第4話 私の幼馴染 〜麻衣視点〜
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〜中里麻衣視点〜
私には凄く大好きな幼馴染が居る。
亮介って名前の大好きな男の子。
子供の頃はいつも彼の背中を追い掛けて居た。
ただ彼の方は別にそこまで私を好きじゃないみたい。何というか、女友達……うん、正しくそれだ。
でも別にそれで良いと思ってる。
私の一方的な片想いでも、亮介が綺麗なお姉さんと可愛らしい妹さんに囲まれて、それで幸せそうな姿が見られるなら満足っ!
妹の渚沙ちゃんと違って楓さんは怖いけど、私って要領悪いから歳上にはいつも嫌われるんだよね……もっと頑張らないとっ!
亮介とは産まれた時から隣同士で幼稚園、小学校、中学、高校もずっと同じ。
少し勉強が苦手だったから、偏差値が高い今の高校に通う為にいっぱい勉強したよっ!亮介は気付いてないと思うけどねっ!
『──次、麻衣を虐めたら許さないからな?』
小学校の時、イジメられてる時期が少しあった。
とても苦しい日々だったんだけど、少しで済んだのは全部亮介のお陰だった。
五人くらいの女の子に囲まれ叩かれてた場面に、亮介がたまたま通り掛かってくれた。
私は怖くてイジメを誰にも言えなかった……でも亮介は私の両親、先生、虐めてる側の両親に全て打ち明けてくれた。
私の身体には殴られたアザがあり、いじめてた人達もそれを認めたから大問題になったのを覚えてる。
いじめっ子さん達は本当にこっ酷く叱られたみたい。
後日、五人とも目を赤くして私の家まで謝りに来てくれた……多分、凄く泣いてたと思う。
『悪いことしたなぁ』
って亮介に言ったら──
『なんでやねん』
って突っ込まれた……アレは笑っちゃったよ。
それからいじめっ子さん達の態度は変わり、気まずそうにしながらも私に優しく接してくれる様になった。
私もそうだけど、お父さんとお母さんが本当に感謝していた。
娘を助けてくれてありがとうって……何回も頭を下げていたから亮介も驚いていたよ。
『もし、亮介くんの身に何かあった麻衣が守るんだぞ!』
『この恩はいつか絶対に返さなきゃね!』
そう言ってくれるのは幼馴染として鼻が高いけど……お母さん、お父さん……亮介が家に来たら付きっ切りになるの止めよ?邪魔で全然遊べないんだけどっ!
──これが亮介との思い出の一つ。
助けて貰わなくても大好きだったけど……これをキッカケに限界を超えちゃったね。
これでもかと言うくらい好きになっちゃったよ。
──────────
──事態は思ったより遥かに深刻だった。
死んでしまいそうなほど消耗し切った亮介を見て、私は愕然とした。
亮介が女性に暴力を振るったと言う嘘が出回ってるのは知っていたけど、そんなの直ぐに収まると思った。
亮介がやってないのは調べればわかるだろうし、何より安心出来たのはお姉さんと妹さんが居るから。
あの二人なら絶対に守ってくれると信じられた……だから私の出る幕はない。
亮介も私より姉妹と居る方が安心だと思う。
それでも何度か見舞いに行ったけど亮介のお父さんに門前払いされた。
『心配だから外に出したくないのかな……?』
『麻衣、分からないが向こうの両親に任せよう』
私たちはそう思って引き返した……けど、実際には違ったみたい。
『俺はほんとにやってないんだ……』
久しぶりに会った亮介は酷くやつれていた。
『当たり前だよ!絶対に亮介はそんな酷いことしないって分かってる!!それなのにクラスのみんなも亮介の家族もおかしいよ!!』
私は亮介を慰めてからお姉さんの元へ向かう。
まさか……あのお姉さんが……あの妹さんが、亮介の話を信じないなんて……!!
お姉さんは──
『証拠は充分にある』
って言ってたけど、向こう側の証言と夜中に亮介が裏路地を歩いてた事の何が充分な証拠なの!?
だけど、どれだけ言っても亮介の家族は信じてくれないっ!それどころかクラスの皆まで亮介を責めて虐め始めた。あんなに仲が良かった桐島さんや生徒会長さんまで……!!
どうしてなの……?今までの亮介を思い出して?そんな事するような人だと本気で思ってる?
私がどれだけ訴えても誰の耳にも届かなかった。
『山本さん……アンタ最低ですよ!』
『他人の家に口出ししないで頂きたいっ』
事の深刻さにいても経っても居られず、お父さんが亮介の家に向かった。
もう一度ちゃんと調べて貰ってはどうか……そう切り出したが、亮介のお父さんは全く聞いてくれない。
終いには示談したから調べる必要はないと言われ、喧嘩にまで発展したらしい。
亮介の父親がこんな人だとは思わなかった……ほんの少しも信じていないんだね。
驚いたのがお姉さんと妹さんも同じ考えだった事。
あの二人だったら、何がなんでも亮介を味方すると思ってた。まさか父親と同じ考えだなんて……!!
許せないッ……でもあの三人を信じて亮介をほったらかしにしたのは私だ…………ごめん亮介。
──もう直ぐ出張から亮介のお母さんが帰って来る。
もしお母さんまで信じてくれなかったら……ますます亮介の居場所がなくなっちゃう。
その頃、お父さんとお母さんは本気で亮介を養おうかと、真剣に話し合うようになった。
──だけど亮介のお母さんは違った。
話を全部聞いた上で亮介を信じてくれている。
どれだけ亮介のお父さんが怒鳴っても、お姉さんと妹さんに怒られても亮介を信じてくれた。
本当に嬉しかった。
亮介を信じてるのは私達だけじゃなかったんだ。
そして亮介が家に居場所が出来たのも嬉しかった。
もしも亮介が警察に捕まった時、亮介のお母さんが居てくれたら未来は変わったかも知れない。
でも亮介のお父さんが勝手に示談を成立させてしまったから、もう遅かった。
亮介のお母さん……凛花さんは、自分が居ない時に亮介を支えてくれたと、泣きながら私達家族に感謝してたけど……大したことはしてないよ。
私達はただ亮介を信じてただけ……うん、それだけ。
『──麻衣……御飯食べに行かない?』
『──休日、暇だったら遊びに行かない?』
『──麻衣、今日も可愛いらしいな』
そして亮介がやたら優しくなった。
もちろん前から凄く優しい人だけど、今までは【仲の良い幼馴染】程度にしか思われてなかったと思う。
お互い異性だし、二人っきりで遊んだりする事も最近はないし、高校になってからはクラス以外で顔を合わせる機会も少なくなった。
ちょっと悲しかったけど、私と亮介は恋人同士でもないし、好きだと気持ちを伝えた訳でもない。
だから成長と共に離れて行くのは仕方ないよね。
………
………
でも……今は違う。
私を見つけるだけで喜んでくれる。
休日には二人っきりで遊びに誘ってくれる。
プレゼントをくれたりする。
頻繁に食事にも誘ってくれる。
どんな誘いにも断らないで付き合ってくれる。
学校の外でも顔を合わせない日は殆どなかった。
私はそんなつもりで味方した訳じゃないのに……でも凄く幸せだよ。
仲の良かった友達は皆んな離れて行ったけど、亮介に暖かい感情を向けられるのが嬉し過ぎて全く気にならない。
それでもいつか冤罪は晴れて欲しい。
それで私から離れても良いから……どうかこれ以上苦しまないで。
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