第2章・義手のCランク冒険者
031 報奨金での宴会は事後承諾
一月の終わり頃。
エアはエレナーダダンジョンをソロ攻略し、Cランクに昇格した。
何度も攻略されているダンジョンだが、すべてパーティで、ソロ冒険者が攻略したのはエレナーダダンジョンが発生して何百年、初めてだった。
まして、Dランクの冒険者が、だ。
大騒ぎになっただけじゃなく、すぐに宴会が開催されお祭り騒ぎになった。
ダンジョンを攻略したパーティ、冒険者には冒険者ギルドと国から報奨金が出る。
それは有名な話でエアも知っていたのだが、すべて宴会に
しかも、事後承諾である。
祝われるのも、受け取るのもソロ攻略した当人…エアのハズなのだが、全部の報奨金が勝手に使われ、事後承諾なのもちょっと……。
最初から「ダンジョンが攻略されたら宴会」と告知されているのなら、モヤモヤしなかったものを。
わざわざ「報奨金」という名にしたのは、国とギルドの人気取りなのだろう。
ダンジョン攻略が出来る優秀な冒険者にちゃんと報いないのなら、今度、違うダンジョンを攻略しても報告しないようになり、下層のドロップも他国に流出したりして、後々困ると思うのだが、国も冒険者ギルドも目先の利益の方が大事らしい。
いや、冒険者ギルドは場所によって対応が違うかもしれないが。
まぁ、エアはドロップ品で稼いでいるし、タダで飲み食い出来たのは確かなので、それで満足しておこう。
エアの左手の義手については、「ダンジョンで手に入れた」ということにした。
嘘じゃないし、極稀にその冒険者が欲しがっているものがドロップすることもあるそうなので、誰も不審に思わなかった。
しかし、エアの周囲がまたうるさくなったので、他のダンジョンへの移動ついでに護衛依頼を受けることにした。
ソロの場合、他のパーティやソロとの合同になるが、珍しいことでもない。
パーティ四人、五人だと多過ぎる、少な過ぎるといったことの方が多いが、ソロだと受けられる護衛依頼が多いので選び放題だ。
気が合わないパーティやソロと一緒だと面倒臭いことになるが、プロとして仕事だけはキッチリやる気質なら大して問題にならない。
…多分。
******
今回の護衛依頼で一緒になる人たちは、普通に友好的でラッキーだった。
護衛はCランク男三人パーティ、Dランクソロの男女二人、そして、Cランクのエアで六人。
馬車は二台だが、護衛対象の商人が御者も兼ねて二人だけだ。
目的地は王都エレナーダから東南、ニーベルングの街。オグニ村で一泊して二泊野営の三泊四日の行程だ。
ニーベルングの街の近くには、全40階の何度か攻略されてるダンジョンがあった。
フィールドフロアがなく、全洞窟タイプのため、難易度はエレナーダダンジョンより低いが、アンデッドフロアもあるため、苦手な人も多い。
実体がないゴーストやレイスといったアンデッドには物理魔法攻撃が効かないことが多く、聖水か光魔法、火魔法、回復魔法頼みになる。
聖別された武器なら効果があるそうだが、それこそ伝説級武器の聖剣、聖槍だった。
今回、エアがニーベルングの街への護衛依頼を選んだのは、エレナーダの近くのダンジョンというのもあるが、手に入れたマジックアイテムの威力を試したい、というのも目的だった。
アンデッドにも問題なくダメージを与えられる、とは聞いているが、試してみないことにはどのぐらいの威力かは分からない。
他の護衛の冒険者に訊いてみた所、ダンジョン目当てではなく、その先の街に行きたいそうだ。
しかし、ニーベルングの街で手頃な護衛依頼がなければ、ダンジョンで旅費稼ぎをすることになるだろう、と。
三人パーティ、ソロの男女はそれぞれ目的地が違う所が少し面白かったが、まぁ、そんなものか。
護衛六人はそれぞれ馬を借り、二台の馬車を囲むように配置する。エアは一台目の馬車の左側配置だ。
今のエアは義手があり両手が揃ってる、とはいえ、片手だった時も半年以上あったため、乗馬はどうかと思い、事前に馬を借りて確認してあった。
最初はぎこちなかったが、優秀な義手と持ち前の運動神経のおかげで、少しの練習で以前のカンもそこそこ取り戻している。足手まといにはならない。
真冬の移動になるが、ダンジョンの51階以降、フィールドフロアに潜る際、パーシーに紹介してもらった付与術師に頼み、寒暖対応装備も作ってもらったので、まったく問題がなかった。
エア愛用のフレームがゴツイゴーグルも傷が多かった色付きレンズを替え、曇らないように加工してくれたので、更に装着する時間が増えていた。
やはり、色付きレンズでエアのエメラルドグリーンの瞳を、多少は目立たなくしてくれる。
護衛のリーダーは三人パーティのリーダー…スカヤになった。
一番の年長者でもあるが、二十七歳になった所らしい。冒険者としてはまだ若い方だ。
まぁ、十八歳の自分に「若い」とは言われたくないだろうが。
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