第9話
今回は短め!幕間的な日常回です!勢いだけで言うならショートコントレベルかも。
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「んで、どうだ?炎上覚悟の賭けにでてファンがめちゃくちゃ増えた今の心境は?」
「心臓に悪い」
朝のHRを終えて一限目の数学の準備をしていた俺に航太がニヤつきながら声をかけてきた。
内容は昨日の配信について。どうやらこいつもあれを見てたようで、揶揄いにきたみたいだ。ニヤけ顔も様になるとか相変わらず腹立つイケメンだなこいつ。
「へぇ~?ふーん?でもアレのお陰でファンが増えたのは間違いないぞ?いいのか?」
「そもそもああいうのは配信でやることじゃない。茶会さんがいい人だったから問題にならなかったけど、下手すりゃ色んなとこで問題が起きる可能性だってあったんだぞ?」
「まぁそれもそうか」
ニヤつき顔で肘うりうりして来たり、急にスンと真面目な顔になったり忙しいな。時折こいつの考えてることが分からん。
まぁうっとしい時やイラッとするときもあるけど、基本的にこいつは引き際を弁えてるし深入りしてほしくないところはしてこない。だから彼女もいるのだろう。………それはそれで腹立つな。イラッとしてきた。
「イテッ!」
突然どつかれた航太は何が起きたかわかってないようだった。へっ、ざまぁみろ!彼女いんのに頻繁に告白されるモテ男が!
「か、神谷くん!」
俺が人知れず陰の気をイケメンに打ち込んでいたとき、突然声をかけられる。
声のする方に振り向くと、そこに居たのは肩まである黒髪にくりっと丸い目をした女の子だった。
「どうしたの春野さん?」
彼女はクラスメイトの春野舞さん。広い交友関係と朗らかな笑顔からクラスの愛されマスコット的ポジションにいる彼女が、いったい何で俺に声をかけてきたんだろうか?
「え、えっと…。………昨日の配信凄かったね」
俺はギョッとして彼女の顔を凝視する。配信をクラスメイトに見られた…………?しかも女子に……………?
頭の中ではクラス中にその話が広がり、遠目でひそひそニヤニヤされる光景が広がる。「あの人配信してるんだって?」「プロゲーマーとか名乗ってるらしいよ……」「プロゲーマーの神谷くん!試合見せてよ!え?まだ配信試合出てないの?それでプロ名乗ってるの?!」…………あぁぁぁぁぁ(語彙力低下)。
「………後生です。春野さんゆるして…」
「私まだ何も言ってないよ?!」
あと高校生活も二年を切ったが、できれば平穏に暮らしたいし、人並みの青春もしたいのだ。広まってしまったらあることないこと言われて変な噂とかが立ってしまうかもしれない。俺はもう春野さんに縋りつくしかない。
「何を勘違いしたのかは分からないけど、違うの!」
「───え?」
「あのときの神谷くん、炎上するかもしれないのに堂々と自分の意見を口にしてたでしょ?…私はつい人に合わせちゃうし、そんなことできないからすごいなぁって。それに私もViXが好きで、誰よりも好きだって言った神谷くんと話したいなぁって…」
「ん?春野さんもViXやるの?!」
「うん!一応これでもファイナル帯には居るんだよ?すごいでしょ!」
聞かされた衝撃の事実。どうやら彼女は俺のことを広めて揶揄う為じゃなく、純粋に好きなものが同じ人と語りたいだけだったらしい。しかも、実力は全プレイヤーの中でも上位1%。おいおいなんだよただの女神か。
俺は安堵して彼女の手をギュッと握る。
「春野さん!」
「ふえっ?!」
「春野さんもViXやってるなら今度一緒にランクでもやろうよ!ちなみに普段は何使ってるの?!ロールは?!好きなキャラとかいる?!あとは好きなプロゲーマーのプレイとかは────」
「落ち着けアホ。春野さんショートしてるから」
「え?」
興奮している俺に航太がストップをかける。なんだよ今いいところだったのに──────────はっ?!
ひょっとして‥‥‥これってセクハラか?いきなり手を握るとかアウトだし安心した直後だったせいでViXオタクの血が騒ぎすぎたし春野さんも混乱してるしやらかしたか?‥‥‥最悪だ。
「ごめん春野さん!ちょっと安心してすぐだったから心落ち着ける暇がなかった!」
「い、いいよ…………神谷くんの手おっきいんだな……(ボソッ)」
「ん?実はそうなんだよ!マウスも手がでかいから掴み持ちでき…」
「もうやめとけノンデリ馬鹿野郎」
FPSプレイヤーとしては小さな音も聞き取れる必要があるわけで、もちろん彼女の声も聞こえていた。それに反応しただけなのに何故罵倒されなきゃならんのか。まぁさっき止めてくれたのは助かったので一旦ここで止めとくけど。
「ごめんね。春野さん」
「い、いいよ」
俺が謝ると彼女は目を逸らしつつも頷いてくれた。良かった。許してくれるみたいだ。彼女はやっぱり女神だわ(確信)。
「えーっと、嫌じゃなければまた俺と色々話してくれると嬉しいんだけど…」
「!!‥‥うん!是非こちらこそよろしくお願いします!」
航太が溜息をついている。どうしてだろう?まぁ何はともあれ、こうして俺は学校でもViXの話ができる友人ができたのだった。
♢♢♢
「やべ、授業始まる前にちょっとトイレ行ってくる!ごめん!」
「………はぁ、あいつ気づいてないな。春野さんこれから大変だね」
「ふぇっ?!な、なんのことかな?!」
「少しでも気があるのなら押して押して行かないとあいつは気づかないよ。友人からのアドバイスだ。頑張って」
「……………ぅん」
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オタクは同士と思った人に対して距離を詰めるのが早いのです(個人差あり)。
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