第14話 合格発表

 入学試験の後、僕とギンは学園長室に呼ばれた。学園長はこの世界では魔法レベルが高いハイエルフだった。僕とギンについて気がついているようだったので、僕とギンのことを正直に話した。それから、僕とギンが校門の前まで行くと、メアリーとミーアが待っていた。



「どうだった?シン君、ギンさん。」


「職員室でもう一度魔力測定させられたよ。大変だったよ。なっ!ギン!」


「はい。もう面倒ごとはコリゴリです。」



 僕達はミーアを孤児院まで送っていった。そして、翌日の合格発表を一緒に見に行くことを約束して別れた。



「シン君はさすがね。でも、ギンさんがあそこまで能力が高いとは思わなかったわ。」


「シン様と一緒にいましたから。」


「そう。でも、私が馬車で襲われたときには、ギンさんは一緒じゃなかったわよね?」


「はい。先だっても話しましたが、一足先に王都に向かっていましたから。」



 すると、メアリーがチラチラとギンを見ながら言った。



「でも、あの大きなシルバーウルフはどうしたのかしらね?」


「・・・・」


「まあ、いいわ。お腹すいちゃった。急ぎましょ!」



 もしかしたら、メアリーもギンのことを怪しんでいるのかもしれない。そんなことを思いだながら館に戻ると、すでにご飯の用意ができていた。3人ともお腹がすいていたせいか、すごい勢いでご飯を食べた。そして、食後は居間でナザル伯爵に試験について色々と聞かれた。


「それで、3人とも試験はどうだったんだ?」


「間違いなく合格したわよ。ねっ!シン君!ギンさん!」


「まあ、僕も大丈夫だと思います。」



 するとギンが下を向いて言った。



「私は筆記試験次第です。」


「そうか。3人ともずっと勉強していたからな。よく頑張ったな。」


「それより、すごいのよー!お父様!シン君の魔力は500もあるのよ!あの伝説の英雄と同じなんだから!それに、ギンさんも魔力が300もあったのよ!でも、私は190しかなかったわ。」


「メアリー!すごいじゃないか!190は冒険者並みの魔力だぞ!それに、メアリーはまだ12歳だ。これからもっと増えるさ。」


「でも、シン君とギンさんが羨ましいわよ。」



 メアリーが何か落ち込んでいる。僕とギンの魔力が高いのは特別だ。それを知らないメアリーが少し哀れに思えた。そこで、少しだけ魔法の説明をした。



「メアリー。確かに魔法って魔力が大事だけどもっと大事なことがあるんだよ。」


「それ本当?」


「ああ、本当さ。」



 ナザル伯爵の顔が真剣になった。



「この前も話したけど、魔法を使うにはね。イメージすることが重要なんだ。」


「イメージ?」


「そうさ。例えば火は何色してるかわかるでしょ?」


「オレンジや赤でしょ?」


「そうだよね。でも、オレンジや赤の炎は温度が低いんだよ。でもさ、同じ魔力量でこんなことができるんだよ。」



 僕は指の先に赤色の炎を出して見せた。そして、その色がだんだんと青白くなっていく。



「う、嘘だー!!!」


「この炎は赤い炎よりもはるかに高温なんだよ。だから、相手に与えるダメージも断然強くなるよ。」


「すごい凄い!他には?」


「同じようなことが他にもいっぱいあるさ。」


「ねぇ、私にもっともっと魔法を教えてくれる?」


「いいけど。」



 メアリーは貴族の娘だ。冒険者にはならない。僕はナザル伯爵を見た。すると、ナザル伯爵が言った。



「私からも頼む。メアリーに魔法を教えてやってくれないか。」


「いいんですか?でもメアリーは貴族になるんですよね?」


「シン君。人の一生は短いんだ。やりたいことをやらなければ、きっと最後は後悔するだろ。

私はメアリーが望むのであれば、貴族にならなくてもいいと思っている。貴族になることがメアリーの幸せじゃないからね。それよりも、この子には宝物を見つけて欲しいんだ。もしかしたら、死ぬほど苦しいかもしれないけどね。」


「わかりました。では、学園生活をする間、できる限り魔法を教えましょう。ですが、勝手なことを言いますが、僕とギンはこの国を離れることもあり得ることだけは覚えておいてください。」


「ああ、わかってるさ。そうならないように全力で君達を守るよ。」


「ありがとうございます。」



 そして翌日、僕達は合格発表を見るために学園に出向いた。校門のところにミーアが立っていた。



「お待たせ!」


「私も今来たところにゃ!」



 4人で掲示板に向かった。そこには合格者の番号が書かれていた。僕達4人は全員合格だ。しかも、全員が同じクラスになっていた。もしかしたら、学園長が同じクラスにしたのかもしれない。



「良かったわー!全員同じクラスで!」


「そうだね。」



 そして、僕達は男子寮と女子寮のそれぞれの部屋に行った。王立学園は全寮制だ。王族以外は全員が寮に入る決まりなのだ。部屋に行くとすべて個室だった。しかも、家具類が全部整っている。さらに嬉しいことにお風呂まであった。ただ、食堂は学校内の食堂を使うしかない。しかも門限があって、夜7時以降の外出は禁止となっていた。



「シン君。荷物を取りにいったん館に戻らないと。」


「私は荷物はないにゃ!だから、このままここにいるにゃ!」


「ミーア!着替えとかは?」


「かばんの中の持ってきたにゃ!」



 ミーアは孤児院にいたせいか荷物が少ないようだ。当然、僕もギンも荷物などない。だが、メアリーは違う。貴族の娘なのだ。それなりに荷物もあるだろう。僕とギンはナザル伯爵の挨拶もかねて、一旦館に戻ることにした。



「ナザル伯爵。長い間お世話になりました。」


「いいさ。たまにはメアリーと一緒に遊びに来てくれたまえ。」

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