第11話 思わぬところ

「……」

目を開けると、いつもの寝室だった。まだ少しクラクラするが、周りの状況を首を動かして確認する。

「起きましたか」

俺が横になっているベッドのすぐ近くに、鳴瀬さんが立っていた。

そうか、鳴瀬さんが…って、鳴瀬さん!?

慌てて起きあがろうとするが、案の定と言うべきか、立ち眩みによって阻止された。

「まだ起き上がらないでください、また倒れたらどうするんですか」

ふと、おでこに冷たい感覚があったので触ったところ、冷えピタシートが貼ってあった。そして、俺がここにいて、鳴瀬さんがここにいて…ということはやはり、

「…俺が倒れて、鳴瀬さんがここまで運んできてくれたのか。すm」

すまん、と言いかけたところで、鳴瀬さんが俺の口を塞ぐ。

「困ったときはお互い様です。それに、謝罪よりは感謝された方がこちらも気分がいいです」

「そっか、ありがとう」

素直に従おう。感謝の気持ちはもちろんあるからな。

「いえ」

ちょっと得意げに見えるのは俺の暑さによる幻覚だろうか。そんな気がしてきた。

「それにしても、なんで玄関先で倒れていたんですか…」

おそらく、疲労&猛暑によるせいだと説明した。確かに一度に勉強しすぎた感はあるかもしれない。

「どうして、そんなに頑張ろうと思ったんですか?」

「…今までの分を少しでも取り返したくてな」

少しでも、成長しないといけない。そんな焦燥感に駆られた結果がこのザマだ。

俺の自嘲的な笑みを感じ取ったのか、鳴瀬さんは優しい笑みを浮かべながら口にした。

「…昨日も言いましたが。柊木さんは努力している時点で素晴らしい人間です。無理せず自分のペースでやるのが一番ですよ」

自分のペース、か。

「ありがとな、鳴瀬さん」

少し安心したからか、また眠気が襲ってきた。

「いえいえ。…寝てしまいましたか」

鳴瀬蒼は、柊木周の髪の毛を撫でながら、小さな声で口にした。

「応援してますよ、柊木さん」

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