228 白っぽいワームをがぶがぶ
索敵にひっかかった砂漠トカゲは五匹。
小さめの白っぽいワームをがぶがぶしていた。邪魔なので倒した、ではなく、食べるために喰らい付いた捕食である。
小さめの白いワームの肉は割と美味しいとオアシスの街の市場で聞いたが、死んでもしばらくうねうねと動くのがワームである。焼けば動かなくなるものの、余程、飢えてない限り、エアは挑戦したくない。
他にもいっぱい美味しい食べ物はあるのだから。
精霊獣たちも同意見のようで、「うぇ~」な嫌そうな顔をしていた。
砂漠トカゲは仲間に親切なようで、エアが乗っているトカゲ騎獣に、ぽいっと前足でひっかけてワームの切れ端を放る。騎獣は喜んで食べ出した。
ひょっとして、砂漠トカゲにとってワームはかなりのご馳走なのだろうか。
砂漠トカゲたちがワームを食べ終わるまで、エアたちはタープで日陰を作ってそこでお茶しながら待ち、乗って来たトカゲ騎獣に土魔法で浅めの器を作りその中に水を出してやったら、野良トカゲたちも欲しそうだったので、同じように水を出してあげた。
すると、あっさりと警戒を解き、水を飲み出したので、首にロープをかけ、あっさりと捕獲出来た。
本当に仲間意識が高かったのである。
そもそも、砂漠トカゲの全長は人間の三倍ぐらいあるので、人間を『敵』とは認識していないのかもしれない。
捕獲依頼は二匹だが、多くても買い取ってもらえる。先程のように、トカゲ騎獣を逃してしまう冒険者や商人もいるので、常に需要があるのだ。
野良トカゲたちを【スリープ】で眠らせて影収納に入れ、エアはトカゲ騎獣でオアシスの街へ戻るのが無難なのだが、猫型精霊獣たちが乗りたそうなので任せることにした。
野良トカゲは五匹、猫型精霊獣たちは六体で一匹足りないが、一体はエアと相乗りで。
精霊獣たちは猫サイズのまま、上手く砂漠トカゲを運転して行く。手綱代わりにも使えるロープはいらないようなので、ロープを解いて元通りに収納した。
オアシスの街へ戻る前に、目指していた小さなオアシスへ行くことにした。
中々索敵にひっかからないものの、エアはサンドビッグキャンサーをまだ諦めてないので。
【地図】スキルのおかげで、小さいオアシスに難なく到着した。
小さいとはいえ、早々干上がりそうもない池ぐらいはある。
周囲にはデーツの木が茂っていた。
花束を逆にしたかのような、面白い実のつき方をしている。赤黒くなっているのが食べ頃だ。
デーツは大きな種があっても、精霊獣たちはそのままバリバリ食べる。
「やっぱり、ドライフルーツにした方が甘みが強いな」
エアは生のデーツを食べるのは初めてだった。甘いは甘いが、少しボケたような甘さだ。ドライデーツ入りのケーキやクッキーを『ホテルにゃーこや』の日替わりのアフタヌーンティーセットで何度か食べたことがあるが、そちらは癖になる甘さだった。
「にゃにゃ?」
収穫していく?とばかりに、ニキータが鳴いた。
「ああ。でも、一袋だけな。種取る手間がかかるし」
その程度、錬金術で出来るが、手間は手間。ドライデーツは市場でもたくさん売っていたので、買った方がいい。
そもそも、他の食材もたっぷり持っているのだ。
【ゲートリング】に登録したので、いつでも来れる。
それよりも、サンドビッグキャンサーだ。
土の精霊獣、ロビンの探索でもひっかからないので、相当深く潜っているのか、もっと遠くにしかいないらしい。
…いや、ひょっとして、日中は暑いから砂漠に出て来ないのだろうか?
生態がよく分からないのが魔物だが、砂漠は更に謎が多い。
******
捕獲した野良トカゲの納品は、そのまま依頼主の貸し騎獣屋へ連れて行くようになっていた。
エアが騎獣を借りた騎獣屋が依頼主ではなかったが、同じく防壁の側に店を構えているので大した距離じゃない。いくつも同じ商売をしている店があるのは稼げる商売の証拠だろう。
エアはトカゲ騎獣を返してから野良トカゲ五匹を連れて納品。
先導したのはエアだが、ロープで繋がなくてもちゃんと離れずについて来させたのは精霊獣たちだ。扱いにかなり慣れたらしい。
「その猫は従魔じゃないのか?すごく強そうなんだが…」
五匹も連れて行ったことにも驚いていた依頼主のおじさんだが、精霊獣たちが乗ってることにも驚いていた。
「使い魔。高位の精霊獣だからな」
「そうなのか。じゃ、君はテイマーじゃなく召喚士か?すごく少ないと聞くが…」
「いや、剣士。メインで戦うのはおれ。精霊獣一体だけでも過剰戦力だ。街ぐらい簡単に吹っ飛ばすからな」
「……そ、そうか」
信じてなさそうだが、精霊獣たちが強いことが分かっていればいい。
依頼主はちゃんともう三匹分の砂漠トカゲも適正価格で買い取ってくれた。依頼の二匹は冒険者ギルドでの支払いで、多い分はその場で現金払いである。
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