第15話 学生寮への引っ越し
僕達は入試の結果を見に行った。4人とも全員が合格していた。そればかりではない。4人全員が同じクラスになっていたのだ。合格を確認した僕達は、一旦館に戻ってナザレ伯爵に挨拶をして、メアリーの荷物を寮に運ぶことにした。やはりメアリーの荷物は大量だった。僕は荷物をすべて空間収納に入れた。
「これで全部?」
「そうよ。シン君。中身は見ないでね。」
「わかってるよ。」
恐らく下着とかも入っているのだろう。なんか、僕に預けるのに抵抗があるようだ。荷物を僕の空間収納に仕舞った後、学園に向かった。そして、僕もメアリーとギンと一緒に女子寮に入って行った。すると、僕に気が付いた女子が声を上げた。
「キャー」
女性の悲鳴のような声を聞いて、生徒達が部屋から続々と出てきた。原則として、女子寮に男子生徒が入ることは禁止されている。僕は物凄く焦った。だが、僕の心配をよそに、女子生徒達の反応は違っていた。
「素敵ー!」
「あの人ってこの学園の生徒でしょ?何年生かしら?」
「多分、新入生よ!」
「可愛いわー!私の部屋に連れ込んじゃおうかなー!」
「ダメよー!」
「でも、本当に素敵ねー!」
なんか嫌がられると思ったら逆の反応だ。僕達がメアリーの部屋に入って行くと部屋の前には女の子達が集まった。僕は早く女子寮から抜け出そうと、急いで空間収納から荷物を取り出した。だが、うっかりと一つだけの荷物を落としてしまった。
「あっ、ごめん!」
落とした箱からは下着が出てきた。白色、赤色、水色、黒色と様々な色のものがあった。極めつけは、かわいい動物の絵が描いてあるものまであった。メアリーが真っ赤な顔をして急いで隠している。
「シン君。ワザとでしょ!」
「違うから!」
「もしかして、見た?」
ここで僕は言えない。花や動物の絵が描かれたパンツがあったなんて。
「見てないよ。」
「なら、いいわ。」
僕とギンは自分達の部屋に戻る言ことにした。メアリーの部屋を出ると、女性達が聞いてきた。
「あの~。お名前を教えてください。」
「シンだけど。」
「シンさんっていうんですか?」
「何年生ですか?」
「今年入学したばかりだよ。」
「キャー!年下だわ!可愛い!」
なんかもうお腹いっぱい状態だ。すると、困っている僕を助けようとギンが僕の手を引っ張った。
「シン様。早く!行きますよ!」
「ああ。」
僕は女子寮から何とか逃げることができた。
「ありがとう。ギン。」
「いいえ。でも、これからもあることですから注意が必要です。」
「わかったよ。」
なんかギンが珍しく怒っている。
「なら、私は自分の部屋に戻りますけど、夕食の時間には校舎の入口で待っていますので。」
「了解。」
僕とギンとメアリーは学生寮への引っ越しを済ませた。そして、僕は自分の部屋に戻ったが、戻ってもやることがない。まだ、夕食までには3時間近くある。
“ギン!起きてるか?”
“はい。”
“魔物の森に狩りに行くけど、ギンも行くか?”
“はい。同行させていただきます。”
“なら、僕の部屋まで来てくれる?”
“わかりました。”
ギンが僕の部屋に来た後、僕は懐かしい魔物の森に転移した。森に変化は見られない。
「懐かしいです。」
「そうだね。まだ、そんなに時間が経っていないのにね。」
ギンはフェンリルの姿になって森の中を走り始めた。
“シン様!ブラックベアがいました!”
“すぐ行くよ。”
ギンのところまで行くと、巨大なブラックベアがいた。普通のブラックベアよりも一回り大きい。恐らく大量の魔素を吸い込んだのだろう。口からよだれを垂れ流して狂暴化までしている。
「ギン!僕が足を攻撃するから、首を狙ってくれ!」
「わかりました。」
背中の剣を抜いてブラックベアに一気に近づいて足を攻撃しようとした。だが、ブラックベアの動きが速い。間一髪のところで右手の攻撃を避けた。ブラックベアには鋭い爪がある。爪の攻撃が当たったら大けがをするだろう。
「ギン!こいつは魔法で弱らせてからの方がよさそうだよ。」
「わかりました。なら、私にやらせてください。」
「いいよ。」
ギンが大きな声で吠えた。
ワオ———————
すると、ギンの身体が光だしてギンの体の周りに氷の矢が何本も現れた。そしてその氷の矢がブラックベアめがけて飛んで行った。ブラックベアは何とか叩き落しているが、肩、腹、足に傷を負った。黒っぽい血が流れている。
「グワ————」
僕は剣を右手に一気に加速してブラックベアの右足を切断した。ブラックベアはたまらず地面に転がった。そこをギンが大きくジャンプして首に嚙みついた。しばらくして、ブラックベアは動かなくなった。
「やったな。ギン。」
「はい!」
「でも、ギンもだいぶ強くなったよな~。」
「シン様といるからですよ。」
僕はブラックベアの亡骸を空間収納に仕舞って、寮の部屋まで転移した。
「明日は時間があるから、今までの素材を売りに冒険者ギルドに行こうか。」
「はい。」
まさか冒険者ギルドで騒ぎになるとも知らずに、僕達はそれぞれの部屋に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます