第27話
遅くなりました。
最近何をするにしてもモチベの維持が難しい…。連続投稿してる作者様たちに尊敬の念が絶えませんね!
それではどうぞー!
────────────────────
「みんなお疲れ様!次戦は10分後だから今のうちにトイレとか行っといてね。戻ったら作戦のおさらいだけするから」
部屋に入ってきたタスさんはそれだけ言って踵を返した。
今回のような大会では選手はみな同じ部屋でプレイしているが、コーチは物理的接触によるタイムアウト無しでのコーチングを防ぐため別室で試合を見ることになっている。そのため試合が終わる度にタスさんはこの部屋とコーチ部屋を行き来しているのだ。
そんな忙しそうなタスさんと違って一緒に入ってきたヴァルクさんはシグさんの隣でリュカさんと大笑いしているし、Mythsはやばい!と言い残して全力ダッシュでトイレに行った。部屋の中には先程までの緊張感などまるで感じられない。
……というか何であの二人はあんなに爆笑してるんだろう。シグさんも苦笑いだし。リュカさんに至っては笑いすぎて突っ伏してるし。
まぁそれはいいや。俺が気にするべきところは他にある。
思い返すのはさっきの自分のプレイ。
今回の試合終盤、俺の動きは見るに耐えないものだった。
延長戦で多少活躍したもののミスが多すぎる。判断を間違える場面が多すぎたし、判断を間違えてからのリカバリーももっといい立ち回り方があったと思う。Lexを意識しすぎて無意識の内にいつも以上に気を張ってたのかもしれない。集中力とスタミナが不足している?
俺は立ち上がって体をぐーっと伸ばす。悪くなった血流が体中を一気に駆け回った。それと同時に多少の目眩。コンディションから見てLexとバチバチしていた試合中盤のような活躍はできなさそうだった。
……悔しいがこれが現状の自分の実力なのだろう。普段ランクなどで長時間戦っていたとしてもここまでの疲労は感じたことがない。やはり大会は勝手が違う。
「………だけど、それを言い訳にするわけにはいかないよな」
俺はプロで、自分からこの道を選んだ。そしてそれに応えてくれたチームとファンからこの一席を預かっているのだ。信頼してくれたみんなのためにも責任は果たさなくてはならない。
自分の状態を確認しつつ肩や首を回してトイレに行こうと部屋を出る。俺は俺のやれることをして、チームを勝利に導くんだ。
ちなみに、ちらっと見たときもまだリュカさんはピクピクしていた。さすがベテラン、こっちと温度差がすごい。
♢♢♢
作戦会議を終えて2戦目。マップは砂漠。
スコアは7:3で、俺達は序盤から試合を優位に進めることができていた。
相変わらずMythsが異常に強いのもあるが、特にこの試合で活躍しているのはSigM4さんだ。
先程の休憩で何を話したのか、SigM4さんの動きがかなり良くなっている。一戦目では不意打ちや噛み合いでうまく撃ち合うことが出来ていなかったが、今回はそれも無いらしい。いつものように大きな背中を見せてくれていた。
『Mythsスキル入れるから待っててね』
『了解!』
調子が良いあまり前に出過ぎていたMythsを抑え────
『Ryuka、ドローンの感じA中は居ても
『了解、じゃあSigM4のリコンに合わせて入るぞ!3.2.1…ゴー!』
RyukaさんがIGLしやすいように情報を選別し────
『Faice、フラッシュいくよ。3、2、1─』
『………二人やった』
Faiceさんの撃ち合いをサポートする。
勿論俺もSigM4さんのようにカバーを意識して行っているものの、やはり経験の違いなのか彼は居て欲しいときに必ずそこに居る。そんな彼の姿が大きな安心感を
だがこの優位に甘えるべきではない事はみんな分かっていた。少し緩んだ空気も後半戦が始まる頃には引き締め直し、ファースト、セカンドラウンドを取得。サードラウンドでは二本の武器と一人のアーマーを削り、俺たちは9:6で未だ優位を保てていた。
『爆弾設置したよ』
その合図で俺達は爆弾を解除されないように配置につく。Myths、SigM4さん、Ryukaさんがサイト中で俺とFaiceさんはサイトの外だ。
今回俺が使っているのはスルトというブロッカー。その快活で単純な性格から設定上彼の知能はそこまで高くないことが明言されているキャラだ。
そしてその設定故にスルトは普通のブロッカーとしての動きができない。スルトの持つ3つのスキルは全てが
だが、だからこそ設置後という限られた場面においてスルトが輝く。
「遅延いれます!」
俺はサイト外から爆弾が設置されている位置へとスキルを使う。
最初に使うのはレア。広範囲に低ダメージを持続的に与えるスキルだ。踊るように舞う火の粉が爆弾の周囲を照らし、それに合わせて相手が焚いた爆弾を覆うスモークへとMythsが突貫する。
いくらスモークで爆弾解除を見えなくしたとしても、火でダメージを与えておいた事により
『解除ハーフ行ってない!退きます!』
Mythsが退いたのを確認して俺は次のスキル──ミディアムを放つ。火力を増した火柱が爆弾を包む。ダメージが増えたことによりあそこに敵はもう入れないだろう。
こうしてスキルを回していれば相手の時間は少ししか残らない。まさに最強の遅延だ。
だがそんな強すぎる効果に比例するように勿論デメリットも大きい。
まず1つ。ミディアムと
そして2つ目。目視できる範囲のみにしか展開できないこと。この制約のせいでスキル発動場所の候補は相手からも簡単に絞られてしまう。つまりこちら側は情報の不利を背負うことになるのだ。
幸い2つ目のデメリットは砂漠マップ特有のその広さから大きな問題とはならない。だからこそ大会でもスルトが出されることがあるのだが。
しかし1つ目は依然大きな問題のままだ。
俺がスキルを使っているため人数比が4対4のイーブンとなる。その隙を見逃すMRではなかった。
唯一位置が確定しているMythsに人数を割いて戦闘を開始。サイトの中と外をつなぐ通路に焚かれたスモークがFaiceさんの援護を阻むことで、ダメージを受けながらもMythsを撃破した。そしてその流れのまま、MRの面々はサイト内にいるRyukaさんとSigM4さんに撃ち合いを仕掛ける。
サイト内にRyukaさんが焚いた耐えスモークのおかげで二人はなんとか射線を制限できているものの、人数差は如何ともしがたい。相手の人数に対応が遅れている。
『モク横
『了解。入れたから起爆するまでRyukaは避けといてね』
だがこちらもCWを長年牽引してきている二人だ。即興の練度は群を抜いていた。
Ryukaさんの求めに応じてSigM4さんがフラッシュを入れる。スモークをぎりぎり超える高さでのフラッシュはスモークに隠れてその発動がぎりぎりまで分からない。
起爆のタイミングでRyukaさんが飛び出たことにより不意をつかれた
そしてそのタイミングで俺もスキルの硬直が終わり、撃ち合いへと参加した。
人数差が優位になって、尚且つ爆弾も設置してあった事で俺達は無事ラウンドを取得することに成功したのだった。
───その後のラウンドも取って取られてを繰り返し、遂に12:10。
俺達のマッチポイントのラウンドが始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます