第4話 シン!王都に向かう!
僕はガンジに連れられてギルドを後にした。本来、受付から聞くはずの説明をガンジがしてくれた。
冒険者にはSからGまでのランクがあり、ランクにあった依頼しか受けることができないようだ。最初は全員がGランクから始めるらしい。そして、冒険者カードは全世界で共通であり、身分証明書にもなるから絶対になくせない。
「ありがとう。ガンジさん。」
「いいってことよ。ところで、泊まるところとか決めてあるのか?」
「うんうん。決めてないよ。でも、僕、行ってみたいところがあるから。」
「どこに行きたいんだ?」
どうせ森を出たなら、この国アルベル王国の王都オリントに行ってみたい。この辺境の街ですらこれだけ大きいんだ。王都がいったいどれほど大きいのか是非見てみたい。それに、この街には僕のことを知っている人が何人もいる。僕のことを誰も知らない街で暮らしてみたい。そう思った。
「王都オリントに行きたいんです。冒険者カードも作ったから、今から行きます。」
「おいおい。もう昼過ぎだぞ!ここから王都までどれだけかかると思っているんだ!馬車で行っても5日はかかるんだぞ!」
「大丈夫です。急ぎませんから。ギンと一緒にゆっくりと行きますよ。」
「そうか~。シンがそのつもりなら止めねぇがな~。なんかあったらこの街に帰ってこいや。」
「ありがとうございます。」
僕は王都オリントに向けて出発した。どんな街なのか、どんな出会いがあるのか楽しみだ。
“シン様。なんか家を出た時と全然違いますね。”
“わかるかい?ギン。”
“はい。わかりますよ。”
“なんか王都に行くのがすっごく楽しみになったんだ!”
“良かったですね。”
“うん。”
僕とギンは王都に向かって出発した。クチマシティーを出た時にはすでに日が暮れ始めていた。日が暮れると外は真っ暗状態になる。そうなると、魔物達が動き回る時間だ。
「シン様。そろそろ暗くなりますよ。私の背中に乗ってください。」
ギンの身体が見る見るうちに大きくなっていく。
「えっ?!」
「私はフェンリルですよ。体の大きさぐらい変えられますから。」
「もしかして、人間に変身したりもできるの?」
「できますけど。どうしてですか?」
「なんかすごい便利だね。」
「ありがとうございます。」
僕はギンの背中に乗った。やはりモフモフしている。物凄く気持ちいい。それにものすごい速さだ。完全に日が暮れた時にはすでにクチマシティーから30㎞ほど離れたカサキシティーまで来ていた。
「ギン。すごい速いね。次の街まで来ちゃったよ。」
「では、今日はこの街に泊まりましょう。」
宿に泊まるにしても今の姿だとギンは宿には泊まれない。そこでギンに人間の姿になるように言った。
「ギン。人間になってくれる?」
「わかりました。」
ギンの身体が光り出して見る見るうちに人の形に変化していく。そして、少女の姿に変化した。
「ギンって女の子だったの?」
「そうですけど。どうしてですか?」
「ずっとオスだと思っていたからね。」
僕達は次の街、カサキシティーの中に入った。もう日が暮れていたので外を歩いている人はほとんどいなかった。僕はキョロキョロしながら宿を探した。
「あそこが宿のようですが。」
「行ってみようか。」
看板には『イエローハウス』と書いてある。僕達は宿の中に入った。すると、奥から恰幅のいい女性が現れた。
「あら、坊や達。どうしたの?親御さんとはぐれたの?」
「いいえ。王都まで行くんです。今日、ここに泊まれませんか?」
「大丈夫だけどお金はあるの?」
「はい。」
一泊2食付きで一人銀貨5枚だった。当然お風呂なんかはない。だが、夕食は用意してくれるようだ。僕とギンは一旦部屋に行って、すぐに食堂まで降りてきた。
「あなた達、兄妹なの?」
「えっ、あの~・・・・」
ギンが慌てて否定しようとしたので、僕はそれを止めて返事をした。
「そうですよ。両親が王都にいるんです。」
「そうなのね。でも、どうして2人きりでこんなところにいるのさ。」
「祖父と祖母がクチマシティーにいますので。そこで暮らしていたんですけど、王都に呼ばれたんです。」
「そうなのね。偉いわね~。」
すると、料理ができたようだ。肉団子のような物にサラダとスープとパンだ。物凄く美味しく感じた。ギルドの料理とは全然違った。
「ご馳走様でした。すごく美味しかったです。」
「そうかい?気に入ってもらって良かったよ。なら、これはサービスだよ。」
女将が飲み物を持ってきてくれた。甘い果実水だ。なんか物凄く癒される。僕達は自分達の部屋に戻った。そしてベッドに横になると、ギンが床に寝転んだ。
「どうしたの?」
「何がですか?」
「ベッドで寝ればいいじゃない。」
「いいんですか?」
「いいも何も、人は普通ベッドがあればそこで寝るんだよ。」
「はい。なんか癖でして。」
僕達はベッドに寝転んでそのまま寝てしまった。翌朝、目が覚めるとすでにギンは起きていた。
「おはようございます。シン様。」
「おはよう。ギン。ご飯食べたら出かけようか。」
「はい。」
僕達は朝食を食べて、再び王都に向けて出発した。街を出たところで、ギンは大きなフェンリルに姿を変えた。僕はギンの背中に乗っている。やはり物凄い速さだ。しばらく走っていると魔物の反応が感じられた。
「ギン。近くに魔物がいるよ。」
「はい。」
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