第5話 王都オリントに到着!
僕とギンは森を出た後、クチマシティーとカサキシティーを通って王都オリントへと向かっていた。カサキシティーを出てしばらくしたところで魔物に襲われている馬車がいた。どうやらゴブリンとオーガの集団に襲われているようだった。僕とギンは馬車まで急いだ。馬車の近くには、兵士らしき人達が何人も倒れていた。交戦しているのは残った兵士達数人だけだ。全滅するのも時間の問題だった。
「ギン。このまま突っ込んで!」
「承知しました。」
僕はギンの背中に乗りながら背中の剣を抜いた。ギンがゴブリンとオーガ達の間を風のように駆け抜ける。僕は剣で次々と魔物達を討伐していく。
「君は誰だ?」
「冒険者です。怪我人の手当てをしてください!」
「だが、魔物達が・・・」
「大丈夫です。僕が討伐しますから。」
僕はギンから飛び降りた。ギンも鋭い牙でオーガとゴブリンに襲い掛かる。僕は、剣でゴブリンを斬り殺していった。形勢が不利と見たのか、残ったゴブリンとオーガは森の中に逃げて行った。
「終わったー!」
僕が地面に座り込んでいると、隊長らしき兵士がやってきた。
「感謝する。俺はナザル伯爵の配下のマッシュだ。君は?」
「僕はシンです。こっちはギンです。」
「それにしても凄いな~。シルバーウルフを従魔にしているのか。」
ギンはフェンリルだ。でも、本にも書かれていたが、フェンリルは神獣とも言われている貴重な存在だ。ばれるわけにはいかない。そこで、僕はシルバーウルフという言葉を受け入れることにした。
「ギンか小さい時から一緒にいましたから。」
「そうなのかい。」
すると、馬車の中から執事のような男性と貴族らしき男性、それに可愛い服を着た少女が降りてきた。
「君か?魔物どもを討伐してくれたのは?」
「ええ。たまたま通りかかりましたので。」
「そうか。感謝する。失礼だが、まだ子どものようだがこんな場所に一人で何をしていたんだ。」
「クチマシティーの祖父母と一緒にいたんですが、王都の両親のもとに行く途中なんです。」
「そうなのか。クチマシティーは我が領地だが、お主のような者がいたとは知らなかったな~。」
「ええ、森の中にいましたから。」
「森?もしかして、魔物の巣窟と言われるあの森の中にいたのか?」
「はい。そうです。」
「そうか~。どうりで魔物を怖がらないわけだな。ところで、我々も王都に行く途中だ。どうだい?一緒に乗って行かないか?」
どうしようかと悩んだ。
“シン様。いい機会です。ご一緒したらいかがですか。”
“わかったよ。”
僕はナザル伯爵に言われて馬車に乗ることにした。ギンは馬車を護衛しながら後ろを歩いている。
「紹介しよう。娘のメアリーだ。」
「メアリーです。よろしくね。」
「僕はシンです。此方こそよろしく。」
メアリーは頬を赤く染めて僕を見ていた。
「シン君は何歳かね?」
「12歳ですけど。」
「そうか、メアリーと一緒か。」
すると、メアリーが恥ずかしそうに聞いてきた。
「シン君には兄弟がいるの?」
「いいえ。一人ですよ。」
「そうなの?私もだよ。」
それから、何もなく馬車は王都に向かった。馬車の中ではいろんな話をした。メアリーは12歳を迎えるにあたって、王都の学園に入学するそうだ。学園は12歳から15歳の子ども達が通うらしい。貴族の子もいれば平民の子もいる。でも、その時の僕には関係のない話だと思っていた。
「シン君は学園にはいかないのかい?」
「はい。僕は冒険者として生活するつもりですから。」
「既に登録しているならランクはどうなってるのかね?」
「まだ、登録したばかりですからGランクですよ。」
「そうかね。だが、あれだけ強いんだ。Dランクぐらいにはすぐにでもなれるだろう。」
「そうだといいんですけど。」
王都の前まで来た。王都は周りを石の壁に囲まれていた。馬車が門の前で止まると、兵士達がやってくる。
「ナザル伯爵様の馬車でしたか。大変失礼しました。どうぞお通り下さい。」
兵士達が丁寧に対応していた。やはり、貴族には丁寧なのだろう。王都に入ると大勢の人がいた。そして、馬車の窓から大きなお城が見える。通り沿いにはたくさんの屋台も出ていた。
「さすがに王都ですね。人がたくさんいます。」
「そうでしょ?私も王都に来ると驚くのよ。それに、いろんなお店があるんだよ。」
「メアリーは服屋があればいいんじゃないのか?」
「お父様!シン君の前で恥ずかしいです。」
「そうか。メアリーも年頃だな~。ハッハッハッ」
メアリーが赤い顔をして僕を見ている。
「伯爵様。ありがとうございました。僕はこの辺りで降ろしていただいて結構ですので。」
「そうかい?ご両親はこの近くに住んでいるのかい?」
僕に両親などいない。怪しまれないようにした作り話だ。
「ええ。でもその前に冒険者ギルドに行きたいので。」
「そうか。ならここでお別れだな。私の館は貴族街にあるから、何かあったら館まで来なさい。」
「ありがとうございます。」
「シン君。絶対に来てね。本当に本当にだよ。」
「わかったよ。メアリー。」
僕は馬車を降りてギンと一緒に冒険者ギルドに向かった。王都のギルドであれば討伐した魔獣を買い取ってもらえると思ったのだ。
“ここのようです。シン様。”
“じゃあ、その建物の裏に行こうか?”
“どうしたんですか?”
“この際だからギンの冒険者カードを発行してもらうのさ。”
“そういうことですか。わかりました。”
僕とギンは建物の陰に行った。そこで、ギンは少女の姿に変わった。いつ見ても可愛い。僕と同じ銀髪だ。ただ、僕の瞳が青なのに対してギンの瞳は銀色だった。
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