鬼編

第17話・あやかしの学園(vs栄螺鬼 虎熊童子)

-朝-


 紅葉と亜美が、いつもの鎮守公園で待ち合わせて自転車で登校をする。文架大橋東詰の交差点まで来て、北側に向かう信号待ちをしていると、自転車に乗った町田里穂が、挨拶をしながら寄ってきた。互いの学校の位置の都合で、里穂は文架大橋の南側歩道を通り、紅葉達は文架大橋の北側歩道を通る為、普段ならば登校時は軽く挨拶をするだけ。しかし、1つ目入道の一件で親密度が上がった為、「西詰めまでは一緒に行こうか」と、信号待ちをやめて、「あの事件以降の話」をしながら、文架大橋南側の歩道を自転車で並んで走る。

※自転車の並列走行は違反。標識次第では、橋の北側歩道を自転車で走ろうとしていた紅葉達は違反。


「そっかぁ~・・・。木山くん、元気になったんだぁ~。」

「うん、中学の頃に、良く喋る木山くんに戻ってきているよ。

 でもさ・・・まさか、中学の時は男子に全然興味が無かった紅葉ちゃんに、

 いつの間にか彼氏が居るなん思わなかったな。

 友里(激励会に同席した女子・文架高)も、驚いていたよ。」

「んぇ?カレシ??」

「佐波木さん・・・だっけ?付き合ってるんでしょ?」

「んぇぇっっっ!?違うっ!燕真ゎカレシ違うっ!!」


 慌てて否定をする紅葉。しかし、黙って聞いていた亜美が会話に参加をして追い撃ちをかける。


「いつも否定するけどさ、付き合っているようにしか見えないんだよね。」

「うんうん、付き合ってるようにしか見えない。白状しなよ、紅葉ちゃん。」

「違う違う!付き合ってないっ!!」

「なら質問を変えるね。クレハは佐波木さんのこと好きなの?」

「正直に言っちゃえよ、紅葉ちゃん!」

「燕真とゎ、そ~ゆ~のぢゃないもん!」


 いつもは質問をしても適当に誤魔化される亜美だが、今日は里穂の援護射撃があるの強気に攻める。


「解った解った。付き合ってないことにしよう。

 なら質問を変えるけど、クレハは佐波木さんのこと好きなの?」

「ふぇぇぇっっっ!!?」


 答えはYES。付き合ってはいないし、燕真はそ~ゆ~のはしないだろうけど、多分、燕真に求められれば、ちょっと拒む程度で直ぐに「OK」をしてしまうと予想できるくらい燕真のことが好き。だけど、今まで恋愛とは全く縁が無かった紅葉は、燕真への恋心を公で認めるほど素直にはなれない。


「んぉぉぉっっっっっ!!!そんなんぢゃないもぉ~~~ん!!!」


 顔を真っ赤にして、ペダルを漕ぐペースを上げる紅葉。亜美と里穂を置き去りにして、1人だけ自転車のスピードを上げる。


「お~お~・・・反応、解りやすいなぁ~。」

「やっぱり、好きなんだね。」


 亜美と里穂は「クリティカルヒット」を確信して、自転車のスピードを上げ、紅葉を茶化しながら付いていく。


「んぁぁっっっ!?」


 橋と西側堤防の交差部分手前で、自転車に急ブレーキを掛ける紅葉。後続の亜美と里穂も自転車を止めた。堤防の斜面で、同じ制服の4人の男子が何やら揉めている。そのうちの1人は、木山拓馬だ。3人の男子に囲まれている。


「オマエ、最近、調子に乗ってんじゃね~のか?」

「調子になんて・・・そ、そんなことは・・・。」


 高圧的に威嚇をされて、屈しそうになる木山少年。しかし、視線の先に紅葉&亜美&里穂が入り、一呼吸して気持ちを切り替える。


「君達の意味の無いマウントに屈して、僕らしさを見失うことをやめたんだ!」

「はぁ?オマエらしさって何だよ!?」

「暗くいじけているのがオマエらしさだろうに!」

「他人の足を引っ張ることでしか自分を満たさない君達程度には負けない!」

「テメェっ!!」


 進学校に通う者は、受験戦争を勝ち上がったという自信を持った者ばかり。自分らしさを取り戻した木山が、足を震わせながらイジメッ子達を睨み付ける。木山に掴み掛かるイジメッ子達。だが、紅葉が声を掛けたので踏み止まる。


「木山くん、おはよっ!学校に遅れちゃうよ!」

「ありがとう、源川!おはよう!直ぐに行くよ!」


 木山少年は、イジメッ子達を無視して斜面を上がり、堤防道に駐めてあった自転車に跨がって紅葉達と合流。皆で、自転車を走らせる。紅葉は、最後尾で自転車を走らせながら、振り返ってイジメッ子達を眺めた。3人は不満そうな表情で、こちらを睨み付けている。きっと、学校に行って、また木山に難癖を付けるつもりだろう。少し心配になる。


「・・・アイツ等。」


 イジメッ子なんてものは、他人の足を引っ張って嘲笑うことで、自分の自信の無さを誤魔化して、「アイツよりは俺が上」と偉くなったつもりになっているだけ。ただのイジメッ子なら、木山が自分らしさを保てば、それほど怖くはない。

 だが、彼等は闇を発していた。イジメッ子達は妖怪に憑かれている。憑かれたから心を病んでいるのか、病んだ心に妖怪が憑いたのかは解らないが、今の状態では健全な心を取り戻すことが出来ないので、木山を標的にし続けるか、木山を標的に出来ないなら別の誰かの足を引っ張ろうとするだろう。


「じゃ、紅葉ちゃん、亜美ちゃん、ここで!」

「あんなヤツ等に負けないでね!」

「うん!ありがとう!」


 文架大橋の西詰めで、紅葉と亜美は北方面の優麗高に向かう為に信号で止まり、里穂と木山や文架高に向かう為に西方向に直進をする。紅葉は、里穂と木山を見送りつつ、スマホを取り出して、「イジメッ子の文高生(文架高の生徒)に妖怪が憑いている」と燕真にLINEメッセージを送った。


「紅葉~!亜美~!」

「おはよ~!」


 直後に、自転車に乗った美希と優花が合流をしてくる。いつもテンションが高めの美希だが、今日はいつも以上に元気が良い。


「ちぃ~っすっ!」

「美希ちゃん、優花ちゃん、おはようっ!

 どうしたの美希ちゃん?何か良いこと有ったの?」

「これから良い事が有るの!今日は、3年生で古文の授業がある日だよ!」

「んぇ?それがど~したの?」

「解んないかな~?伊原木先生が来る日ってこと!」

「興味無~い!」

「美希ちゃん、ミーハーすぎ。

 格好良い先生とは思うけど、浮かれるほどじゃないでしょ。」

「んぇっ?伊原木センセって格好良いの?」

「紅葉的には‘格好良い’に該当するのは佐波木さんだけだもんね~。」

「んぉぉぉっっっ!!ァタシ、燕真のことカッコイイなんて言ってないもぉん!」

「言ってないけど、態度で解っちゃうよ!」


 赤面をする紅葉。待っていた信号が青に変わったので、4人は一斉に自転車のペダルに体重をかけて横断歩道を渡る。




-YOUKAIミュージアム・事務室-


 紅葉のメッセージを受け取った燕真が、粉木と雅仁に報告をする。メッセージには「放課後になったら、みんなで調査しよう」と書かれていたが、悠長に放課後まで待つ気は無い。

 これは異常事態だ。木山少年に憑いた妖怪を祓って終わりではなかった。事件はまだ続いている。同一地域に複数の妖怪が存在するなど、作為的でなければ有り得ない。文架高生の共通の行動範囲に、鬼印が施されていることを意味しているのだ。


「なんかが有るとしたら、学校の可能性が高いやろ。

 1つ目入道の少年(木山)と、イジメッ子どもに、

 学校以外での‘共通の場所’があるとは思われへんさかいな。」


 最近、態を潜めていた鬼達が、文架高校で何かを企んでいるようだ。若くて新鮮な生命力が集まる学校は、妖怪の餌場になりやすい。その上、昨今の学校は、トラブルや犯罪回避の為に、部外者の出入りを警戒する。退治屋を遠ざけた上で、何かを企むには、実に都合の良い場所なのだ。

 中学時代の紅葉の友人(里穂)が紅葉を尋ねてこなければ、文架の退治屋は、「文架高で何かが起きている」ことに全く気付けなかっただろう。


「なるほど。調べてみる価値はありそうですね。」

「行ってみよう!」


 燕真と雅仁は、駐車場に駆け出してバイクを駆り、文架高校へと向かう。

 鬼の目的はハッキリしている。雅仁を誘き寄せて、酒呑童子を封印したメダルの強奪するつもりだろう。だが、直接的に雅仁を狙わず、何かを仕組んでいるのが気になる。

 2人を見送った粉木は、スマホを手に取り、通話画面を表示させた。意図は不明だが、鬼が本腰を入れて何かを仕掛けてくる可能性があるからには、退治屋側も本腰を入れて対処をせねばならない。ヤツ等の魂胆が解った時点では手遅れになってしまう。粉木の勘はそう告げていた。




-東京都・怪士対策陰陽道組織(退治屋)本社-


 明治神宮の一角に10階建てのビル。誰が見ても解るような看板は掲げていないが、このビルが退治屋の中枢だ。自宅と博物館と喫茶店を兼ねた文架支部とは、規模が別次元。8階~10階が本社で、7階は東東京支部、6階より下階には、開発局や、妖幻システム&Yメダルの保管庫や、隊員の詰め所がある。


 東東京支部が在る7階で妖怪発生の警報が鳴り、下階の詰め所に情報が伝達され、田井弥壱(数ヶ月前まで文架支部に所属していた燕真の先輩)を含めた退治屋東東京支部所属の妖怪討伐隊が出動をする。7階の窓からは、指示を終えた年配の女性が、出動の様子を眺めていた。

 通常ならば、人口が密集する東京都でも、連日のように妖怪が発生することはない。だが最近は、ほぼ毎日、妖怪が出現する。多い時には1日で3件の妖怪が発生することもある。理由は、各所に鬼印が施されているからなのだが、文架支部のように見ただけで感知できる有能すぎる者など、本社にすら居ない(できないのが当たり前)。ゆえに、後手に回った対策しか出来ないのだ。


「小者ばかりたけど・・・最近は頻繁に出現するわね。」


 自分の机に戻って椅子に座った年配の女性は、スマホの着信履歴を確認する。発信者には‘粉木勘平’の名が表示されていた。彼とは40年以上の付き合い。着信が入った時点で気付いていたのだが、出動の指示をしていたのでスマホの相手をできなかった。


「やれやれ・・・用件ちゃ聞かんでも解るけど、無視も出来んわね。」


 タップをしてスマホを耳に当てる。数秒の後、通話相手の声が聞こえる。


〈おう、滋子。せわしないとこ、すまへんな。〉

「用件ちゃ言わんでも解っとる。文架支部への出向やちゃ。」

〈せや。もう1ヶ月も前に本部に依頼をしたのに、音沙汰があれへん。

 返答を催促しても‘検討中’ばっかりや。

 本社の人事部でもあれへんオマエに聞くのは見当違いだが、

 どうなってるのか聞いてへんか?〉

「聞いてはおらんが、理由ちゃ察せられるわ。

 下級の小物ばっかりだけど、連日のように妖怪が発生しとるがで、

 文架に人員を回す余裕が無いがよ。」

〈せやったら、地方の視点か、他県の支部から回されへんのか?

 日本中で妖怪の発生頻度が上がってるわけちゃうんやろう。

 こっち(文架)は鬼の幹部が入ってるんやで。〉

「解った。私からもお伺いを立てとこう。」

〈頼んだで。〉


 通話を切った高齢女性は、大きく溜息をつく。彼女は砂影滋子、62歳。東東京支部・妖怪討伐2課の課長をしている。




-文架市・文架高校-


 燕真と雅仁が外から校内を眺める。紅葉の影響で、優麗高は気にかける燕真だが、文架市内で創立が最も古い文架高は、「頭の良いヤツ等が集まる学校」と考える程度で、特に気にしたことが無かった。登校の時刻が終わり、今は各クラスで朝礼中の為、生徒の姿は見えない。


「何か解るか、狗塚?」

「いや・・・外から見ているだけでは、異常は感じられない。」


 鬼の副将・茨城童子は策士。専門家が眺めただけで異常が把握できるような、解りやすい仕掛けは施さない。だが、生徒の何人かが妖怪に憑かれているという状況を考えれば、あちこちに鬼印があると考えて、間違いないだろう。


「よし、行くぞ!」

「えっ?何処へ?」

「学校に決まっているだろう!」


 バイクを路駐させて文架高校に踏み込もうとする雅仁。燕真はバイクを駐めて、慌てて雅仁を止める。


「おいおい、不審者扱いされて、ソッコーで通報されるぞ!」

「教員に見付かる前に調査を終えて脱出をすれば問題あるまい!」

「最近の学校は、あちこちに防犯カメラがあって、

 先生に見付からなくても、記録に残っちゃうんだよ!」


 絡新婦事件の時、燕真は粉木と共に優麗高に踏み込んだ。実はあの時、防犯カメラが備え付けられていることに気付かず、侵入の様子がバッチリと記録されてしまい、あとで、査定からマイナスを喰らった上で、上層部に根回しをしてもらった。妖怪が出現したから、根回しを効かせることが出来たが、絡新婦が学校を縄張りにしておらず、事件が発生していなければ、燕真と粉木は、不法侵入者、もしくは、変質者となり、別事件の容疑者となってして、警察に逮捕をされていただろう。

 つまり、「踏み込んだら、確実に事件が発生する」って確証が無ければ、上層部に守ってもらえないのだ。


「人に鬼の印が埋め込まれているか確認する場合は、触らなきゃなんだろ?

 生徒1人1人を触って廻るつもりか?」

「もちろんだ!」

「女生徒に鬼の印が埋め込まれていたらどうする気だ?

 無断で学校に入って、見知らぬ女の子に触ったら、人生終わるぞ!」

「フン!大袈裟な!」

「大袈裟じゃない!そ~ゆ~時代なんだ!」

「ならどうしろと?」

「中に入って鬼の印を探して校内を物色する以外に、なんか方法は無いのかよ?

 オマエみたいな優等生なら、他の手段だって思い付くんだろ?」

「有るには有るが・・・些か時間が掛かってしまう。」

「時間が掛かっても良い!その方法を採用してくれ!」

「幼少の頃は、父に連れられて、学校に潜入したが、今の時代は面倒なのだな。」

「20年前と今じゃ、セキュリティーや、部外者を見る目が、別次元なんだよ。」

「・・・わ、解った。」


 燕真の提案を受け入れた雅仁は、文架高の校内を見詰め、特殊な深呼吸をしながら、ゆっくりと学校の周りを歩き周り、所々で立ち止まって周囲を見廻し、護符を取り出して、壁や電柱に貼り付ける。


「何やってんだ?」

「鬼印を炙り出す為に、校内全体を包む結界を張るんだ。」

「もう少しテンポ良く出来ないのか?」

「これだから、未熟者は困る。

 広範囲に結界を貼る場合は、

 龍脈を読んで、結界の起点を効率的に配置しなければならないんだ。」

「あぁ・・・なるほど。」

「些か手間と時間が掛かるが、中に踏み込めないのなら仕方があるまい。」


 校内をジロジロと眺めながら、学校の周りを彷徨いていたら、これはこれで不審者扱いをされそうだ。燕真は、あちこちに備え付けてある防犯カメラをチラ見しつつ、雅仁の結界作りに付き添う。


「あ~あ~・・・こりゃ~、バッチリと記録に残ってんな。」


 この場に紅葉が居たら、校内を見ただけで異常の有無を感知できたのだろうか?紅葉だったら、他校に踏み込んでも、誰も不審者や変質者とは扱わないだろう。もしかしたら、紅葉からのメッセージにあった通り「放課後になったら、みんなで調査しよう」が正解だったかもしれない。




-退治屋本社-


 現場から妖怪討伐と事件終息の報告を受けた砂影が、エレベーターに乗って上階へと向かう。


「やれやれ・・・勘平の依頼をおっちゃるわけにもいかんか。」


 同じ建物内とはいえ、支部とは違って、本部は堅物なエリートや、頑なで頑固な選民思想の持ち主だらけの‘政治色’が見え隠れするフロアなので、本音では、あまり近寄りたくはない。

 エレベーターは、複数の役員室がある9階に到着。砂影は、エレベーターホールにある内線電話の受話器を持って耳に当て、ボタンをプッシュすると、数秒の後、受話器の向こうから女の声が聞こえる。


「東東京支部の砂影ですが、喜田代表はおっけ?」

〈面会の予約は入ってませんが。〉

「予約ちゃ入れとらん。」

〈CEOは外出中です。面会の予約は取りますか?〉

「いや、良い。出直す。」


 トップは外出中だった。砂影は、受話器を置く。秘書経由でしかアポが取れない上層部の「自分達は特別」感や、数年前から代表をCEOと呼ぶ方針は、あまり好きでは無い。


「何処で何をやっとるやら?また、自己保身の政治活動でもしとるのかね?」


 砂影は、もう一度受話器を持って、今度は副代表の秘書室のボタンを押す。


「東東京支部の砂影ですが、大武副代表はおっけ?」

〈砂影さんですか?面会の予約は入ってませんが。〉

「予約ちゃ入れとらん。だが、ちょっこし話がしたい。」

〈少々お待ち下さい。〉


 受話器から保留音が鳴り、数十秒が経過をして、再び秘書の声がする。


〈十数分程度なら、大武COOは、お時間が取れるそうです。〉

「CEOやらCOOやら・・・

 私のような、年寄りには違いがよう解らんがやがね。」


 面会の許可を得られたので、砂影はCOO室へ向かう。部屋の前で副代表の秘書を務める迫天音(さこ あまね)に挨拶をしてCOO室へ。広い室内はブランド志向の逸品で飾られ、手前側に応接用のソファーと机があり、7階にある自分達のオフィスとは別世界。砂影は、役員階(9階)の‘物で権力を魅せる’意思が好きにはなれない。


「忙しいとこすまんぜ。少しお邪魔すっちゃ。」

「やぁ、砂影さん。貴女から赴いてくれるなんて、嬉しい限りだ。」


 奥の豪華なワークデスクでパソコンに向かっていた40代の中年が、仕事の手を止めて立ち上がり、砂影を出迎えた。彼の名は、大武剛。怪士対策陰陽道組織(退治屋)の副代表をしている。顔はいかついが、表情は柔和。砂影は、この部屋の権力志向なインテリアは苦手だが、政治色が渦巻く上層部において、比較的現場の意見に耳を傾けるスタンスの彼にだけには、一定の評価を置いていた。

 身長190センチ近い中年を見上げる砂影。大武は、スキンシップを図りながら砂影を応接ソファーに招き、自身は対面側に座る。


「本社付けで私の仕事を手伝ってくれる件・・・了承してもらえたのかな?」

「いや、その件ちゃ何度も断ったはずちゃ。」

「それは残念。ならば、ご用件は?」

「文架支部の粉木勘平の依頼のことさ。副代表も聞いとるんやろ?」

「もちろん聞いてますとも。」

「いくら、上層部が、粉木の破天荒ぶりを嫌うとるさかいって、

 まさか、鬼の幹部をおっちゃるつもりでないわやちゃ?」

「他の者が、どう考えているかは存じませんが、私個人は、粉木氏の行動力は好いていますよ。」

「・・・で、どう対応するつもり?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 大武副代表は、数秒ほど黙って思案したあと、「信頼のおける砂影さんには話しておく」と枕詞を付けてから、話し始めた。


「文架市の件は、喜田CEOに考えがある。

 絶対に本部には見捨てられないメンバーを送り込む予定だ。」

「御曹司かい?」


 怪士対策陰陽道組織(退治屋)は、大日本帝国時代の内閣参与が、人外から帝都(首都)を中心とした内地(日本列島)を守る為に、非公式に立ち上げた組織であり、初代の代表には、参与の血族が宛てられた。それが、現CEOの先祖になる。退治屋は個人企業や世襲制ではないのだが、創始以降、院政で従えられる他者で中継をしながら、代々の喜田家がトップに君臨をしていた。今の退治屋も、現代表の後任は、副代表の大武か、上層幹部が一時的にトップに収まり、数年後には‘御曹司’に引き継がれることになるというのが暗黙の方針だ。


「さすがは砂影さん。理解力が早くて助かります。

 今現在、文架市の鬼は息を潜めた状態。

 有能な粉木氏と、鬼専属の狗塚が居れば、大きな被害は出ないでしょう。

 そして、事が起こる兆しがあれば、

 日本各地の調査に赴いている‘最も優遇されたチーム’が援軍に入ります。」

「なるほど・・・確かに安心はできるけど、こんな時まで‘政治’優先なのね。」


 砂影は、全てを聞かなくても、現場の不満解消が優先ではなく、政治を優先させる上層部の意向を理解をした。鬼討伐は、勲章授与レベルの最高の実績になる。首領や幹部クラスなら尚更だ。鬼退治の名門に大きい顔をさせない為に、退治屋で討伐をしたいのが心情。その名誉を、十数年後に代表になる予定の‘御曹司’に獲得させようとしているのだ。


「粉木氏は、貴女以上に政治色を嫌がるでしょうからね。

 ギリギリまでは方針を明かせないわけです。」

「まぁ・・・上層の権力争いなんて、私にはどうでも良い。

 手遅れになる前に、いっちゃん権力を持った援軍が入ると解釈して良いのね。」

「はい、そう考えて下さい。

 尤も、喜田CEOは、手遅れになるほどの大惨事は発生しないと想定しており、

 文架遠征は、御曹司に武勲を与える為・・・くらいに考えていますがね。」


 酒呑童子を封印した5枚のメダルのうちの3枚は、退治屋の本社に保管をされており、その場所は上層部の数人しか知らない。つまり、鬼の幹部達が、どう策を張り巡らせたところで、酒呑童子の3/5を本社で掌握しているからには、酒呑童子は不完全にしか復活を出来ない。

 芽高CEOからすれば、雅仁の持つ酒呑のメダルが鬼の幹部に奪われて、中途半端な酒呑が復活をすれば、息子の武勲と、狗塚家の追い落としが同時に出来て好都合くらいに考えているのだ。


「早いとこ、アンタがトップに収まってくれりゃ、

 組織の縦の繋がりは、もうちょっこし整うがやろうけどね。」

「はははっ、嬉しいお言葉ですが、それは私の耳だけに留めておきますね。

 喜田CEOは、組織の為に、政権から資金を引っ張る努力をしているんですよ。」

「まぁ・・・そういう事にしとこうかね。」

「さて、良い機会なので、粉木氏の話題が出たついでに、

 私から砂影さんにお願いがあるのですが。」

「そりゃ、無理や。彼奴(粉木)は聞く耳を持たんやろう。」

「まだ、何もお願いしていないのですが・・・。」

「粉木を本部の管理職に引っ張り上げる話やろ?

 政治に染まった本部の意向など、聞くわけがない。」


 粉木勘平の、優秀な才能と、これまでの実績は、地方の一支部で留めて良いものではない。本部は再三に渡って粉木に管理職の打診をしているのだが、粉木は「現場が良い」の一点張りで、中央の招きに一切応じないのだ。


「それは残念。粉木氏と貴女が私の下に来てくれれば、心強いのですがね。」

「生憎だが、私ちゃ小難しい帝王学なんてガラでない。

 尤も、彼奴(粉木)が管理職を選ぶかどうかはともかく、

 生涯現場で終わって良い器でないってのは、アンタと同意見なんやけどね。」


 用件は済んだ。一定の信頼をできる大武副代表が「援軍を送る」と言ってくれたのだから、文架市が見捨てられる事は無いだろう。そろそろ、妖怪討伐に向かった田井弥壱達が戻って来るだろうから、東東京支部・妖怪討伐2課のトップとして、報告を受けつつ、労をねぎらってやりたい。砂影は‘余計な理屈’で本部の権力闘争に勧誘されることを拒み、立ち上がって大武に一礼をして退室をした。




-文架市・文架高校-


 学校の周り数ヶ所に護符の配置が終わった。燕真に見守られた雅仁が、深く呼吸をして丹田に力を溜め、護符の1つに掌を翳す。


「オーン!結界発動!」


 雅仁が発した念に反応して、正面の護符が光を放つ(霊感ゼロの燕真には光が見えない)。学校の周りに貼られた護符が、1つ目の護符が発する光に反応して光を放ち、光の筋が伸びて結ばれ、学校全体を包む結界が発動した。


「なにっ?しまったっ!!」

「どうした?何かミスったのか?」

「マズいぞ、佐波木!」

「・・・ん?なにが?」


 茨城童子は策士。そして、因縁が深い狗塚家のやり方を熟知している。文架高の十数ヶ所に施された鬼印が、結界の干渉によって表面化をする!そしてそのうちに数ヶ所には、先日の鉄鼠のように、妖怪が仕掛けられていたのだ!




-優麗高-


 本日は2時間目と4時間目に古典の授業がある。非常勤講師の伊原木は、教務室で自席に着座したまま、文架高に施した鬼印が干渉を受けたことを察知して、不敵な笑みを浮かべた。


「ふふっ・・・良い頃合いだ。」


 数日前までの、文架市各地への鬼印の設置は、退治屋と狗塚家の対抗意識で、漠然と行っていたわけではない。無作為に施した鬼印のうち、どの程度の範囲が網羅され、どの地域から潰され、どの地域が手薄かを観察していた。


「くっくっく・・・私が本腰を入れて施した罠だ。簡単には乗り越えられぬぞ。」


 最終的には、文架市街全域の鬼印が潰されたが、鬼印潰しのスタートは山頭野川の東側から。これは、退治屋のアジトが、その地域に在ることを意味している。駅東の鬼印はテンポ良く潰されたが、駅西では若干ペースが落ちた。これは、退治屋の基本的な行動範囲が駅東なので、鬼印に気付きやすいことを意味している。

 つまり、同じ市街地でも、駅西は退治屋の目が届きにくい。だから、若い生命が集まりやすく、伊原木の行動範囲内で、且つ、退治屋が気付きにくい文架高に、ジックリと時間をかけて罠を作ったのだ。




-文架高内-


 木山拓馬が集中して授業を受けていた。進学校ゆえに授業の進捗ペースが早くて大変だが‘自分を見失っていた頃’に比べれば、付いて行けるようになった。窓際の席には、木山を苛めていた赤木が座っているのだが、様子がおかしい。


「ぁぁぅあぁっ・・・・」


 小さく悲鳴を上げたので、周りの生徒達が振り返り、心配をした教師が赤木を覗き込む。


「ん?どうした、赤木?」


 赤木の表情は虚ろ。腹に鬼印が浮かび上がり、全身から闇を発せられ、栄螺の兜を纏った鎧武者=栄螺鬼が出現をする!


「カィィィィッッッッッッッッッッッ!!!」


 栄螺鬼が奇声を発した途端、子妖が撒き散らされて、数人の生徒に取り憑いた!憑かれた者達の顔が、栄螺に変化をする!


「ひぃぃっっっっっっっっっ!!!」 「ばけものだぁぁっっっっっっっ!!」


 大きな悲鳴を上げる教師!状況が理解できずに怯えるクラスメイト達!そのクラスには、木山拓馬の姿もある!妖怪経験者の木山は、他者に比べれば幾分かは、人外の存在に対して冷静でいられるが、それでも人間の力では、妖怪に敵わないので避難する以外の手段は無い!


「みんなっ!慌てずに逃げるんだ!!」


 勇気を奮い立たせた木山が、動揺するクラスメイトを牽引して廊下に避難する!だが、考えが甘かった!複数の鬼印が施された文架高内には、二口女、加牟波理入道、1つ目入道、鉄鼠等々、他の妖怪が出現をしていた!



-学校の外-


 燕真と雅仁は、学校内がパニックに陥っていることを把握する。完全な選択ミス。いや、文架高校の異変に気付いて引き寄せられるという形で、周到な罠に対して、嵌まる以外の選択肢が無かったというべきか?


「くそっ!行くぞ、佐波木!」

「それしかないな!まさか、こんなことになるとは!」


 この状況では、紅葉が居たとしても、同じ結果になっていただろう。罠が仕掛けてあると知っていたとしても、文架高を救う為には、罠を発動させるしかなかった。これが、茨城童子の策略だ。もはや、不法侵入だの、不審者扱いを避けてられる状況ではない。


「幻装っ!」×2


 Yメダルをベルトのバックルに装填してポーズを決めた燕真と雅仁の全身が輝き、妖幻ファイターザムシード&ガルダ登場!2人は、文架高の校庭に飛び込む!

 ザムシードは、校舎内に押し入り、裁笏ヤマで手近な子妖3体を祓ってから、周囲を確認した!


「・・・マズいな。」


 正気を保って逃げ惑っている生徒は2割程度。既に、校内の殆どの学生が子妖に憑かれており、負の闘争心や破壊衝動に駆られて、子妖同士で争っている。ザムシードは片っ端から子妖を斬っていくがキリが無い。全校生徒数に教員を加えて、700~800人くらいだろうか?そのうちの8割を祓わなければならないようだ。


「どけ、佐波木!」


 ガルダが、鳥銃・迦楼羅焔に、属性メダルの『風』を装填して、生徒達に向けて発砲!霊気を帯びた衝撃波が拡散して飛び、30m圏内にいた生徒達を、正気の有無に関係無く纏めて弾き飛ばした!喰らった生徒達は、折り重なって倒れる!


「おい、乱暴すぎるぞ!」

「1人1人祓ってたら、子妖の拡散に追い付けん!」


 倒された生徒達のうち、正気だった者は立ち上がって逃げ出し、憑かれていた者は穏やかな表情に戻って気を失っている。


「掠り傷や打撲くらいは目を瞑って貰わねばな!

 状況が状況だ!背に腹は代えられん!」


 あくまでも、子妖を祓う過程で、衝撃波によって弾き飛ばしただけ。発砲の直撃によるダメージは無さそうだ。


「へぇ・・・便利な銃だな。」

「子をいくら潰しても、終息はしない!本体を見付けて祓うんだ!」

「・・・だな!」


 妖気センサーに意識を集中させて、強い妖気反応を探すザムシードとガルダ!1階に4体、2階に2体、3階に2体、4階に5体、計13体の妖怪(本体)が発生しており、2階に居る1体が、一際大きな妖気を発している!


「3階と4階に発生している5体は下級妖怪・・・君(燕真)に任せても良いか?」

「アンタ(狗塚)は、どうすんだ?」

「1階を制圧次第、2階の中級妖怪を叩く!」


 ザムシードでも、中級妖怪の討伐は可能。様々な戦いを経て戦闘経験値が上がり、且つ、新装備も得て、数ヶ月前に比べればかなり強くなっている。だが、ザムシードよりもガルダの方が強いのも事実。今は、手柄争いではなく、騒ぎの鎮圧が最優先。それならば、強い妖怪は信頼できる仲間に任せて、迅速に倒せる妖怪を成敗するべき。


「了解!一番美味しいところはアンタに任せる!」

「本体を見付けたら、腹にある鬼印を狙え!

 鬼印によって無理矢理結びつけられた妖怪ならば、

 鬼印さえ祓えば、依り代との繋がりが薄れて、急激に弱体化をする!

 以前の戦いで、君も経験したはずだ!」


 アドバイスを受けたザムシードは、以前の天邪鬼戦で、紅葉から「腹に埋め込まれた呪印を斬れ」と言われたことや、先日の1つ目入道戦で、鬼印を消した途端に木山少年が意識を取り戻したことを思い出す。


「・・・なるほどな。了解!」


 ザムシードは、1階をガルダに任せて、3階を目指して階段を駆け上がる!一方のガルダが、鳥銃を発砲してザムシードの進行を援護しつつ、子妖の群れを掻き分けて、1階に存在している本体=鉄鼠×4体の位置を把握する!


「可能ならば、下級妖怪は全部任せたいところだが、そうも言ってられまい!」


 ガルダの装備は、退治屋の装備とは一線を画しており、鬼の殲滅を目的としている。「一般人を救う」を目的にしていない為、憑いた妖怪のみを倒して、憑かれた依り代を救う戦闘には適していない。子妖程度なら鳥銃の殺傷力を極限まで落として放つ衝撃波で祓えるが、その程度の破壊力では本体は微動だにしない。本体を倒せる破壊力で鳥銃を撃てば、依り代にもダメージを負わせてしまう。


「些か手間が掛かるが、仕方がないか!」


 ガルダは、Yウォッチから、飛頭蛮(ろくろ首)の力を封印してた『蛮』メダルを取り出して、Yウォッチの空きスロットに装填!長さ2mの妖槍ハヤカセ(隼風)を装備して、鉄鼠に突進をする!


「はぁぁっっっ!!」


 10m程度離れた位置から、鉄鼠に向けて突きを放つガルダ!妖槍の切っ先から妖気の刃が伸びて、数体の子妖を弾き飛ばし、鉄鼠の腹を貫いた!鉄鼠を捕らえた状態で、妖槍の柄にある窪みに白メダルを装填するガルダ!途端に、鉄鼠が爆発四散をして、霧散した闇が妖槍に吸収され、白メダルが『鼠』メダルに変化をする!


「先ずは1体!」


 狭い戦場では、長柄武器は向いていない。乱戦では、白メダルをセットしたまま長柄武器を振り回せば、攻撃対象に当たる前に、ザコに当たって白メダルを反応させてしまう。総合的に、ガルダの装備は近接戦闘には向いていないのだが、そこは創意工夫で戦う。




-3階-


 妖刀ホエマルを装備したザムシードが子妖の群れに突っ込んでいく!子妖を祓って蹴散らし、二口女の懐に飛びこんで、腹の鬼印に妖刀の切っ先を叩き込んだ!鬼印が消滅をして、二口女の動きが鈍る!それを見たザムシードは、妖刀に白メダルを装填して、二口女を突いた!闇が散って妖刀に吸収され、依り代にされていた少女が倒れる!


「・・・無事か?」


 確認をすると、依り代少女は意識を失っているものの、息は整っており、表情は穏やかだ。


「あと何体いるんだ?」


 教室内では、数人の正気を保った生徒達が、子妖に憑かれた生徒に取り囲まれて、机や椅子で応戦をしていた!ザムシードは、教室内に踏み込んで子妖達を斬って、正気の生徒達を救出する!


「学校の中はカオス状態だ!外に逃げろ!」

「は、はいっ!」


 ザムシードは、生徒達を庇いながら階段まで誘導!「怖くても駆け降りろ!」と指示を出して見送ったあと、再び、3階でひしめく妖怪と子妖の群れに突っ込む!

 妖刀一本で戦うと、子妖は一撃で祓えるが、本体に対してはダメージを与えたあとで、白メダルをセットして改めて斬らなければならない。ハナから白メダルをセットしたまままでは、子妖を叩けない(叩けるが、白メダルの無駄遣いになる)。弓銃カサガケでは、本体に対しては有効だが、子妖に向けた場合は攻撃力が高すぎて、依り代にもダメージを与えてしまう!


「ならばっ!」


 妖刀を左手に持ち替え、右手には白メダルを装填した裁笏ヤマを装備して、二刀流で妖怪の群れに突進していくザムシード!左手に握った妖刀を振り回して子妖を祓って掻き分け、二口女が絡み付かせてきた長髪を振り払い、接近をして右手の裁笏で突く!2体目の二口女が闇になって散り、裁笏に吸収されて、白メダルが『二』メダルに変化する!


「これで2体!・・・確か、3階はこれで終わりのはず。」


 4階からは、生徒の悲鳴や、妖怪の嘶きが聞こえてくる!ザムシードは、次を求めて、階段を駆け上がると、出会い頭に子妖3体を叩き伏せた!直後に、突進をしてきた1つ目入道の体当たりを喰らって弾き飛ばされ、壁に激突!


「くっ!」


 素早く体勢を立て直して身構える。チラ見で確認した教室の札は「3年○組」。確か、4階には5体の妖怪が発生しているはず。各階のうちで3年生のフロアに妖怪の発生率が高いのは、受験目前で、思い悩む生徒が多くて憑かれやすいから?それとも、4階に鬼印が多く存在したから?ザムシードは、数秒ほど思考をしたが、「今は余計なことを考えても意味が無い」と振り切って、1つ目入道に飛び掛かっていく!



-2階-


 妖槍で突かれた二口女が闇と成って霧散!既に、1階の妖怪は全て倒した!2階に残る妖怪は、あと1体だけ!だが、その‘残る1体’は、他の妖怪達より格上の中級妖怪だ!ガルダは、中級妖怪の気配を探り、「居る」と思われる場所に駆け出す!


「ひぃぃぃっっっっっ!!!」


 途中で、生徒が、栄螺頭の子妖に追われて、教室から飛び出してきた!子妖が生徒に掴み掛かろうとすると、別の生徒が、襲われた生徒を救出するために、椅子を振り上げながら突進をして、子妖の背中に思い切り叩き付ける!


「このやろうっ!!」

「カイカイッ!」


 だが、子妖は微動だにせず!振り返って、椅子を持った生徒に襲いかかる!


「ん?・・・あの少年は?」


 ガルダは、勇気を振り絞って応戦していた生徒と面識がある。木山少年だ。妖槍を振るって子妖を祓い、木山達を救出する。彼等が飛び出してきた教室の中には、子妖が5体と本体が1体。ガルダは伸縮自在の妖槍を振るって、子妖5体を瞬く間に祓い、本体の動きに警戒をしながら木山に視線を向けた。


「ここ(2階)は戦場になる!逃げるんだ!」

「で、でも!」

「憑かれた連中は、皆、無事だ!心配をしなくても良い!」

「わ、解りました!」


 ガルダに促され、木山は仲間と共に退避をする。激励会の時と比べて、彼の目には精気が宿っていた。憑いていた妖怪が祓われたから当然なのだが、彼自身が立ち直ったのは、燕真が説教をして導いたおかげなのだろう。

 退治屋の責務は、少年の人生相談ではなく、速やかに妖怪を退治すること。燕真の功績は、退治屋の価値観では何の意味も無い。


「未熟を容認するつもりは無い・・・が、少年が救われた事実は認めても良いか。」


 木山達を見送ったガルダは、教室内に残った1体を睨み付ける!

 ザムシードに3階と4階を任せた理由は、迅速に校内を制圧する為には、未熟なザムシードよりも、戦闘経験豊富なガルダが、中級妖怪と戦った方が被害を食い止められるから・・・。ヒューマニストのザムシードにはそう説明をしたが、本心は違う。


「鬼は・・・皆殺しだ!」


 2階で発生した中級妖怪は栄螺鬼。未熟なザムシードは、「強い妖怪がいる」としか認識しなかったが、ガルダは「憎むべき敵がいる」と把握していた。鬼の壊滅は、狗塚家の悲願。他者に鬼の処理を任せる気は無い。

 ガルダは、栄螺の兜を被った鎧武者に、妖槍の切っ先矛先を向ける!


「カィィィィッッッッッッッッッッッ!!!」


 日本刀を装備した栄螺鬼が、雄叫びを上げて突進をしてきた!距離が10m以内に入ったところで、刺突を放つガルダ!切っ先が伸びて栄螺鬼を襲うが、日本刀で受け流された!ガルダは、直ぐさま妖槍を通常サイズ(2m)に縮めて再び刺突を放つが、今度は栄螺鬼の頑丈な鎧に阻まれ、接近をされたガルダは、日本刀の一撃を叩き込まれてしまう!返す刀を辛うじて回避したガルダが、数歩後退して身構える!


「チィッ・・・ザコとは違うか。」


 下級妖怪程度なら、場に適さない武器でも戦えた。だが、狭い戦場では槍を自在に振り回すことが出来ず、刺突しか放てないことを、中級妖怪には見透かされているのだ。


「鬼め!・・・俺の武器を槍だけだと思うな!」


 ガルダは、武器を鳥銃・迦楼羅焔に持ち替える!



-4階-


 ザムシードが、裁笏ヤマで1つ目入道の腹を貫いた!霧散をした闇が、裁笏に吸収されて、填め込まれていた白メダルが『目』メダルに変化をする!


「これで2体!」


 4階に発生した5体の妖怪のうちの2体を倒した。これで、通算(3階と4階で合計)で本体4体と子妖数十を祓ったことになる。戦いっぱなしで、さすがに疲れてきた。


「あとはっ!」


 センサーで確認された妖怪のうち、二口女、1つ目入道、鉄鼠は全滅したらしく、子妖に支配をされた生徒達は、憑き物が取れた表情で意識を失っている。

 4階で感知された妖怪は残り3体だが、見渡す限りでは何処に居るのか解らない。ザムシードは、妖気センサーに意識を集中させて妖気の発生源を探す。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 センサーが、残り3体と数十体の子妖を感知した。追跡していくと、「男子トイレ」「女子トイレ」と看板の並んだ場所に導かれる。中からは、男女の悲鳴と、妖怪の嘶く声が聞こえる。


「・・・なんかもう、嫌な予感しかしないな。」


 先ずは男子トイレに突入。妖怪1体と、妖怪に憑かれた生徒20人くらいが、個室に群がって、上から中を覗いていた。当該、カンバリ(加牟波理入道)とは、トイレに入った人を覗く習性がある妖怪なのだ。子妖に憑かれた女生徒数人が、男子トイレの大便室を覗き込んでいる光景はシュール。ザムシードは、夢中になって大便室を覗き込んでいるカンバリ本体の背後に近付き、白メダルをセットした裁笏を突き刺した。


「ぐわぁぁ~~~~~~~~~~~~!」


 悲鳴を上げて霧散するカンバリ。依り代になっていた生徒と、子妖に憑かれていた生徒数人が、穏やかな表情に戻って卒倒をした。


「こっち(男子トイレ)に1体ってことは、隣(女子トイレ)に2体ってことか?

 嫌だな~~・・・・狗塚、変わってくんないかな?」


 ザムシードは、男子トイレから出て、躊躇いながら女子トイレを覗き込む。案の定、子妖に憑かれた生徒十数人と、カンバリ2体が、個室に群がって上の隙間から覗き込んでいる。憑かれているんだから仕方無いけど、覗き込んでいる中には、男子生徒や教師の姿もある。知らない人が見たら、変質者の集団だ。


「・・・お、おじゃましま~す。」


 人生で初の女子トイレ潜入。まさか、大人になってから、こんな破廉恥な行動をしなきゃ成らないなんて思いもしなかった。今後、女風呂にアカナメが出現したら、どうするんだろう?妖怪退治の為なんだから、突入しても許してもらえるかな?そんな時の為に、是非、上層部には、女性の妖幻ファイターの配属を考えて欲しい。


「さてと・・・成敗するか。」


 1体目の変態妖怪を、背後から裁笏ヤマで突き刺してメダルに封印。『厠』の文字が浮かんだメダルを外して白メダルと入れ替え、夢中になって個室を覗いている残る1体を背後から仕留めた。本体が倒されたので、子妖が消滅をして、憑かれていた生徒達が次々と卒倒する。


「あの・・・変態妖怪は成敗したから、もう出てきても大丈夫だぞ。」


 ザムシードは、個室内に逃げ込んでいた生徒達に一声掛けてから、そそくさと退出。女子トイレ内で卒倒中の男子生徒や教師が、「女生徒達にどんな目で見られるのか?」と考えると些か気の毒な気がするが、ザムシード(燕真)の知った事ではない。

 しばらくすると、紅葉の友人(町田里穂)を含めた数人の女生徒が、安堵の表情を浮かべて、ゾロゾロと出てきた。


「あ、ありがとうございました!」

「外に逃げるんだ。」

「はいっ!」


 避難をする里穂達を見送りながら、ザムシードは考える。カンバリ(加牟波理入道)に息を吹きかけられると便秘になるんだっけ?呪いは本体を倒したあとも有効?それとも、本体を倒せば便秘は解消される?


「まぁ・・・どっちでもイイや。」


 割り当てられた範囲の制圧を終えたザムシードが、確認の為に妖気センサーに意識を集中させる。3階と4階は、どちらもオールクリア。残った妖怪は、ガルダが担当する2階に1体だけだ。


「中級妖怪・・・か。さすがの狗塚でも苦戦をしているようだな。」


 ザムシードは、ガルダを援護する為に2階に降りようとしたが、一瞬だけ、上階で別の反応を感知する。


「ん?・・・上に何か居る?」


 この上は屋上だ。子妖の類いが騒いでいるのだろうか?少し気になったザムシードは、確認をするために階段を駆け上がる。




-屋上-


 塔屋から飛び出したザムシードが周りを見渡す。生徒の類いは誰も居らず、静寂に包まれていた。だが、誰も居ないわけではない。ザムシードは背に日の光を受けて正面に影が出来ており、ザムシードの背後にある塔屋の上に立つ人影が、ザムシードの影と並んでいる。学校全体が異常事態に陥り、異形(ザムシード)が屋上に出て来たのに、影の主には動揺が見られない。下階は、まだ喧騒が続いているにもかかわらず、屋上だけが静寂に支配されているのが、不気味に感じられる。


「・・・何者?」


 振り返って見上げるザムシード。塔屋の上には、銀髪で、虎柄の着物を着て、目を布で覆った少年が立っていた。腰には日本刀を帯刀しており、頭には角が生えている。

 これが‘日常’であれば、「仮装をした生徒」と考えたかもしれない。だが、異常事態発生中の現状では、いくら未熟なザムシードでも、それを敵と判断する選択肢しかない。


「・・・鬼か?」

「ふふっ!・・・四天王・虎熊童子!」


 身構えるザムシードと虎熊童子!しかし、次の瞬間には、ザムシードは虎熊童子を見失っていた!


「消えたっ!!」

「消えてね~よ。アンタが、すっトロいんだ。」


 ザムシードが気付いた時には、虎熊童子は腰に納刀されたままの日本刀の柄に手を添えた状態で、ザムシードの懐に飛びこんでいた!


「なにっ?」


 素早く抜刀!ザムシードに防御や後退の隙を一切与えないまま、一閃を叩き込み、ザムシードの脇を通過して斜め後方で足を止める!


「秘剣・涼音(すずね)。」


 虎熊童子は、背を向けたまま、滑らかな仕草で日本刀を鞘に半分ほど納め、一旦停止してかた、やや力を込めて残りを納刀する。鍔と鞘が当たり、チンッと音を立てた。


「うわぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 全身から火花が発せられ、仰向けに倒れるザムシード!たった一撃を喰らっただけなのだが、ダメージが大きすぎて全身が痺れ、立ち上がることが出来ない!



-2階-


「なにっ?」


 栄螺鬼と交戦中のガルダが、上階で瞬間的に強大な妖気が発せられたことを感知する!


「ちぃっ!幹部クラスか!?」


 以前倒した星熊童子と同格の鬼だ!ザムシードの手に負える相手ではない!上級妖怪の潜伏に気付けず、上階をザムシードに任せて、中級妖怪如きを担当したのは、判断ミスになってしまった!


「カィィィィッッッッッッッッッッッ!!!」


 動揺で集中力が途切れたガルダの隙を突いて、栄螺鬼が日本刀を振り下ろした!ガルダは咄嗟に退いて直撃を免れたものの、切っ先を喰らってしまう!直後に、ガルダがゼロ距離発射をした鳥銃・迦楼羅焔の光弾が、栄螺鬼に炸裂!弾き飛ばされた栄螺鬼が床を転がっている間に、ガルダは体勢を立て直して、属性メダル『雷』を鳥銃に装填する!


「申し訳ないが、依り代を心配している余裕は無くなった!」


 ガルダが発砲した雷撃が、栄螺鬼を直撃!感電に悶え、黒焦げになる栄螺鬼!大ダメージで弱体化をした栄螺鬼に対して、鳥銃に白メダルを装填したガルダが、両手で構え直し、容赦無く銃口を向けた!迦楼羅焔の中央にある嘴が開き、風のエネルギーが凝縮されていく!


「恨むならば、鬼如きに憑かれる弱さを創った君自身を恨め!」


 妖怪は、依り代の負の感情に憑く。高い知能を持つ妖怪は、依り代を完全掌握するために、特に性根が弱くて曲がった依り代を好む。つまり、鬼に憑かれる依り代は、一般妖怪に憑かれる依り代より、「自分自身に勝つ」能力値が低い。

 ザムシードならば、そんな依り代でも救おうとするのだろうか?紅葉が見たら「非情」と激怒をするのだろうか?


「俺は、彼等ほど甘くはない!」


 ガルダの武器は、鬼の殺傷が前提なので破壊力が高い。依り代にもダメージを負わせてしまう。だがそれでも、鬼の幹部が出現をした今は、依り代に気遣う余裕は無い。


「俺が優先させるのは、鬼の殲滅!」


 ギガショット発動!耳を劈くほどの轟音が鳴り響き、高エネルギーを纏って白く輝いた白メダルが発射された!衝撃波が窓ガラスを砕き、白メダルは栄螺鬼に着弾!


「カィィィィッッッッッッッッッッッ!!!」


 栄螺鬼は、断末魔の悲鳴を上げ、黒い炎を上げて爆発四散!依り代のイジメッ子が投げ出されて床を転がる!

 この破壊力を喰らったら、依り代もただでは済まない。おそらく、肋骨や腕の骨を折るくらいの怪我は負っているだろう。だが、その怪我を心配するのは、ガルダの役割ではない。


「鬼に蝕まれて、魂が破綻する前に解放されたことを、幸運と思うんだな。」


 ガルダは、栄螺鬼が封印されて『螺』『鬼』の文字が浮かび上がったメダルを回収して、次の標的と対峙すべく、階段を駆け上がっていく!



-屋上-


 妖刀を杖代わりにして立ち上がるザムシード!しかし、虎熊童子の容赦の無い剣打を浴びて、手も足も出ずに、再び倒される!


「閻魔の力を使ってるんだから、もっと期待してたんだけどさ。

 ガッカリだよ。・・・君、弱いね。」

「・・・くっ!」

「飽きたから、もう、死んでも良いよ。」


 日本刀を頭上高く翳す虎熊童子!直後に、数発の銃声が鳴り響いて、鳥銃・迦楼羅焔を構えたガルダが、塔屋から飛び出してきた!虎熊童子は、数発を日本刀で受け流し、数発を回避して、ザムシードとガルダから距離を空けた!


「天狗の装備・・・狗塚の末裔か?」

「鬼は殲滅する!」


 鳥銃の連射を続けるガルダ!虎熊童子は、素早いフットワークで回避を続ける!


「出来るもんならやってみろよ、枯れた家系!」

「チィッ!」


 ザムシードには、鬼と対峙したことと、鬼の挑発で、ガルダがいつもの冷静さを欠いているように見える。


「おい、狗塚っ!」


 片膝立ちになったザムシードが、連射をしながら脇を通過したガルダの腕を掴んで止める。ガルダはマスクの下で苛立った表情をして、ザムシードを睨み付ける。


「なんのつもりだ!?

 まさか、天邪鬼の時のように、見逃せって言い出すんじゃあるまいな!?」

「ヤツの命乞いをする気は無い。

 アイツ、虎熊童子って名乗っていたぞ。」

「君に言われずとも知っている!それがどうした!?」


 ガルダは、ザムシードの手を払い除け、虎熊童子との戦闘を続行する!

一方のザムシードは、この戦いに違和感を感じ始めていた。鬼達は、何の為に、文架高を戦場に選んだ?妖幻ファイターを誘い込んで一網打尽にするのが目的なら、鬼側は総力戦を挑んでくるのではないのか?

 文架市中に鬼印を施したのは、雅仁(ガルダ)が常々話題に出す茨城童子という鬼の幹部。文架高を妖怪の巣窟にしたのも、茨城童子なのだろうか?

 交戦中の鬼が、茨城童子なら、これがボス戦と解釈できるが、この場には虎熊童子しかいない。


「茨城童子ってヤツは、何処で何をしている?」


 ザムシードは、痛む体を休め、ガルダと虎熊童子の戦いを眺めながら、漠然とした不安に駆られる。




-優麗高の屋上-


 授業を終えた伊原木が、不敵な笑みを浮かべて、文架高の方角を眺めていた。狙い通り、狗塚の小倅と文架の退治屋は、文架高でドツボに嵌まっている。捨て石の中級妖怪程度ならともかく、虎熊童子を相手にして、簡単に文架高を制圧することは不可能だろう。


「やっと見付けたよ。」


 声がした直後、伊原木の真横に赤い炎が上がり、中から上半身が裸で、下半身に毛皮の衣を纏った、逆立った金髪の少年が出現をする。頭部には鬼族を象徴する角が生えている。


「来てくれたか、金熊童子。」

「‘来てくれたか?’じゃね~ってば!

 イバさんが文架市の何処に居るか解らなくて、

 どんだけ探し回ったと思ってんだよ?

 いいかげんに‘すまほ’を持ってくんないかな?

 遠くに離れていても話ができたり、

 じーぴーえすってので居場所を特定できたりして、スゲー便利なんだぞ!」

「ふんっ・・・人間が発明した技術は苦手でな。

 そんなことよりも、例の物は?」

「アンタが‘すまほ’を持たない所為で苦労するのはオイラ達なんだぞ!

 奪取の報告だって‘すまほ’があれば、直ぐにできるんだぞ!」


 手の平を差し出して‘例の物’を催促する伊原木。金熊童子は、衣の中から小袋を引っ張り出して口を開け、中から3枚のメダルを取り出して伊原木に渡した。


「人間に化けて、退治屋のビルに行って、お館様のメダルを持ってくるだけ。

 楽勝の任務だ。アンタを探す方が苦労したよ。」


 3枚のメダルには『酒』の文字が記されている。退治屋本社で保管をされているはずの‘酒呑童子を封印したメダル’5枚のうちの3枚が、鬼の幹部の手に渡った。


「あと2枚はどうするんだ?」

「1枚は狗塚の小倅が持っている。奴を倒して奪い取れば、何の問題もあるまい。」

「もう1枚は?4枚しか無かったら、お館様は8割しか復活できないじゃん。」

「所在は解らぬが、心配は要らぬ。

 残る1枚は、お館様の終焉となったこの地(文架市)に有ると予想している。

 4枚のメダルで、お館様を復活させれば残る1枚と引き合うであろう。」

「へぇ~~・・・なら、さっさとお館様を復活させようよ!」

「慌てるな。先ずは、このメダルを多くの念で満たさねばならぬ。

 その為に、若き生命が集まる地(学校)を選び、

 俺は、講師などと言う下らぬ役割を演じ、

 数ヶ月もの間、準備を整えていたのだからな。」


 伊原木は、3枚のメダルを屋上の床に置き、一気合い発して姿を茨城童子に変化させ、空中に八卦先天図を描いた。


「若き生命よ・・・お館様の元へ!」


 茨城童子の念に呼応して、優麗高を包んだ結界が発動。生徒達の体から、緩やかに生命力が浮かび上がり、屋上に沸き出し、八卦先天図を通過して、3枚のメダルへと吸収されていく。急激に生命力を奪えば、皆が異常を感じて、学校から退避をしてしまう。だから、緩やかに奪い続ける。

 生徒達は、少しずつ体力を奪われ、体の怠さを「授業が面白くないから眠い」と勘違いして眠りはじめ、やがて、生命の全てを奪われるのだ。


「んぇっ?なに??」


 校内で異変に気付いたのは紅葉のみ。生命力の微減ゆえに、紅葉以外は、強制的に奪われていることに気付いていない。

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