074 シャドー種ドロップが微妙過ぎた!
エアが英気を養うのも補給するのもまったりするのも宿泊するのも、ビアラークダンジョン1~4階である。
「ねぇ、あなた、駆け出しのソロなんでしょ?パーティ組んであげてもいいわよ。あたし、こう見えてもDランクだし、色々教えてあげるわ!」
何か変な女が寄って来た……。
エアが若く見えるのはともかく、到底駆け出しの装備ではないのに、どれだけ見る目がないのだろうか。
すると、近くで吹き出す女がいた。
「ちょっ…何言ってんのよ。どう見てもランクが高い人じゃない。採取の手際がいいし、結構、容量あるマジックバッグ持ちのようだし、装備もかなりいいし」
「そもそも、王子に声かけるなんて、ずうずうしいわ!」
「Dランクって戦闘スキルで認定されただけのランクじゃないの」
「王子には暗黙の了解で声かけちゃダメなのに…」
「色々と酷い…王子に近寄るな!」
……次から次へと参戦して来て、エアは関係なくなったようなので、さり気なくエアジェットブーツの認識阻害をオンにしてその場を離れた。
しかし、『王子』って何だろう?
いくら何でも本当にどこかの国の王子だとは思っていないだろうが、あだ名にしても「何だそれは」と文句を言いたくなる。
……エアが知らなかっただけで陰ではそう呼ばれてるのか?
女冒険者たちはまだ言い合ってるが、その周囲の冒険者たちも、やれやれ、とばかりに何か話していたので、エアは風魔法で声を拾ってみた。
「あいつも可哀想だよなぁ。冒険者にしては細身でちょっと見目がいいってだけで、女どもに目ぇ付けられちまって」
「確かに、整った顔してて目立つ緑の目で、夜色の髪も虹色に光ってキレイだけどさ。冒険者に王子はないわ。夢見勝ち過ぎ」
「ソロで女にデレデレしない所も『ストイックでいい!』とか言ってたぜ」
「王子がストイック…奥さんが何人もいるのが王子では…」
「そんなツッコミはいらないんだろ」
……もう王子呼びが広まってるのか。
そう噂されるようなことをした覚えはまったくないのだが。
浅層は補給フロアだと言われているぐらいで、エアだけじゃなく、中・高ランク冒険者も多いのに。
エアは再び1階に戻り、転移魔法陣で人の少ない5階へ行くことにした。こちらも熱帯ならではの食材が豊富なのだが、スコールがあって足場が悪いし、魔物も強くなるため、そう人はいない。
足場が悪くてもエアは飛べばいいので、特に問題なかった。
いや、群れの魔物が多いのは問題かもしれないが、連携して来る相手はいい鍛錬になる。
新しく手に入れた
今日もサル系魔物の群れが襲って来たが、いつもとはかなり違った。
足元に潜るように消えたのだ!
「シャドー種!」
滅多に会えないと言われている影魔法を使うシャドー種に違いない。
しかし、影転移もお粗末だった。
魔力の流れを隠そうともせず、出て来る時に警戒もせず、変な余裕をカマしていたのだ!
どの影にいるかも分かるので、
ならば、とシャドーモンキーが入っている影の中に入って倒した。
入ってからあれ?と思ったが、入れてしまったのだ!
これからは影の中でも結界を張ろう……。
改めて気を引き締めつつ、殲滅。群れ相手だと槍と二つの刃がある
ドロップ品も変わっていて【影リング】が3個、【影マント】が1つドロップした。
【影リング・1秒だけ影を縛ってフリーズさせる。レベルの高い者には無効。熟練度により時間が伸びる】
使えるのか使えないのか微妙な物が出た。
【影マント・認識阻害効果があるマント】
こちらはもっと欲しいが、どの程度の認識阻害なのか分からない。
どちらも低ランクの魔物とBランクの魔物で試した所、Bランクではまったくの無効だった。Cランク魔物は効く魔物とそうじゃない魔物が出る。
微妙過ぎるが、影マントの方は人間相手なら結構有効じゃないだろうか。
5~7階の熱帯ジャングルフロアをシャドー種を探して倒して回った所、シャドードッグ、シャドーリザードも見付けた。
【影吹き矢・小さな
【シャドーリザードスーツ・シャドーリザードに見せかけられるスーツ。水辺、湿地帯に強く、身体強化補正が働く】
…び、微妙過ぎた……。
【影吹き矢】は豆ぐらいの小さな
まぁ、【影マント】は3つ手に入れたので、よしとしよう。
更に7個も【影リング】を手に入れてしまったが。
全部で10個。ドロップし易いらしい。
これはカーデナル商会に売るべきだろう。
いや、シヴァが欲しいだろうか?マジックアイテム作りの参考になるだろう。
連絡してみると、シヴァが転移して来た。
エアは検証していたため、15階の遺跡フロアのセーフティルームにいた。
「影関係のアイテム、どれも試させて」
別に構わないので了承したが、シヴァはしょぼい効果に大笑いしていた。
「護身用なら使えない?影マントは」
「影マントの認識阻害も微妙な感じ。ないよりマシだけど、もし、誰かに追われてる時に使っても意味ねぇな。認識した後じゃ効果が半減する」
「認識される前なら効果があるってことだよな?」
「そうだけど、捜索されてる場合、マジックアイテムに騙されるような捜索能力が低く、レベルも低い奴に頼まねぇだろ」
「確かに」
「この中なら影リングが一番使えるんじゃね?低ランク冒険者にとっては。たった1秒でも」
「やっぱ、そうか。シャドーリザードスーツはいらない?」
「いらない。ネタ装備過ぎ。水中呼吸が出来るワケでもなく、単に防水で見せかけるだけ。身体強化補正ってのもないよりマシ程度。でも、オークションで出せば、結構な値段で売れるかもしれねぇぞ。今までドロップしてなさそうなアイテムだし」
「オークションか…」
面倒臭い。
「妹のいる商会に丸投げしたら?」
「色々扱ってはいるけど、雑貨屋で、そこまで高額な物は扱ってないんだよ。でも、スールヤの街の冒険者ギルドに馴染みの人がいるから、頼んでみるかな。手数料が入ってギルド側も美味しいだろうし」
「いくらで落札されたのか教えてくれ」
シヴァも予想が付かないらしい。
「分かった」
熱耐性装備は転送で届けられたし、しばし会わなかった間に、ジャムを練り込みそば粉も入ったパンや、自家製ドライフルーツたっぷりのパウンドケーキを作っていたので、シヴァにもおすそ分けした。こういった素朴な料理の方が喜ぶのだ。
ちなみに、そば粉は中々扱いが難しい食材で、特に麺は100%だと全然麺にならず、ぶちぶち切れるので、小麦粉との割合をしばし研究したぐらいだった。栄養豊富だと言うし、独特の香りが中々いいとは思うが。
パンにそば粉を混ぜるとしっとりな感じになる。
最初はそば粉が多過ぎてどっしりと重いパンが出来てしまい、こうも違うのかと唖然としたが、味はよかった。
シヴァはお返しに、琥珀糖という瓶入りの宝石のように半透明で色とりどりのキレイな菓子と、その菓子を作るのに使われた寒天という粉末を置いて帰って行った。
寒天の使い方レシピの小冊子付きである。
いずれ、販売するつもりなのだろうか。寒天自体の作り方まで載っていた。海藻らしい。
琥珀糖を一つ食べてみると、表面はカリッ、中は柔らかい、何とも言えない食感で甘かった。果汁で着色と味付けをしているらしいが、砂糖もかなり使ってあるのだろう。
このダンジョン、すごいことに大袋に入った上質な砂糖がドロップする。
18階の遺跡フロアだが、砂糖採取専任の冒険者がいるぐらいだ。それをシヴァも知っていたのかもしれない。
もちろん、エアもたっぷりとゲットしている。
エアが琥珀糖を作れるようになったら、アイリスにこっそりあげよう。
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新作☆「番外編54 いつか巡る未来」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093080233221953
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