第9話・雪女の伝説(vs雪女・氷柱女)
-文架市・公園通り-
妖気反応発生!燕真が文架大橋に向かってバイクを走らせていた!
時刻は16時を廻ったばかりで、歩道のあちこちには、下校中の学生達が賑やかに会話をしながら歩いている。
今が17時過ぎならば、YOUKAIミュージアムに居座り、妖気発生と聞いて問答無用で同伴をしてくる騒がしい小娘がタンデムに乗っているのだが、今回は幸運にも、小娘が来る前に、妖気が発生してくれた。
「サッサと終わらせてやるさ!紅葉が首を突っ込んでくる前に!!」
文架大橋の袂の停止線でバイクを停車させ、信号の色が青に変わるのを待っていると、Yウォッチが着信音を鳴らした。どうせ、粉木が「まだ現場に着かないのか?」と催促をしているのだろう。現場は目の鼻の先なのだから、着信を無視したい気分だが、燕真は渋々と通信に応じる。
〈おう、燕真か!〉
「もう少し待ってくれ!今、橋の前で信号ちだ!」
〈もうえぇ!橋の周辺で異常が無いか確認をして戻って来や!〉
「はぁ?」
〈反応が消えおったんや!〉
「え?もう消えたの!?なんで!?」
〈そんなん知らんわ!妖怪に聞けや!〉
些か拍子抜けである。たまには紅葉抜きで、事件を解決したかったのだが、なかなか思い通りには成らないようだ。燕真は、バイクに乗ったまま、信号の色が青くなった交差点を左折して、文架大橋を東詰~西詰~東詰と往復してからバイクを停車させ、「異常なし」と粉木に入れる。
「ぁっれぇ~~~~!こんな所でどぉしたのぉ~~?
ぁ!もしかして、ァタシを迎えに来てくれたのぉ!?気が利くね!」
「・・・げっ!」
背後から、うるさい金切り声が聞こえてきた。声の主が誰なのか、振り返らなくても解る。この場所は、彼女にとっては通学路であり、今は下校時刻なんだから、バッタリと出会っても少しも不思議ではない。
しかし、「迎えに来てくれたの?」とはどういう了見なのだろうか?そんなワケないだろう。自意識が過剰すぎる。
やれやれと頭を掻きながら振り返ると、紅葉が手を振りながら駆け寄ってきた。その少し後ろには、紅葉の友人・平山亜美の姿もある。亜美が小さくお辞儀をしたので、燕真は軽く手を振って挨拶を返す。
「今日は歩きなのか?」
「ぅん、朝、雨降ってたからね。バス通したの。」
落ち着きがない紅葉とは対照的に、亜美からは温和しくて物静かな印象を受ける。 何故、まるで違う種類の2人が親友なのかは、燕真には理解が出来ない。きっと、亜美の性格が良くて、紅葉の粗忽っぷりを笑顔で流せるのだろう。紅葉がガキ過ぎるのか、亜美が大人っぽいのか、どちらが年相応なのだろうか?
(・・・まぁ、紅葉がガキ過ぎるんだろうな。)
サッサとYOUKAIミュージアムに戻りたい気分だったが、紅葉を置いて帰ったら、あとでスゲー愚痴られそうだ。現在地から10分も歩けば、紅葉と亜美が解散をする鎮守の森公園前に着く。亜美と別れてから、紅葉をタンデムに乗せれば、文句を言われることはないだろう。紅葉と亜美が並んで先を歩き、燕真はバイクを押して後ろから付いていく。
「身長差、10センチくらいか?」
並んで歩く紅葉と亜美を見ると、同級生には見えない。亜美は、長身で、モデルのようにスタイルが良く(紅葉が幼児体型ってワケではないが)、紅葉と比べると2~3歳は年上に見える。
2人は、公園の入り口で手を振って別れ、亜美は燕真に向かって一礼をしたあと公園内に向かって歩き、紅葉は燕真に駆け寄ってくる。そして、スッカリ紅葉占用になってしまった予備のヘルメットを被り、スッカリ定位置になってしまったタンデムに飛び乗った。
「レッツゴォ~!」
「俺はオマエのアシかよ?」
文架大橋まで紅葉を迎えに来たわけではないのだが、結果的には、同じことになってしまった。燕真は、溜息をついて、ヘルメットを被ってバイクに跨がり、YOUKAIミュージアムに向かって走り出す。
-喫茶YOUKAIミュージアム-
経営方針を博物館から喫茶店に変更した直後は、営業時間が10時~18時だったが、喫茶店の評判が上がった影響で、今では10時~20時に変更されている。客の7割が紅葉目当ての為、平日ならば混雑する時間帯は、紅葉がシフトに入る17時から閉店の20時くらいまで、休日ならば開店から閉店まで繁盛をする。
「閑散としていたから、裏で妖怪の退治屋をやっていても秘密に出来たんだろうに、
店をこんなにオープンにしちゃって、本業(退治屋)は成り立つのか?」
紅葉は到着後すぐに更衣室に入ってバイトのメイド服に着替えて店に入り、燕真は事務所に入って粉木への報告をする。粉木の指示通り、念の為に、妖気が消えたあとの現場を巡回したが、特に異常は無し。一時的に確認された妖気の正体は解らないままだ。
「解っとるな、燕真。センサーの誤作動かもしれんが、しばらくは警戒や。」
「あぁ、そのつもりだ。2~3日は此処に泊まり込みで待機だな。」
報告を終えた燕真は、いつも通りに2階に上がって、誰も客が来ない博物館の受付に収まった。紅葉目当ての客は、基本的には紅葉の笑顔だけで満足をしている。時々、プレイボーイ風のイケメンが紅葉に言い寄ってくるが、大抵は笑顔で軽く回避しているようだ。たま~に、紅葉にトレイでブン殴られて店の外に放り出されるナンパ男や、紅葉に交際を申し込んだ直後に、何故か、燕真を逆恨みする迷惑な連中も存在する。
「あ~あ~~・・・みんな、あの笑顔に騙されてんだろな。」
20時を廻り最後の客が居なくなると(正確には19時45分になって紅葉が更衣室に戻ると客は一気にいなくなる)、ブレザーに着替え終えた紅葉が店内に戻ってきて、鞄の中から冊子のような物を取り出して燕真の目の前のテーブルの上に置いた。
「燕真!粉木じぃちゃん!ちょっと手伝って!!」
「ん!?」 「なんや?」
「明日のォーディションの練習だょ!」
「オーディション?オマエ、またアイドルオーディションに応募したのか?」
「違ぅょ~!そんなの興味無ぃょ~!
優麗祭(優麗高の文化祭)の時に、クラスでやる演劇のォーディションだょぉ!」
「どんな劇をやるんだ?」
燕真は、少し興味を持ち、冊子を取って表紙を開いた。粉木も興味津々と寄って来て、脇から覗き込む。
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むかしむかし、ある村に、茂作と巳之吉という木こりの親子が住んでいました。
ある冬の日のこと、吹雪で、山から村に帰れなくなった2人は、山小屋を見付けて避難し、焚き火を起こして、吹雪が止むまで寒さをしのいで寝ることにしました。
その夜、巳之吉が目を覚ますと、白ずくめで、冷たい目をした、長い黒髪の美女がいました。女が、眠っている茂作に冷たい息を吹きかけると、茂作はみるみる白くなって凍って死んでしまいました。女は、父を失って涙を流す巳之吉を見つめて言います。
「おまえも殺すつもりだったが、その綺麗な涙を見ていたら気が変わった。
おまえは若くきれいだから、助けてやることにした。
だが、今夜のことを誰かに喋ったら命は無いと思え。」
そう言い残して。女は、まるで雪煙のようにその場から消えてしまいました。
それから1年後、あの人同じような吹雪の夜に、巳之吉の家の戸を叩く音がしました。巳之吉が戸を開けると、「お雪」という透き通るような白い肌の美女が立っていました。
「吹雪で足止めをされてしまったので泊めてもらえませんか?」
気の優しい巳之吉は、快く家に招き入れ、お雪の「天涯独り身で旅をしている」と言う境遇に同情をして、この村に住んではどうかと勧めるのでした。やがて2人は恋に落ちて結婚しました。
10年が経ち、お雪との間には子が出来ており、それは、慎ましくも、村の誰もがうらやむような幸せな日々でした。ある吹雪の夜、子供達を寝かしつけたお雪に、巳之吉が言いました。
「ずっと口止めをされていたのだが、おまえになら言っても良いかな。
こんな吹雪の夜になると、あの不思議な出来事を思い出す。
昔、わしは、おまえのように美しい女に出会い、とても恐ろしい体験をした。」
すると、お雪は寂しそうに俯いて立ち上がりました。その姿は、雪煙に紛れ、みるみるうちに、あの日の恐ろしい女の姿に変わっていきました。巳之吉を見つめるお雪の目には涙が溢れています。
「喋ってはいけないと言ったのに、何故、喋ってしまったのですか?
ずっとこうしていたかったのに。あの時の女が私です。
私はあなたを殺さなければなりません。
だけど、あなたを愛し、子がいる今となっては、
私にはあなたを殺すことは出来ません。
どうか、子供をあなたのような素敵な人間に育ててください」
そう言い残して、お雪は雪煙の中に消えていくのでした。そして、2度と、巳之吉の前に現れることはありませんでした。
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「雪女かいな?」
「え~~~~~~と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これやるの?」
「ぅん!」
「幼稚園の学芸会とかじゃなくて・・・高校の文化祭・・・だよな?」
「ぅん!」
「なんで・・・これ?」
「多数決で決まったから!・・・変かな?」
「変だろ?」 「変やな!」
紅葉のクラスは大丈夫なんだろうか?高校生なら、もう少し、文学的な演劇があるのではないか?紅葉が言うには、演劇部がシェイクスピアを、2年生の別のクラスはオズの魔法使いをするらしい。
「だって~・・・クラスの持ち時間が20~25分だから、
あんまり長いのはできないんだよね。」
「それならそれで、文架市の歴史を調べて劇にするとか?
文架市って、源平時代とか、戦国時代とか、戊辰戦争の時に、
色々あったんだろ?」
「その案、誰も言わなかったよ。」
「雪女で20分は保たんやろ?」
「ぇっへへ~ん!
その辺ゎ、ァタシ達のオリジナルで、
ぉ雪を巡る巳之吉とィケメン村人達の恋愛ドラマや、
ぉ雪が巳之吉を殺せなぃほど深く愛してた理由なんかを盛り込んだり、
巳之吉が、ぉ雪を探す冒険に出て、伝説の剣を手に入れて、魔王をやっつけて、
ぉ雪を取り戻す感動のストーリーにして時間を稼ぐつもりぃ~~!」
「25分じゃ足らんのとちゃうか?」
「それ、もはや‘雪女’じゃね~だろ。」
童話に新解釈を入れて劇にするのは、わりと定番。しかし、独自解釈しすぎて童話の意図を変えてしまったら本末転倒だ。
「ぃぃの!その辺ゎ、脚本担当のクラスの演劇部がなんとかするから!!」
「演劇部が中二病じゃないことを祈ろう。」
「そんでね、今のとこ、ぉ雪役にリッコーホしてるのが、ァタシとミミとモコで、
明日の放課後に、ぉ雪役のォーディションするから練習したぃの!」
「あ~~~~・・・そう言う事ね。
・・・で、なんでここで俺達を巻き込む?そんなの、家で友達とやれよ!」
「そぅしたぃんだけど、
ァミが、ミミやモコにァタシの手の内をバラしたら拙いぢゃん。」
「手の内を隠すほどの内容かよ!?」
「早速、練習するから、じぃちゃんゎ茂作役、燕真ゎ巳之吉役で手伝ってょ!」
「・・・メンドクセ~よ!」
「まぁ、そう言うなや、燕真!オマンはワシんとこに泊まりやし、寝るまで暇やし
どうせ、お嬢はオマンが送るんやさかい、
ちぃとくらい遅くなっても心配あらへんし、
面白そうやから、ちょっくらお嬢に付き合ってやろうや!
こんな機会でも無ければ、巳之吉役なんて出来へんで!」
「・・・こんな役なんて、一生やる必要無いだろ!」
-場所を移して粉木邸へ-
茶の間を山小屋に見立てて、雪女初登場~巳之吉を殺さずに去るまでのシーンを練習してみる。
卓袱台の上にあるミカンの山を焚き火役にして、しばらく手を翳して暖まった(ふりをした)あと、粉木と燕真は横になって眠り始める。
ガタガタッ!スゥッ!バァン!!
障子戸が勢い良く開いて、雪女役の紅葉がドカドカと乗り込んできて、手をピースサインにして軽く額に宛てる!
「どもぉ~~!雪女のぉ雪でぇ~~すっ!ちぃ~~~~っす!」
「待て待て待て!カットだ、カット!!」
燕真が起き上がって、早速、練習を止める。
「なによぉ~~~!」
「なによじゃね~だろ!?
そんな騒がしい上に、
いきなり元気良く自己紹介をする雪女が何処の世界にいる!?
そんなに騒がしかったら、ジジイが普通に起きるぞ!!」
「どこか変だったかな?」
「全部変だろ!!」
「雪女らしいところが1個もあらへんで、お嬢。」
「でも、明日のォーディションゎ、
それぞれの雪女感を出す為にァドリブ有りだから、
ァタシはこの路線で行こ~と思うんだょねぇ!」
「一般的な雪女を勉強しろ!」
先日のアイドルオーディションで、紅葉は、三次選考までは断トツでトップの評価を受けていたのに、最終審査の演技力テストと面接で不合格になった。原因は、面接で「芸能人に成る気は無い」とハッキリ言ったかららしい。だが、燕真は、この場に至って、別の原因があると考える。断ったからではなく、演技がダイコン過ぎて(・・・というか、演じる意思が全く感じられず)、トップの評価から圏外まで転がり落ちたでのはないか?
-仕切り直し-
卓袱台の上にあるミカンの山を焚き火役にして、しばらく手を翳して暖まった(ふりをした)あと、粉木と燕真は横になって眠り始める。
ガタガタッ!スゥッ!バァン!!・・・・・・ガァン!!
障子戸が勢い良く開いた拍子に戸枠から外れて倒れ、障子戸側で寝転んでいる粉木に激突した!
「あ痛っ!!」
「ぶぅ~~~・・・なんで外れちゃぅだょぉ~~~!?」
しかし、紅葉は障子戸を退かして、そのまま芝居を続けるつもりらしい。
(これはコントか!!?)
燕真はツッコミを入れたかったが、話が先に進まないのでジッと我慢をすることにした。
紅葉は居間のテレビ側を観客席側とイメージして、大声でテレビに説明をするようにして台詞を喋る。
「ぉっほっほっほっほ!
今からぁ、冷た~~ぃ息を吹きかけてぇ、茂作と燕真を殺しちゃぃまぁ~す」
(粉木のじいさんは役名だけど、俺は名指しかよ!?
・・・てか、うるさい雪女だ!)
燕真はツッコミを入れたかったが、話が先に進まないので、もう少し我慢をすることにした。
紅葉(雪女)は、先ずは粉木(茂作)の元に行き、両膝を付いて顔を覗き込み、ふぅ~っと息を吹きかける。燕真(巳之吉)は居間(山小屋)で起きている異常に気付いて、ハッと起き上がった。
粉木(茂作)を凍死させた紅葉(雪女)は、立ち上がって燕真(巳之吉)を見つめる。本来なら、白ずくめで冷たい目をした長い黒髪の美女なんだけど、燕真の目の前に居るのはブレザー姿で血色の良い紅葉。美女という共通点以外には雪女の要素は一つも無い。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
30秒ほどの沈黙のあと、死体役の粉木が、溜まりかねて薄目を開けて呟く。
「燕真・・・オマンの台詞じゃ」
「あぁ、そうだっけ?・・・え~~~~っと・・・・
ひぃぃぃ・・・お・・・おっ父・・・これで良いのか?」
「ぶぅ~~~~~~~~~~~~~!カット!!
ちょっとぉ、燕真、気持ちを込めて真面目にやってょぉ!
そんなんぢゃ練習にならなぃょ。」
「おいおい、オマエの練習なんだから、俺の演技力は関係無いだろ!?」
「ダメっ!ちゃんとやって!!」
「そうや、燕真!お嬢の為に、もうちっと真面目に付き合ってやりや!」
粉木までもが起き上がり、紅葉に味方をして、燕真にダメ出しをする。粉木は、寝転んで息を吹きかけられて死ぬだけの役。いい気なもんだ。
「ならジジイが巳之吉役をやれよ!」
「そいでは、お嬢が役作りをできへん。」
その後、ほぼ時間の無駄としか言えない‘雪女ごっこ’は2時間ほど続く。
-翌日の15時過ぎ・YOUKAIミュージアム-
本日は定休日なのだが、昨日の妖気発生の件があり、燕真は粉木邸で待機をしていた。待機とは言っても、何も起こらなければ、居間で寝転がって、センベイを食べながら、テレビを見ている程度である。休日跨ぎで妖怪が絡むと、必然的に粉木邸に待機になってしまい、何処にも遊びに行けなくなるから、かなり迷惑だ。
「まぁ・・・待機料がもらえるから、文句は言えないけどさ・・・。」
ピーピーピー!!!
事務室に備え付けられていた警報機が、妖怪の出現を知らせる緊急発信音を鳴らす。すかさず、粉木が情報を確認して、燕真に指示を出した。燕真は起き上がり、食べかけのセンベイを口の中に押し込む。
「反応は御領町、お嬢の学校のあたりや!!」
「了解!!」
燕真は、ホンダVFR1200Fに跨がり、妖怪の出現場所の向けて走り出した!・・・が、僅か3分後、燕真が鎮守の森公園沿いの大通りに差し掛かる前に、粉木から「反応が消えた」との通信が入った。
「またかよ!ったく、何だってんだよ!」
〈念の為に、お嬢の学校付近を巡回してくれんか?
何かあったら、また連絡をするよってな。〉
「・・・やれやれ、解ったよ!」
粉木の指示に従い、周囲への警戒をしながら文架大橋西詰~御領町を見て回ったが、特に異変らしいものは無い。一応、優麗高付近をもう一度巡回して、正門前にバイクを止め、ヘルメットを脱いで一息ついてから校舎を眺める。
「そう言えば、今日、雪女役を決めるとか言ってたっけな。
結果はどうなったんだろ?
まぁ、アイツにゃ無理だろうけどな」
しばらく眺めていたが、下校の生徒が正門から出て来たり、吹奏楽部の演奏の音が聞こえてきたり、運動部の威勢の良い掛け声が聞こえてくる程度・・・至って平穏その物である。特に問題は無さそうだ。
「アイツはもう帰ったかな?まぁ、どうでもイイか!」
ヘルメットを被り直して、進行方向を帰路に向けて走り出そうとしたその時、スマホが着信音を鳴らした。ディスプレイには‘源川紅葉’と表示されている。燕真は、若干「面倒臭い」と感じながら、通話に応じる。
「・・・どうした?」
〈迎ぇに来てくれたのぉ?〉
「チゲーよ!」
〈アリガト~!今行くから待っててねぇ!〉
「だから違うって!」
こちらでは紅葉を発見出来ていないが、紅葉はこちらを発見したらしい。正門側に振り返ると、校舎2階の窓から、満面の笑みを浮かべた紅葉が顔を出して大きく手を振っていた。
「そういや今朝も雨が降っていたな。今日もバス通か?」
5分後、紅葉が、友人を伴って駆け寄ってきた。燕真の肩や膝に触れるなどのスキンシップを取りながら馴れ馴れしく話をする。その喋り方は、、学校内の皆に知る、少し早口で喋る紅葉とは違い、甘えた口調だ。紅葉を知る者からすれば、紅葉がバイクの男に、気を許して素の自分を見せているのがいるのが解る。
「彼氏か?」 「兄弟か?」
校内でもトップクラスに入る美少女が、見知らぬバイク男と、笑顔で会話をする光景。下校中の生徒達が興味津々に眺める視線が、燕真に突き刺さって痛い。
「・・・あ、そう言えばどうなった?」
「なにが?」
燕真は、楽しそうに話し掛けてくる紅葉の背後で、無言で立っている友人に気を使い、共通になりそうな会話を少しばかり振ってみた。
「雪女役だよ。特訓の効果はあったのか?
まぁ、オマエが選ばれるとは思えないけどさ。」
「ん~~~~~~~~・・・ムカ付くけど、セーカイ!なんで解ったの?」
「オマエの昨日の演技で選ばれるワケ無いよ!」
「迫真の演技だと思ぅんだけどなぁ~~」
「いやいや、演技する気あるのか?ってレベルだ!」
「・・・わたくしの名は、お雪。」
2人が会話をしていると、それまで、紅葉の後で黙っていたボブカットの友人が、小さく声で変な自己紹介をしてきた。燕真は、彼女が「お雪」ではなく「平山さん」と知っている。
「彼女、急にどうしたんだ?」
「ぉ雪役ね、アミに決まったの。」
「あれ、彼女も立候補してたのか?」
「昨日ゎしてなかったけど、今日になって急に立候補して、
ァタシとアミとミミとモコでオーディションして、アミに決まったの。」
「へぇ・・・まぁ、オマエよりは、雪女役が似合いそうだな。」
つい先程(放課後)、クラスメイト全員の前で、数人の立候補者達が‘雪女初登場シーン’を演じて、投票により平山亜美が選ばれたらしい。案の定、紅葉は雪女の要素ゼロの元気いっぱいな雪女を演じた為に、「やる気無いんじゃね?」と判断されて、再下位落選となったようだ。
亜美が「お雪」なんて名乗っているのは、おそらく、役を勝ち取ったテンション&彼女なりのジョークなのだろう。燕真は、亜美に話を合わせて、ジョークを被せる形で返事を返した。
「あぁ、どうも!初めまして、お雪さん!俺を凍死させないでくれよ!あははっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
亜美からの反応は無い。クスリとも笑わない。元々物静かでおとなしい娘とは思っていたが、無反応で返されると、流石に会話は続かない。
一方の紅葉は、スペアのヘルメットを取り出して小脇に抱える。燕真が何を言おうとお構い無しでタンデムに跨がってくるのが、毎度のパターン。迷惑なりに慣れてきた。。
「しゃ~ね~な~!乗・・・・・・・・・・・」
しかし、今回は、いつものパターンと違った。スペアヘルメットを亜美に渡して被れと促している。
「今から、クラスの発表会実行委員のみんなで、
ァミのバィト先のDOCOSに行って打合せなんだけど、
ォーディションに時間が掛かっちゃって、ァミがバィトに遅れそぅだから、
まずゎァミを送ってぁげて!
ァタシは、すぐそこのコンビニで待ってるから、その後で送ってもらえばぃぃょ!
他のみんなゎ自転車だから心配しなくても大丈夫!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
聞き間違いだろうか?それとも、この女の頭がオカシイのか?今、この娘は、随分と不可思議なことを当たり前のように言った気がする。紅葉を乗せるのは想定内のつもりだったんだけど、なんか、違う事をほざいてないか?
今の紅葉の言葉をジックリと訳してみよう。
先ずは「実行委員のみんなで、ァミのバィト先に行って打合せをする」と言っていた。この件に関しては、YOUKAIミュージアムは定休日だから、紅葉が何処に遊びに行こうとも問題無い。「ご自由にどうぞ」である。
次に「ァミがバィトに遅れそぅだから、まずゎァミを送ってぁげて」はどうなんだ?なんで俺が、大して会話をしたこともない紅葉の友人のバイトの時間まで心配しなきゃ成らないんだろう?これはオカシイだろう。紅葉は俺の事をタクシーか何かと勘違いしてないか?
おまけに「ァタシは、すぐそこのコンビニで待ってるから、その後で送ってもらえばぃぃょ」に至っては、上記と総合で判断すると、友人を送ったあと、もう一度ここに戻ってきて、今度は紅葉を乗せて友人のバイト先に行けと言ってるのだろうか?何故、俺が、学校と友人のバイト先を2往復もしなきゃなんだ?
「他のみんなゎ自転車通学だから心配しなくても大丈夫」は、紅葉と亜美以外は、打合せ先まで自転車で行くって事だろけど、ハナから知らん奴の心配など一切していない。つ~か、なにか?「他のみんな」が徒歩の場合、「全員を送れ」と言うつもりだったのか?
この女は何様のつもりなんだろうか?恋人か妻にでも気取ってるつもりなのか?・・・てか、恋人や妻だとしても、これは無いだろう!
「はぁぁっっっっっ!!!!なんで俺が!!?」
「ィィから、早く早く!ァミがバィトに遅刻しちゃぅょ~!」
「・・・・・・・・・・・・・おいおい、問答無用かよ?」
紅葉は「早く行け」と催促するし、亜美はチャッカリとタンデムに跨がっている。 何一つ納得出来ていないのだが、ここで問答をしていても話は先に進まないので、仕方がなく亜美をバイト先まで送ることにして、バイクを走らせた。当然と言えば当然だろうけど、亜美は、紅葉ほど背中に体を預けず、遠慮がちに肩に手を乗せている程度である。
ちなみに打合せ場所の‘DOCOS’とは、文架大橋東詰から北側にあるファミリーレストランのことだ。川を挟んで、優麗高のちょうど対面にあるので、川を横断出来れば10分で往復出来るのだが、もちろんそんな事は不可能であり、文架大橋を迂回しなければならないので、往復で20分以上は掛かるだろう。
そう言えば、出会ったのは、紅葉よりも亜美の方が先(本人は気絶していたけど)なのだが、亜美とサシで接するのは初めてである。今まで、紅葉を間に挟んで会話をしたことはあったが、直接会話をしたことはない。
「なぁ、平山さん。紅葉のお雪役はどうだった?」
どんな会話をすれば良いのか解らないが、バイト先までずっと無言では苦しいので、当たり障りが無くて共通の会話になりそうなキーワードを選んで話し掛けてみた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「再下位落選て言ってたけど、紅葉の演技は、そんなに酷かったのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
反応は返ってこない。亜美は亜美で、ベラベラと喋るタイプでは無さそうだし、大して親しくもない燕真とは話しにくいんだろうけど、無視は酷くないだろうか?
「平山さんて、DOCOSでバイトしてたんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今度食いに行くから、フライドポテトでもサービスしてくれよな!」
「うるさい、黙れ若僧!馴れ馴れしく話し掛けるな!殺されたいのか!?」
「・・・・・・・・・・え~~~~~~~~~~~~」
何か悪い事でもしたのだろうか?どちらかと言えば、慈善事業をしているつもりなのだが、やっと反応が返ってきたと思ったら、スッゲー睨み付けながら、凄まじい悪態を突いてきた。この場で放り出したい気分だ。
‘活発で性格に難のある紅葉’と‘穏やかで性格の良い亜美’と考えていたが、どうやら違ったらしい。こっちはこっちで頭がオカシイみたいだ。優麗高って知恵遅れの集団なのだろうか?
その後、一切の会話が無いまま、DOCOSに到着。亜美は一礼どころか振り返りもせずに、ヘルメットだけ置いて、店内に入っていった。
「・・・無愛想すぎだろ。俺の事キライなのか?」
燕真は大きく溜息をついて空を見上げた。緊張や怒りで気付かなかったが、体はスッカリ冷え切っている。今は10月。もう秋なのだから、涼しくて当たり前なのだが、急激に冷え込んできたような気がする。
「まるで冬みたいに寒いな。今日って、こんな天気だったっけ?」
もう一度優麗高に行って、今度は紅葉を乗せて来なければならない。燕真は、手のひらで軽く両腕を擦ったあと、バイクの進行方向を、来た道に向けて、再び走り出すのであった。
「俺・・・なにやってんだろ?」
優麗高前のコンビニ駐車場に到着すると、店内で雑誌の立ち読みをしていた紅葉が、直ぐに気付いて駆け寄ってきた。今度は紅葉を乗せて、再びDOCOSに向かう。亜美とは違い、紅葉は、体を燕真の背中にピッタリと密着させながら、ペラペラと話し掛けてくる。いつもなら「運転に集中出来ないから少し黙れ!」と言うところだが、つい先程、亜美から冷たい悪態を喰らったばかりなので、ちょっとだけ気持ちが和む。互いに服を着ているとは言え、密着している背中に暖かみを感じる。
文架大橋西詰めで信号待ちをしながら、燕真はそれとなく亜美のことを聞いてみた。
「なぁ、平山さんて、あんなに喋らない子だったっけ?」
「ん!?ァミがどうしたの?」
「人見知りでおとなしい子だとは思っていたけどさ、
あんなに喋らないとは思ってなかったよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?どうした!?」
紅葉はしばらく黙ったあと、燕真の質問とは全く関係の無い質問を返してきた。
「ねぇ、燕真・・・
もしさ、妖怪がぃて、でも、悪ぃ事をしない子だったら、どぅなるの?」
「・・・ん?」
「悪くなぃ妖怪でも、やっつけなきゃなの?」
「う~~~ん・・・考えたこと無かったな。
俺だったら、人に害の無い妖怪なら、放置しても良いと思うけど、
粉木のじいさんならどう判断すんだろな?・・・なんで?」
「うぅん・・・気にしないで!ちょっと考えっちゃっただけ!」
「そっか!」
信号が青に変わって前方の車が進み出したので、会話を止めて再び走り始めた。DOCOSに到着すると、先ほどとは違い、店の前には数台の自転車が駐輪してある。
「ぁ!サッチン達、もぅ来てる!」
「サッチン?」
「学級委員長の子だょ!会った事無かったっけ?」
「ね~よ!サッチンどころか、たまに話題に上がるミキとユーカも知らん。」
「ミキとユーカはE組なんだから、打合せに来るわけないぢゃん。」
「だからオマエの友好関係なんて知らないって。オマエがどのクラスかも知らない。
俺が、オマエの同級生で知ってるのは、平山さんだけだ。」
「そうだっけ?でも、アミがいるから大丈夫だね!さぁ、行こぅ!」
「・・・・・・・・・って、ちょっと待て!!‘行こう’ってなんだ!!?」
「ん!?これから打合せだから一緒に。」
「はぁぁっっっ!!!?」
「ぇ!?ィヤなの!?」
「当たり前だ!!」
「なんで!?」
「何でもクソも無いだろう!
俺がオマエ等の学校の先生ってならまだしも、
何処の世界に、
高校の文化祭の打合せに参加をする近所のオッサンがいるんだ!?」
「なら、先生のフリをすればぃぃじゃん!」
「オマエはバカか!?顔を出した瞬間にバレるわい!!」
「ぇ~~~~~~~~~~~~・・・ぢゃ、どぅすんの!?」
「な・に・が!!?」
「ァタシを待ってる間!」
「え!?待つの!?」
「ぅん!」
「帰っちゃダメなの?」
「ぅん!」
「ここで待たなきゃなの!?」
「そりゃそぅでしょ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「てっきり、打合せに参加してくれると思ってなのにぃ!」
「・・・・・それは・・・無い!」
「なんで?」
「話が堂々巡りすんぞ!」
ちょっと待って欲しい。議論の内容がオカシくないか?ここは「ここで紅葉を待つ」「待たずに燕真はサッサと帰り、紅葉はここから自力で帰る」「一度帰るが、打合せが終わったあと迎えに来る」、この3点で議論をするところではないのか?
「終わったら連絡するね~!」「めんどくさい!歩いて帰ってこい!」「え~、なんで?迎えに来てよ!」「イヤだ!なんで俺が!」、こんな言葉の応酬なら理解出来る。・・・が、今の議論はなんだ?既に「待つ」事は前提になっていて、「待ってる間、打合せに参加するかどうか」で揉めている。
つい先程、亜美と接したあとに紅葉と接したら、気持ちが和んだと評したが訂正する。気持ちは少しも和まない。
「解った解った!だったら、別の席で飯でも食いながら待つよ!
それで良いんだろ!?」
先に帰るという選択肢が与えられていないのは納得出来ないが、一切関係の無い打合せに参加させられるよりは数倍マシである。
「ご飯ゎダメ!今ゎドリンクバーとデザートだけにして!
ご飯ゎ、打合せが終わったら、
リバサィ鎮守に行って、2人で一緒に食べようよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はいはい」
燕真は半ば諦めモードで頷くのだった。かなり譲歩をして、ファミレスで紅葉を待ちながら、早い夕食を済ませて時間を潰すつもりだったのに、それも許してくれないらしい。今の時刻は16時半。3時間程度はここで足止めされる覚悟をするべきだろう。その間、妖怪反応の呼び出しが来ないことを願う。いや、むしろ呼び出された方が気楽かもしれない。
「ご飯ゎダメだからねっ!」
「アホじゃないんだから、何度も言われなくても解るよ!」
店内に入ると、紅葉と同じブレザー姿の男女4人組が「こっちこっち」と手を振ってきた。紅葉は、小走りで寄っていって、ソファー席の女生徒に「ちょっと詰めて~」などと言いながら仲間達に合流する。
「なんでアイツが居んだよ?」
「ァタシのこと待っててくれてるの。」
「だれだれ?」 「彼氏?」
「んへへっ!ヒミツ!こっちに呼んで良い?」
「ちょっと格好良いじゃん。呼んで良いよ。」
「ダメに決まってんだろう。」
「お兄ちゃん?彼氏じゃなかったら、私に紹介してよ。」
「カッコ良くないから紹介したげない。」
「えっ?格好良くないの?」
「ぅん、燕真ゎ0点なの。」
「0点野郎と一緒にいると人間性疑われるぞ!」
いきなり話題にされているようだ。燕真は、高校生グループの会話が聞こえないふりをして、離れた席に座る。グループの男子の中に、露骨に燕真を睨んでいるヤツが1人居る。多分、紅葉を好いていて、一緒に来た燕真を目の仇にしているのだろう。 ボロクソの評価をされて地味にイラつく。
(・・・せめて、俺に聞こえない声で喋れ。)
店員呼び出しのチャイムを押すと、バイト中の亜美がオーダーを取りに来た。少々意外だが、さっき送った時とは違い、幾分かは愛想良く対応をしてくれる。
「え~っと、ミートドリアと唐揚げとドリンクバーでお願いします。」
「ドリンクバーとケーキセットですね。かしこまりました。」
「いや、ミートドリアと・・・」
「あちらの席の彼女様に、
ドリンクとデザート以外はキャンセルするように言われてます。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
「ご注文を繰り返させて頂きます。ドリンクバーとケーキセットですね。」
「・・・いや・・・あの」
「・・・・へぇ~、クレハのこと‘彼女’って言ったのに、否定しないんですね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「紅葉も茶化すと照れて誤魔化しますけどね~。
私には付き合ってるようにしか見えませんよ♪」
「・・・え~と・・・あの」
亜美は、嬉しそうな笑みを浮かべて立ち去っていった。幾分かどころか、随分と愛想が良い。何度か、紅葉を挟んで会話をしたことのある、温和しくて穏やかな、燕真のイメージ通りの亜美だった。だったら、先ほどの無愛想&暴言を吐いた亜美はなんだ?双子?それとも2重人格なのだろうか?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ!」
亜美の豹変に気を取られて、「彼女様」と「ケーキセット」を訂正するタイミングを逃してしまった!訂正を怠り、あとでこの件が紅葉の耳に入るなんて、想像しただけでも背筋が凍り付く!
(フロアに紅葉の友人が居るうちは、
飯を頼んでも勝手にキャンセルされるだろうから、
ケーキセットは甘んじて受け入れよう。
だが、「彼女様」についてはキッチリと訂正しておかねばならん!)
燕真は、ドリンクバーで煎れたホットコーヒーを飲みながら、その機会を待った。 しばらくすると、こちらに気を使っているのか、同級生に気を使うことが出来ないのかは不明だが、紅葉が寄って来て、燕真の隣に密着するように座り、会議の進捗状況を報告しつつ、意見を求めてきた。
「あっちに戻れ!」
「休憩っ!チョットくらいイイぢゃん。」
「なら、せめて、隣じゃなくて向かい側に座れ。」
オマエの連れが、泣きそうな眼で俺を睨み付けて来やがるぞ!」
「ん!?ホントだ!永遠輝、どうしたんだろ!?」
「アイツ、トワキって名前なのか?」
「ぅん、そぅ!3足500円のソックスの右足片方だけみたぃな顔をしたヤツね!」
「・・・くつしたみたいな顔?逆に誰のことを言ってるのか解らなくなった。
まぁ・・・彼は、俺の事が嫌いなんだろ?」
「なんでだろ?燕真って、人から嫌われるタイプじゃないのにね?」
「イイから戻れ!オマエがここに居ると、俺がもっと嫌われる。」
「は~ぃ!」
紅葉が仲間達の元に戻って数分後、亜美の手でケーキセットが運ばれてくる。「彼女様」を訂正するチャンスだ。
「なぁ、勘違いすんなよ。俺と紅葉は付き合うとかそんなんじゃ・・・」
「若僧!わたくしに話し掛けるなと言ったはずだ!殺されたいのか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
店員さんが怖かったので訂正を出来ませんでした。それなりに愛想が良かったり、無愛想なんて次元を通り越すくらい態度が冷たかったり、何がなんだか解らない。あんな態度で客に接したら、即座にクビにならないか?もしかして、今のガキの間では、あんな遊びが流行っているのだろうか?
燕真は不満げな表情をしながら、スプーンで、ケーキの横にあるバニラアイスを突いて、些細な違和感を感じ、店員さん(亜美以外)を呼び止めて質問をしてみた。
「あの、アイスは凍っているんですけど。」
「アイスなので当たり前です。」
「そりゃそうですよね~。」
店員さんは「コイツ、何言ってんだ?新手のナンパか?」みたいな表情をしながら去って行った。確かにアイスが凍っているのは当たり前である。あんな質問をすれば相手にされないのは当然だろう。だが、凍りすぎている。スプーンもフォークの歯が立たないくらいカチカチに凍っている。しかも、ケーキも凍っている。
つ~か、外は比較的涼しいのに、冷房入れてんの?客への嫌がらせ?ってくらい店内が寒い。ハァ~っと息を吐くと白い。そのうち、他の客達も騒ぎはじめた。
「スミマセ~ン!暖房の温度を上げてくださ~い!」
「ドリンクバーが動かないんですけど~!」 「スープが冷えてます!」
店員達が対応をしているが全く改善されない。どうやら、店内の空調、その他機械が故障をしてしまったようだ。
「このままでは風邪を引いちゃう。」
「今日の打合せは止めよっか。」
打合せ中の紅葉達も、寒すぎて居心地が悪くなり、店から出る算段を始めた。店に紅葉を連れて来てから1時間も経過していないが、揃って会計に立ち上がる。3時間の足止めを覚悟していた燕真としては、嬉しい誤算だ。
同級生達を見送った紅葉が、燕真の元に寄ってくる。それを見た男子生徒(多分、永遠輝)が、窓の外から凄い形相でガンを飛ばしているのがウザイ。
「寒ぃっ!ぃこっ、燕真!」
バイクに乗って風を切ることを前提に比較的厚着をしている燕真でも寒いのだから、スカートの紅葉が寒がるのは当然だろう。生足が真っ赤になっている。
「なぁ、この店って、いつもこうなのか?
オマエの友達、よく、こんな店で働いてられるな?」
「さぁ~むぅ~ぃ~~~・・・風邪引くっ!」
「でも俺、まだ、カチカチに凍ったケーキセット、一口も食ってない。」
「ケーキぃぃから、もぅ帰ろっ!」
「あぁ・・・うん。勿体ないけど仕方ないか。」
ケーキは惜しいが、目の前で震えている紅葉が見るに堪えない。燕真が会計をする為にレジに行くと、亜美が対応をしてくれた。燕真も紅葉も他の客も店員達の震えているのに、亜美だけは平然としている。
「平山さん、寒くないのか?」
「おまえには関係無いだろう!」
「ぁとで電話するねぇ」
「いや、わたくしの方から連絡を入れるように心掛けよう」
「ぢゃ、ぉ願ぃね」
「あぁ、承知した」
「バィバ~ィ」
「うむ!風邪を引かぬように気を付けるのだぞ!」
「ぅん、ぁりがと!」
亜美は、燕真への対応は冷たいが、紅葉とは比較的普通に会話をしている。
会計を済ませて外に出てみると、店内よりも暖かい。たまたま、ブラックリストに載っている客が来店しており、この店は、その客を帰らせる為に店内の温度を下げて嫌がらせをしていたのだろうか?もしそうだとしても、巻き込まれた一般客は溜まったものではない。店の経営方針を疑ってしまう。
燕真は、2~3回ほど店側を振り返ったあと、紅葉をバイクに乗せて店をあとにするのだった。
-粉木宅-
DOCOSのあとは、2人で適当に飯を食べるつもりだったが、紅葉があまりにも寒がるので、予定を変えて、粉木邸に転がり込むことにした。茶の間では、燕真&粉木がお茶をすすり、紅葉は、エアコン(暖房)の前に立って体を温めている。
「・・・・で、飯食うのをやめて、ここに転がり込んだんかい?」
「まぁ~な!
真冬並みに室温が下げられた店内って・・・店長は一体何を考えてんだろうな?」
「・・・なぁ燕真?」
「・・・ん?」
「おまん、全く気付いとらんのか?お嬢のツレ・・・憑かれとんで。」
「・・・・・え?」
「その娘をバイト先まで送って、その娘のとこで茶を飲んで、
かなり長う接しとったようじゃが、なんも気付いとらんのか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「相変わらずダメなやっちゃのう。」
「・・・・・・・・・」
「いつもと違うて思わんかったか?」
「・・・そりゃ、多少は。
でも、それなら紅葉が気付くんじゃないか?コイツ、普通に会話してたぞ。」
「お嬢は気ぃ付いた上で接しとるんやないか?どや、お嬢?」
「ん~、知ってるょ!ぁれ~?燕真も知ってると思ってたぁ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「燕真に会ったとき、‘ぉ雪です’ってちゃんと自己紹介したょねぇ?」
「思た通りや・・・オマン、どんだけ鈍いんや!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
燕真は、頭を掻きながら、放課後からファミレスまでの一連を思い起こしてみる。
「なら、もしかして、ファミレスが寒かったのは、
平山さんに憑いている妖怪の所為か?」
「それは無いやろ!そない事すれば、センサーが反応するわい!」
「きっとぁれゎ、妖気とか関係無くて、
ぉ雪が、ぉ店の温度を自分の過ごしやすい設定にしたからだねぇ」
「ドリンクバーの故障は?」
「ただの故障でしょ」
「俺のケーキセットがカチカチだったのは?」
「ぁのぉ店のケーキセットゎ、ぃつもぁんなだょ。
普段なら、常温で少し解けて直ぐに食べゃすくなるんだけど、
今日ゎ、ぉ店の中が寒かったから、解けなかったんだねぇ。
ぁ、もしかしたら、ぉ雪が運んだから、
ぉ雪の体温で、もっと凍っちゃったかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっか」
「ぅん」
ファミレスで発生したことが、妖怪の悪事とは関係無いことは解った。だが、燕真は、まだ納得が出来ない。
「・・・てか、なんで、友達が憑かれてんのに放置してんだよ?」
「ぉ雪とァミが約束したから。ァタシもちゃんと立ち合ったょ!」
「どない約束や?」
「悪ぃ事ゎ絶対にしなぃこと。ァミを傷付けたりしなぃこと。
ァミの体を借りるのゎ、ァタシの前と、1人の時と、どうでも良いときだけ。
学校(特に先生の前)や、パパやママの前でゎ、ァミに体を返して、
ぉ雪ゎ出て来なぃこと。」
「それで、穏やかな平山さんと、異常に冷たい平山さんが居たワケか。
・・・・・・てか、俺は‘どうでも良い’に入れられたワケね。」
「いつから気付いておったんや?」
「ァミの中にぃるのが解ったのゎ月曜日の朝からだょ。
土日に旅行に行って連れて来ちゃったみたぃだねぇ。
ぁ!でもね、最初ゎずぅ~っとァミの中に隠れてて、
昨日の下校の時に初めてお試しでァミの体を借りたんだょ」
「初めて表に出たんが昨日の放課後か。
・・・今日はどのタイミングで表に出よった?」
「放課後だょ!雪女のォーディションの時!」
「なるほどな、センサーが反応したんと時間が合いよるわ。」
「雪女役を雪女本人がやったのか?そりゃ、合格するはずだ。
あれ?妖気反応の原因が判明して、悪い妖怪じゃないって解ったんだから、
これで事件解決か?・・・事件起きてないけど。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ぅんぅん!解決だね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
和気藹々と事件終了を喜ぶ燕真&紅葉とは対照的に、しばらく、眉間にしわを寄せて黙り込んでいた粉木が、徐に口を開く。
「なぁ、燕真・・・その妖怪が悪さをしないって保証できるんかい?」
「・・・・え?」
「この先ずっと、人間社会に馴染んでいけると思うんかい?
人間と妖怪では、生活環境が違いすぎるで!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なぁ、お嬢・・・妖怪はいつまで友達ん中におるんや?
おまんの友達は、本当にそれで良いんかい?
そろそろ、友達のバイトが終わる時間やろ!
今から2人して会って、憑いてるモンには出て行ってもらい!」
「・・・・・・で、でも」
「でもやない!退治屋の仕事は人間社会に巣くう妖怪の排除や!
今すぐに退治されても、なんも不思議じゃないんじゃ!
お嬢は、友達を危険に晒す気か!?
何も起きんうちなら、ワシは聞かんかったことにも出来るが、
問題を起こして存在が公になれば、そうはいかんで!
退治屋が動かなアカンくなる!そいじゃ、遅いんやで!」
「・・・・・・ぅ・・・ぅん」
「・・・解ったよ」
燕真と紅葉は、家から追い出されるようにして、再びバイクで亜美の元に向かうのだった。
粉木は窓から2人を眺めながら、こめかみに手を当てて目を閉じる。紅葉の情報を整理すれば、亜美の中の妖怪が表に出て来たタイミングと、センサーが反応したタイミングで時間的な辻褄は合う。しかし、妖怪が悪意を持って妖気を発生させなければ、センサーは反応をしない。本人同意で平和的に出現をしても、警報機は鳴らないのだ。しかし、短時間とは言えセンサーは反応をした。それはつまり、紅葉が考えるほど、穏やかな状況ではないことを意味している。
しばらくしてから目を開けて、遠い景色を眺めた。その視線の先には、羽里野山(はりのやま)が聳えている。
「アイツ等、よりによって。・・・嫌な予感がすんで!」
※羽里野山(はりのやま)
文架市の西側、隣の市の境界にある標高600mくらいの、何処にでもある山。
手軽なハイキングコースがあり、小学校の遠足や中学校のキャンプに利用される。
-公園前通り-
走行中のバイクの上で、紅葉が亜美のスマホを鳴らしてみるが、亜美とは連絡が付かない。
「まだバィト終わってなぃのかな?」
「DOCOSまで行ってみるか!」
「ぅん!行ってみて!」
「了解!」
「・・・・・・・・・・・・・ぁれっ?ちょっと待って!」
「どうした?」
燕真は、紅葉の意味深な発言が気になり、バイクを路肩に停車する。紅葉はヘルメットを脱いで、真剣な表情で周囲を見回している。
「公園の中だけ・・・変な霧みたぃなのが掛かってるょ!ほらぁ!」
「ん?どこだ?」
燕真は、紅葉の指をさしている公園の方向を眺めるが、紅葉が言うような現象は、何も感じることが出来ない。だが、この展開はもう慣れている。燕真には解らないだけ。いつも、紅葉が反応を示す場所では、ほぼ間違いなく妖怪絡みの何かが発生しているのだ!
「行ってみるか?」
「ぅん!」
燕真が目的地を変更してバイクを走らせ始めると、今度は、粉木からの「鎮守公園で妖怪反応有り」との連絡が入った。やはり紅葉の感応は正解のようだ。公園の入口で、燕真はバイクを一時停止させる。
「オマエは降りろ。」
「なんでっ?ァタシも行く!」
「問答をしている暇は無い!
オマエは、外から、安全かどうかを確認してから来い!」
「ん~~~~~~~~~~っっ!」
紅葉は露骨に不満な表情をしたが、燕真に説得をされてタンデムから降りた。紅葉が素直(?)に応じるって事は、紅葉の直感が危険を感じているからなのだろう。つまり、公園に踏み込むには、それなりの覚悟が必要って事だ。
鎮守公園内は車輌乗り入れ禁止だが、悠長な事を言える状況ではない。燕真は、一気合い発して、単身でバイクを駆り、公園内に乗り込み、左手のYウォッチから『閻』メダルを抜き取って和船バックルに嵌めこんだ!
「幻装っ!!」
燕真の体が光に包まれ、妖幻ファイターザムシード登場!それまで見えなかった妖気が、ザムシードのセンサーを通して燕真の目にも見えるようになる。続けて、Yウォッチから『朧』メダルを抜き取って、Yウォッチの空きスロットルに装填。
《オボログルマ!!》
ザムシードの背後の時空が歪んで、妖怪・朧車が出現!ホンダVFR1200Fに取り憑き、マシンOBOROに変形をした!
-鎮守の森公園内-
帰宅中の亜美の前に、白い着物のを女が立ち塞がっている。長くて乱れた白髪には、所々に青いメッシュが入り、雪の結晶のような氷の髪飾りを付けている。その肌は透き通るように白く、目は切れ長で鋭い。
白い女を睨み付けながら、身構えて数歩後退する亜美。白い女が手を上げると、頭上に霊気が集中をして、幾つもの全長1m程の‘つらら’を形作った!
「・・・消え失せろ!!」
女が手を振り下ろすと同時に、冷たく尖ったつららが亜美に向かって飛んでいく!
「うおぉぉぉっっっ!!」
亜美と白い女の視線を遮るように、横からマシンOBOROが飛び込んできた!タイヤを横滑らさせながらマシンを急停車させ、ザムシードが妖刀を振るって放たれたつららを弾き飛ばす!
「オマエ・・・悪い事はしないって、紅葉と約束したんじゃなかったのか?
周りに誰もいなくなった途端に、憑依した平山さん本人を狙うとは、
随分と礼儀知らずな妖怪だな!」
「約束?なんの事だ?」
「約束なんてハナっから聞く気なんて無いって事か!?
如何にも悪役って感じだな!」
「・・・フン!その女の肩を持つなら、容赦はしない!」
白い女は、手を掲げ、頭上に幾つもの‘つらら’を作って、次々と撃ち出す!妖刀を振って襲い来る巨大つららを打ち砕くザムシード!
所詮はただの氷の絡まりだ。それほど重たい飛び道具でもない。攻撃を凌ぐことに何の問題も無い。しかし、妖怪の標的は、ザムシードではなく亜美。攻撃をする為に亜美から離れれば、亜美が飛び道具の餌食になってしまう。このままでは攻撃に転じることが出来ない。
「飛び道具には飛び道具だ!」
ザムシードは、Yウォッチのから『鵺』と書かれたメダルを引き抜いて、空きスロットに装填!目の前の時空が明るく歪んで、中から弓銃カサガケが出現する!
武器を持ち替え、連射に特化した‘小弓モード’を選んで、次々と光弾を撃ち出し、つららを相殺するザムシード!妖怪とザムシードの間で幾つもの雪煙が上がって目眩ましとなり、つららの間隙を縫うようにして放たれた光の矢が、妖怪の肩を掠る!
小さく悲鳴を上げ、傷口を押さえて数歩後退する妖怪。肩からは、血の代わりに、白い冷気が吹き上がる。
「おのれ・・・揃って、我が安住を奪うつもりか。」
「約束破って、人を襲っておいて、その言い分はないだろう!!」
ザムシードは、Yウォッチから抜き取った空白メダルを右足の窪みにセットして、ゆっくりと腰を落として身構える!右足が赤い光を纏い、妖怪との間に幾つもの小さい火が上がり、炎の絨毯を作る!
そして、妖怪が頭上に浮かべていた巨大氷柱は、炎に熱せられて次々と砕けていく!
「これは・・・地獄の炎!?
くっ・・・そうか・・・オマエが?」
「えっ!?」
妖怪は、雪煙に溶け込むように一体となり、その場から消えていった。構えを解き、念の為に眼前の妖気を探るザムシード。雪煙に紛れて見え隠れするのは、残存妖気のみ。妖怪本体は遠くに逃げたようだ。
一般人を守ることを優先させた為、妖怪を仕留められなかったのは仕方がないのだろう。ザムシードは自分にそう言い聞かせて、一先ず、安堵の溜息をもらした。
ふぅーーーーーーーーーーーーーっっ!
その直後、無防備の背後から、全身が凍り付くほどの冷気が浴びせられる!
「・・・え?」
途端に視界が歪み、全身の力が抜け、真っ直ぐに立っていられなくなって、その場に両膝を着くザムシード!背後から白い手が回され、ザムシードの首を絞める!
「どういうつもりかは知らぬが、氷柱女(つららめ)を退けたことは礼を言う
だが、警告したはずだ閻魔!私に干渉するなと!」
「・・・お・・・おまえ?」
「足掻いても無駄だ!我が冷気により、おまえの神経は麻痺をしている!」
ザムシードに守られていたはずの亜美が、全身から冷気を発しながらザムシードに襲い掛かってきた。首を掴んでいる手は氷のように冷たく、徐々にザムシードのパワーと体温を奪っていく。
亜美の中から浮き上がるように、もう一つの姿が出現する。途端に、それまでザムシードの首を絞めていた亜美は脱力して、その場に倒れた。
白い着物、長く美しい黒髪、透き通るような白い肌、鋭く冷たい眼・・・その名は雪女!
「うわぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!
動けなくなったザムシードは、全ての生命力を、雪女に凍り付かされようとしていた!
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