007 あ、首が落ちた
エレナーダダンジョンは全60階。
5階ごとに転移魔法陣があり、それで外に出ることが出来、その後、続きの階から再び戻ることも出来るため、何度か攻略されている鉱物ドロップが多いダンジョンだ。
1階~50階までは洞窟タイプ。魔物の系統はゴーレム、パペット、といった無生物が多く、51階以降のフィールドフロアからは、他のダンジョンでもよく見る魔物が出て来る。
フロアボスは20階、40階、ダンジョンボスが60階となっている。
フロアボスは倒さなくても進めるのだが、このエレナーダダンジョンのフロアボスドロップは中々いいので、20階、40階ともリポップ待ちの行列はいつも出来ていた。
そこが、情報交換の場にもなっているので、差し入れを持って来て行列に並ぶ冒険者たちの話し相手になっていたり、交流を深めたい冒険者が通っていたりもしていた。
噂になっているような有名パーティが来ている時なら、尚更だった。
エアはまだ20階の行列が短い時に並び、今まであまり会わなかったほぼダンジョン専門のパーティや冒険者たちと交流し、色んなことを教えてもらった。
中でも【チェンジ】という新しい魔法が一瞬で装備変更が出来るだけじゃなく、アイテムも一瞬で出せ、しまう時も触れるだけでマジックバッグや荷物に収納出来、中に入っている物のリスト化も脳内でしてくれる、とかなり使えるものと知ってエアは愕然とした。
スクロールが何本かドロップしてもすべて売っていたからだ!
エアは魔力が多くないので覚えられてもロクに使えないだろうと。
まさか、生活魔法程度の低魔力で、適性問わず使えるとは思わなかった。
本当に知らないことで損することは多かった……。
そして、フロアボスのリポップ待ちの行列は進みエアの順番になった。準備を確認してからフロアボス部屋へ入る。
ここ20階のフロアボスはストーンタートル。
3m級の大きな石亀で、その形通り、防御力がかなり高いCランク魔物だった。
攻撃は噛みつき攻撃、手足を甲羅に引っ込めて転がって突撃して来たり、大量の
定番の攻略方法は、手足が出る穴を執拗に攻撃して地味に削るか、切れ味の鋭い武器か魔法で甲羅よりは防御力が低い手足を切断し、その傷口を更に攻撃することだ。パーティならそれ程、難易度は高くない。
魔物ランクの通り、Cランクパーティなら倒せる、という基準だ。
Dランクになりたてのソロのエアの場合は工夫が必要で、ちゃんと対策は考えてあった。
手数が足りない(正に左手がない)のなら、アイテムで補えばいい。
使うのは爆発ポーションである。
採掘で使われるような強力な物だ。
エアは既に20階以上も納品依頼のために潜っているので、準備金も情報集めも作戦を考える時間も十分にあった。
ストーンタートルが噛み付こうと口を開いた時がチャンス!
十分以上に引き付けてから、爆発ポーションをまとめて口の中に放り込む。投擲スキルはあるが、あまり遠いと口を開かないからだ。
ドカンッ!…ガッガッ……ズガンッ!
安全呪符を外した後は衝撃で爆発するので、少し時間差で爆発したが、ストーンタートルの下顎が吹っ飛んだ程のダメージを与えられた。
エアは身体強化をかけてすかさず距離を詰めると、甲羅と首の隙間にまた爆発ポーションを差し込み、すぐ跳び離れた。
ドカーンッ!
……あ、ストーンタートルの首が落ちた。
甲羅の内部の爆発だからか、予想以上にダメージを与えられたらしい。
しかし、ストーンタートル。石で出来た大亀は、この程度で倒せない。
再生能力があるからだ!
集まって来る石を左前腕の小盾で叩き落とし、ストーンタートルの横に回ったエアは、左前足を斬り落とし、甲羅の上と下を繋ぐ境目にショートソードの剣先を入れ、身体強化をかけて力尽くで引き裂く!
ストーンタートルは生き物、と言うより、少し賢いゴーレムの亀型みたいなものらしく、内臓は特にない。魔石があるだけだ。
そう、エアの狙いはその魔石。
再生はそこまで速くないので、エアは地道に削って、削って、何とか甲羅を開け、その中へ入って魔石を砕いた!
討伐完了。
ストーンタートルの巨体が消え、ドロップに変わる。
Cランク魔石と小さめの木箱と手のひらサイズの宝石箱だった。
罠がないか、一応、調べてから、まずは宝石箱から開けると、黄色の宝石が付いた指輪だった。何かのマジックアイテムなら嬉しいが……まぁ、換金しても中々いい買取額にはなるだろう。
続いて木箱を開けると、そこには何かの革の焦げ茶のウエストポーチ。
まさか。
ダンジョンは気まぐれで中層でも、その難易度にそぐわない程、かなりいいドロップを出すことがある。比較的、ソロだとその傾向があるようだ。
そういった話はつい先程、フロアボス前の行列に並んでいた冒険者たちに聞いたばかりだ。
期待してそれじゃなかったら、かなりがっかりするだろうが……ダンジョンドロップの革製品は他にないような?
エアが知らないだけだろうか。
そっと金具を外し、ポーチの蓋を開け、木箱の蓋を入れてみた。
ポーチの口とは比べ物にならないぐらい大きいのに……すっぽりと入った!
やっぱりマジックバッグだ!ウエストポーチ型の!
「マジか…」
嬉しいのだが、まったく予想していなかっただけに、まったく実感がなかった。
人によってもドロップ品が違うとは聞いてはいたが……。20階で出ていいドロップじゃないような……。
いや、今までの変に運がなかったのが、ここに来てどかっと幸運値が上がったのだろうか。
何にしても嬉しい!
これで、こまめに補給に行かなくても、まとまった日数、ダンジョンに潜れるのだ!
まぁ、まずは買い出しに行こう!
エアは早速ウエストポーチを腰に巻くと、荷物を片付けて、軽い足取りでフロアボス部屋を後にした。
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新作☆「番外編47 難癖から始まる女王戴冠」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093077128176703
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