118 猫型精霊獣たちは飛べた!

 ニーベルングダンジョンは攻略しているので、1階の転移魔法陣から最下層40階まで一気に行ける。

 エラーを出さないとならないので、まずはエアだけでラウンドボーンドラゴンを討伐。

 前回同様、ボーンドラゴンの胸骨の中へ影転移し、大きな魔石の台座をぶった切り魔石を収納した。がらがらと骨が崩れて来るのは前回も経験済みなので、さっさと影転移で避難済みである。


「よし、エラー。…って、全員驚いてるし」


 鑑定モノクルを装着して確認終了。

 猫型精霊獣たちは、案外、感情豊かだ。目を見開き、口も開いていた。


「そこまで変なやり方?」


 コクコクと思いっきり首を縦に振って頷かれた。五体の猫型精霊獣たち全員に。


「討伐と言うより魔石回収だしな。まぁ、だからこそ、ダンジョンエラーになるワケで。って、おっと。希望を述べないと。

 …精霊獣の召喚アイテムと美味しいドラゴン肉がたっぷり欲しい!」


 ラウンドボーンドラゴンなので、肉ドロップが出る可能性もあるかも?と一緒に検証してみた。

 精霊獣の属性を決めなかったのは、何かとお世話になってるシヴァに渡そうと思っているからである。これも検証になる。

 精霊獣たちと一緒にお茶しながらドロップを待っていると、やはり、十五分後ぐらいにドロップが出た。小さい宝石箱と大きい木箱と魔石だ。


「やった!ラウンドドラゴン肉!」


 頼んでみるものだとエアは大喜びした。

 宝石箱の方は【精霊獣の指輪】でこちらも希望通り。

 シヴァに報告を入れると、『ホテルにゃーこや』で会うことになった。

 別に急いでないので観光ついでに、ゆっくりして来てもいい、とのことだったが、ロビンと一緒とはいえアイリスを置いて一人と精霊獣たちだけで観光するのも怒られそうなので、まずは戻ることにした。


 39階でアンデッドに対するルーチェがどれだけ活躍するか、お試ししてから。


 ―――瞬殺だった。


 アンデットには本当に光魔法が最強なことを証明してくれた!

 どうよ!と二本足で立ち、胸を張って前足を腰(?)に威張るルーチェが可愛かったのは、言うまでもない。

 ルーチェもニキータ同様、子猫型なのでただでさえ、何やっても可愛いのだが。


 20階のフロアボスでもついでに検証したい所なのだが、いつも行列が出来ており、倒さなくても進めるため、エアも討伐していなかった。

 フロアボスも何だったか…まぁ、【冒険の書】をチェックするまでもないだろう。


 ダンジョンを出て市場で食べ歩き兼土産物色しようと思ったが、カラフルな精霊獣を五体連れて、では目立ち過ぎるので、普通の猫でも通る夜色子猫型のニキータ以外は姿を消してもらうことにした。

 精霊石に戻さないのは本人…本精霊獣たちが嫌がったからである。最初は召喚だったが、送還は別にしなくていいらしい。エアも負担になっているワケでもないので、問題ない。

 串焼きやスープは多めに買って、後で食べられるようにするが、後日、交替でその場で食べさせてあげよう。食べ歩く、というのが楽しいのはよく分かるので。



 その後はラーヤナ国王都フォボスに向かったが、転移ポイントがあるだけに、行きより遥かに速く、時間にして十五分程で到着した。


「……あれ?クラウン、シエロ、ルーチェ、ロッソがいない!」


 肩のニキータはいたが、エアが抱えていた精霊獣四体がいなかった。前のポイントで置き去りになっているのが分かったので、すぐ影転移で戻る。


「何かあった?…え、弾かれた感じ?」


 精霊獣たちはしゃべれるワケではないが、契約してるので何となくイメージが伝わって来る。

 最先端技術を持ってるにゃーこやなので、防犯対策にひっかかったのかもしれない。

 『ホテルにゃーこや』の前まで影転移して、エアがシヴァに連絡を取って訊いてみると予想通り防犯対策にひっかかっていた。

 シヴァがすぐ側に転移して来る。


「悪い悪い。言ってなかったか。転移・使い魔対策もしっかりやってあって、エアたちとニキータとロビンは登録したから入れたんだけどな。…って、ここまで増やすか」


「かなりお役立ちなのが分かったんで。クラウン、シエロ、ルーチェ、ロッソだ。もうここまでで増やさない」


「そっか。よろしく」


 すぐどうやってか登録したらしく、シヴァが全員連れてホテル内へと転移した。

 移動した場所はソファーセットがたくさん置いてある本館のロビーである。

 アイリスは地下で従業員たちと遊んでるらしい。



「ああ、で、ニーベルングダンジョンでも有効だったぞ」


 エアは口頭で報告して、魔石と召喚アイテムをシヴァに渡した。


「そんなに簡単に出るのか。他のダンジョンでも召喚アイテムが出るかどうか検証して欲しい所だな。もっと低ランク向けの所で」


「やっぱり、ドロップって変わって来るもの?」


「ああ。規模の大きいダンジョン程、ドロップがいい。でも、エラードロップは滅多に出ないからか例外っぽい。ニーベルングダンジョンよりビアラークダンジョンの方が明らかに格上ダンジョンだろ?」


「確かに。フォボスは中級ぐらい?」


「ああ。ランク制限されててCランク以上じゃないと入れねぇ。別名『天狗の鼻折りダンジョン』と言われてる。一つのフロアがかなーりだだっ広いから、何らか移動手段がねぇとキツイ。まぁ、エアなら問題ねぇけどな。精霊獣にも乗れるし、飛べるだろ?」


「え、飛べる?…翼?」


 五体の猫型精霊獣全員の背中に鳥のような翼が生え、ぽやぽやと飛び始めた。風呂で浮いてるような感じである。

 吹き抜けになってて天井が高いので、楽しいらしい。属性は関係なく飛べるようだ。

 ……そういえば、そもそも、精霊は飛ぶものだった。

 エアが深く考えなかっただけで。


「…気付いてなかったのか」


「必要なかったし。大きくなったら乗れるのは知ってたけど」


「そんなもんだよな。エアジェットブーツがあるし」


「そ。あ、でも、シエロには負けるかもな。風の精霊獣だし」


 エアジェットブーツも風を使って飛ぶのだ。風の扱いにかけては、風の精霊獣に敵うワケがない。

 呼んだ?とばかりにシエロが寄って来た。


「にゃ?」


 何?という感じだ。


「シエロは飛ぶのが速いんだろうなって言ってたんだよ」


「にゃ!」


「移動の速さなら影転移の方が速いけどな」


 シヴァがサラッと意地悪なことを言うので、シエロがしゅんとなった。


「イジメるなって」


 よしよし、とエアはシエロの頭を撫でてやった。

 そこに、シヴァの従魔、グリフォンのデュークがロビーに入って来る。


【え、ねこがとんでるよ!】


「…グリフォンがそう言うと、何とも言えない気分になるな」


 鷹頭と鷹の翼に獅子の身体がグリフォンだ。デュークは黒い羽に白いラインが入っており、黄色のクチバシ、体は明るい茶色。

 念話を誰にでも聞こえるようにしたマジックアイテムを使っているので、人間の言葉を理解している賢いデュークは話すのだ。


「精霊獣だ。デューク、侵入者だと思ったのか?」


【ううん。シヴァがむかえにでたからあたらしいおきゃくさんかなぁ、とおもって。せいれいじゅうのおきゃくさん?】


「精霊獣はエアの使い魔だっつーの。契約してねぇ精霊単体で人間社会に干渉出来ねぇよ。そういった契約らしい」


 やっぱり、そうだったらしい。


【へぇ、そうなんだ。エアはこんなにいっぱいひつようなの?】


 呼び捨てでいい、ととっくに言ってあるので、デュークはその通りに呼ぶ。


「ああ。ソロだと誰かに手伝って欲しい時もあるから」


「収穫やドロップ品集めで、だろ」


「そうとも言う」


【…それってどうなの?いっぴき?ひとり?でも、かなりつよそうなんだけど…】


「何があるか分からないダンジョンなんだから、強いに越したことはないだろ。保険にもなるし。…あーでも、氷山フロアはみんな凍り付いておしまいかも。氷属性いないし、装備ないし。それとも、マイナス30℃でも影響ない?」


 精霊に環境がどれだけ影響があるのか、エアは知らない。


「にゃ?」


 戻って来た精霊獣五体とも、小首を傾げる。

 本精霊獣たちも分からないらしい。




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