173 失礼過ぎて逆に笑える…
やっぱり、こちらの方が目立たないな、とエアは色付きゴーグルを着け、頭もボサボサのまま、冒険者ギルドへ行き、依頼掲示板をチェック。
昼過ぎ、という半端な時間のため、冒険者は数える程だ。
ダンジョンドロップの納品依頼も下層のものはBランク依頼になっているが、Cランクのエアなら一つ上のランクの依頼まで受けられる。しかし、エアも欲しい食材や素材ばかりなので却下。
もうちょっと面白い依頼はないかと見てると、後ろから声をかけられた。
「ねぇ、君。見る所が違ってない?そっちは高ランクの人の依頼だよ。駆け出しだから分からなかった?」
腰にショートソードを差した若い女だった。お節介らしい。
エアは食うや食わず期間が長かったのと、どうやらエルフの血が入ってるせいで成長が遅いので若く見られるのは仕方ないものの、駆け出しだと決め付けるのは女の見る目がないとしか思えない。
「ねぇ、聞いてるの?知らないみたいだけど、ランクの一つ上しか依頼は受けられないのよ。だいたい、こんな半端な時間に見に来る所からしてダメダメね。割のいい依頼は朝出るの。……って何で笑われてるの?」
エアはお節介女を無視していたが、近くにいた冒険者数人が笑い出してしまった。
「な、何でって…」
「いや、もう、失礼過ぎて逆に笑える…」
「姉ちゃんこそ、駆け出しと大差なさ過ぎだろ。力量読めなさ過ぎだって。Sランクでもいいぐらいなのに。…あ、噂のエルフのSランクの人?弓師らしいけど…」
「違う。噂にはなってそうだけど、違う噂だな」
お節介女以外の人たちにはだいたい推測はしているようなので、エアは全身に【クリーン】をかけてからゴーグルを【チェンジ】でマジックバッグにしまい、ボサボサにした髪も手で適当に整えた。別にいっか、と思ったらしく、精霊獣たちも姿を現す。
「やっぱり、エルフ?」
「違う。先祖にはいるかもしれないけどな」
「噂って絡んで来る連中をちぎっては投げた話か~。って、マジで美形なんだけど。何、その髪。虹色の艶って何か塗ってたり?」
「いや、まったく。元々こういった色らしい」
「目立つから地味にしてたってことか」
「ギルマスに面倒な仕事を押し付けられそうなのもある」
エアが『にゃーこや』の店長からの依頼を受けていると教えたので、こいつなら大丈夫、などと誤解されてそうなのだ。
…いや、猫型精霊獣が六体もいる時点で、何でも可能だと思われてそうだが。
「あーありそう」
「っていうか、まだ呆然としてる人がいるし。謝るなり、逃げるなりしたら?」
「薄汚れた駆け出しだと思ってたのに、実はこんなキレイな外見だと思わなくてどうしたらいいか、な感じ?見た目通りの年でもなさそうな所?」
「実は100歳以上だったりする?」
「しない。十九歳。七年冒険者やってる」
「七年も!超先輩だし!」
「アッという間に有名になってそうだけど、そんなに活動してなかったとか?」
何やら派手なことをしていたと思われていそうだ。
「いや、地道に活動してた。身体も出来てないガキがやれることはたかが知れてるしな」
「ああ、さっきのような格好で目立たないようにしてたのか。売られそうだし」
「もっとガリガリでチビで貧相なガキだったけどな」
物好きはどこにでもいるもので。
「…ん?精霊獣たちは?」
「まだ最近。会って二ヶ月も経ってない」
「…えーっ?仲良さそうなのに」
「相性の問題だろ」
うんうん、とエアの言葉に精霊獣たちも頷く。気が合わなかった契約者も前にいたのだろう。
お節介女はその間も「あ…」だの「えっと…」だの「でも…」だの言っていたが、スルー。
時間があるなら情報交換しようぜ、と誘われて、エアたちは食堂の方へ移動した。
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