201 ぺったん!ぺったん!  

 エアたちはアリョーシャの街の市場で常連になってるアイス屋でまとめ買いをした後、他の食材の買い足しとアイリスの買い物に付き合ってから、【影転移】でニーベルングの街に移動した。

 そこの商業ギルドで、露店の始め方の確認をした後、明日から出店の手続きをする。販売品目は「雑貨と食品」で。


 色々考えた結果、カモフラージュのためにも、シヴァにもらった【ケーキメーカー】で日持ちするパウンドケーキを作り、そちらも売ることにしたのだ。

 ラッピングを紙にするので紛れるし、商品が多い程、さり気なくマジックペーパーもポケット型マジック収納も売れる。


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・マジックペーパーは5枚一組で金貨1枚。

・リュック1つ分容量の(1)ポケット型マジック収納も金貨1枚。

・パウンドケーキはナッツ入りとドライフルーツ入りの2種類2本セットで金貨1枚。

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 ほとんどダンジョンでしか手に入らないかなりいい材料を使っているので、安いぐらいだが、紛れる値段にするためもあった。

 もちろん、パウンドケーキは1本銀貨5枚でも売るが、状況によっては1本を10切れに分けて二切れ銀貨1枚で販売するかもしれない。一口サイズの無料味見は出す予定だ。これまたカムフラージュも兼ねて。


 そして、従業員たちが作ったアクセサリーと便箋と封筒。

 アイリスはラッピングを担当する。

 商人をやっていた時に慣れまくっているので、ついでに従業員たちにも教える。見栄えがいい包み方や素材選びがあるのだ。


「ミートパイを出してもいいな」


 【ケーキメーカー】はパイも作れる。

 色々試してみたが、ミートパイの場合、肉なら何でもいいので在庫処分も兼ねて。改めて整理すると食材が多過ぎた。

 当然、露店を出す場所で【ケーキメーカー】を使わず、あらかじめたくさん作り置きをする。もちろん、エアたちの備蓄分も作る。

 パイは形を選べるので長方形のタイプにして四等分にすると、ちょうど食べ易いサイズだ。たっぷりと肉と野菜が入るので、一般の女性なら一切れだけで腹いっぱいだろう。

 一切れ銀貨1枚。釣りが面倒なので。


 エアたちがホテルにゃーこやに戻り、アイリスが【ケーキメーカー】を操作してパウンドケーキやミートパイ、他のパイもついでに作って大皿に盛って収納を繰り返し、エアが一切れのパウンドケーキやパイを入れる袋を錬成していると、金目銀色の子猫型、光の精霊獣のルーチェに前腕をちょいちょいとつつかれた。


 何か手伝いたいらしい。

 気持ちは有り難いが、そこまで手伝ってもらうこともないワケで。

 カトラリーだけじゃなく、箸も器用に使うようになった精霊獣たちでも。


「じゃ、スタンプする?」


 夏真っ盛りの現在、氷結ペーパーの需要はかなり高そうだし、在庫が多いのはいいことだろう。


 エアはケーキ袋を作るのを一旦中断して、精霊獣たちを連れて影転移で街の外に雑草を集めに行き、マジックペーパー用の魔法紙を大量錬成し、スタンプも魔石インクも予備を含めてたくさん作った。


 精霊獣たちは最初はぺったりと慎重に押していたが、次第にスタンプするのが楽しくなったらしく、「ぺったん!ぺったん!」と何やらリズミカルにすごい勢いで作ってくれた。

 雑になったり、ミスが出たりはせず。

 中々器用である。かなりたくさん出来たので、5枚セットで袋に入れるのも手伝ってもらった。


 ちなみに、もう夕方なので従業員たちは、さすがに本業や日々の鍛錬や学習で忙しくなり、そちらへ行っていた。

 明日の売り子は非番な従業員になり、上手くやって行けそうなら交替でしばらく屋台をやる予定だった。






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新作☆「番外編67 色葉散る村、森の主」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093088696513502



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