第16話 冒険者ギルドでのいざこざ

 合格発表を見た僕達は、荷物をもって寮へと入った。その後、僕はギンと一緒に久しぶりに魔物の森に狩りに出かけた。そして翌日、朝食をとった後でメアリーとギンと一緒に冒険者ギルドに向かうことにした。ナザル伯爵に頼まれて、メアリーの冒険者登録をしようと考えたからだ。どうやらメアリーが駄々をこねたようだ。



「メアリー。ナザル伯爵がよく許したね?」


「当然よ。可愛い娘の頼みなら許すでしょ!」


「でも、普段は学校があるから依頼は受けられないよ。」


「いいのよ。シン君と一緒に行動したいだけだから。」



 隣でギンが睨んでいる。



「シン様。メアリー様にも武器が必要ですよ。」


「そうだね。帰りにでも武器屋によろうか?」


「本当?嬉しい!何にしようかな~。」



 メアリーはルンルン気分だ。でも、少し僕は気が重い。僕達が冒険者ギルドに到着すると。受付にミオラがいた。



「あら、久しぶりじゃない。シン君にギンちゃん。」


「久しぶりです。ミオラさん。」


「今日はどうしたの?」


「はい。友人の冒険者登録をしようと思って。」


「わかったわ。」



 僕やギンの時のように渡された紙に名前を書いた。そして銅板の上に手を置いて、カードが発行された。



「これで私も冒険者になれたのね!嬉しいわー!」



 喜んでいるメアリーを横目に僕はミオラに聞いた。



「ミオラさん。狩った魔物の買取をしてもらいたいんですけど。」


「えっ?!でも、シン君ってGランクよね?」


「そうですけど、薬草採取をしているときに魔物と遭遇して。」


「良く怪我しなかったわね~。」


「ええ。運がよかったんですよ。」


「なら、建物の裏に解体場があるからそこに持ってきてくれるかな?」


「はい。」



 僕達は裏の解体場に行った。すると、ミオラがキョロキョロしている。



「どこにあるの?」


「ああ、すみません。出しますね。」


「えっ?!えっ?!」



 僕の目の前に黒い渦が現れた。僕はその中から今まで討伐した魔物を次々と出していく。半分ほど出したところで解体場がいっぱいになってしまった。ミオラは茫然としている。



「こ、これ、全部シン君が討伐したの?」


「いいえ。ギンが討伐したのもありますよ。」



 ミオラの大きな声に他の冒険者達が気が付いたようだ。気が付けば周りに大勢の人達が集まっていた。そして、その中から体の大きな男性が僕の前に立った。



「おい。お前。この魔物をどうしたんだ?」


「僕とギンで討伐したんですよ。」


「嘘をつくな!さっきお前はGランクとか言われていたよな~。Gランクの新米にこれだけの魔物が討伐できるわけがないだろうが!」


「でも、本当ですから。」



 すると、男の仲間らしき男と女の冒険者達まで前に出てきた。



「それにあんた!今、どこから魔物を出したのよ!私、しっかり見てたわよ!」


「こいつはインチキ野郎だ!」


「そうだ!そうだ!」



 なんかギルドが大騒ぎになってしまった。メアリーは困った顔をしている。すると、僕が嘘つき呼ばわりされたのがよほど気に食わなかったのか、ギンが男達を睨め付けながら言った。



「シン様を嘘つき呼ばわりするとは許せません!あなた達のようなごみとシン様を一緒にしないで!」


「なんだと~!」



そこに、建物から一人の女性が現れた。スタイル抜群の超絶美女だ。彼女を見て冒険者達が静まり返った。



「あんたら何を騒いでいるんだい?ここが私のギルドだってことを知っていて騒いでいるのかい?」



 どうやらこの女性がギルドマスターのようだ。男達が女性に僕のことをいろいろ言っている。すると、ギルドマスターは僕を睨んで言った。



「確かにね~。Gランクの冒険者がこれだけの魔物を討伐したなんて言ったら、みんな信用できないのもわかるわ。なら、あなた、そこのサムと戦ってみなさい。サムはAランクの冒険者よ。もし、サムといい試合ができたら信じてもらえると思うわよ。」



“どうしますか?シン様。”


“やるしかないだろ!”


”私がやりましょうか?“


“いいよ。僕が浅はかだったのがいけないんだから。”



 僕がギンと念話で話をしていると、ギルドマスターは僕とギンを睨みつけた。なんかこの感覚は学園長と会ったときに似ている。



「わかりました。なら、サムさん。お願いします。」


「お前の化けの皮をはがしてやるぜ!泣いても許さねえからな!」



 僕達は模擬戦用の木剣を手にした。審判はギルドマスターがやってくれた。



「始め!」



 僕は動かない。だが、サムは一気に僕に近づき力任せに剣を振ってきた。僕にとってはスローモーションだ。すんなりとかわす。その後もサムが必死に剣を振ってくる。僕は右に左に、そしてジャンプして攻撃をかわした。



ハーハー ゼーゼー 



 周りの冒険者達は呆気に取られている。こうなると、僕がAランクでサムがGランクのようだ。



「お前、逃げてばっかりじゃねぇか。それじゃあ、勝てねぇぞ!」



 誰がどう見ても実力差は明らかだ。僕は避けていれば諦めてくれると思っていたが、その考えは甘かったようだ。少しだけ本気を見せるしかない。



「なら、怪我しても文句言わないでくださいね。」


「ふざけるな。Gランクの剣なんかでケガするわけないだろう!」



 シュッン



 一瞬の出来事だった。僕が動いた瞬間、気が付けばサムは地面に倒れていた。恐らく僕の動きが見えた冒険者はいないだろう。



「オオ—————!!!」



「あの小僧がサムに勝っちまったぜ!」



 仲間の冒険者達がサムのところまで駆け寄った。サムも気が付いたようだ。僕はサムのところまで行った。仲間の冒険者達は警戒しているが、それを無視して僕はサムに声をかけた。



「どうでしょうか。これで信じてもらえましたか?」



 サムはゆっくりと立ち上がっていった。



「ああ、確かにお前は強いよ。信じるしかないだろうな。俺はサムだ。よろしくな。」


「僕はシンです。こちらこそよろしくお願いします。」


「よく見りゃ、お前可愛い顔してるな!シン!どうだ?一緒に飯でも食わねぇか?奢るぜ!」



 するとそこにギルマスがやってきた。



「おい。シンとやら。ちょっと用事がある。私の部屋に来てくれ。そっちの連れもだ!」

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