第8話 王都観光

 冒険者ギルドで依頼を受けた。そこで、猫獣人のミーアという少女と知り合った。王都の孤児院で暮らしていて、孤児院の運営資金と学園への入学資金を稼ぐために冒険者活動をしているようだった。僕達は依頼を達成した後、ミーアを孤児院に送って行き、そのまま宿屋に戻ることにした。帰る途中でギンが言ってきた。



「シン様。私、臭くないですか?」


「どうして?」


「もう、しばらくお風呂に入っていませんから。」


「そうだよね。なんか僕も気持ち悪くなってきたよ。部屋に戻ったら魔法できれいにしようか。」


「お願いします。」



 僕達は急いで宿屋に戻り、魔法で自分達の身体をきれいにしようとした。すると、何を考えたのか、ギンが服を脱ぎ始めた。



「ちょ、ちょっと待って!服は脱がないでいいから!」


「そうなんですか?」



 僕は魔法を発動した。



『クリーン』



 すると、僕とギンの身体が光り始めて服も新品のようになっていく。臭いもすっかりなくなった。



「ありがとうございます。シン様。」



 考えてみればギンはメス、いや女性だ。身なりが気になるのも無理はない。翌日、僕達は朝食を取った後で冒険者ギルドに行った。そこには見たことのある人がいた。



「あっ!来ましたよ!」


「シン君!どうして遊びに来てくれないの?ずっと待ってたのよ!」



 そこにいたのはメアリーと執事だった。



「ごめん。王都についたら両親がクチマシティーに帰ってしまったんだよ。」


「そうだったの?ところで、そちらの方はどなた?」



 まずい。メアリーと会った時、ギンはフェンリルの姿だった。どうしようかと悩んでいるとギンが答えた。



「初めまして。メアリー様。私はシン様の幼馴染のギンです。」


「ギン?ギンって確か一緒にいたシルバーウルフと同じ名前だよね?」


「あのシルバーウルフは私がシン様にプレゼントしたんです。離れていてもシン様が私を忘れないようにと私と同じ名前を付けたんです。」


「そうなのね。ところで、ギンさんってシン君とは幼馴染なんだよね?」


「そうですけど。なにか?」


「どうして、『シン様』なの?何か変よ。」


「シン様は特別ですから。いいんです。気にしないでください。」



“何を疑ってるんだろう?”


“私がシン様とお付き合いしていると誤解しているんですよ!”


“なんか面倒だな~。”



「僕達はただの幼馴染だよ。彼女の両親も僕の両親と一緒にクチマシティーに帰ってしまったんだよ。だから、今は2人で王都に残ってるんだ。」


「2人だけで?」


「そうだよ。」



 なんかメアリーが怪しんだ目で見てきた。なんかもう面倒だ。



「メアリー!王都を案内してくれるかい?僕達、まだ王都の中をよく知らないんだよ。」



 すると、メアリーがニコニコしながら僕の手を握ってきた。



「いいよ!なら、行こ!」



 僕達の後ろから執事とギンがついてくる。



「どこから案内しようかな~。服屋がいい?それとも、美味しいものが食べられるところがいい?」



 僕達は最初に服屋に入った。僕の服は特別製で、僕が着るとピッタリサイズになるようにできている。店で売られている服はそうではないが、ただいろいろな種類の服があった。



「シン君にはこの服が似合いそうね。着てみない?」



 メアリーが手に取った服は貴族風の服だ。なんか僕の好みではない。すると、1枚の服が目に入った。僕はその服を購入することにした。お金を払おうとすると、メアリーが支払いを済ませてくれた。



「いいの?」


「ええ。シン君には助けられてるからね。このぐらいは当然よ。」



 その後、僕達はオシャレなレストランに入った。店に入ると全員が僕達に注目している。というより、僕に注目している。目の前ではメアリーがニコニコ見ていた。



「やっぱりすごい人気ね。シン君。」


「そうかな~。」


「そうよ。店の中の女性達はシン君に釘付けだよ。ウエイトレスまでね!」


「なんか、じろじろ見られて恥ずかしいんだけど。」



 僕達は柔らかくて甘いパンのような物を頼んだ。それには蜂蜜とフルーツがたっぷりと乗っていた。僕には少し甘すぎるように感じたが、果実水がその甘さを口の中から洗い流してくれた。



「どう?美味しいでしょ?この店、王都の女の子には人気なんだよ。」



 確かにお客は女性ばかりだ。隣を見ると、意外にもギンが美味しそうに食べていた。食べ終わった後は、ナザル伯爵の館に連れて行かれた。さすがは伯爵の館だ。大きい家が立ち並ぶ貴族街の中でも、伯爵の館は敷地が広く大きかった。当然、門のところには警備兵もいる。



「お帰りなさいませ。お嬢様。」



 僕達が玄関まで歩いていくと、後ろにいたはずの執事が玄関前に立っていた。そして、ドアを開けてくれた。



「どうぞ!」


「ありがとうございます。」



 僕とギンはそのまま応接室に案内された。そこでしばらく待っていると、ナザル伯爵とメアリーが入ってきた。僕達は席を立った。



「シン君。久しぶりだね。座ってくれ。」


「ありがとうございます。」



 ここで、メアリーがナザル伯爵に僕のことを説明した。ナザル伯爵はそれに頷いている。そして、僕に話しかけてきた。



「シン君。君はいったい何者なんだい?」


「えっ?!」

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