退治屋のエースやな。」


 粉木は、猛スピードで遠ざかっていくホンダ・CBR1000RRの後ろ姿を眺めながら、車の速度を上げる。



-回想-


「はぁぁっっっっっ!!」


 中世日本の鎧を模したプロテクターを纏った戦士=妖幻ファイターハーゲンが、妖刀で鬼の首領を貫いた。

 先代ガルダとの戦いで妖力の大半を失いながら、しぶとく退却して文架市に隠れていた酒呑童子だったが、ハーゲンの一撃を防ぐことはできなかった。


「・・・ぐぅぅぅぅっっ」


 トドメを刺された酒呑童子は、ハーゲンだけに穏やかな表情を見せてから、全身が闇に成って霧散。ハーゲンの持つ妖刀の柄に填め込まれた白メダルに吸収された。


 妖幻ファイターハーゲンの活動期間は、彼女が高校を卒業してからの7年間。そのうちの最初の2年は、短大との掛け持ちだった。本来ならば、退治屋は正社員以外を受け付けないのだが、彼女の才能の高さを評価した粉木は、本部には改ざんした履歴書を報告をして、彼女に妖幻システムを託した。粉木の違反を知っているのは、友人の砂影滋子だけである。


 酒呑童子討伐の数ヶ月後、数々の功績を残して、「やがては本部に呼ばれて幹部になるだろう」とまで評された彼女は、粉木にも理由を告げずに、突然、退治屋を引退した。

 粉木が、「彼女は妊娠をキッカケにして退治屋を去った」と知ったのは、彼女の引退の数ヶ月後、遠目に、赤ん坊を抱く彼女の姿を見た時だった。彼女が誰と結婚をしたのか、若干の興味はあったが、退治屋であり続けることを拒んだ彼女を追及をする気は無かったので、遠くから見守るだけにした。



-回想終わり-


 妻子の居ない粉木にとって、彼女は「出来の良い娘」のような存在だった。ちなみに、燕真は出来の悪い末っ子のような存在。

 彼女は、退治屋を引退した立場なので、退治屋の職務には一切関わっていない。だが、燕真や紅葉が知らないところで、時々粉木と連絡を取り合い、燕真や雅仁のこと、そして紅葉が退治屋の仕事を手伝っていることを把握している。把握をした上で、彼女は娘を粉木に預けていた。

 彼女の娘には父親が居ないことを、粉木は、つい最近知った。同時に、彼女の娘が、母の愛情に育まれていることも知った。「出来の良い娘」の娘と、「出来の悪い末っ子」の出会いが、ただの偶然ではないことは、彼女から聞いて知っている。粉木への信頼と、燕真が在籍をしている事が、彼女が娘を預けた理由なのだ。


「有紀ちゃん・・・やはり、最後の1枚はオマンが・・・?」


 車は御領町に入り、進行方向に優麗高校が見えてきた。




-文架高-


 ガルダが離れた位置から妖槍の刺突を放つ!普通の槍ならば標的に届かない距離なのだが、飛頭蛮(ろくろ首)の能力を持つ槍は、ガルダの意思に応じて柄が10mほど伸び、鉾先が虎熊童子に襲いかかる!しかし、虎熊童子は、日本刀を妖槍の切っ先に当てて受け流した!


「フン!槍が伸びることなんて、調査済みだ!」


 初見ならば、槍の伸縮を想像できずに刺突を喰らっただろうが、虎熊童子は、ガルダの文架高内での戦いは観察をしている。妖槍の尖端を退けた虎熊童子は、妖槍の柄で日本刀の刃を滑らせながらガルダに突進!槍を抑え込んだ上で懐に飛び込めば、敵は必然的に無防備!


「甘いっ!」


 ガルダは自分の武器の特性を熟知している!槍を伸ばせば伸ばすほど懐が無防備になることなど、今更、指摘をされなくても解っている!伸びきった槍が、ガルダの意思に応じて、虎熊童子の接近よりも先に縮む!


「くっくっく・・・甘いのはどっちだよ?」


 だが、虎熊は、ガルダが槍を短くすることも想定済み!空いている方の手で縮んでいく妖槍の柄を掴んだ!


「なんで、拙者がワザワザ槍に沿って接近をしているのか、想像しなかったのか?」

「なにっ!?」


 突進力に、槍の短縮に引っ張られて加速を上乗せされた虎熊が急接近!しかも、槍を掴まれているので、虎熊がガルダの懐に飛びこんだ時点で、ガルダは槍を振り回すことができない!


「秘剣・揺籃!」


 虎熊の日本刀による乱れ打ちが、無防備にされたガルダの全身に着弾!弾き飛ばされて床を転がるガルダ!直ぐに立ち上がって、虎熊の追い撃ちを警戒しながら体勢を立て直す!


「・・・チィ、ミスったか。」


 虎熊はクリティカルヒットを叩き込んだつもりだったが、手応えが薄かった。虎熊が秘剣を発動する為に、妖槍の柄から手を離す直前、ガルダは縮めていた最中の槍を僅かに伸ばしたのだ。その結果、虎熊の踏み込みが数センチほど手前に成り、必殺のはずの秘剣で致命打を与えることができなかった。


「貴様は、この戦場で、俺の武器を観察したと息巻いているが、

 俺の家系は、先祖代々が、貴様等を標的にしている!

 観察に費やした時間が別次元なんだよ!」

「拙者達を観察済みだと?・・・フン!面白いことを言う。

 だったら、次も攻略してみろよ!」


 通常の剣技では、槍に防がれる。乱れ打ちの秘剣も攻略をされてしまった。だが、切り札は、もう一つある。距離を空け、刀の腰の鞘に納刀をする虎熊童子。


「抜刀術・・・か。」

「拙者の最も得意とする攻撃だ!」


 抜刀術の優位性は、敵が「振りかぶって斬る」という二動作を要するのに対し、「抜きつつ斬る」の一動作で刃を撃てること。そして、手に刀を握っていないゆえに瞬足を活かして敵の懐に飛び込めて、鞘送りで力を溜めた神速の刃を挙動を読まれにくい軌道で撃てること。

 日本刀を扱い慣れていない者は、鞘を送って、刀を抜いて、斬るという三動作になってしまうので、抜刀術が優位になり得るとは言えない。ザムシードの、二口女の鞘を利用した抜刀術は、無駄な動きが多い三動作の状態だ。だが、日本刀の扱いに長けた虎熊童子は、三動作を同時に行い、最小限の動きで最大限の斬撃力を生む抜刀術を撃つことができる。


「ならば!」


 ガルダは、妖槍を中段で構えた。抜刀術の優位性を打ち消すには、槍術による余計な駆け引きを考えず、一動作で突ける構えを取るしかない。


「そう構えるしか無いだろうな。」


 左手で鞘を支え、柄に右手を軽く添え、やや前傾姿勢で身構える虎熊童子。


「まぁ・・・どう構えたところで、拙者の神速の抜刀術には関係無いけどさ。」


 一呼吸置いて突進を開始!ガルダが狙いを定めて突きを放つと同時に、妖槍の切っ先が伸びて、虎熊童子を捉えた!だがそれは、神速に達した虎熊童子が残した残像!紙一重で突きを回避した虎熊童子が、ガルダの懐に飛び込む!ガルダは、槍で防御をする為に、伸ばした妖槍を縮めるが、虎熊の接近の方が速い!


「秘剣・凉音っ!」


 ガルダの防御は間に合わず、虎熊が勝利を確信して居合斬りを放とうとしたその時!ガルダは、槍を縮ませながら廻し、手元の石突きを虎熊に向けた!


「はぁぁぁっっっっ!!」

「なにっ!?」


 「切っ先側が縮む」と「石突き側が伸びる」が同時に発生して、抜刀をする寸前だった虎熊の腹に妖槍の石突きが炸裂!神速の突進を逆手に取られ、カウンターの石突きを喰らって弾き飛ばされる虎熊童子!呼吸困難に陥ったまま、屋上手摺りから投げ出された!

 手摺りに駆け寄り、身を乗り出すようにして鳥銃・迦楼羅焔を構えるガルダ!虎熊童子が、墜落をしながらガルダを睨み付ける!


「ぐぅぅっっっ!クソッ!!」


 伸縮自在の槍なのだから、切っ先側だけでなく、当然、石突き側も伸びる。だが、貫通力の低い石突きを伸ばしても意味が無い。その‘思い込み’を突いて、切っ先側を回避されるのを前提にして、石突き側でカウンターを仕掛けるのがガルダの作戦だったのだ。


「狗塚の若造めっ!!」


 致命傷ではないが、ダメージで体が満足に動かない状況で追い撃ちを掛けられたらマズい。虎熊童子は、闇の霧に姿を変えて上空に飛び上がり、現場から遠ざかっていく。


「逃がさん!」


 空に鳥銃を向けて光弾を発砲するガルダ。しかし、闇の霧には届かず、逃走を許してしまった。ガルダのセンサーでは、虎熊童子の妖気を感知することができない。


「・・・チィッ!」


 あと一歩まで追い詰めながら、鬼殺しを出来なかった事が悔やまれる。戦場が屋上ではなく、広い空き地だったなら、即座に追い撃ちを掛けて仕留めることができただろう。ガルダは、悔しそうな仕草で変身を解除して、雅仁の姿に戻った。


「いや・・・まだ、虎熊童子を逃がしただけ。

 佐波木が向かった先(優麗高)には、ヤツより格上の鬼がいる。」


 気持ちを切り替えた雅仁は、階段を駆け下り、次の標的を求めて、文架高から立ち去ろうとした。しかし、校庭から出た直後に振り返って、校舎を見詰める。

 出現した妖怪は全て倒し、虎熊童子は追い払ったが、文架高に平穏が戻ったわけではない。まだ校内には幾つもの鬼印が残っており、いつ、次の妖怪が発生をしても不思議ではない状態なのだ。


「俺の責務は鬼の討伐。・・・文架市の治安は、文架市の退治屋が守れば良い。」


 早急に優麗高に向かいたい反面、後ろ髪を引かれる思いに駆られる。鬼印が仕掛けられていることを知りながら放置したら、きっと、あとで紅葉から「人格全否定」レベルの口撃をされるのだろう。彼女が怖いわけではないが、掴みかけている新しい繋がりを手放したくはない。燕真や紅葉と一緒に行動をするようになり、チームワークの心地良さ知った。そして、自己都合だけで行動をするのが有効ではないと認識をした。


「どうせ‘ついで’だ。」


 鬼印を炙り出す為に、既に、文架高を囲む結界が張ってある。新たなる術式を加えれば、結界内の浄化はできるのだ。消耗させた霊力は、銀塊に溜め込んだ霊力で補充すれば良い。雅仁は、「らしくない行動」と感じながら、両手で印を結び、破邪の呪文を唱え始める。




-優麗高の屋上-


 ザムシードの懐に飛びこんだ金熊童子が、ナックルダスターを装備した拳の連打を放つ!ザムシードは一歩引いて直撃を避けつつ、裁笏ヤマを振るって牽制をして、金熊童子の足を止め、弓銃から光弾を発砲!素早く距離を空けて回避をする金熊童子!


「ちぃっ・・・すばしっこい!」


 これで何度目の同じ行動だろうか?金熊が接近して拳の連打を打ち、ザムシードが牽制して飛び道具で距離を空ける。互いに決め手を欠いたまま、既に、4~5回ほど同じ展開を繰り返していた。

 金熊童子は徒手空拳で身軽ゆえに移動が速く、容赦無くザムシードの懐に飛びこんでくる。だが同時に、徒手空拳ゆえに攻撃力が低く、リーチも短いので、半歩~一歩の後退に専念すれば、大ダメージは受けずに済む。


「何だよオマエ!逃げてばっかで面白くねーぞ、へっぽこ!」


 ザムシードは、金熊童子の解りやすい挑発を受け流す。金熊童子の目的は、ザムシードに回収された『酒』メダルを奪い返すこと。ザムシードが防衛に専念をして、隙を生じさせないのが不満なのだ。


「俺は戦闘狂じゃないからな!戦いを楽しむつもりは無い!」


 指摘をされた通り、防戦一方では金熊童子を倒すことはできない。だが、援軍の到着を期待して時間稼ぎをしているわけでもない。星熊童子戦や虎熊童子戦のように、何の準備も無いまま戦闘に突入したら、また一方的に倒されてしまうだろう。無様に這いずり、紅葉の居る優麗高を、鬼達の好き勝手に荒らされるわけにはいかない。だから、ザムシードは防衛に徹しながら、攻勢に出るタイミングを探していた。


「ああ、そうかい?だったら、オイラだけ楽しませてもらうよ!

 オマエを蹂躙にしてな!」


 気勢を発し、突進をする金熊童子!ザムシードは気合いを込めて身構え、弓銃を発砲!金熊は放たれた光弾数発を楽々と回避してザムシードの懐に飛び込み、拳の連打を放つ!


「痛っ!?」


 金熊の拳は、ザムシードの体ではなく左手に炸裂!握られていた弓銃が叩き落とされる!


「にゃははっ!これでオイラを遠ざけることはできなくなったな!」

「・・・くっ!!」


 ザムシードは、右手に装備した裁笏を振るって牽制をするが、金熊の左腕で受け止められてしまう!容赦無く更なる一歩を踏み込む金熊童子!ガラ空きになったザムシードの体に、ナックルダスターを装備した右拳の連打が叩き込まれる!


「うわあぁっっ!!」


 悲鳴を上げて弾き飛ばされるザムシード!防御に徹したところで、やはり‘1人’では、格上の鬼幹部には対応が出来ないようだ!金熊童子が追い撃ちを掛ける為に踏み込んでくる!


「俺1人・・・ではな!

 だが、今ここに居るのは、俺1人じゃないっ!おぼろっ、今だ!!」


 踏み込んできた金熊童子から、10mほど離れた真横に停車してあったマシンOBOROが、ザムシードの指示に応じて自走を開始!スタート直後にトップスピードを発して、金熊童子に体当たりをする!想定外の方向から攻撃を受け、防御をできずに弾き飛ばされ床を転がる金熊童子!


「俺は、尻込みして防御に徹していたわけじゃない!

 ワザと焦らして、オマエが‘俺潰し’に躍起になって、

 周りが見えなくなる瞬間を待っていたんだ!」


 ザムシードはバイクで現地に来たのだから、バイクが駐めてあるのは当たり前。金熊は「バイクが勝手に動く」「バイクの射程圏内に誘き寄せられている」等とは想定していなかった。


「これで形勢逆転だ!」


落ちていた弓銃を拾い上げ、金熊童子に向けて光弾を連射するザムシード!体勢を立て直せていない金熊童子に着弾をして、爆煙と悲鳴が上がる!手応えを感じたザムシードは、弓銃を強弩モードに切り替えて、金熊童子に照準を向けてエネルギーをチャージする!


「たかが退治屋如きと何を遊んでいる、金熊童子?」


 真横から、突然、声が発せられる。接近の気配を全く感じさせないまま、朱色の長髪に青肌で身長2mほどの男は、いつの間にかザムシードの隣に立っていた。


「えっ?」


 男がザムシードに掌を翳した途端、ザムシードは全身から火花を散らせながら弾き飛ばされる!


「うわぁぁぁっっっっ!!」


 ザムシードを楽々と退けると、青肌の男は、倒れている金熊童子に歩み寄り、手を貸して立ち上がらせた。


「お館様への生命力の供給はどうなった?」

「まだ途中だよ!アイツに奇襲されて、メダルを1枚奪われたんだ!」

「オマエが退治屋如きに?

 ・・・フン、昼寝でもしていたのか?四天王の地位が泣くぞ。」

「チゲーよ!オイラの所為じゃない!イバさんの情報収集が甘すぎるんだ!

 退治屋がワープしたり、バイクが勝手に走り回るなんて、聞いてないっての!」

「そうか、私のミスか?・・・ならば、自分の尻ぬぐいをするしかあるまいな。」


 立ち上がり、身構えるザムシード。青肌の男は名乗っていないが、ヤツが何者なのか、なんとなく解る。星熊童子や虎熊童子と対峙をした時、そして、金熊童子と交戦をした今、ザムシードは、今まで倒した妖怪とは別格と感じた。霊感や妖気の類いとは縁の無いザムシード(燕真)でも、ヤツ等の発する雰囲気や迫力で、それくらいは解る。

 だが、青肌の男だけは違う。発せられる雰囲気が静かすぎて、変身前の状態で出会ったら、おそらく、ヤツが人外とは認識できない。だから、隣に立たれたことすら感知できなかった。それでいて、ヤツから敵意を向けられると、星熊&虎熊&金熊以上の底知れ無さを感じられる。格が違いすぎる。


「オマエが・・・茨城童子?」


 青肌の男は、小さく笑みを浮かべて、ザムシードを睨み付ける。


「貴様如きに名乗る気など無かったのだがな。・・・いかにも、私は茨城童子。

 こうして、直接向かい合うのは初めてだな。閻魔大王の力を持つ退治屋よ。」


 茨城童子の言葉は、端的に、「ザムシードが茨城童子の存在に気付く前から、ザムシードを観察していた」と告げている。文架市中に鬼印を沈めて騒ぎの原因を作り、姿を見せずに挑発を続けていたのはコイツだ。


「・・・天邪鬼を暴走させたのも?」

「無論、私だ。誇り高き鬼が、人間如きに馴染もうとするなど許さん。」

「ふ、ふざけるなっ!天野のジイさんはなぁっ!」


 食って掛かろうとするザムシードを、茨城童子が冷静に制する。


「お館様を封じたメダルを奪い返した今となっては、もう貴様に用は無い。

 言うまでもなく、貴様と無駄な議論をする気も無い。」

「なにっ?」


 見せ付けるようにして、手に持っていた『酒』メダルを翳す茨城童子。いつ奪われた?攻撃を受けた時か?ザムシードが、慌ててYウォッチに収納しておいたはずのメダルを確認すると、ちゃんと保管をされていた。だったら、茨城童子が見せ付けたメダルは何だ?ザムシードは、茨城童子の手元に視線を戻す。


「お館様は其所か。」


 茨城童子が翳していた『酒』メダルが闇の霧と成って消える。ヤツは、本物の在処を確認する為に、偽者で揺動したのだ。


「し、しまった!」


 茨城童子が、掌をザムシードに向けて、妖気の衝撃波を発する!気圧され、腰を低くして足を踏ん張り、両腕をクロスさせて凌ぐザムシード!しかし、耐え抜いた直後に、背後から衝撃波が被さってきて、体勢を崩してしまう!更に次の瞬間には、茨城童子の姿は、ザムシードの目の前にあった!問答無用で頭に拳を喰らい、地面に叩き付けられる!


「がはぁっ!」


 ザムシードの手から零れ飛んだ『酒』メダルに手を伸ばす茨城童子!ザムシードは、意識が飛びそうになるのを堪えながら、メダル強奪を阻止する為に、這い蹲ったまま茨城童子の足元目掛けて裁笏を振るう!しかし、茨城童子は姿を闇霧に変えて楽々と回避をして、金熊童子の隣に戻った!その手には、本物の『酒』メダルが、握られている!防戦虚しく、アッサリと奪い取られてしまった!


「くそっ!」


 立ち上がり、召喚した妖刀を握り締めて突進をして行くザムシード!


「改めて言おう。

 お館様を封じたメダルを奪い返した今となっては、もう貴様に用は無い。」


 向かってくるザムシードに掌を翳す茨城童子!妖気の衝撃波が放たれて、ザムシードは為す術も無く弾き飛ばされて床を転がる!

 これが、鬼の副首領の実力?格が違いすぎて、全く抵抗ができない。だけど、「自分より有能な連中だらけ」なんて、今に始まったことではない。紅葉、粉木、雅仁、どいつもこいつも自分より優秀。「アイツは自分と違って出来が良いんだから、敵わなくて当然」と、戦う前から試合放棄をするつもりは無い。学生時代から、凡族なりに藻掻き続けてきた。


「ヤツが動いていないのに、真後ろから衝撃波が来るなんて有り得ない!

 掌から、衝撃波以外の何かを発しているはずだ!それを見極めろ!」


 妖刀ホエマルを握り直し、茨城童子に向けて突進を開始!茨城童子が掌を翳すタイミングに合わせて、センサーに意識を集中させる!茨城童子の掌に闇が灯り、ザムシードの周囲の空気が漆黒に歪んで押し寄せてくる!

 掌から衝撃波を放つのではなく、戦場に対流する妖気を掌握して、対象に叩き付ける!だから、あらゆる方向から衝撃波が飛んでくる!それが、茨城童子が発する衝撃波の正体だ!


「うぉぉっっっっ!タイミングが見えれば、こっちの物だ!」


 正面から迫る漆黒の歪みを妖刀で斬り裂いて浄化!続けて、妖刀を横に振るって、真横から飛んで来た漆黒の歪みを祓って、茨城童子との間合いを詰める!


「この程度で息巻くな、小僧。」


 茨城童子は、指先から鋭い爪を伸ばしてザムシードの攻撃を受け止め、同時に空いている方の掌を翳した!周りに対流する妖気は漆黒の歪みと成って、ザムシードに押し寄せてきた!全身から火花を発し、為す術も無く弾き飛ばされるザムシード!

 屋上南側の手摺りから投げ出されてグラウンド側に墜落!辛うじて体勢を立て直して、両足で地面に着地をしたところで、変身が強制解除をされてしまう!

 脱力をして、その場に尻餅をつき、屋上を睨み付ける燕真。かなり際どかった。変身の強制解除のタイミングが、あと少し早かったら、生身で地面に激突していただろう。


「にゃははっ!邪魔者は居なくなったね。」

「贄の儀式を続けるぞ。」


 屋上から部外者は排除した。金熊童子が、3枚の『酒』メダルを床に置き、茨城童子が、指先で空中に八卦先天図を描く。チクリと痛みを感じた茨城童子が右肩を見たら、切り傷が付いて血が滲んでいた。


「ん?・・・何処で傷を負った?まさか、素人同然の退治屋に?」


 信じがたいが他には考えられない。ザムシードの攻撃を完全に防いだつもりだったが、僅かなダメージを受けていたのだ。

 だが、主に生贄を捧げる儀式に比べれば、素人が発生させた想定外など些細なことだ。茨城童子は、完成させた八卦先天図に向けて呪文を唱え、中断されていたメダルへの生命力吸収を再開させる。

 ただし、今度は、先程までの生易しい生命力吸引ではない。大量の瑞々しい生命力が屋上へと浮かび上がり、八卦先天図を通過して妖力に変換され、メダルに吸収されていく。退治屋に気付かれない為に、生徒達を生かさず殺さず、ジワジワと生命力を奪い取るつもりだったが、気付かれてしまったのなら、もう気を使う必要は無い。何人が死のうと知った事では無い。酒呑童子の復活に必要な生命力を、早急に奪い取る。



-校庭-


 燕真は、立ち上がって『閻』メダルを握り締める。まるっきり相手にされていないのが腹立たしい。屋上から追い出されただけ。まだ余力は有る。一定のダメージを受けて変身が強制解除をされただけで、大した怪我はしていない。


「ふざけやがって!」


 再び屋上に行く為に、校舎に向かって駆け出す燕真。だが、突然、全身の力が抜けて足がフラつく。大した怪我はしていないのに何故?燕真が周囲を見廻すと、グラウンドで体育の授業をしていた生徒達が、次々と倒れていくのが見える。おそらく、校舎内でも同じ現象が起きているのだろう。

 生命力の吸収に、霊感の有無は関係無い。鬼達は、形振り構わずに、優麗高に張られた結界内の生命力を奪い始めたのだ。


「・・・拙い。冗談じゃないぞ!」


 このままでは、生徒達を守るどころか、燕真自身が何も出来ないまま生命力を奪い尽くされてしまう。全身に活を入れて立ち上がり、校舎に駆けていく燕真。だが、こんな調子で、屋上に到着するまで体力が保つのだろうか?不安でいっぱいになる。


《やれやれ・・・見てられぬな。

 その有り様で、有紀の娘を守れるとでも思っているのか?》


 突然、声が投げ掛けられて、猛吹雪が吹き荒れ、視界がホワイトアウトをする!


「何でオマエがここに?」


 進行方向を見失って立ち止まった燕真の目の前に、氷柱女が立っていた。彼女が作った氷竜巻に引っ張り込まれたのだ。


「オマエに用があるのは私ではない。私は、有紀の意思に従っただけ。」

「・・・ゆうき?」


 氷柱女の背後に人影が歩み寄ってくる。吹雪の中で目を凝らす燕真。


「・・・貴女は?」


 彼女が‘ゆうき’と言う名なのは初耳だが、燕真は、氷柱女の隣に立った女性を知っている。


「紅葉の・・・い、いや、紅葉さんの?」


 言い掛けて、慌てて呼び捨てを改める燕真。紅葉の送迎時に2~3回、顔を合わせて挨拶をした程度だが、間違いは無い。其所に立っているのは、紅葉の母親だ。穏やかな笑顔だったり、粗忽な娘を申し訳無さそうに預ける表情が印象的だが、今の彼女の顔つきは、いつもとは別物だ。


「なんで・・・紅葉さんのお袋さんが氷柱女と一緒に?」

「佐波木燕真君。貴方に、これを託すわ。」

「・・・え?」


 紅葉の母は、何かを握った拳を燕真に差し出す。つられて、手の平を差し出して受け取る燕真。それは『酒』の文字が入ったメダル。


「・・・これは?」

「5枚のうちで、行方不明の扱いになっていた最後の1枚。

 他の4枚とは違って、その1枚だけは、錬金塗膜をしてあるわ。」


 妖怪を封印したメダルは、そのままの状態では、妖幻ファイターが使う事は出来ない。錬金塗膜をすることにより、変身アイテムや武器として使用が可能になるのだ。


「なんで、紅葉のお袋さんが?」

「その答えは・・・貴方は、もう知っているはず。」

「・・・俺が?」

「私はね。貴方が、紅葉をバイクの後ろに乗せてくれるようになる前から、貴方のことを知っているの。

 任務から離れて長い年月が経つけれど、後輩のことは気になってしまうのよね。」


 最後の『酒』メダルを持つ者=酒呑童子を倒した者。氷柱女が文架市に土着をしたのは、ほぼ同時期であり、氷柱女、及び、酒呑童子と関わった妖幻ファイターを、燕真は退治屋のデータベースで調べたことがある。


「貴女が・・・約20年前の、文架市の妖幻ファイター?」

「紅葉には内緒よ。あの子の前では、何の変哲もない普通の母親でいたいの。」


 紅葉の母が合図を送り、氷柱女が応じた途端に、氷竜巻が消えて周りの風景がグラウンドに戻った。目の前に紅葉の母は立っているが、氷柱女の姿は無い。


「強力すぎるメダルだから、通常の妖幻ファイターでは使い熟せないけど、

 閻魔大王の力を持つ妖幻ファイターなら制御できるはずよ。

 ただし、稼動限界は3~5分程度。気を付けて使いなさい。」


 託された『酒』メダルを見詰める燕真。他のメダルは皮膜前の黒メダルだったけど、このメダルだけは皮膜処理が為されていて青い。


「あ・・・あの・・・」


 そして、紅葉の母親が、約20年前に氷柱女や天邪鬼と関わり、文架市に逃げてきた酒呑童子にトドメを刺し、高い実績があるにも関わらず、アッサリと引退をした妖幻ファイターハーゲン。個人データが抹消されていたのだから、『酒』メダルの所在も喪失扱いにされた。伝説の妖幻ファイターの娘なのだから、紅葉の類い希な才能も説明が付く。

 何もかも、辻褄が合うのだが、燕真は釈然としない。戸惑う燕真に対して、紅葉の母は一喝をする。


「鬼の幹部を退けるのは、ヤツ等を越える力を使うしかない。

 今は、迷っている時ではないはずよ。」


 指摘通りである。納得できないことは、窮地を脱してから、粉木や紅葉の母を問い詰めれば良い。今、最優先させるべきことは、優麗高の危機を救うこと。そして、その為の力は、紅葉の母が提供してくれた。


「そ・・・そうですね。このメダル・・・お借りします!」


 燕真は、『閻』メダルを和船バックルに装填して、妖幻ファイターザムシードに姿を変えると、屋上を睨み付け、『酒』メダルを力強く握り締めて一気合い発し、校舎に突入をしていく!



-校舎内-


 階段を駆け上がると、踊り場に仕掛けられた鬼印が反応して闇が浮かび上がり、中から中級妖怪・鬼熊が出現!いきなり突進をしながら腕を振り上げ、鋭い爪を振り下ろしてきたが、鈍足だったので、ザムシードは落ち着いて一歩下がって回避をする!


「わっ!しまったっ!!」


 しかし、階段を駆け上がっている最中だったので、後ろ足が踏面を踏み外して、転がり落ちてしまう!痛恨の自爆だ!鬼熊は踊り場から、ジャンピング・ボディ・プレスの体勢で飛び掛かって来た!マスクの下で青ざめるザムシード!

そこに光弾が飛んで来て鬼熊に炸裂!勢いを失った鬼熊は階段の途中で落ちた!


「こんな所で何をやってるんだ、佐波木!?」


 ガルダが、光弾を連射して鬼熊に浴びせながら近付いてきた!立ち上がって体勢を立て直すザムシード!


「た、助かったぞ。サンキュー。」

「俺は驚いたぞ。

 俺に文架高の制圧を任せて先発をしたのだから、

 てっきり、ここで鬼の幹部と戦っていると思っていたのに、

 ただのザコ相手に苦戦をしているのだからな。」

「・・・はぁ?」


 どうやら、到着したばかりのガルダからは「ザムシードは、優麗高に来てから、ずっと鬼熊に苦戦をしていた」と思われてしまったようだ。


「チゲーよ!ずっと‘ただのザコ’と戦ってたワケじゃない!

 金熊童子ってのを追い詰めたところで、

 茨城童子ってヤツに屋上から追い出されて、今は2巡目だ!」

「やはり、茨城童子がいたのか!?」

「うえ(屋上)で妙な儀式をやってる!急がないと拙そうだ!」

「ザコに構ってる余裕は無さそうだな!」

「そ~ゆ~こと!」


 ザムシードとガルダが互いの顔を見て頷き合い、ガルダが鬼熊に鳥銃を向けて連射!幅が2m程度の階段室では満足な回避が出来ずに、光弾は次々と鬼熊に炸裂をする!

 その隙に、ザムシードが、装備した妖刀に白メダルをセットをして、鬼熊に突進!横凪の一撃を叩き込んだ!


「クマァァァァッッッッッッッッッッッッ!!!」


 鬼熊は、断末魔の悲鳴を上げて闇霧と化し、妖刀にメダルに吸収をされる!

 廊下でこれだけの騒ぎがあったのだから、普通ならば、教師や生徒達が「何事か?」と様子を見に出て来るだろうが、誰1人出て来る気配が無い。階段脇の教室をチラ見するザムシード。生徒達が机につっ伏しているのが見える。


「紅葉が言った通り・・・かなりヤバそうだな。」

「茨城童子の儀式で生命力を奪われているんだ。

 悠長に勝利の余韻に浸っている暇は無い!急ぐぞ、佐波木!」


 1~2階間の踊り場を攻略した2人は、屋上へ向かうべく階段を駆け上がる!3~4階の踊り場に罠が仕掛けてあり、髪鬼が出現!長い髪を伸ばして絡ませてくるが、ザムシードが炎で焼き払い、ガルダが白メダルをセットした鳥銃で撃ち抜いて撃破!屋上を目指して、更に階段を駆け上がる!

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