第二章 ハル 中学時代

第1話 交換日記

 引っ越しの片付けが終わったあと、私は一冊のノートを手に取る。

 私たちは、ゆかりの提案で私たちは交換日記を始めた。

『離れていてもずっとともだちだよ』

 ピンクのノートの表紙には、ゆかりのかわいらしい文字でそう書かれていた。

 一ページ目、ゆかりの言葉がある。

『日記じゃなくても、イラストでも良いよね。詩を書いても良いよ。四人で共有したいこと、なんでもいいからね』

 ゆかりは、次のページに春休みのある一日での出来事を書いていた。


 朝、お母さんとフレンチトーストを作った。砂糖が少なかったかなあ?

 中学生になるから、コーヒーに挑戦することにしたよ。苦いから砂糖を二杯入れてミルクたっぷりいれたんだけど。だめだね、慣れるには時間かかりそう。紅茶のほうがいいかなあ?

 午前中は、中学から出された春休みの課題を頑張ってみた。入学式の次の日に実力テストがあるんだって! 算数がいやだなあ。絵美がいないから、教えてもらえない。絵美、今度教えてね!

 昼ごはんは、お母さんがパスタを作ってくれたよ。カルボナーラをリクエストしたの。おいしかった! 

 そのあとは、ボイトレの先生に挨拶に行ったよ。週に一回、通うことにしたんだ! 基礎は、しっかり学ばなきゃね。

 ボイトレのスクールは隣町の駅前にあるの。帰りに入学祝いのスマホを買ってもらったよ。ガラケーからスマホ! 嬉しい!

 でも、いろいろ約束ごとあるんだよね。お父さんとお母さんとで話し合って決めたから、ちゃんと守るよ。

 夜ご飯は、お父さんの仕事の取引先のレストランで食事だった。

 フランス料理。おいしいけどあたしはイタリアンの方が好きだなあ。

 今回はこんな感じ。

 日記風にしなくても、なんでもいいからね。次は、千紗に渡すね!

 

 ゆかりのキラキラした雰囲気が、文字から伝わる。気のせいかもしれないけど。

 三ページ目。千紗。

 

 こういうの、初めてだから、何を書いていいのか、迷うよ。

 私の一日を書いてもつまらないと思うから、絵を描くね。


 ページいっぱいに私たちの似顔絵を描いている。それぞれの特徴をつかんでいて、かわいらしい絵だと思った。

 次のページは、絵美。

 絵美は、占いとおまじないにはまったことを書いてある。

 キューピッド様をしてからの絵美は、人が変わったみたいに感じる。

 勉強より、そっちにばかり気を取られているように見えて、少し怖いと思った。

 私は引越し先の町の話と、新しい家について書いた。

 

 引っ越した町は、今までの町よりずっと大きい。

 路面電車、海、地下の商店街。

 いろいろあるみたい。

 海は路面電車に乗れば行けるんだって! 海水浴なんて夏に一回行けたらいい方だったのに!

 道を覚えたら自転車で行けるんじゃないかって、お父さんが言ってたよ。でも、みんなで行けないなら楽しくないかも。友達できるか、心配だな。

 地下の商店街は、A市のよりずっと広いみたい。迷子になりそうだよー!

 私も中学から出された課題があったよ。

 実力テストのためのテキストだって。それが解けるなら、実力テストは問題ないって言われた。絵美だったらパーフェクトだろうなあ。国語と社会しか自信ないよ。

 新しい家の写真、貼っておくね!

 外見はこんな感じで、薄いグレー。四角いよね。見た目は。

 私の部屋は二階にあるよ。前より少し広くなった気がする。

 遊びに来てねって簡単に言えないのがさみしいなあ。

 高校生くらいになったら大丈夫かな? みんなで海行ったり買い物したりしたいよ。

 いつか、泊まりに来てね。

 じゃあ、このノートは、ゆかりの家に郵送します!

 次、届くのを楽しみにしてます!




 

 


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