022 フロアボス待ちの冒険者たちに救援を頼めば?
バンディートヴェスパが確実にいる証拠があるからには、森に入ってる冒険者たち、街道を通る商人たちや旅人にも警告を出さなければならない。
まず警備隊の詰め所に連絡し、商人は通信の魔道具を持っている人も多いので、商業ギルドに連絡を頼めばいい。
そして、冒険者だが……。
拡声の魔道具を使って大きな声で警告するのは却下。魔物の注意も引いてしまうからだ。
風魔法、探知魔法を使える人たちが手分けして、森に入っている冒険者たちに個別に警告の声を届ける、というのが一番よさそうだが、どちらの魔法も射程がそんなに長くないし、広範囲に散ってるだろうから現実的ではない。
「探知魔法、気配察知スキル持ちが手分けして、魔物の分布と冒険者の位置を割り出し、冒険者が無事なら風魔法を使える人が声を飛ばして警告、或いは接触して一緒に撤退、するしかないか」
「集めてる間に全滅してないか?」
「魔法使いは特に足が遅いから、身体強化が得意な奴とペアにしてすぐ撤退出来るようにした方がいいだろ」
色んな意見が出たが、午前中の半端な時間だけに高ランク冒険者がほとんどいない、つまり、探知魔法や気配察知スキル持ちがほとんどいないのが問題だった。
「ダンジョンの20階、40階のフロアボスのリポップ待ちをしてる冒険者たちに救援を頼めばいいんじゃないか?」
最初からそう思っていたエアが意見してみた。
「…あっ!そうか!いる場所が分かってるワケだし!じゃ、早速……エア、行ってくれ」
「やっぱ、おれ?」
予想はしていた。ダンジョンに通ってる冒険者で40階以上にも行っている、となると限られる。
「40階にも行ってて、素早くて、状況が一番分かってて、顔見知りも多いだろ。他の奴だと緊急依頼票を持ってても、何かの罠かと思って相手にされなさそうだし」
確かにそれはありそうな話だった。
稼いでる冒険者は即席強盗に狙われ易いだけに。
高ランクだとランクが牽制になるそうだが、言って回るワケでもないので知らずに襲われることもあるとか。当然、返り討ちだ。
伝言もエアへの依頼になるので報酬も出る。
緊急依頼票の作成時間があるので、エアはその間に買取倉庫へ行き、回収して来た獲物を出した。一部は血抜きが不十分だが、解体スキルがあれば何とかするだろう。
肉屋に在庫肉(分割払い肉)があるので、今回は全部売り払う。
群れに遭遇してマジックバッグに入るだけ狩ったので、結構な数だった。
緊急依頼票が出来ても買取査定が終わっておらず、不正がないようギルマスが保証する、ということで、買取査定途中でエアはエレナーダダンジョンまで伝言に走った。
******
バンディートヴェスパという正式名称の知名度は低かったが、「山賊スズメバチ」や「不殺バチ」という通称か、光る緑の蜂という外見とその習性は、フロアボス待ちの冒険者の大半が知っていた。
そうなると、当然、緊急性、危険度合いも正確に伝わり、結果、まずは現場に行かないと、と身体強化をかけて走ることになった。
エアも40階のフロアボスのリポップ待ちしていた、Bランクパーティ「閃光のイカヅチ」の五人と一緒に走る。
リーダーで両手剣使いのデーヴ、槍使いのタレス、魔法使いのパルク、斥候で短剣使いのレイダル、回復・補助魔法使いのカイルスといったバランスの取れたパーティで、ソロでも戦える人ばかり。
魔法使い二人も鍛えているため、大半の魔法使いのように移動速度が遅くて体力もなくて足手まとい、なんてことはまったくなかった。
魔力も豊富な「閃光のイカヅチ」と違い、エアは魔力がそう多くないので節約したいのだが、仕方ない。
MPポーションはあるので切れる前に飲もう。
――――――――――――――――――――――――――――――
新作☆「番外編48 黒鷹獅子の就職活動」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093077837181642
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます