119 戦闘力じゃエアの方が断然上
「マイナス30℃じゃ火属性でもヤバ過ぎだな。水属性でも凍るだろ。精霊はある程度は耐性があると思うけど、確かに過酷な環境フロアではその属性精霊以外は見かけねぇし」
色んなダンジョンに潜ってるシヴァだからこそ、実感が
【なに、その『ごっかんじごく』って】
「正にそれ。攻略させる気がなかったらしく、ボスフロアの一つ前が極寒地獄だった」
「何とかクリアしちまうエアがおかしいんだけど、大変だったなぁ、な感想はどうなんだと言いたい。しかも、そこのボス、
そこまで?とエアも驚く。
戦闘力はかなーり開きがあるシヴァに「おかしい」とは言われたくないが。
【え、アカネさんでもたおせないの?なんで?そうとうつよいのに】
アカネはシヴァの妻のドラゴンスレイヤーだ。
「それ以上に強いのがエアなんだよ。六年冒険者やってるし、戦闘キャリアも長いからカンもいいし、素の身体能力も高いから、その辺の差」
【じゃ、Sランクの…えーっと…】
「テレストな。あいつはパーティ組んでた魔法使いで、ドラゴニュートで長命だから比べられねぇって。戦闘力じゃエアの方が断然上」
「それは買いかぶりだろ」
「そうでもねぇって。エアがSランクになりたいってギルドに申請したら、なれるぞ。ダンジョン三つ、ソロ攻略してるんだから余裕で」
「却下。まったくメリットがないとシヴァだって言ってただろうに、何
で勧めるんだか」
【え、あれ、しってるの?】
「エアが自分で気付いた。おれがSSランク冒険者でもあるってことは」
「ヒントを出し過ぎだって。で、シヴァ、その召喚アイテム、使わないのか?」
エアは気になったので話を戻した。
「調べてからだな。使う人によって呼び出される精霊獣も違うんじゃねぇの?っていうのもあって。…あ、やっぱ、そうなのか」
そうそう、とばかりに精霊獣たちが頷いたのを見て、シヴァも納得した。
「属性と猫型がいい、で限定してるだけだけど、個体差じゃなくてランクが違うってこと?」
「その可能性もあるだろうな、と。すると、魔力が多いおれが使うと精霊王とか出そう。そこまでいらねぇっつーのに」
「精霊王って召喚出来るもの?王なのに?」
「国を作ってるワケじゃねぇだろ。まとめ役ってだけで。【精霊獣の指輪】であって精霊の…じゃねぇけど、精霊自体不確定な姿のものだから問題ないか、動物型になってるものすべて、かもしれず」
なるほど。
「あ、そうそう、デューク。紹介しよう。水の精霊獣のクラウン、風の精霊獣のシエロ、光の精霊獣のルーチェ、火の精霊獣のロッソだ。で、こっちはデューク。シヴァの従魔」
【よろしくね~】
「にゃ!」
挨拶が終わった所で、エアの装備を作ってもらうことになったが、ロビーでやることじゃないので場所を移動し、エアの客室になった。2LDKなので、そのリビングにてだ。
シヴァが従業員たちに連絡したので、精霊獣たちは好きにしていい。
早速、精霊獣たちは『ホテルにゃーこや』内探索に出かけて行った。
契約してるだけに、敷地内ならどこにいるかエアには分かるし、呼べば来る。ただし、『地下』だとシヴァが言い張ってる場所は別だ。ダンジョンや影の中と同じく、違う空間なので。
他の客もいるようだが、従業員がついてるので問題ない。
ロビンとニキータはとっくに見ているので、適切な対応をするだろう。
驚くことにここの従業員の大半は子供で、下は五歳から上は十三歳、二十代前半の男が一人、となっていた。
大人の男は元貴族でマナー教師も兼ね、子供たちは孤児院から住み込みで雇ったらしい。
二十代前半の男と男女の子供二人、それにデュークを加えた三人と一匹とエアは、エレナーダダンジョンで会っていた。
元侯爵家の屋敷を元に大々的にリフォームした高級宿…ホテルは、かなりの豪華で機能性にも優れ、家具や小物に至るまで最高級品を取り揃えているようだった。高級ホテルを名乗るだけあり。
あまりに広過ぎる部屋も落ち着かないので、中堅ぐらいの部屋を選んでいるが、エアたちはVIP待遇なのでどの部屋でも利用可能らしい……。
他の客とは会おうとしなければ、会わないような間取りらしく、遠目に見たぐらいだ。食堂や大浴場で会うこともあると聞いてはいたが、貴族は体力がないので、遊び疲れて寝てしまうか、起きていても疲れているので楽な部屋食らしい。
客同士お互い気を遣わなくてもよく、色んな遊びは子供従業員が付き合ってくれるので、その点だけでも過ごし易いホテルだった。
一泊金貨20枚~食事代別でも画期的な乗り物や色んなゲーム、地下の海や野原の滑り台や垣根の迷路、川遊び、で遊びたい放題なので、かなり安いんじゃないかと慎ましい金銭感覚のエアでも思う。
食事代が別なのも食材グレードの落差が激しいからで、サファリス国の大雨災害の元凶の下位水竜の肉まであるのだ!
エアたちは食事も食べ放題でいいそうなので、オススメを頼んでいる。料理名や食材を聞いてもよく分からない料理が多いこともあった。
新装備もエアがあれこれ言うより、シヴァにお任せにした方がいい物を作ってもらえるので任せた。
普段使っている通常装備だけじゃなく、極寒装備、水中装備、シヴァが作った熱耐性装備までチェックされた。
少し背が伸びてるので調整してくれるらしい。手の大きさだけは変わらないということもないので、義手の方も。
今はデフォルトが木に見える義手だが、色々詮索されるのが面倒臭くなったので、生身に見える方にしてもらう。鑑定対策も魔道具表記もなしで。生身に見えれば、わざわざ左手限定で鑑定しないだろうが、念のため。
エアが自分でたびたび直した所も問題ないそうだが、同じ所ばかりの修理だとこういった素材を足して強化しておいた方がいい、と実用的な錬金術も教えてもらった。
防御力を落とさない夏服、冬服、防寒着、中間服、と下着やアンダーシャツ、靴下や靴も含めて大量に作ってくれた。
普段着でも騎士の鎧以上の防御力って何?な感じだが、一見軽装に見えて実は、という方が油断を誘えるので歓迎だった。見たこともない伸縮素材のフィット感も肌触りも素晴らしい。
「って、何これ?何でスーツ?」
エアの髪色より濃い濃紺でさり気なく
「一着ぐらいあった方が色々使えるぞ。高級店だとドレスコードあるし」
「一人で入れと?」
「妹は売店で色々買ってたぞ。品質的にはかなり安いのに目聡く気付いて」
本館の売店には着替えや運動着その他が色々売っている。
エアも色々買ってるし、それは問題ないが……。
「高級店に行く時、妹としか行かないように思われるのはちょっと不本意」
「誘いたい女がいたり?」
「いや、まったく。お世話になった先輩や恩人や恩師はいるけど、高級店なんて柄じゃないし」
「妹がまた結婚するかもしれねぇだろ」
「当分はないな。さすがに懲りてる」
スーツなんて収納にしまい込んだままになりそうだ。
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