049 空移動だと地図の大ざっぱさがよく分かる

「あっれ~?おかしいな…」


 迷った、かもしれない。

 エアが持つ地図は簡略地図で、位置関係の距離はかなり適当なのは知っていたが、街道を無視するとこれ程、アテにならないものはなかった。


 【エアウォークブーツ】を手に入れたおかげで、空移動が可能になり、かなりショートカットが出来るのが楽しくて、サクサクと進み過ぎたようだ。

 方角は合ってると思うのでこのまま進むか、街道があった所まで戻るか、悩ましい所だ。

 練習がてら【影転移】で戻るのもありかもしれない。

 やっと10mぐらいだが、連続で【影転移】が出来るようになって来たので空中を走るよりは早い。


 その前に、空き地を見付けて着地し、休憩にした。

 レベルが上がったおかげで体力も上がり、水分補給ぐらいしかしていなかった。

 ようやく、少しは肉付きもよくなって来たのに、しっかり食べないと、また痩せてしまう。


 テーブル椅子セットを出し、遅めの昼食は作り置きしたカウシチューと焼き立てパンを食べる。時間停止収納のおかげで熱々だ。

 ニーベルングの街を出る前に、すぐ食べられるよう作り置きもかなり作っており、焼き立てパンもその一つだった。

 屋台の物もたっぷり買ったので当分は困らない。


 もちろん、時間停止収納がバレないよう、物陰で収納していた。

 冷めてもいい、とマジックバッグに収納する人もいるが、誰もが持てる物でもないので見せびらかさないのが基本だ。


 圧力鍋のおかげで、トロットロの柔らかいカウ肉が堪らないシチューは今日も美味しかった。

 パンじゃなくご飯で食べるのもありだし、ご飯にシチューをかけてチーズを乗せて焼き目を付けた『ドリア』とかいう料理も興味深い。美味くないワケがない組み合わせだ。次にやってみよう。


 デザートはシヴァにもらった『大福』と言う豆のお菓子だ。

 赤い小豆あずきという豆を砂糖で煮た餡を、米と似たようなもちもちするものでくるんだものだが、味の想像が出来なかった。甘いのは分かる。


「…っっ!!!」


 衝撃だった。

 外側が柔らかくて伸び、ほんのりとした甘さ。中は赤黒いつぶつぶした餡がしっとりで上品に甘くて…これはハマる!

 後でレシピを聞こう!


 いや、しかし、材料が手に入るのだろうか?

 赤い豆なんて市場で見たことがないし、米と似たようなものとは?

 砂糖もエアが知ってる物とは味が違うような気がする……。


 そもそも、転移が使えるシヴァだ。何度か繰り返せば長距離だって行けるだろうし、どこでも行きたい放題だろう。そんな遠方の物を売ってもらうとなると、いくらかかるのやら……。


 では、家庭料理のレシピと、エアが出せる金額で交渉するのはどうだろう?

 時間がかかるため、売ってる「乾燥したパンの種」でパンを作っているが、母親レシピはパンの種から作る時間がかかるものだ。その分、香りがよく、ふわふわだったので思い出の味でもある。


 季節のフルーツでパンの種作りに五日ぐらい、パン作りは寝る前に発酵させる所まで作って発酵させ、朝に一時間半程、更に二次発酵させて焼く、という感じで作っていた。

 一次発酵は六時間から八時間ぐらいということだ。

 あまり長くても発酵させ過ぎで酸っぱくなるので、見極めも大事になる。

 エアはかなり久々になるので、美味しく作れるまで時間がかかるかもしれない。


 そうと決まれば、早速、パンの種を色々仕込んでおこう。

 色々使えるので瓶は色んなサイズを持っているし、フルーツも色々とある。

 パンの種はちゃんと膨らむ状態は一週間半ぐらいしか保たないのだが、時間停止収納さえあればいつでも、ということだ!

 パンも一種類ではなく、芋やドライフルーツや木の実を練り込んだり、シロップを塗ったり、油で揚げたりするものもあった。


 …うろ覚えの物も多いが、作ってるうちに思い出すかもしれない。

 寄る予定はなかったものの、ちょっと近くの街に寄って、材料も買い足そう。

 方向は合ってるハズなので、そこそこ近い所に街がある…と思う。

 なければ、街道を探して街道沿いで進もう。



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新作☆「番外編52 「君を愛することはない」と言われましたが、どうでもいいですわ。え?もう撤回したいのですか?知りません。わたくしに関わらない所で幸せになって下さい」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093079421752807

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