第7話 怠惰な生き方
起床、学校へ行く準備完了。
「あ、おはようございます」
ちょうど鳴瀬さんと家を出る時間が被った。
「おはよう、鳴瀬さん」
今日も良い一日になりそうだ。
時間が経つのは早いもので、気づけば中間考査のテスト期間が近づいてきた。
放課後、翠と廊下を駄弁りながら歩いていると、教室で勉強をしている人達が
目に入った。
「周も勉強会やるか?」
俺が何と答えるか分かりきった声色で、翠が誘ってきた。
「俺が勉強会をしてまで勉強をすると思うか?」
そう答えると案の定、
「やっぱりそう言うか」
肩をすくめながら返された。なんか腹たつな。
“必要以上に努力する必要はない”なんて、よく言ったものだ。
実際は努力が報われないのが怖いだけだけどな。
だが、それでいいと思っている。安泰を望むことこそが人類の性だ。
「蒼ちゃんは今回の範囲苦手なところある?」
蒼ちゃん、という言葉が聞こえた方向に目を向ける。
そこでは鳴瀬さんと男女のグループが集まって話していた。
「いえ、特には・・・苦手なところがあったら、また勉強会で教えますよ」
勉強会、か。にしてもすごい人数だな・・・
「やったー!え〜っと、私がわからないところは、ここからここまでかな!」
「全部じゃねえか!!」
ワハハ、と笑いの渦が起こる。きっとあの人はクラスの人気者だろう。恐らく。
そこで俺の目線の先に気づいたのか、翠がニヤニヤしながら口にする。
「おや、周殿。愛しい鳴瀬さんにご執心ですか?」
「ぶっ飛ばすぞ。・・・人がたくさん集まっていたから目で追っただけだ」
全くこいつは、少しでも隙を見せるとすぐからかってくる。
「あー、俺は勉強にそこまで熱心になれとは思ってないからな?」
申し訳なさそうに翠が口にする。
・・・なるほど、俺が勉強会をする人を羨ましがっていると感じたのか。
当たらずとも遠からず、だな。
「・・・予定が合えば」
「ん?」
「予定が合えば、勉強会をしないか」
小声で言ったが、翠の地獄耳はばっちり聞こえていたようで。
「おう!帰って予定確認したら連絡するな!!」
嬉しそうに返事をする翠を眺めながら考えた。
ーー俺が羨ましいのは、何かのために努力できる人のことだ。
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