第3話

 ちなみに僕はCRのMeiyくんが好きです。

 あの立ち回りの強気さがいいんじゃ。

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「ここがCWのオフィスかぁ」


 クリップがバズった一週間後の土曜日、俺は東京にあるCWのオフィスに訪れていた。

 壁に大きく狼のロゴが描かれていて、本当に来たんだと緊張感が高まってくる。なんなら少し吐きそうですらある。


「すいません、連絡しましたRiv4lリヴァルというものです。田島さんはいらっしゃいますか」

「Riv4l様ですね。お話はお伺いしております。こちらへどうぞ」


 入り口のカウンターで要件を告げる。ちなみに田島さんとは連絡をくれたViX部門のコーチだ。


 受付の人の誘導に従ってオフィスを進んでいくと、オフィス内のオープンスペースに細身の男性が座っていた。どうやらあの人が田島さんらしい。


「こんにちはRiv4l君。改めて来てくれてありがとう。田島……いやTasと呼んでもらったほうがいいかな、大会に出るときはその名前でやってるし」


 田島さん改めTasさんはこっちが緊張していることに気づいたのか朗らかな笑みを浮かべてそう言った。

 爽やかなイケメンで、清潔感があり、気遣いもできる人らしい。どっかの友人とは同じイケメンでも全然違うな。こちらに圧をかけないようにしてくれているのが話し方からもよく伝わってくる。完璧か?


「はじめまして、Tasさん。Riv4lです。本日はよろしくお願いします」


 緊張とイケメンオーラに当てられてガチガチな俺に、Tasさんは優しく微笑んで気負わなくていいよと言ってくれた。きゅん。


「じゃあ早速だけどいくつか質問するね」


 された質問は簡単なもので、以前どこに所属していたのか、どのロールが得意なのか、アピールポイントは何かといったものだった。

 淀み無くそれを答えると、Tasさんも満足げな表情を浮かべる。


「うん。とりあえず性格や素行の問題はなさそうだね。あとは契約面の話なんだけど………君は新しく追加された6人ロースターの制度を知っているかな?」


 俺はそこで自分に声がかかった理由を察する。


 去年の大会まではロースターは5人+コーチの形での登録だった。しかし今年からは世界大会で使われているスタメン5人+控え1人+コーチという方式を日本でも使うことになった。


 これは簡単に言うとチームの戦術に幅を持たせ、選手の欠員が出ても問題ないようにするためのルールだ。このルールがあと一年早かったら俺らのチームRubyFoxも棄権しなくて良かったのだが、そこは悔やんでも仕方がない。まぁチームの財政的に6人目は無理だった可能性の方が高いけど…。


 閑話休題。


「はい、もちろん知ってます。そういう理由だったんですね」

「気を悪くしたならごめんね。うちはこれでも大手で、更には国内トップチームの一つなんだ。ロースター自体は去年のメンバーが残っているし誰が体調を崩しても戦えるようにフレックスプレイヤーが欲しかった」


 彼は本当にいい人なんだろう。高校生でなんの実績もない俺相手に親身に寄り添ってくれている。だけどそんな心配は必要ない。


「いえ、大丈夫です。自分の実力がまだ彼らに及んでないことも、実績もない高校生を最初からスタメンに入れることなんてないということも分かってましたから」


 俺は最初からスタメンで出れるとは思ってない。いや正確に言うならまだ・・出れると思ってない。


 ここで知識をつけて実力を上げて自らの手でスタメンを勝ち取る。そのために俺はここに来た。


「でもスタメンになることを諦めたわけじゃないです。このチームで技術を学んで、もっと強くなって実力で奪い取ってみせます」

「…………へぇ、いい心構えだね。気に入った、ついてきて」


 Tasさんはニヤリと笑うと席を立つ。ついてきてと言われたのでついていくと、彼はぼそっと口を開く。


「一つのクリップだけでは君の実力すべてを計れたとは言えない。だから試させてもらうことにする。………今はオフシーズン。顔合わせにはちょうどいいだろう?」

「え?それはどういう…」


 気づいたら俺達は大きな部屋の前にいた。Tasさんが扉を開けるとその中には5人の人間とゲームをすることだけに特化した空間が広がっている。


「ここはブートキャンプや実際の大会でも使われる部屋で、彼らはそこの主たちだ。───ようこそRiv4l。君が彼らからスタメンを奪い取るだけの資質を持つのか、今ここで見せてもらうよ」



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 Tips. CW ViX部門


 国内トップ層のチームの一つ。そこに所属している選手はみな溢れんばかりの才能を持っている。


 Ryukaリュカ(リーダー)

 Role《役割》:柔軟な選択が可能フレックス

 CWのViX部門にこの人ありと言われるほどCWを長いこと引っ張っているリーダー。そのスキルの巧みさやピックプールの広さから柔軟にメタに対応できる選手。


 Mythsミィス

 Role:ブレイバー

 柊真と同じく高校生ながら国内のプロをも圧倒するエイムと、その強気な立ち回りはチームに勢いを生む。調子の波が激しいながらも絶好調のときは世界のプロにもまるで劣らない動きを見せる。


 Valkヴァルク

 Role:ホールダー

 嫌らしいスモークは相手の思考を誘導し、盤面を色んな角度から作り上げていく。少人数になった際に無類の強さを発揮する心理戦の達人クラッチキング


 SigM4シグマ

 Role:サーチャー

 チームのIGLも担当しており、マルチタスクも可能な戦闘巧者。最近歳からか自らの衰えを感じ始めた。チーム最年長の32歳。プライベートでは結構のんびりしている。妻子持ち。


 Faiceフェイス

 Role:ブロッカー

 1対多の戦闘が得意で、一人でサイトを守り切ることもよくあるため、ファンの中では守護神と呼ばれている。基本報告以外は無言で、まさしく仕事人といった立ち回りが多い縁の下の力持ち。


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【再掲】本作品はフィクションです。

 実際の人物や団体とは一切関係ありません。気づいたら寄り過ぎたと思って慌てて残りのメンバーを変えたなんてこともないです。ハイ。

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